31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話

  • 49人登録
  • 3.62評価
    • (4)
    • (1)
    • (7)
    • (1)
    • (0)
  • 3レビュー
  • 講談社 (2014年12月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062182737

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
デール カーネギ...
ヴィクトール・E...
ジャレド・ダイア...
エリック・ブリニ...
村田 沙耶香
ベン・ホロウィッ...
ミチオ・カク
有効な右矢印 無効な右矢印

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話の感想・レビュー・書評

  • <後天性サヴァン症候群とともに生きる>

    『日経サイエンス 2015年 02月号』の特集は「後天的な天才」と題されるものだった。その中に、生まれつきではなく、頭部に外傷を受けたことにより、特殊な天才的な能力が目覚めた人々=後天性サヴァン症候群の記事があった。本書はこの記事中にも取り上げられていた、ジェイソン・パジェットが、ライターであるモリーン・シーバーグの助けを借りて、その稀有な体験談を語る本である。

    ジェイソンは、ある事件に遭うまで、どちらかといえば、刹那的で享楽的な毎日を送る、ごく普通の青年だった。遊び友だちも多く、昼は家業を手伝い、夜は友人と飲み歩き遊び歩いていた。学校に通っていた頃は、数学への興味などほとんどなく、「こんなものを勉強して何の役に立つんですか」と教師に聞くような生徒だった。
    31歳のある夜、友人からの誘いに意気揚々と出かけた彼は、ふくらんだ財布に目を付けられ、暗い小道で悪党に激しく投打された。病院で検査を受け、激しい脳震盪と打撲と診断された。
    彼が自らの大きな異変に気づくまで、さほどの時間はかからなかった。暴力的な事件により、想像に難くないが、PTSDを負い、人付き合いを避けるようになった。だが、異変はそれだけではなかった。周囲のものが突然、幾何学的な図形として意味を持ち始め、あらゆる形から光が放射されているように見えだしたのである。
    数学的な共感覚の目覚めだった。

    彼は、引きこもり生活をしつつ、自分に見えるようになった絵を懸命に描き起こし始める。
    やがて彼はその図形を通して、おそるおそる再び外の世界と関わりを持つようになっていくのである。数学系の大学という、以前の彼からはまったく予測もつかない場所をきっかけとして。

    まったく違う人物に生まれ変わったかのような彼の「その後」の人生は決して平坦ではない。後遺症に悩まされ、幾度となく傷つき、新たに得た才能を制御できずに苦しむ。
    しかし、困難な中でも少しずつ世界とまた交わり、数学を学ぶ人々や他の共感覚者、脳研究者などとつながっていく姿は感動的である。
    彼は世界とつながり直す途中で、信頼に足る伴侶を得て、結婚もしている。

    本書は共感覚や数学について専門的に語ろうとしているわけではない。
    むしろ、人生において大きな変化を体験し、傷を負いながら、なおそれを乗り越えようとしている人の闘いの記録としての側面が大きい。その意味において、本書は普遍的な物語と言えるだろうし、専門用語が飛び交う読みにくい本ではない。
    但し、その分、共感覚とはどういうものか、あるいはサヴァンとは何かを知りたい向きには不満も残るだろう。ジェイソンの描く図形が、どの程度数学的に意味があるのかというのもわかりにくい。アート作品としても驚嘆すべきものであるように見えるが、例えばフラクタルとして、例えば円周率πを表すものとして、彼の描く図形がどれほど革新的で本質を突いているのか、数学者がどう捉えるのかの裏付けに関しては、本書では十分には触れられておらず、少し隔靴掻痒な感じが残る。

    とはいえ、本書を読んでいると脳の働きの不思議さに打たれる。また、人とは、体とはいかにもろいものであるかと思う一方で、その強靱さにも驚かされるのだ。
    ジェイソンも、一歩間違えば、社会生活が不能になるような重篤な障害を負っていてもおかしくなかった。映画「レインマン」のモデルと言われるキム・ピークは驚くほどの記憶力で9000冊もの本を暗記することが出来た一方、自らの靴の紐すら結べなかった。特殊な才能を手に入れつつ、その能力を人に伝えることができる、非常に微妙なバランスをジェイソンは保っている。
    サヴァンや共感覚とともに生きていくとはどういうものか、その一端を感じさせ、脳の仕組みの複雑さに触れる1冊... 続きを読む

  • この本は希望の書です。事故で後天的にサヴァン症候と共感覚を得たジェイソン・パジェットが共感覚者であるモリーン・シーバーグと共に彼に起こったこと、そして世界をどのように感じているかということが語られています。

    また、彼が持つ情報を科学・医療研究者と交換することで、この世界に更なる可能性が加えられるかもしれません。それは、研究者ではない一般の人々にとっても意義のある機会だった例も紹介されています。さらに、後天性脳機能障害(TBI)あるいは高次脳機能障害に苦しむ人々にとって朗報が含まれていることは言うまでもありません。現実的に物事が進むのは非常にゆっくりな速さだとしても、そこに希望の道しるべがあるとないとでは、大違いですから。

  • サヴァンと共感覚にフォーカスされすぎなのが今ひとつなところですが・・・

    ・本書に紹介されているような特殊能力は教育や努力で
    得られるものではないこと(それを否定しませんが)
    本書の例だと「事故で」得られ、その前後で視覚含めて
    明らかな差が生じている
    この差は後天的に能力を得た著者しか語れない
    貴重な内容です
    著者ほど顕著じゃなくても普通の人には知覚できないものが
    当たり前に見えたり理解できたりする人はいるんです
    それを普通の人が(特に秀才系の人ね)否定することが多い

    ・その特殊能力には程度の差はあるものの何らかの
    「代償」が伴うこと
    その克服は本人の並外れた努力と周囲の協力が不可欠
    P232〜235 の内容は著者の主観にすぎませんが
    代償が大きい場合は生き地獄なのかも・・・

    本書の後半はその能力のメカニズムを解明し、誰もがその能力を
    引き出せれば・・・という論調ですが
    私は、その前に先天的、後天的に能力を得たにも関わらず
    「代償」が大きすぎて埋もれている人の発掘が急務だと思う
    本人は生き地獄だし、社会にとっても大きな損失
    根拠はないですが、いい具合に「中途半端なサヴァン」って
    奇跡に近い例だと思いますよ

全3件中 1 - 3件を表示

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話を本棚に「積読」で登録しているひと

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話の作品紹介

サヴァンと共感覚の謎に迫る、奇想天外の実話。家具店で働くジェイソンは、マッチョで遊び好きな31歳。バーで友人と飲んだ帰りに強盗に暴行され、ひどい脳損傷を負う。気づいたとき、彼にはすべてのものが、幾何学的な図形として見えるようになっていた。
混乱し、ネットで情報を調べ、目に映るものを夢中で描き始めるが、誰も理解してくれない。
享楽的だった性格も内省的になり、事件によるPTSDも影響して、4年ものひきこもり生活に入る。孤独の中で彼は幾何学と円周率に魅せられ、「自分が共感覚とサヴァン症候群になったのではないか」と考えるようになる。これが物理学者、脳科学者、共感覚者たちと謎を探る彼の旅の始まりとなった。
現在の彼は、幾何学的な独自のアートを発表するようになり、数理学を学んでいる。
共感覚者には「数字が色に見える」「音に味を感じる」など、さまざまなケースがあるが、「流水の構造が、特有の幾何学的な図形と周波数で振動しているかのように見える」という彼の例は特殊なもの。
サヴァン症候群、共感覚とは生まれながらのものとされているが、彼は後天性である。事故によって共感覚者、サヴァン症候群になった稀有な例として注目を集めている。

31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話はこんな本です

ツイートする