市川中車 46歳の新参者

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183468

作品紹介・あらすじ

46歳の”新参者”が九代目市川中車を襲名するまで。歌舞伎界入りの理由、稽古、公演。辿り着いたのは「身を捨てる」という生き方。

感想・レビュー・書評

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  • 父は歌舞伎役者の市川猿翁、母は女優の浜木綿子とゆう芸能界のサラブレッドとして生まれながら、離婚により梨園からはなれて生きてきた香川さん。それが46歳で歌舞伎役者に挑戦と聞いてはたして彼はやっていけるのか?茨の道をあえていこうとするのはなぜなのか?それには父をはじめとする延々と続く歌舞伎役者の血を受け継ぐ覚悟ができたからなのだろう。父と母のわだかまりも解決され一家総動員で歌舞伎の演目をこなしてゆく香川さん、いや市川中車。ご子息の政明=市川團子。そんなまっとうな人生を貫いている中車さんに比べて(恐れ多いが)自分はどうだろうとふと思う。殻に閉じこもり些細なことで傷つき人生に向き合えない私にとってこれ程きつい本はない。静かで熱い自伝。

  • これは賛否両論あると思う。
    私は比較的好意的に読んだ。素直に、父のことを知りたい気持ちはあると思うし、子供に名跡を継がせたい、という気持ちもあるだろうと思うから。
    ただ、それを正当化するような内容オンリーだったら辟易とするのだが、その平衡感覚が微妙。
    歌舞伎界の生の人間関係が窺えるのが楽しい。
    それと、今読んでいる『歌舞伎 家と血と藝』に通ずる内容もあり、中川右介は外側から資料と史実から事実を書いているのだが、これは『血』の真っ只中からの話が読めて、それもまた良かった。

  • 独特の思想が文字化されている。個人の信条だから良いし、その後この家で起こったこととは直接関係はないだろう。むしろ、梨園はそういった特殊な思想が支える特殊な世界である、ということは愛好家としては理解していて損はない。

    その特殊な梨園の中でも、この家の異端さは、この家に対しての他家の限定的な後押し・支援、そして限定的な共演の輪という事実を見ることでも確認できる。

    そして起こった事実に対しては、さすがに頭のいい著者、きちんと説明がついている。
    「子供だけを送り込む」ことはしない、その覚悟は見上げたものだと思う。この人は素養は完璧、努力さえすれば花もあるので十分舞台は務まる。その汗がきちんと伝わる本。

    また、逸話として伝わっている若き日の、突撃的な父訪問は、本人の回想を読むと随分印象が変わったものになった。父三代目は十分な愛情でもって、数十年ぶりに会う息子に接していることがわかる。また泣き崩れる甥を抱きしめた叔父段四郎、も名場面。

  • けっこう理屈っぽい人なのね。ほとんど一緒にいなかったはずなのに、文章のトーンが父親にそっくり。マニフェスト的なところはともかく、ドキュメンタリーな部分は面白い。

  • 思い返してみれば、歌舞伎のことを何も知らなかった私がはじめてちゃんと歌舞伎を見たのは、2013年1月の大阪松竹座、「生で香川照之が見れるなら行ってみようかな」と思ったのがきっかけでした(その頃大阪に住んでいたので)。

    香川照之の歌舞伎界入りは、芸能ニュースとしてたいへんスキャンダラスなできごとでしたし、賛否両論あったみたいでしたが、それまで歌舞伎に興味のなかった私のような新しい観客を確実に増やしたわけだから、俳優としてのキャリアと人気を築き上げた上で飛び込んだ香川さんも、受け入れた松竹の方も、戦略として正しかったんだろうなー、と思うのであります。

    しかしこれは外野の戯れ言。
    当のご本人は何を思って決断し、どんなことをどんな思いで実行してきたのか、それがご本人の言葉で語られているのがこの本。

    「歌舞伎役者の家に生まれた運命」
    「血筋」
    「生まれてきたときの約束」
    「果たすべき責任」
    こういった言葉が何度も繰り返される、重い本でした。
    (もちろん、歌舞伎界裏話、としての面白さもありましたが。)

    うーん、わからん世界の話だなあ、と思ってしまえばそれまで。
    本の後半、「正しい生き方をするのが地球のための役者の使命」というような壮大な語りになってきます。正直ちょっとめまいがしましたし、考えとして賛成しがたい部分もありました。

    でも、連綿と続く命、エゴ、生きる意味・・・といったことをとことん考えて、あえて棘の道を選択して見せた、苦々しい皺を顔に刻んだこの俳優さんのそういう思念を受け止めるなら、「別に伝統芸能の家に生まれたわけでもない私には関係ない」なんて簡単に思い捨てずに、背筋を正して生きねばなるまいなと思います。

    「正しく生きる」とかなんとか、大袈裟だなあとも思うのだけど、人に見られる職業、農業や漁業のように直接わかりやすく「役に立つ」というわけでもない俳優という職業の意義のようなことも、この人は考えて考えて考えてきた人なんだなあ。。。

    ワイドショー的好奇心で読んでみた本でしたが、意外と考えさせられてしまいました。

  • 2014年1月26日に行われた、第13回ビブリオバトルin生駒で発表された本です。テーマは「和」 チャンプ本です。

  • 大急ぎで出版された感あり。著者のもっと深い部分を味わいたかった。

  • こんなに辛くて大変な場所にあえて身を投じる中車さん。血族のめんめんたる流を途絶えさせてはならじとの使命感に燃える彼にエールを送ります。そして、きっとやり遂げる人であると信じています。ところで「語り下ろし」・・やっぱり、と思いました。美味しい実になる果実を熟れる前にもぎ取ってしまった感じがします。30年後、今度はご自分の筆で書かれることを切に希望します。でもその頃私生きてるかなぁ~。

  • 新聞広告を見て。
    特に新しい話はなかったけれど息子さんと勘三郎さんのエピソードはグッとくる。

  • 香川照之さんが、なぜ46歳で歌舞伎役者なろうと思ったのか。

    テレビの記者会見で、「いま、この大きな船に乗らないわけには行かない。それが僕の人生だから。」と熱烈な口調で話していたのを見て、なまなかな覚悟ではないことが伝わってきた。

    彼の父・市川猿之助(今の猿翁)と母・浜木綿子が離婚してから、歌舞伎の世界とは無縁の生活をしてきたが、しかし、母の実家に暮らしながら「自分の理想とするような人生の答えは、この家の中にはない。」と、子供の頃から思っていたという。
    「本来自分の居るべき場所、するべきであったこと」に対する希求。
    自分自身に息子が生まれて、自分の血筋の使命ということを切実に考えるようになったとも書いていた。
    同年代の、歌舞伎役者の家の後継として幼い頃から修行を積んできた人たちとの埋められない差というのは十分知った上で、でも、やる。
    恥をかいても、凹むことがあっても、生き方がかっこいいと思う。

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著者プロフィール

香川 照之(かがわ てるゆき)
1965年生まれ。ドラマや映画で俳優として活躍する一方で、教育番組で昆虫の魅力を子どもたちに発信。昆虫デザインの親子向け服育ブランド「Insect Collection(インセクトコレクション )」のプロデューサーを務め、文部科学省からは「こどもの教育応援大使」も委嘱された。


「2022年 『INSECT LAND(インセクトランド)トンボのアクセル、あわてんぼうのいちにち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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