田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

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著者 : 渡邉格
  • 講談社 (2013年9月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062183895

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」の感想・レビュー・書評

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  • 「池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」」を併せて読むと、マルクスの部分はよく理解できる。
    「田舎のパン屋」という「差別化」で「利潤」を生み出しているよう気もする。ビール事業拡大のために、既に勝山から移転しているようです。

  • 何者でもない自分に焦る。自分に向き合う事でしか自分らしさは育たない。
    時間はかかるけど自分のやりたい事に耳をすませて目を向けてみようかな。

  • 何でこの本のことを知ったか忘れてしまったが、しばらく前から図書館で予約待ちをしていた。それが、『脱資本主義宣言』を読みおわるのを見ていたかのように、順番がまわってきた。

    書類やら手続きやら月初からのいろいろが、とりあえず一段落して、久しぶりに手は編みものをしつつ、本を読む。手を動かしつつ朝から読んでいた本を、昼過ぎに読み終える。

    「腐る経済」というのは、どうも「脱資本主義」と似ているようだった。『脱資本主義宣言』では、アメリカ様の儲けるご意向がばかすか通り、暮らしが急激に変わってしまった事態のひとつとして、「パン食」の普及についてずいぶん書いてあった。そういうのを読んだばっかりだったので、「パン」屋さんが「脱資本主義」みたいな話を書いてるのは、ちょっと「?」だったが、読んでいると、どうも似たニオイのする本なのだ。

    ▼「腐らない」という現象は、自然の摂理に反している。それなのにけっして腐らずにむしろどんどん増え続けるもの。それがおカネ。(p.2)

    「腐らない」パンや、「腐らない」食べものがヤバイように、「腐らない」おカネもヤバイ。「腐る経済」の"腐る"で著者が言いたいのは、ちゃんと腐ることで、ものは姿を変え、土へ還り、自然のいとなみのなかで循環していく、ヤバイものは浄化される…というようなことらしい。著者の言う「腐る」には、大きくわけて発酵と腐敗のふたつがある。

    ▼…イーストのように人工的に培養された菌は、本来「腐敗」して土へ還るべきものをも、無理やり食べものへと変えてしまう。「菌」は「菌」でも、自然の摂理を逸脱した、「腐らない」食べものをつくり出す人為的な「菌」なのだ。
     添加物や農薬といった食品加工の技術革新も、同じような作用を引き起こしている。時間とともに変化することを拒み、自然の摂理に反して「腐らない」食べものを生みだしていく。
     この「腐らない」食べものが、「食」の値段を下げ、「職」をも安くする。…(略)
     …おカネは、時間が経っても土へと還らない。いわば、永遠に「腐らない」。それどころか、投資によって得られる「利潤」や、お金の貸し借り(金融)による利子によって、どこまでも増えていく性質さえある。(pp.73-74)

    著者は、いまは岡山の田舎でパン屋をいとなんでいる。「酒種(さかだね)」でつくる「和食パン」をはじめ、天然菌を採取し、それを育ててパンをつくっているそうだ。酒種でつくるパンといえば、明治に木村屋がつくったあんぱんもそうだったなと思う。

    第一部「腐らない経済」では、パンをつくって暮らしをたてていく道を選んだ著者の履歴と、その過程で出会った「菌」の声が、150年前のマルクスの声と重なっていると気づいた話が書かれている。そして、第二部「腐る経済」では、「田舎」で「パン屋」を営むこと、そこで菌を育て、パンをつくり、商いをしていく暮らしのなかで、どうやったら経済を「発酵」させ、「循環」させることができるだろうという試行錯誤が書かれている。

    「都会」での会社員時代、おカネを使わされるために働かされているような理不尽を感じていた著者は、「田舎」で「利潤」を追求しない商いをやっていこうとする。

    ▼「田舎」には、「都会」の理不尽さはないけれど、その分、便利さもない。生活を成り立たせるための条件は、「都会」よりも厳しい。おカネ任せ、他人任せでは暮らしていけないのだ。(p.165)

    著者の父は大学でつとめる研究者なのだそうで、この父がゼミの学生に息子のつくる素材と技術にこだわったパンの話をしたときのことを、話してくれたことがあるという。

    ▼―(略)ただ、おまえたちがつくるパンは、巷で流通しているパンと比べると、やっぱり高い。スーパーやコンビニで売られているガラクタのようなパンも、国の安全基準はちゃんと満たしている。100円のパンとおまえたちがつくる400円のパンが並んでいたら、おカネのない学生は、ガラクタだと分かっていても、安いほうのパンを買ってしまうだろうとも言っていた。(p.223)

    「おカネの使い方を見直すこと」が、経済を「腐らせる」ひとつの方法だろうと著者は書く。おカネの使い方こそが、現実を動かし、社会をつくっていくと書く。それは確かにそうだと思うけれど、著者が丹精してつくった「高いパン」や、フェアトレードの「高いチョコレート」や「高い服」は、おカネがある人でないとそうは買えないよなーとも思う。そのあたりで、いつも、ちょっと、モヤモヤ~とする。

    この本は、かなりおもしろかったけど、もうひとつ私がどうかな~と思ったのは、「男35歳、家族の生活も賭けての大勝負」(p.21)というようなところで、パン屋は妻との二人三脚でと書いてあって、きっとそうでないと成り立たない商いであり暮らしなのだろうということは伝わるのに、こういうところにひょいと出てくる「男」って何なんやろう??と謎なのだった。

    なるほどーと思ったのは、イナズマは「稲」の「妻」だという話。窒素固定といえばれんげ草(=マメ科の植物)しか知らずにいたし、それだって学校の机上で習ったことで、土にふれ、作物をよく見て知ったわけではないのだ。

    ▼「雷がドンと鳴ると、空気中の窒素が水に何トンと溶けるんだよ。空気中の窒素が雨に溶けこんで、それが土を肥やして米を実らせる。だから、『稲』の『妻』なんだ。昔の人は、科学なんて知らなかったけど、五感と経験で、自然のことをよく知ってたんだ」(p.200)

    そして、竹細工職人の平松さんの話にも、はっとした。

    ▼―日本に資源がない言うんは大ウソですよね。森があって水があって、四季がめぐり、豊かな資源に恵まれています。僕は、こんなに資源が豊かな国はない思うんです。竹だって、そこら中で勝手に生えてきます。
     でも、江戸時代の終わり頃から、西洋の技術に圧倒されて、目の前にある豊かさが見えんようになってしまったんでしょうね。昔から長い時間をかけて培われてきた伝統技術が、その頃を境に、ものすごい勢いで失われていきました。
     それでも、桶屋や鍛冶屋、竹細工は、生活と密着していたから、最後まで生きながらえたんです。そこにトドメを刺したのがプラスチックです。…(略)…おかげで、切っても切っても生えてくる無尽蔵の資源の竹は、今じゃ厄介者です。使えばいいのに、誰も使いませんから。…(p.209)

    "資源がない日本"観を、私もなんとなく身につけていたことに気づく。その自分に気づいて、うぉーと思う。

    (3/20了)

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    小さい経済学

  • 岡山の片田舎で一つ400円もするパンを売っているお店でのマルクスの教えと天然菌によって生み出される「腐る経済」に基づいた自然な暮らし。

    だれもかれもがこの生活を真似することはできないだろうけど、こういう暮らしもきちんと成り立つのだ、と知ることはとても大切なんじゃないかと、思う。

    地元の竹とお米と水でなければ育たない菌があり、築百年の古民家でしか作れないパンがある。

    ちゃんと生きるってこういうことなのかもしれない。

  • 利益を追求せずパン作りを突き詰めてる感じなんかは好感が持てるし尊敬できる。 ただ、本のタイトルほど経済っぽい内容ではないような。 マルクスがどうとか、エンデがどうとか確かにあるんだけど、経済どうこうの話は頭に残らず自然というものに向き合ったパン屋の話という印象しかない。 本としてはそれなりに楽しめた。

  • ビールに走るって思った

  •  田舎にかまえる1軒のパン屋。価の安い田舎で1個400円のパンが売れる。しかも、週3日休み、年に1度1カ月の休みを取りながら、年商2000万円。夢のような話だけど、著者が実践しているのは自分に正直に生きることだけだ。よく耳にする「差別化」やら「ブランド」などの小細工は必要ない。
     成功の鍵は「マルクス」「菌」。
     マルクスは資本主義経済の問題を示した人だ。彼がいうには、資本主義の構造が労働者を虐げ、資本家が労働者を搾取する。この循環の中から抜け出すには、生産手段を持ち、労働力の交換価値を高く保つこと。それが「腐る経済」。
    彼が営むパン屋では、利潤は必要ないので、原価や人件費は常識外れ。けれど、みんなが納得している。
     次に菌。最近夫が発酵に目覚め、恥ずかしながら初めて菌が我々の暮らしに大きく関与していることを知った。美味しく食べてるパンもその一つ。著者が試行錯誤した発酵の過程、詳しくは正直よくわからなかったけれど、並ならぬ根気を要したことだけはよくわかった。その結晶が彼らの酒種パン。食べてみたい!!

     著者の人生は挫折だらけだったらしい。30歳過ぎても自分の道を見つけ出せず、田舎になんとなく憧れている、、って私のこと?重ね合わせる部分が多かった。彼がパンで自分の納得する道を見つけたように、私にとってのパンが早く見つかるようにと感じ入らずにはいれなかった。

  • ここでも取り上げられていた平川克美の『小商いのすすめ』
    マルクスもすすめてたのか・・・

    休むことも大事、パンだけじゃなくていろんな人・場所に会って新しい体験をすること、音楽や自然や食にふれて感性を磨くことがパン作りにつながる。安すぎる食べ物を買うのは控えよう。

  • 腐る。よく考えたら自然なことだ。そんな「あたりまえ」を見失っていた。それに気づくだけで、今を大切にでき、周りを見渡すことができ、流れに身をまかせることができそう。

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田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」の作品紹介

どうしてこんなに働かされ続けるのか? なぜ給料が上がらないのか? 自分は何になりたいのか?――人生どん底の著者を田舎に導いたのは、天然菌とマルクスだった。講談社+ミシマ社三島邦弘コラボレーションによる、とても不思議なビジネス書ここに刊行。「この世に存在するものはすべて腐り土に帰る。なのにお金だけは腐らないのはなぜ?」--150年前、カール・マルクスが「資本論」であきらかにした資本主義の病理は、その後なんら改善されないどころかいまや終わりの始まりが。リーマン・ショック以降、世界経済の不全は、ヨーロッパや日本ほか新興国など地球上を覆い尽くした。「この世界のあらたな仕組み」を、岡山駅から2時間以上、蒜山高原の麓の古い街道筋の美しい集落の勝山で、築百年超の古民家に棲む天然酵母と自然栽培の小麦でパンを作るパン職人・渡邉格が実践している。パンを武器に日本の辺境から静かな革命「腐る経済」が始まっている。
【著者・渡邉格(わたなべ いたる)から読者のみなさんに】
まっとうに働いて、はやく一人前になりたい――。回り道して30歳ではじめて社会に出た僕が抱いたのは、ほんのささやかな願いでした。ところが、僕が飛び込んだパンの世界には、多くの矛盾がありました。過酷な長時間労働、添加物を使っているのに「無添加な」パン……。効率や利潤をひたすら追求する資本主義経済のなかで、パン屋で働くパン職人は、経済の矛盾を一身に背負わされていたのです。
僕は妻とふたり、「そうではない」パン屋を営むために、田舎で店を開きました。それから5年半、見えてきたひとつのかたちが、「腐る経済」です。この世でお金だけが「腐らない」。そのお金が、社会と人の暮らしを振り回しています。「職」(労働力)も「食」(商品)も安さばかりが追求され、
その結果、2つの「しょく(職・食)」はどんどんおかしくなっています。そんな社会を、僕らは子どもに残したくはない。僕らは、子どもに残したい社会をつくるために、田舎でパンをつくり、そこから見えてきたことをこの本に記しました。いまの働き方に疑問や矛盾を感じている人に、そして、パンを食べるすべての人に、手にとってもらいたい一冊です。

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