- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062184571
作品紹介・あらすじ
誰も戦争を教えてくれなかった。
だから僕は、旅を始めた。
広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ、香港、瀋陽、沖縄、シンガポール、朝鮮半島38度線、ローマ、関ヶ原、東京……。
「若者論」の専門家と思われている28歳社会学者。
そして「戦争を知らない平和ボケ」世代でもある古市憲寿が、
世界の「戦争の記憶」を歩く。
「若者」と「戦争」の距離は遠いのか、
戦勝国と敗戦国の「戦争の語り方」は違うのか、
「戦争、ダメ、絶対」と「戦争の記憶を残そう」の関係は歪んでいるのでは――。
「戦争を知らない」のはいったい誰なのか、
3年間にわたる徹底的な取材と考察で明らかにする、
古市憲寿、28歳の代表作!
◆オビ推薦:加藤典洋氏
「一九八五年生まれの戦後がここにある。」
◆週末ヒロインももいろクローバーZとの1万2000字対談を収録!
「5人に『あの戦争』に関する全20問のテストを解いてもらったら……」
◆巻末に「戦争博物館ミシュラン」まで付録!
感想・レビュー・書評
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2011年にパールハーバーのアリゾナ記念館を訪れて以来、日本や世界各地の戦争博物館・戦跡を巡るようになった著者。
館内は意外にも反日的な要素がなく、アメリカが戦争で華々しく勝利を遂げた様子が解説・ディスプレイされていたとのこと。青い空・海に囲まれた白い建物というコントラストも相まって、一種の「爽やかさ」まで感じられた…。
学校で習うような「悲惨な戦争」のイメージとかけ離れていたことから、各国の「戦争の残し方」に興味を持つようになったという。
「歴史を扱う博物館は、決して死物の貯蔵庫ではない。歴史の再審のたびに展示内容が書き換えられ、その表現のテンションまで変わる、生きた『現在』の場である」
博物館・戦跡をマジメに巡るようでは修学旅行の平和学習と大差ない。不謹慎と分かってはいるけど、その態勢だとたちまち退屈してしまう。
そこで著者は館や跡地に「エンターテイメント性」の視点を加えることにした。アウシュビッツ(ポーランド)やザクセンハウゼン収容所(ドイツ)・旧海軍司令部壕(沖縄)etc.と、部屋までも当時のまま残し来館者に体感して貰えるほどポイントが高いようだ。レプリカや人形を設置していくのとはわけが違う。(負の遺産を巡る観光を表す「ダークツーリズム」という言葉を本書で初めて知った)
……正直自分にとっては「戦争博物館」と「エンターテイメント性」って結びつけ辛いし、そういった場所では記念撮影すら躊躇してしまう。なかなか賛同できずにいるけど、それが戦争を知らない彼なりのアプローチだったのかなと思うことにしている。
「戦争というのはきっと、遠く離れれば離れるほど、まるで知らなければ知らないほど、盛り上がれるものなのだろう」
年齢表示も大きな特徴の一つだ。
本書では人名の後に数字が付されており、終戦の1945年を起点としていつ生まれているのかを示している。ひめゆり部隊の候補から外れた外間房子さん(-16)、韓国の戦争博物館を訪れる前にインタビューしたBIGBANGファンのアユミさん(+40)といったふうに。(シェークスピア(-381) ・ドラえもん(+167)なんてのもある)
特に戦後生まれは終戦から何年後かによって、戦争に対する意識の深さを測っているふしがある。補章「ももいろクローバーZとの対話」とかそれにあたるかも。ちなみにそこでは博物館・戦跡巡りに触れておらず、年号など理解度の確認や戦争観を話し合う場となっている。
理解度が乏しくとも決して無関心でないことが、強い意思のこもった言葉を通して伝わってきた。
「戦争を知らずに、平和な場所で生きてきた。そのことをまず、気負わずに肯定してあげればいい」
日本と違って現代史を徹底的に指導する国。戦争を好意的に見る国。
戦争観は生き物のごとく今を生きる人々の中に生き、時に変化する。当時の戦争自体知らずとも、その生き物の動向を注視するのは今を生きる我々にしかできないことだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史の教科書から見た「戦争」は、戦争のたった一面に過ぎないんだなって思った。新しい視点ゲット〜♪
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ときおり各所で批判とボヤ騒ぎで話題になる古市サンですが、
私は彼のノリ大好きです☆
自然体なところとふてぶてしさに、ユニークな才能があると思うので、応援したいです。
「なぜそれでも日本人は戦争を選んだのか、日本軍が敗れた失敗の本質はどこにあったのか、どうして敗北を抱きしめなくてはならなかったのか。そんなことには興味がなかった」
っていう冒頭のくだりが笑いのツボにはまりました。
いずれも真摯に戦後の問題を考察している本のタイトルじゃないですか。
こういうスカした態度のセンスが大好きです。
本書では米国、ドイツ、中国、韓国など世界各地の戦争博物館および沖縄戦や広島原爆、東京空襲などの日本の博物館を巡り、各国が自分たちの歴史をどう展示しているのかをゆる☆ふわに比較考察しちゃってる本です。あくまで学生の海外旅行の延長線っぽい軽いノリで、というのがポイント。
リアル保存にこだわるアウシュビッツやエンタメ感満載の韓国、やけに明るいノリの真珠湾。
一方日本の、「右翼にも左翼にも批判されないように配慮しまくった」結果、無味乾燥の残念感満載の無数の博物館たち。
ここ完全に同意という感じでした。
もうちょっとちゃんと世界を回って考察すれば立派なダークツーリズム本になったのにねっていう残念感から星ひとつマイナスしました。でもそれが彼の本らしさなのかもしれないですが。 -
他の著作よりは本当っぽい。
この書評が一番合っていると思う。
http://mercamun.exblog.jp/21402450/ -
これでハワイ行きを決めた。
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NDC分類 209.74
「「若者」と「戦争」の距離は遠いのか、戦勝国と敗戦国の「戦争の語り方」は違うのか、「戦争、ダメ、絶対」と「戦争の記憶を残そう」の関係は歪んでいるのでは――。
「戦争を知らない」のはいったい誰なのか、3年間にわたる徹底的な取材と考察で明らかにする」
序章 誰も戦争を教えてくれなかった
第1章 戦争を知らない若者たち
1 戦争を記憶する
2 戦争を知らない日本人
第2章 アウシュビッツの青空の下で
1 万博としてのアウシュビッツ
2 ベルリンでは戦争が続いている
3 僕たちはイタリアを知らない
第3章 中国の旅2011?2012
1 上海――愛国デモの季節
2 長春――あの戦争は観光地になった
3 瀋陽――倒された塔の物語
4 大連・旅順――南満州鉄道の終着地
5 再び上海――戦争博物館のディズニー映画
第4章 戦争の国から届くK-POP
1 新大久保の悪夢
2 感動の戦争博物館
3 戦争が終わらない国で
第5章 たとえ国家が戦争を忘れても
1 沖縄に散らばる記憶たち
2 平和博物館のくに
3 そうだ、戦争へ行こう
4 大きな記憶と小さな記憶
第6章 僕たちは戦争を知らない
1 2013年の関ヶ原
2 僕たちは、あの戦争の続きを生きる
3 戦争なんて知らなくていい
終章 SEKAI no OwarI
補章 ももいろクローバーZとの対話
戦争博物館ミシュラン
古市憲寿[フルイチノリトシ]
1985年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。専攻は社会学。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)で注目される。大学院で若年起業家についての研究を進めるかたわら、マーケティングやIT戦略立案、執筆活動、メディア出演など、精力的に活動する