- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062185240
作品紹介・あらすじ
わしは将軍にはならん。どんなことがあってもならぬつもりだーー。幕府と朝廷の関係が激しく揺れ動く幕末。京から江戸へと嫁いだ、一人の姫がいた。その夫、家康公の再来とも噂される男こそ、のちに「最後の将軍」となる徳川慶喜であった。公家の姫から将軍の妻となった美賀子の人生を通して、幕末の動乱と人間の深淵を描く林真理子の傑作歴史長編。
感想・レビュー・書評
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歴史上の話を女性目線で書いている本は個人的に大好きでよく読むのですが、この本は林真理子さんらしい目線で書き上げられていてさすが面白かったです。女心の機微の表現がやはりうまい。
大河ドラマ篤姫の配役を当てはめながら読み進めました。後半どんな風に慶喜と美賀子のことが書かれているのか、楽しみ♫詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後の将軍・徳川慶喜に輿入れしてきた美賀子は京都の公家の出、
自ら「わしはおなごから好かれるのじゃ」と公言してはばからない慶喜と睦まじく過ごそうと努力するが初めての子供を亡くしてからは、床に臥せるようになり慶喜の目もほかに向くようになる。
途中、浅草の火消しの一家の話になるのは何故か?と思いきや、その娘を慶喜が見染めてしまうからだった。
側室が病気で亡くなって、その体を描き抱いてふと眼を上げた瞬間に目に入ったその娘を見染めたというのだから恐れ入るのである。
さてさて、謎多き最後の将軍、下巻では如何に? -
おもしろいっ。幕末好きとしてはたまりません。
幕末といえば、新選組だの薩長ならびに土佐の坂本龍馬と血気盛んな男気をたっぷり堪能できる時代。そんな中でのらりくらりと気分で動いているかのように見える最後の将軍慶喜は、実際のところ何を考えているのかわからない。その慶喜を正妻の立場からと側室の立場から眺めて小説にしたものだ。
京都の公家から嫁入りした美賀子と、浅草の火消し職の娘お芳。おっとりゆっくり丁寧にしゃべる美香子と、ちゃきちゃきの江戸っ子の対比がおもしろい。まるっきり対照的な二人だけれど、共通しているのはどちらも気が強くしっかり者だということ。ふわふわの慶喜にはそういう女性が合ってたんでしょうね。
つかみどころのない将軍だけれど、外国好きで新しもの好き、攘夷論には大反対で尊王論には大賛成、たとえ幕府が滅びようとも自決なんてことは絶対しないよ、というところははっきりしている。
大阪城から総大将ばかりを引き連れて江戸へ逃げ帰り、大勢の兵士たちを見殺しにしたことに責任を感じるどころか、逃げる道々まぐろやうなぎの発注をしたり、江戸に着くなり「ふらんけ(ブランケット)」がほしいと言いだしたり、あげくの果てには大奥に入りびたり、女を物色したりと腹立たしいことこの上ない。
鳥羽伏見の戦いから20年経ったころ、美賀子が「あの時なぜ逃げたのですか」と問いただす。慶喜が言ったことには、ナポレオン3世から密書が届き、討幕派との勝敗がつかぬ時は必ず仏蘭西が援助する。その代わり、勝利したあかつきには薩摩をよこせと書いてあったそうな。…本当かなぁ。でもありえない話ではないなぁ。でももし本当だとすると、「日本一の卑怯者」と罵倒されながらも飄々と逃げを決め込み薩摩を守った慶喜こそ真の将軍と言えるのではないか。 -
徳川慶喜の正妻・一条美賀子から見た夫の姿がどんな感じで描かれるのか、興味があってずっと読みたかった一冊。初めは公家の姫さん視点の当時の考え方が面白い。
後半になるにつれ、好奇心旺盛な少女が女になっていく様が切ないような微妙な気持ちに…。
でもどんどん読まされてあっと言う間に読了。下巻も読む。 -
やっぱりこの目線からの歴史ものはおもしろい!
のっけから、「京は盆地ゆえに、山はすぐ目の前にあった。黒に近い枯茶から次第に枇杷茶に変わってきたのは、この三日ほどのことだ。京に春を告げると言われる近衛さんの糸桜はまだまだだが、かいわいの山茱萸が、黄色い小さな花をつけはじめた。」この繊細な四季の表現…ここでもうすっかり心は京へ。
公家の、武家の、町人のそれぞれの暮らしが綴られる中、物語が進んでいくわけですが、本筋ではない情景描写だけでもぐいぐい引き込まれました。
篤姫、和宮、滝山…と、しっかり自分の意思をもって激動の時代を生きた女性があまたいる中、私の中でとっても存在の薄かった「慶喜の妻」。そこに惹かれて手にしてみたけど、あら、しっかりした女性だったんだ、延こと美賀君は。
妾となるお芳も魅力的な女性だし、これからどう話が展開していくのか・・下巻へと続く。 -
いろいろ言われている(そしてあまり良いことを言われてない)最後の将軍・徳川慶喜もさることながらその妻、というところに興味ありで手に取り。
小説だからどこまでが史実かは知らないけれど面白く読めます。ヒロインの呼び名が延から美賀に途中から変わりますが、ハテどこからだっけと読み返してみたら…女の人生はそこから変わるんだよなぁとしみじみ。
これから更に面白くなるのか、とりあえず前編は前振り感もあり★3つと言ったところ。
後編、前編を忘れぬうちに読まねば。 -
著者の得意分野はエッセイ&恋愛で、その分野では既にかなりの成功者だと思うんですけど、何年か前に医療モノを書いていて(これはハズレ)、源氏訳にも挑戦し(これはよかった)、そしたら今度は幕末時代小説です。
「野心のすすめ」は読んでないのですが、それを証明してるなあと感銘を受けました。(やっぱり読もうかなあ。)
真理子さんが時代小説をどう描くのか、楽しみにしていましたが・・・
得意の女性目線で描かれ、であるから幕末動乱の様子はさらりと触れられる程度で、 歴史背景をわかっていないと多少わかりにくいかもしれません。
が、全体としてはとてもよかった!女性の心理描写はお得意でしょうから安心して読めますが、京の公家の暮らしや江戸の武家の暮らし、町人の暮らしも覗き見しているような面白さがあったし、女たちの井戸端会議やうわさ好きおせっかい加減の俗っぽさは絶妙で、さすが真理子さんです。
極めつけは篤姫の描き方!いや~、インパクトがありました。面白い!
下巻も楽しみです。 -
新聞小説なので飽きずに読めるのがありがたい。正妻であることのしんどさと譲らないことの心意気とあきらめ。余り時代の心持を感じさせない書き方。
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図書館で借りて。淡々と読み終えてしまった。割り切るしかない正妻ってすごい。
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この本の慶喜のイメージは、好奇心旺盛の数寄人、何をやっても器用にこなすが、飽きっぽくて信念がない。そして、腹が立つけど憎めない。
上巻はそんな彼を正妻の美賀子の視点から、下巻はお芳の視点ともう少し俯瞰した視点から描く。
聡明で優しいのだが、徹底した自己愛に貫かれた慶喜に対し、美賀子は距離を保ちつつ側に居り、お芳はいっそ好きなように生きることを選ぶ。どの登場人物も心の襞まで細かく描かれ、まるで生きている人のよう。林真理子はすごい。 -
江戸時代の終わりを最後の最後御台所の視点で描かれて面白いと思った。慶喜のイメージが変わった。時代劇は誰の視点で物語が展開するかでこんなにも違うのだと思った
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2022年2月26日
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渋沢栄一の大河をみて西郷どんを読んだ流れで、読み始めたので、同時代、同内容を違う視点で見られ面白い。大奥や側室、妾、公家の漠然したイメージへの理解が驚いたとともに大分深まった。
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「正妻 慶喜と美賀子(上)」林真理子著、講談社、2013.08.02
286p ¥1,470 C0093 (2021.07.19読了)(2021.07.11借入)
徳川慶喜の妻の方から慶喜を見たらどんな感じだろうと読んでみることにしました。
冒頭で延さんという15歳の少女が出てきます。京都の今出川家の娘さんです。
この少女が慶喜の妻になるのかなあと読み進めてゆくと一条家の千代姫さんが慶喜と婚約しているということです。
主人公の友達の目を通して物語を進めてゆくのかなあ?
延さんは、和歌、論語、源氏物語、古今和歌集などを習っています。有栖川流の書も習っています。今出川家は琵琶の家なので琵琶も習わされています。暇な時間には、碁を打ったり、本を読んだりしています。(24頁)
嘉永六年(1853年) 延さんは、19歳。前年に一条家の千代姫が疱瘡にかかり、治癒したけれど、顔にあばたが残ってしまった。そのため、延さんが一条家の養女となり、慶喜と結婚することとなった。名前は、美賀子(美しくてことほぐ)となった。(63頁)
江戸へ行くときは、乳母の萩乃と一条家の宮路がついてゆくことになった。
嘉永七年(1854年)御所から出火し、一条邸、今出川邸、を含め御所周辺の町家も灰燼に帰した。美賀子のために用意された花嫁道具もすべて灰になってしまった。
安政二年(1855年)九月十五日、江戸へ旅立つことになった。付き添う者たちはおよそ二百人。延の婚礼は、将軍夫人に準ずるものとして正式に幕府から命令が下っている。(87頁)
婚礼道具のいくつかは新しくつくられた。
十月二日、延の行列は、川崎の宿に入った。(91頁)
ここで大地震に逢った。安政大地震。この地震で水戸藩の藤田東湖が亡くなっている。
延は、一橋家に入る前に江戸城に立ち寄ることになっていたので、被災地の江戸の町を通って江戸城に入った。
同じ時期に将軍に嫁ぐために江戸の薩摩屋敷に来ていた篤姫も被災し、花嫁道具がすべて焼けてしまった。(102頁)
延は、江戸城に入って一月後の十一月に屋敷の修繕が終わった一橋家に移った。
十二月三日、慶喜と美賀子の婚儀が行われた。花嫁は二十一歳、花婿は十九歳。
(妬心)の章は、徳信院と慶喜について
(お芳)の章は、新門辰五郎の娘お芳について
【もくじ】
公家の少女
突然の婚約
旅立ち
ご簾中さま
妬心
お芳
☆関連図書(既読)
「最後の将軍 徳川慶喜」司馬遼太郎著、文芸春秋、1967.03.25
「徳川慶喜」百瀬明治著、火の鳥伝記文庫、1997.11.15
「徳川慶喜」堀和久著、文春文庫、1998.02.10
「青天を衝け(一)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.01.30
「青天を衝け(二)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.04.30
「雄気堂々(上)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
「雄気堂々(下)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
「論語とソロバン」童門冬二著、祥伝社、2000.02.20
「渋沢栄一『論語と算盤』」守屋淳著、NHK出版、2021.04.01
「論語と算盤」渋沢栄一著、角川ソフィア文庫、2008.10.25
「明治天皇の生涯(上)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
「明治天皇の生涯(下)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
「維新前夜」鈴木明著、小学館ライブラリー、1992.02.20
「ミカドの淑女」林真理子著、新潮文庫、1993.07.25
「西郷どん(上)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(中)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(下)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
(アマゾンより)
新聞連載時から大きな話題を呼んだ傑作長編!
わしは将軍にはならん。どんなことがあってもならぬつもりだ――。
幕府と朝廷の関係が激しく揺れ動く幕末。京から江戸へと嫁いだ、一人の姫がいた。その夫、家康公の再来とも噂される男こそ、のちに「最後の将軍」となる徳川慶喜であった。公家の姫から将軍の妻となった美賀子の人生を通して、幕末の動乱と人間の深淵を描く、林真理子の傑作歴史長編。 -
歴史の勉強みたいで少し難しかった
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ゆるゆるした御所言葉が好き。
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最初の美賀ちゃんのはつらつとした感じがとても良かった!
公家独特の色彩美にもうっとり。
慶喜さまは嫌なヤツだなぁー(笑) -
面白い!母娘の会話が秀逸。だれてきた頃に主人公が変わるのも面白い。
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上巻は美賀中心で華やかな感じ。
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2014年9月
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女性社会の中身がよくわかる内容だった。
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283
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篤姫や和宮を扱った小説はこれまでにあったけれども
慶喜の正室美賀は初めて。
でも、やはり、お芳が出てこないと慶喜は語れないか。 -
260915
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面白かった!下巻読む
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江戸時代については、徳川幕府中心に見る事しかして無かった。貴族の視点で見せてくれたのが、新鮮だった。
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わかりやすく読める歴史もの。
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久々の林真理子さん作品。
女と女のドロドロを期待したけれど、そういう作品ではないのかな?
後半に期待。 -
『京都』のことも『江戸』のことも『ゑげれす』のことも良く書けています!