Qrosの女

著者 :
  • 講談社
3.09
  • (17)
  • (70)
  • (190)
  • (53)
  • (11)
本棚登録 : 784
感想 : 119
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187213

作品紹介・あらすじ

「謎のCM美女」の正体は? 

芸能記者、ブラック・ジャーナリスト、そしてヤクザも!?
ネット情報に踊らされながら、思惑が交錯し、驚愕の結末へ。

「週刊キンダイ」芸能記者の矢口慶太は、CMで話題沸騰中の美女「Qrosの女」の
正体を探るが、核心に迫る情報を得られない。
ようやくCMで彼女と共演した俳優・藤井涼介のネタを仕入れたので、
先輩記者の栗山にサポートしてもらい、藤井の自宅を張り込む。
すると「Qrosの女」とおぼしき人物を発見! それは偶然? それとも仕組まれた罠? 

著者メッセージ ――初めての「幸せな嘘の物語」――

今回はズバリ「芸能界」と「週刊誌」です。
なんとなく面白そうでしょう? 
これがまた、予想外に楽しく書けたのです。いや、本当に。
ぜひ誉田初の「幸せな嘘の物語」をお楽しみくださいませ!
                        ――誉田哲也

予測がつかないものばかりの誉田さんの作品の中でも、その極みがこれ!!
大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん

さわやかで幸せな読後感! 虹色の表現をする著者の新境地!!
MARUZEN名古屋栄店 竹腰香里さん

緻密に練られたストーリー展開と、すっきりした読後感に大満足! 
ブックスキヨスク新大阪店 伊藤昌至さん

解決に至る過程に、この本の面白さが詰まっています!
誉田さん、また凄い小説を書いてくれました!!
MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん

リアルな雑誌スクープの世界が描かれるとともに、
ネットの怖さに改めて気付かされる。
書泉グランデ 近藤茂樹さん

深読みする読み手を、いとも簡単かつ鮮やかに裏切ってくれました!
アバンティブックセンター京都店 松岡佑実さん

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『Qrosの女』とは、今、世間で話題のQros(キュロス)のCMに出ている謎の美女。
    目を引くスタイル抜群の美人なのに、詳細は一切漏れてこず、その謎がまた話題を呼ぶ。
    「Qrosの女は誰だ?!」
    ところが最近、ネット上に彼女の目撃情報が度々上がるようになり、具体的な内容や便乗した悪質なものも多く見られるように。
    同じ頃、先輩・栗山と共に、別件で張り込みをしていた芸能記者の矢口は、偶然かの美女を見かけ、追いかけるが惜しいところで見失い……。

    章ごとに視点が変わると思っていなかったので、2章に入ってしばらくしてからの時系列に「???」となった。
    3章・4章と、また語る人物が変わり、最後の5章では各節が同じ順序で視点が変わった後、ひとつに集約されるという凝った構成。

    さて、肝心のキュロスの女の正体は割と早くに判明するのだけれど、もちろん、話はそれで終わらない。(ネタバレにはならないと思うけれど、彼女の名前はここでは伏せて書く)
    謎はキュロスの女の正体から、誰が彼女の情報をネットに撒き散らしたか、に移っていく。むしろこちらが本題。
    芸能記者の栗山・矢口、ブラックジャーナリスト、大手芸能事務所の社長、モデルから転進中の女優、爽やか二枚目俳優、はてはヤクザ風の二人組……誰が何のためにキュロスの女を貶めようとしているのか。

    意外な人物から手がかりとなる、ある人の「あるモノ」が小さい(言い方を変えてます)ことを聞き、炙り出された意外な犯人。
    ちっちゃいのは「あるモノ」だけではなかった……ちっちゃい、ちっちゃいよ、犯人!動機も器も。
    ネットは便利だけれど、匿名性が高い分、軽々に人を傷つけやすい。
    この犯人ももしかして、キュロスの女がここまで精神的に参るとは思っていなかったのかもしれない。
    だって苦労したんだもんと言い訳をする犯人には、情けなさを感じるだけで同情の気持ちはまっっったく湧かないけれど。ちっちゃいから。

    「でもなんか、情報って、難しいですね・・中略・・誰かにとっての真実は、実は別の人にとっては嘘だったり。でも真実が必ずしも人を幸せにするわけじゃなくて、優しい嘘のほうが、よっぽど多くの人を幸せにしたりもする。・・後略」(335ページ)

    ネットは便利だ。情報は流し放題・選び放題。
    だけれど、どんなに便利なものでも、使うのは人間。ディスプレイの向こうにいるのもこちらにいるのも人間。
    そういう当たり前のことを忘れないようにしないとなぁ。多少の自戒も込めつつ。


    ところで、矢口とカノジョの保子の話はナイほうが(^^;)
    大半の女性は、老若美醜痩肥に拘らず、矢口の態度だけではなく保子にも良い印象は持てないし、笑えないと思う。 ……男性は笑えるのかしら?(素朴な疑問)

  • 日本の一大ファッションブランド「Qros」のCMに出演した謎の美女。
    何処のどんなタレントなのか、誰も知らない。
    噂や憶測は流れども、まるで緘口令をしかれたように、その美女の正体が分からない。
    その正体を探ろうとする「週刊キンダイ」の記者慶太。

    芸能界やそれにまつわるマスコミ取材の裏事情やタレントプロダクションの内情を少しずつ明らかにしながら物語は思わぬ方向に進んでいく。
    まあ、実際の芸能界や芸能週刊誌の実態などこんなものだろう。
    本当は、もっと欲の塊のような人間ばかりの気もするが、思いがけず登場人物が情に熱い部分を持っているので、読後感はさほど悪くない。
    誉田哲也の書にしては、これまでの作品とはまた一風変わった芸能界ものだったが、ミステリータッチでなかなかに面白かった。

  • ☆5つ

    面白い!久しぶりに徹夜一気読了の寸前まで行った。本当に徹夜になってしまうと仕事に差しつかえるのでなんとか思いとどまったが、結局二晩で読破ということになった。

    誉田哲也、またもや新しいジャンル小説への挑戦作品だとも思う。「芸能界NET事情小説」とでも名付ければ良いのだろうか。うーむ今回わちょっといいジャンル名が思い浮かばないなぁ。

    普段なにげなく本の感想なども含めてNETで書き散らかしていることが、特定の当事者にとっては結構キツイ結果になってることも稀には有るのかなぁ~と、柄にもなく思ってしまった。すまなかった。

  • ユニクロを彷彿とさせるQros。「QrosのCMに出演している謎の女性は誰?」というところから始まり、登場人物それぞれの視線から、「真実」がすこしずつ明らかになっていきます。誉田さんの本は読み進めていくうちに引き込まれ、ストーリーもぐいぐい加速して、いつも一気によんでしまいます。また、単なる勧善懲悪、でない終わり方がよかった。誰にとっても納得できる役割が与えられるという「優しい嘘」が、読後感もさわやかなものにしてくれます。

    芸能界に詳しくないので、描かれている世界の様子がどれだけリアルかは分かりませんが、情報に踊らされる人々の姿はリアルです。特に、ネットで書き込むだけの人々の無責任なコメントが、当人を深く傷つける。最近のテレハでの悲しい出来事を思い出しました。

    「誰かにとっての真実は、実は別の人にとっては嘘だったり。でも真実が必ずしも人を幸せにするわけじゃなくて、優しい嘘の方が、よっぽど多くの人を幸せにしたりもする。・・・情報の価値って何だろう、真実の意味ってなんだろうって、分かんなくなります。今まで当たり前に信じてたことも、実は嘘なのかもって、疑ってみたり。」終章での言葉が、すっと心に入ってきました。

  • 芸能記者という職業にスポットをあて、ネット社会の怖さみたいなものに謎解き要素もからめつつといった作品

    人種(白人とか黒人とかいう意味でなくて)ってのはあるよなあと思う
    自分からはどうしても理解できない感覚をもつ人
    なんとなくみんなが自分と同じように考えるのが当たり前の感覚に陥ることがあって失敗したなあと思うときが度々ある
    あ、これ話がまとまらないやつだ

  • 新境地と謳っているが、どちらかというと原点回帰かな、と思う。
    作家以前の誉田哲也氏への回帰、というのか。
    世界観は原点に近いんだろうけど、芸能記者の目線、という切り口が
    新境地という所以なんだろうな。
    格闘技の選手を絡めてきてちょっとコメントを言わせたりだとか
    『フェイスプロ』『島崎ルイ』『柏木夏美』といった名前が出てくる辺り
    読みながらニヤニヤしてしまった(爆)。
    ガールシリーズを再読しようかなという気になった。

    章ごとに目線が変わるのは『増山超能力師事務所』みたいな感じ。
    章が変わるごとに時系列が戻るので、慣れるまではちょっと戸惑った。
    特に栗山の章は訳判んなくなって一旦慶太の章を読み直したくらい。
    ただ、それに慣れて来た途端に転がるように面白くなった。
    作中で真澄が巻き込まれる状況は本当に怖い。
    痛い、グロいという怖さではなく、情報の氾濫というイマドキならではの怖さ。
    途中経過は震えがくるほど嫌な気分になる描写もあるのだが
    なんだかんだで悪人はひとりもいなくて、
    終わってみればほのぼのな読後感だったのが不思議だった。
    キャラ的にはカッコいいところを持って行った栗山に
    頭髪という弱点が設定されているのも面白かった。
    正直なところ慶太の彼女的なあの人は余計だと思わなくもない(爆)。
    つーかブスはみんなああいう勘違いタイプだと思われると悲しい。
    まぁあの人は自分がブスだ(と思われている)とは思ってなさそうだけど。

    個人的には、偶然登場人物と似た名前の知り合いがたくさんいて
    (一字違いとか、漢字が違うだけの同姓同名とか)
    むしろそっちの部分でニヤニヤしながら読んでいた気がする。

  • うーん、現代社会の問題点を
    考えさせられる話だけど。
    うーん・・・
    もっとミステリ的な感じだと思ってたから
    全然違って読んでてびっくりした。
    面白くなくはないけど、
    ワクワクはしないな。

  • 章ごとに視点が変わって、しかも時系列通りには進まなくて、テンポ良く物語が展開するので一気読みしました!
    オチというか動機の部分は何だかなぁ…とちょっと残念でしたが、全体的には面白かったしラストもよかったです。

  • CMに登場した謎の美女を巡る、芸能雑誌記者たちのミステリ。
    描かれるのは「情報」の恐ろしさ。芸能人ならある程度の「有名税」だと割り切ることができても、一般人がプライベートをネットにさらされてしまうというのは恐怖そのもの。そういった嫌がらせを仕掛ける犯人と、それなりにプロとしてのプライドがある記者たちとの攻防。それぞれの時系列が絡み合って、最初は少し読みにくかったけれど。ラストの展開は一気!
    意外な人の意外な面にがっくり(苦笑)。でも人間って、そんなものなのかもね。

  • まずはチラ見した巻末の「参考・引用文献」の最後の一行でギョッとして爆笑。
    『攻殻(機動隊)』かよ!(このあたり太字で大きめのポイントで)
    それから本文を読み進んでいって……
    攻殻っぽいところがないか、すごく気になるところ。現代ものだし、青い多脚戦車を期待したわけではないけど、しいて言えば「情報戦」がそれっぽいのか?
    でも、章によって主役(視点)が変わり、時系列が少しづつネストしつつ、その時何が起こったのかが明らかになっていく。あれ、「Qrosの女」って、ここでバラす?この後どうなるの?
    そして第五章で落としどころそこか!と感嘆したところで終章、うまく全ての伏線が回収されて、しかもちゃんと「攻殻」出てくるし!
    さしずめ、『さて、どこへ行こうかしら。。。ネットは広大だわ』でしょうか(笑)
    (このカッコつきの笑は、うふふ)

    すごく面白かったです。読めて良かった。みんなも読んで!

全119件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

誉田哲也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×