お父さんと伊藤さん

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著者 : 中澤日菜子
  • 講談社 (2014年1月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062187589

お父さんと伊藤さんの感想・レビュー・書評

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  • 兄から父親と一緒に暮らしてほしいと言われたあたし「彩34歳」。
    無理ムリ無理!
    だってあたしには同棲中の彼「伊藤さん54歳」がいる。
    きっぱり断ったのに、家に帰るとすでにそこには「お父さん74歳」が……。
    その日から始まる窮屈で奇妙な同居生活。 

    これが実質デビュー作の作家さんのようですが、上手いです。
    はじめ彩の語り口が読みにくいと思ったけれど、すぐに気にならなくなるくらい。文章も話運びも人物設定もうまい。
    元教師で気難しく身内に厳しいお父さんと、バツイチで54歳なのにアルバイトで給食のおじさんをやっている伊藤さん。
    お父さんが伊藤さんを気に入るわけなどなく、同居は始めたものの歩み寄りは一切なし。
    伊藤さんのほうはといえば、淡々飄々としていて何を言われてもされても動じない、というか意に介さない。
    そんな日々が過ぎていき、ある日明らかになるお父さんの秘密。
    なんという爆弾!!

    なぜ?どうしてこうなった?頭を抱える彩の心に浮かんだ言葉、
    「誰が悪いのか、ではなく、誰もが悪いのだ」

    物語終盤、「お兄さんにもチャンスをあげなきゃ」と言い、お父さんには「嫌です」と言い、彩にはにっこり笑いながら置き去りにする伊藤さん。淡々飄々としているのに、なんだこの男らしさは。
    ○○は逃げない、が口癖の伊藤さんの「おれは、逃げないから、さ」も素敵。

    降り出した雨の中、ビニール傘をつかんで駆け出した彩はお父さんに追いついたとき、なんと言ったのだろう。
    いろいろと思い浮かべては温かい気持ちになり、本を閉じた。

  • タイトルが良いよね。
    それを引き立たせるような、シンプルな表紙も好き。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    伊藤さんのお人柄なのか、のほほん感が漂うお話。
    結構シビアな状況なんやけど。
    『家族』って、他のどこよかキレイゴトが許されない集団だもんね。
    自分も親ときょうだいとの関係が、現在進行形でちょっと困った状態にあるぶん
    最後の彩さんの決断の行方は気になるところ。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    気になると言えば、伊藤さんの過去も気になるなぁ。
    お父さんの実家でのセリフからして、単なるフリーターのおっさんでは無さげやし。
    スピンオフで書いてくれないかしら。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    カンマニワさんのソースの提案も良かったな。
     ■ ■ ■ ■ ■ 
    彼氏と友達がこんだけすてきだってことは
    彩さん自身もそうなんだと思うのよ。
    未来は明るいばかりではなく、後悔することも度々あるだろうけど、きっと彩さんはだいじょぶ。
    亡くなったお母さんに代って、そう言ってあげたくなるようなお話でした。

  • 今後、ものすごく期待のできる新人作家。第8回小説現代長編新人賞受賞作「柿の木、枇杷も木」を改題したものです。
    改題前も素敵なタイトルだけど、「お父さんと伊藤さん」のが惹きつけられたな。新刊案内でこのタイトルでなければ手に出すことはなかっただろうと思う。けどほんとうに読んで、出会えてよかったなって思います。

    名立たる選考委員たちがダントツで支持した“家族小説”
    と銘打つだけあると思います。もはや新人ではない筆力の安定さ。台詞運びが実に巧い。のちに戯曲のほうで活躍されていたと知り納得
    初っ端からとてもテンポが心地よい。するりするりと物語を運んで行くし、言葉選びが魅力的、惹きつけられる表現が多い。首をかしげる表現もあったけれども。

    34歳の彩はアルバイト生活をする54歳「伊藤さん」という男性と暮している。そんな中74歳のお父さんがやってきて奇妙な3人暮らしが始まることになる。ぎこちない共同生活を送るなかで分かるお父さんの重大な、どこの家庭でも起こりうる秘密が明るみになっていく――。

    お父さんも伊藤さんも彩も、彩の兄もその嫁も、登場人物みんなに愛着わくのもこの小説の素晴らしいところなのかも。偏屈なお父さんでさえも、54歳バツイチ素性わりかし不明の伊藤さんも、頼りにならない兄も、みんなみんな。
    伊藤さんの~は逃げないっていう口癖もお父さんの大いなる無駄遣い、文明人ならウースターという妙な口癖もテンポとセンスの良さが光りさらに物語を際立たせている。
    途中ちょっとすかすかで、少しだれてしまった箇所もあったけど、一貫して楽しかった。

    ただ物語終盤のところ(246頁)誤植かなぁと。。。
    (来ていた→着ていた)ハラハラドキドキ後の注目エピソードだったことも手伝って目立ってしまっていたのが少し残念。意味が通じず読むのが滞ってしまった。

  • 20歳年上の伊藤さんと同棲している彩のもとへ、ある日突然父親がやって来て…。
    最初のうちはコメディタッチだったけど、お父さんをめぐる問題が明らかになるにつれて、読み進めるのが切なかった。家族って何だろう? 親子って何だろう? 何度も問いかけずにはいられなかった。
    伊藤さんとカンマニワさんのキャラが魅力的。二人の穏やかな台詞が、シビアな物語を解きほぐしていたみたい。
    カンマニワさんの聡明なやさしさ、憧れるなぁ。

  • おとうさんが悲しい。だけど最後はなんとなく救われた感じかなー。
    伊藤さん、謎だわ。

  • 老人に居場所はないやろ、いまし。老人じゃなくても家に居場所なんかないよね。自分で建てたらいいのか知らんけど、猫の真似して居つくしかない。それより伊藤さんみたいな人いいなあ。なりたい。伊藤さんも当事者だもんね。当事者でああいう対応、実は汗かいて対応してるの、そんなんいいなあ。

  • 20歳離れた恋人伊藤さんと暮らしていた彩は、その部屋で、兄と同居していた父と暮らすことになった。

    不器用な彩とお父さんが切ない。
    奥さんを亡くしたお父さんは、兄潔の家で、自分の場所を見つけられずにいたのだろうと思うと、辛くなります。

    年老いた父親をテーマにした本を読むことが続き、自分に置き換えて、色々考えさせられています。
    我が家はまだ母も健在。
    父と娘である私の距離は、前よりは近くなった気がしていますが、やっぱり微妙。
    考えたくはないけれど、残り少ない時間を大切にしなくちゃと、改めて思いました。

    それにしても伊藤さん、前職含め、謎が解明されないまま。
    気になります。

  • 意外と読めた。
    伊藤さんはなるほどリリーフランキー。

  • 家族。兄弟。親戚。許し。映画化。偏屈な父と一緒に住むことになるが、娘・彩には一緒に暮らす二十歳年の離れた恋人がいた。伊藤さんがとってもいい味。伊藤さんの口癖が最後に〆る小気味よさ。

  • 父親の気難しさに激しく同感。
    ですが、お父さんの孤独な心境にも共感。

    家族ですら、「他人」であって、完全にわかりあうことはできないのだなぁ と、感傷的になりました。

    特にラストのお父さんのダンボール箱の中身は切ないです…切なすぎます。

    ユーモラスなタイトルからは想像できないシリアスな内容で、大変おもしろかったです。
    続きが気になり一気読みしました。

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お父さんと伊藤さんの作品紹介

名立たる選考委員たちがダントツで支持した“家族小説”
第8回小説現代長編新人賞受賞作!

石田衣良氏「台詞の上手さは出色」
伊集院静氏「安心して読める文章力を備えていた」
角田光代氏「思わず家とは何かを考えさせられた」
杉本章子氏「これほど登場人物の体温を感じた作品はなかった」
花村萬月氏「テンポよく読めたし、とても安定」

「この家に住む」
父が望んだのは、娘と彼氏の狭い同棲部屋。
すれ違って生きてきた“父”と“娘”に心通じ合える日はくるのか?

34歳の彩は「伊藤さん」という男性と暮している。彼はアルバイト生活をする54歳。夏のある日、彩のもとに兄から「お父さんを引き取ってくれないか」との連絡が。同棲中の彩は申し出を拒むが、74歳の父は身の回りの荷物を持って、部屋にやってきてしまった。「伊藤さん」の存在を知り驚く父。だが「この家に住む」と譲らない。その日から六畳と四畳半のボロアパートで3人のぎこちない共同生活が始まった。ところが父にはある重大な秘密が……。

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