- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188128
作品紹介・あらすじ
2011年3月11日、東日本大震災。地震・津波による死者・行方不明者は2万人近くのぼった。
2011年5月、被災地にある遠間第一小学校に、応援教師として神戸から小野寺徹平が赴任した。小野寺自身も阪神淡路大震災での被災経験があった。
東北の子供には耳慣れない関西弁で話す小野寺。生徒たちとの交流の中で、被災地の抱える問題、現実と向かい合っていく。被災地の現実、日本のエネルギー問題、政治的な混乱。小学校を舞台に震災が浮き上がらせた日本の問題点。その混乱から未来へと向かっていく希望を描いた連作短編集。
被災地の子供が心の奥に抱える苦しみと向かい合う「わがんね新聞」、福島原子力発電所に勤める父親を持つ転校生を描いた「“ゲンパツ”が来た!」、学校からの避難の最中に教え子を亡くした教師の苦悩と語られなかった真実を描いた「さくら」、ボランティアと地元の人たちとの軋轢を描く「小さな親切、大きな……」、小野寺自身の背景でもある阪神淡路大震災を描いた「忘れないで」。そして、震災をどう記憶にとどめるのか? 遠間第一小学校の卒業制作を題材にした「てんでんこ」の六篇を収録。
阪神大震災を経験した真山仁だからこそ描くことのできた、希望の物語。
感想・レビュー・書評
-
初読みの作家さん。東日本大震災後、神戸から被災地に赴任となった教師と生徒の1年間を描く物語。
当時の情景や被災地の方々の様子や心情が、まるでノンフィクションではないかと思わせる程のリアルさで描かれている。
全6章で構成されているが、特に良かった章は3章目にあたる「さくら」
震災で一人の教え子を救えなかったことを自分のせいだと思い込み、震災後もその呪縛から解き放たれることのないある教師のお話。この本の中で一番感動した話でした。この「さくら」はケツメイシのさくらのことなのだが、最後この歌と描かれている話が見事にシンクロし感動で涙が出てしまった。
そして全体を通じて感じたのが、子供は大人が思っているよりずっと強いということ。私自身も含め、子供に対してつい過保護になりがちなところがあるが、そればかりでは子供は成長しないなと。時には子供を思ってあえて口を出さない、手を出さないことの大切さを改めて感じました。
そして、良く"震災を忘れないで、風化せないで"という言葉を聞くが、この言葉についても考えさせられました。言葉は単純だがそう簡単な話ではなく深いというかなんというか。。
被災された方もそうでない方もぜひ読んでほしい一冊だと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東日本大震災の数ヶ月後の東北の小学校。阪神淡路大震災を経験した教師が赴任し、様々な問題にぶつかっていく。
前半は、こんなに上手くいっていいの?と思いましたが、後半は綺麗事では済まされない事柄が。我慢強い土地柄というのは、良くも悪くも、ですね。
-
東日本大震災の被災小学校に、自ら志願して派遣された教師、小野寺は、阪神淡路大震災で妻子を亡くしている。
被災経験はあるものの、地域の人たちのキャラクターも全く異なり、戸惑うことも多く、また、子供たちの気持ちを優先するがゆえに問題を起こしながらも、懐の深い校長の理解と協力を得ながら、子供からの信頼を得ていく。
小学校を舞台にしつつも、原発やボランティアの問題、被災者の大変な暮らしや複雑な思いなど、東日本大震災にまつわる複雑で深い問題を浮き彫りにしていて、考えさせられる。
間もなく、震災後10年を迎えるが、このタイミングで読めてよかった。 -
ブクログのおすすめ本に出ていて興味を持った本。初めての作家さん。
3.11で被災した小学校に震災直後赴任した教師を中心としたストーリー。この教師は阪神大震災で家族を亡くしていて、話の中でそちらの震災にも触れられている。
原子力発電の安全神話やボランティア問題、津波のことについて読み易く記され、心が痛くも考えさせられた。
最後の卒業制作お披露目のシーンではこみ上げるものがあった。「津波てんでんこ」初めて知った言葉。 -
震災の話なので、暗い話かと思ったら、前向きになれる話で、逆に勇気を貰えた!
-
静かに涙が出てくる話ばかり。
まいど先生の赴任挨拶や、わがんね新聞の発行などを冷めた目で読んでいた自分を恥じる涙なのか、子供たちの強さに感動している涙なのかはわからないが、もっと震災のことを知りたいと思える本。震災から10年、改めて、忘れてはならないを伝えてくれる本。 -
神戸から東日本大震災で被災した遠間市第一小学校に応援赴任してきた教師 小野寺徹平。
彼は、阪神淡路大震災で被災 妻と娘を失っていた。
「景勝地である松原海岸そばの小学校」と書かれていることから、宮城県の沿岸地域あたりを想像。
小学校教師の視点を通して、被災した子供達の葛藤と成長。教え子を助けられなかった教師の苦悩。災害ボランティアの立ち位置。震災風化。
主人公のと阪神淡路大震災当時の教え子との関わり合いも絡めて上手く語られています。
理解のある上司がいるといないとでは状況はまったく変わるよね。
私のできる事は、『忘れないでいる』ことくらいです・・・ -
現実は、小説のようにはいかないとわかっていても、それでも本っていいなぁと思える良い本。
「震災のこと決して忘れない」と、想い考える機会となった。 -
東日本大震災の復興が始まったばかりの2011年5月、被災地の遠間第一小学校に神戸から派遣された小野寺先生。自身は阪神大震災で、奥さんと娘を亡くしている。
問いかけられた「忘れないで」の難しさ、なかなか整理できないと感じた。ずっと甘えるのではなく、かといって忘れ去られずに寄り添ってほしい、など複雑な思いが背景にある。
元の職場で校長と揉めて、東北への教師派遣に志願した小野寺。外から来た者として、難しい被災者の心にどこまで踏み込むべきなのか、悩みながら勤めている。一方で、生徒の指導には強い信念がある。遠慮せず、喜怒哀楽を素直に表すことで、子どもの心は健全に育つと。
まずは、自己紹介の作文に、腹の立つことを一つ書くようにと、子どもたちに宿題を出し、それを基にして壁新聞を作ることを提案する。
壁新聞をきっかけに、校内だけでなく保護者や、地域社会でも有名になった小野寺。地元との距離に悩みながら、校長の理解もあって、問題解決に活躍する。
-
真山さんの本はこれが初めて。
私は神戸の震災の時に神戸にいたので
この本の内容には共感する点が多いです。
・頑張るな
・ガス抜きが必要
・ボランティアとのトラブル
・被災地と被災者を忘れないで、に対する違和感
震災の色々を知ってもらうに良い本だと思いますが
小野寺とさつきの関係がちょっとチープ感あるのが
残念なので★を減らして3つ。