なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白

著者 :
  • 講談社
3.38
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062188326

作品紹介・あらすじ

2010年、芸名と自身がレズビアンであることをカミングアウトし、2013年には東京ディズニーリゾートで、初の同性カップルによる結婚式を挙げ話題になった、元タカラジェンヌの著者による渾身の書き下ろし作品。本書を書いた動機を知っていただくために、まずは「まえがき」をお読みください。

――私は実の父から性虐待を受けて育った。
そのことをこうして告白するには、長い時間が必要だった。
記憶が意識から切り離され、自分の被害を思い出せなかった時間……。つらすぎる記憶に、恐れ、とまどい、逃げ回り、葛藤した時間……。
それでも私は、私が受けたすさまじい暴力を「なかったこと」にはできなかった。
自分の被害体験を思い出し、性虐待について学んでいくにつれ、近親者による性虐待は、私が想像するよりもずっと多いということを知った。けれど世間は、それを「なかったこと」にしたいのか、その実態にふたをしたままにしている。そんな現状を知ればしるほど、「暴力」と「否認」はとても密接な関係にあると実感するようになった。
私は、今の日本に生きる、レズビアンの女性だ。
そして、実父による性虐待から生きのび、立ち上がろうとするサバイバーだ。
どちらも、今の社会では生きづらい存在なのだろう。だけど私は、私でいることをやめられない。私は、私自身を「なかったこと」にはできない。
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランズジェンダー)の人や、性虐待の被害を受けている人が、何に苦しんでいるのか、何が不安なのか、書くべきことはたくさんあるような気がする。でも私は、レズビアンの代表でも、サバイバーの代表でもない。私にできることは、私の体験を私の言葉で伝えることだけだ。
この本には、幼い日にお風呂場で奪われた「私の生きる力」を取り戻すために書いたものという側面があるだろう。本を書くことが、私の回復のプロセスのたいせつな一部になるのかもしれない。けれども、それだけでなく、もし私のこの告白が、生きづらさを抱えるだれかの胸に届いたとしたら、それは著者としてとてもうれしいことだ。そんな祈りを込めて、私が生きてきたこれまでのことを書いてみたい。――

この世の中がだれにとっても生きやすいものになるための一助に、本書がなればと願っています。

感想・レビュー・書評

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  • メディア露出した女性同士のカップルの先駆け的な存在ということで筆者を知り、この本にたどりついた。
    実父からの性虐待、タカラヅカの内情など、いろいろな意味で衝撃が大きい内容だった。
    正直、セクシュアル・マイノリティの問題など、さほどのことではないと感じられるくらい……。

    性虐待をうけた被害者がその記憶に蓋をすることがあるというのは知っていたが、その加害者と「仲の良い親子」であり続けることができる(そして、それは自覚的に演じているのではない)というのは、かなりの驚きだった。
    ただでさえ周りには気づかれにくいタイプの虐待が、こうしてさらに隠蔽されてしまうことがあるとは……。
    しかしそれでも、自分を完全にだますことはできず、拒食症や自傷行為などのかたちとなって表れてしまうのには、血を吐いてでも健全な道に戻ろうとする人間の本能のようなものを感じた。

    壮絶な人生。
    著者はそれを受け止め、さらに自分の体験を何らかのかたちで社会に還元しようという覚悟が見える。
    それが、少しでも著者の傷を癒すことにつながるよう祈る。

  • 第91期生として宝塚歌劇団に入団し、「あうら真輝」の芸名で活動していた元タカラジェンヌの東小雪さんが、自身の半生と実の父からの性虐待をカミングアウトしている作品。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/25/180000

  • ~内容~
    私は実の父から性虐待を受けて育った。
    そのことをこうして告白するには、
    長い時間が必要だった。
    記憶が意識から切り離され、自分の被害を思い出せなかった時間……。つらすぎる記憶に、恐れ、とまどい、逃げ回り、葛藤した時間……。
    それでも私は、私が受けたすさまじい暴力を「なかったこと」にはできなかった。
    自分の被害体験を思い出し、性虐待について学んでいくにつれ、近親者による性虐待は、私が想像するよりもずっと多いということを知った。けれど世間は、それを「なかったこと」にしたいのか、その実態にふたをしたままにしている。そんな現状を知ればしるほど、「暴力」と「否認」はとても密接な関係にあると実感するようになった。

    この本には、幼い日にお風呂場で奪われた「私の生きる力」を取り戻すために書いたものという側面があるだろう。本を書くことが、私の回復のプロセスのたいせつな一部になるのかもしれない。けれども、それだけでなくもし私のこの告白が、生きづらさを抱えるだれかの胸に届いたとしたら、それは著者としてとてもうれしいことだ。そんな祈りを込めて、私が生きてきたこれまでのことを書いてみたい。

    ~*~*~
    この本は、東さんの正直な気持ちが綴ってあり
    好感が持てた
    どちらかというと辿ってきた道のり、幼少時代、
    宝塚時代 薬漬けでODしていた時代
    セクシャルマイノリティについてなど 広く書いてある

    性虐待に焦点をあてた本なのかと思っていた私には
    正直にいえば 物足りなかった

    5章からなるうちの4章のみ

    もしも 当事者であれば お風呂場というのは
    思い当たるふしがあるだろうし
    否認したい気持ちや自分に対して思う気持ちなどは
    ・・・共感が出来るのではないかと思う。

    だからこそ、書く方は大変だと思うけど
    もう少し踏み込んだ領域
    記憶が挙がってきたときのぶれ 気持ちの揺れ幅
    辿ってきた恢復への道・・・が読みたかった


    カウンセラーの元 母親に事実を告げた場面
    「さもありなん」と父の虐待を認めたはずなのに

    帰りの電車から、母親のFBの書き込みを見た時の
    ショック
    「・・・疲れました。いつか笑って、今日のできごとを
    話せる日が来ますように」
    母は 私の苦しみを
    まったく苦しみを理解していなかった
    私の性虐待は、笑って話せるようなことではないの。
    私の苦しみ、私の地獄そのものなの。

    似たような体験がある方には心が揺さぶられるのではないかと思った

    私は、あとがきの心情が とてもよかった

    • silenciosaさん
      猫丸(nyancomaru)さんへ
      ホントだ・・・知りませんでした。
      猫丸(nyancomaru)さんへ
      ホントだ・・・知りませんでした。
      2014/06/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      先日、急に思い出して読みたくなった本を探しに、大阪府立男女共同参画・青少年センターの情報ライブラリーへ行ったので、ついでに東小雪の本をチェッ...
      先日、急に思い出して読みたくなった本を探しに、大阪府立男女共同参画・青少年センターの情報ライブラリーへ行ったので、ついでに東小雪の本をチェックしたら、「レズビアン的結婚生活」「ふたりのママから、きみたちへ」の2冊がありました(この本は無し)。次回行く時に、どちらかを借りようかと思っている。。。
      2014/07/14
    • silenciosaさん
      この2冊は私も未読ですがディズニーランドで結婚式を挙げたことが話題になっていましたね

      少しだけあらすじを読んで
      最初はふたりして、ウ...
      この2冊は私も未読ですがディズニーランドで結婚式を挙げたことが話題になっていましたね

      少しだけあらすじを読んで
      最初はふたりして、ウェディングドレスでは
      ・・・という感じだったのに
      本社からの回答で ジェンダーフリー
      うぉーと思いました。
      私も機会があれば読んでみたいです

      2014/07/24
  • 実父からの性的虐待の部分で読むのが辛くなりましたが、最後は幸せになられたので救われました

  • Amazonのレビューを見ると、「彼女が『父親から性的虐待を受けた』というのは真実ではないのでは?」という記述があります。
    でも私は「あった」と思います。母が嘘をついているのです。

    私も…。あ、性的虐待はありません。でも父が酒を飲んで豹変するのが本当にとてもいやでした。
    母も、ずっと、そう思っていたはず。
    なのに、父が亡くなった今、「お父さんは酒飲んで迷惑かけることはなかった」と言いはります。

    そのことに私はとても傷ついた。
    その当時、酒乱の父を夫とする母を、とてもかわいそうに思っていたから。なのに今、そのことを「なかったことにしようとする」母。

    もしかしたら、夫婦というのは、まわりではわからない絆で結ばれているのかもしれません。
    「夫が娘に長年にわたって性的虐待を行っている」それを黙認せざるを得ない何かが。

    宝塚の異常さや父の性的虐待。
    公にしてくださってありがとうございました。

    世界中の子ども達がこんな思いをしないように、きっかけを作ってくださったと思います。

  • 被害者である自分と、加害者である自分。どちらも、できることなら記憶から消し去って、永遠に忘れてしまいたくなるような記憶だ。けれど、東さんはそれを許さない。決して忘れない、なかったことにはしないという、著者の強い決意のこもった一冊。すさまじい告白だった。

  • TVで見る小雪さんはキラキラしていて、さすが元タカラジェンヌだなという印象でしたが、その裏でこんなにも壮絶な過去があったのか(今も戦っている)と衝撃的でした。周りのバックアップもあったとおもいますが、やはり小雪さんにはどんな困難があっても、それをバネにして行動に変える芯の強さがある女性だと感じました。

  • 性被害とレズビアンであることを結びつけたいのだろうとは思うが、うまく表現できていないように感じる。

  • ⬛️性虐待を受けた子供の「性的虐待順応症候群」と呼ばれる五つの心理的反応。
    ①性的虐待の事実を秘密にしようとする。
    ②自分は無力で状況を変えることはできないと思っている。
    ③加害者を含めたまわりの大人の期待・要請に合わせよう、順応しようとする。
    ④暴行を受けたことを認めたがらない。または事実関係が矛盾した証言をする。
    ⑤暴行されたと認めたあとでその事実を取り消す。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:916||H
    資料ID:95141020

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著者プロフィール

元タカラジェンヌ、LGBTアクティビスト、株式会社トロワ・クルール取締役。1985年、石川県金沢市に生まれる。実父からの性虐待を告白した著者『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)を2014年に上梓。LGBTや性虐待をテーマにした講演・支援活動を展開している。

「2017年 『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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