- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062188890
作品紹介・あらすじ
誰もが「探検」の魔力に取り憑かれる一冊。講談社ノンフィクション賞同時受賞記念刊行!
高野秀行と角幡唯介は、早稲田大学探検部の先輩・後輩の関係にある。角幡は、高野の『西南シルクロードは密林に消える』(講談社)を読んで探検ノンフィクションを志したという。
二人にとって、探検とは、冒険とは何だろうか。探検家前夜から、探検の実際、執筆の方法論、ブックガイドまで、縦横無尽に語り尽くす。
感想・レビュー・書評
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高野さんによると「最初で最後の」対談本だそうだ。どちらもワセダ探検部出身で、辺境探検を本に書くという共通項があり、昨年は講談社ノンフィクション賞を同時受賞した。いかにも「似たもの同士」みたいに見えそうだけれど、お二人の本をどっちも読んだことがある人の多くは、おそらくかなり違うイメージを持つんじゃないだろうか。この対談でも、様々な面での違いがくっきりしていて、実に面白かった。
角幡さんの書かれるものは、それが壮絶な冒険行の顛末であっても、かなり内省的だ。冒険や探検にまつわる「物語」に大きなウエイトがあり、そこに魅力がある。対する高野さんは、探検そのもの、未知のものを明らかにしたいというそのこと自体をどこまでも追求していくスタイルで、自分の内面がどうだとかまったく興味がないそうな。
角幡さんの「雪男は向こうからやってきた」についての話の中で、角幡さんから「高野さんならどういう書き方をするか」と尋ねられた高野さんが、「書き方もなにも、自分で探しに行く」と答えていたのが象徴的。うーん、高野ノンフィクションのユニークさはここなんだな。
一見そうは見えないけれど(笑)緻密に準備する高野さんに対して、角幡さんは意外にもかなりいい加減にスタートしてしまう、ということとか、高野さんはまず現地の言葉をしゃべれるようになろうとするが、角幡さんは英語の読み書きはできるが会話は全然ダメだとか、やっぱりお二人はいろいろ違うのである。
そうは言っても、さすがに共通点もある。探検部出身者のメンタリティとして、自ら道を外れておきながら、本道(アカデミックな研究者とか、登山家とか)に対してコンプレックスがある、というのはなんだかわかるように思う。そういう意味でも「ソマリランド」が賞を取ったことは本当にめでたいと、あらためて思った。
さらに目から鱗の思いだったのは、お二人とも、書く素材で勝負しているように思われるのがとても不本意で、「書く」という行為に重きを置いているということ。「行って半分、、書いて半分」と高野さんは言っている。これはちょっと考えれば当たり前のことだけれど、あまりに「素材」が面白いので、つい忘れがちだ。
実際自分だって、高野さんの文章が好きだから次々読んでるんだよね。おおーっと驚く探検話でなくて、段取りだけして結局行くことができなかったり(「ウモッカ」)、追求するのが腰痛だったり、砂漠のマラソンだったりしても、どれもこれも面白いのは、やはり抑制の効いた文章の力なのだ。高野さんお得意のお笑い要素も、安易なエログロに流れないところが女性ファンも多い理由だろう。
「お笑い要素」はこの対談にもたっぷりあって、読みながらずいぶん笑った。あげればキリがないので二箇所だけ引用。
高野「俺は高校までは優等生というか、まじめで協調性があると言われていて、それがもうほとほとうんざりだというのもあったんだよね。その場に見合った行動を取るということが身に付いていて、今に至っているわけだけど」
角幡「え?」
高野「そうなんだよ。行く先々ですごく溶け込めるというのは、そういう能力があるからだと思うよ」
角幡「ああ、そうかもしれないですね。協調性を発揮する場所が社会と同調していないだけで」
高野「俺が(大学)5年生くらいのときに、マツドドンを探すとかいうやつがいたんだよ。千葉の松戸にマツドドンという謎の未知生物がいるそうで、『そんなもんいるわけねえだろ』って言ったら、『高野さんにそんなこと言われたくない』って言い合いになって(笑)」
角幡「そりゃそうだ(笑)」
高野「『そう言うならコンゴにだってムベンベなんかいるわけない』『松戸にいないという根拠はなんですか。説明してください』とか言われて困っちゃって。『常識で考えろ』って言い返したり(笑)」
他にも、「角幡さんは『鈍感力』があるから新聞記者色に染まらなかった(高野さんならつい適応してしまっただろう)」とか、「俺自身はやっぱり文章を書かないではいられないんだよね。それは、自分に欠けているものがあるということなんだよ」という高野さんの言葉には、なんだかしみじみ考えさせられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大好きなお二人、高野氏と角幡氏の早大探検部OB対談?!これは必読でしょう!
対談の中身は推して知るべし、お二人の著作でも知られる辺境探検(ただし、高野氏は「自分は変なところに行くのは好きだが危険は避けたい!だから探検しているつもりは全くない!」とのたまっておられる)の思い出話(?)から、探検部matter、物書きとしての矜持などなど、彼らの本を愛読している向きには、どれもこれもが舞台裏話でたいそう興味深い。
もちろん妙に笑える。
意外にも実は周到な準備で臨むのが高野氏で、行き当たりばったりなのが角幡氏、文化人類学的な興味の深い高野氏と秘境辺境人跡未踏そのものに惹かれる角幡氏、など、思いがけず二人の違いが浮き彫りに。
逆に、そういう地に行くことそのものが重要なのかと思いきや、それと同じくらいの比重で書くことも大きな目的の一つというのは両氏共通であった。
対談本文の面白さもさることながら、注目はそれぞれで書いているあとがき。
高野氏が角幡氏の名言「探検は土地の物語、冒険は人の物語」とか「ノンフィクションは事実を書き、小説は真実を書く」なんかを指して「昔の文学者か!」と持ち上げ(?)つつも「実はバカじゃないか」と大真面目に切り捨てたり、角幡氏が、世間と探検部の価値観の逆転を嘆いたり(嘆いてるかな…??)と、あとがきの面白さも格別。
探検部出身者に作家や写真家が多いという事実(本多勝一に始まり、西木正明、船戸与一、星野道夫など錚々たるメンツ。あの高山文彦も早大探検部出身だとは!)も興味深い。
また、探検を知る一冊として別コラム風に紹介されているコーナーでは、挙がっている5冊の本が全て、既読か読みたいと思っていた本で、改めて自分が探検冒険系の本が好きなことがわかった。道理で両氏が大好きな訳だ…。
この10年くらいに読んだ本の中で最も面白いと思っている『ピダハン』も挙がっていたし。
対談なだけに読むのもすいすい。楽しくてワハハと笑いながらお二人の魅力に再度取りつかれた私なのであった。
あ~面白かった。
余談。
高野氏が、ナウル共和国の話で本なんか書けんだろうと言っているけど…あるよね~これが。薄いけど、一冊は一冊。 -
早稲田大学探検部出身のノンフィクション作家、高野秀行氏と角幡唯介氏の対談集。
両氏の著書が大好きな私にとってはとても面白く読めた。
各テーマに沿って対談していく。その中でも「探検とはなんだ」についてがとても興味深かった。
冒険と探検との違いは何か。スポーツとの違いは。探検家とは何か。各々の考えを紐解いていくと、やはりその根底に探検部というのがある。探検部時代の話も面白くそれだけで本を出して欲しいくらいだ。
ほかにも、「テーマじゃなくて文章で勝負したい」についても興味深かったり両氏とも文章が読みやすく本自体が面白い。この話を聞いて納得した。
あとがきで、高野氏がもう2人で本を出すことはないと言っていたが、是非また対談してもらい出版して貰いたい。 -
探検家、ノンフィクション作家の高野秀行さんと角幡唯介さんの対談本。2人の探検のきっかけから持っていくもの、作品の内容についてなどが対談形式で語られる。
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敬愛する高野秀行と新進の冒険作家、角幡唯介の対談集です。二人は10歳違いの早稲田探検部出身で、時代は違えど探検部出身。さらに先輩に船戸与一がいるという強力布陣。すごいなあ探検部。登山家や文学者に対するコンプレックスの話が何度も出てきて結構意外。二人とも認められている作家なので我が道を行っているのかと思ったら、王道に対するなにくそ!という感情があるんですね。探検部という時点で大分道を外れているのでしょうが、成功してもちょっと大通りからは外れているあたりがいいですね。とっても好きです。
時々はさんでくる角幡氏の名言風の言葉がかっこいいのと、それに対してチクショーという感情を露わにする高野氏。やはり高野氏好きだなあ。 -
それを知ったからといって どうなるものではない
それを見たからといって どうなるものではない
それは聴いたからといって どうなるものではない
でも
それを知ったからこそ
それを見たからこそ
それを聴いたからこそ
自分の中の「容れ物」が
ぐぅんと 膨らんだ気がする
私たちができないことを
してくれる「探検家」がちゃんといる
そんな国に暮らしていることに
ひとまず 感謝
探検家が探検家であり続ける社会でありたい。 -
探検・冒険ライターであり、早大探検部の先輩後輩でもあるふたりの対談集。高野秀行の「謎の独立国家ソマリランド」を読んだとき、この人を動かしているのは間違えてもジャーナリストとしての使命感ではないな、と思ったが、やっぱり探検なんだな。だから悪いわけでも、良いわけでもないが。
ただし、二人の対談を読んで、なるほどだから二人は探検にこだわるんだ、と思うかは微妙。ガンダムオタクの対談集を読んだら、ガンダムの魅力が理解できる、わけではない。 -
ノンフィクションもお二人の作品も読んだことがなかったので、ちょっと内輪話を聞いているような感じがした。
お二人の著作のファンが読んたらもっと楽しめると思ったのと、なぜこの会談が設定されたのか前書きがあると入りやすかったと思う。 -
高野さんはと、角幡さんの対談形式の内容。
2人の話が面白く、さらさらさら〜と読んでしまった。
2人の掛け合いというか、テンポのよさ、2人の違いがしっかり出ている内容でした。
高野さんの本は好きで何冊か読んでいるが、角幡さんの本もぜひ読んでみたいと思った。
あと、探検を知る一冊ということで紹介してされている本たちも読んでみたい!!
高野さんの、交渉して自分のやりたいことを伝えていく。
それをしつこくやっていく。そうすると道は開ける、という言葉が心に残った!
第六章で、原稿を書くという話になっていて、この章は本を書くということ、どのように書くかということなど、2人の頭の中?の考え方がわかって特に興味深かった。