メリーランド

著者 :
  • 講談社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189392

作品紹介・あらすじ

「眠ると、夢の中でも溝口と二人で漫才をやっている」

 たまたま見に行った「南部芸能事務所」のお笑いライブに魅了され、芸人を志した新城は、事務所の研修生になった。コンビを組んだ溝口との厳しい稽古を経て、初舞台に立った二人に、社長から渡されたギャラは「1000円」。相方と分けて残った500円玉を握りしめて、新城はその使い道を考えるのだが──。

「神様に会うには、まだ早いです。オレはまだ何もできていません」

 芸の道と恋人。かつてのスターコンビの結末。ブサイク芸人のほのかな恋心。そして、ライバルコンビの出現……弱小プロダクション「南部芸能」に集まってくる、「いろんな人のいろんな人生」を、誰も書けない筆致で描く、連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 完全にファンになってしまいました。
    南部芸能事務所の芸人さんたちの。
    新城や溝口だけでなく、ナカノシマや津田ちゃんや
    スパイラルの2人やテネシー師匠。

    それと事務所の雰囲気を変化させた事務バイトの鹿島ちゃんや社長まで。
    みんなみんな、すっごく気になります。
    私は「そう思う人」寄りなので
    「そう思わない人」達が何かと気になるのでしょうか?


    ネタを見せられる訳ではないのに…畑野さんってすごい作家さんです。

    南部芸能事務所にかかわる人々の物語7編。

    『南部芸能事務所』の続編です。
    『南部芸能事務所』は停滞感というか、そこから動けない何か
    みたいなものがあり、重たいものが流れていましたが、
    『メリーランド』は確実に何かが動き出してます。

    1話1話に主人公がいて、その人の心情がつづられるのは
    『南部芸能事務所』と一緒なのですが
    会話文が多くなった気がしますし、テンポが感じられました。

    読み終わってすぐ、次回作をジリジリ待つ心境になる一冊です。

    事務所のライブデビューとコンビ名を決定した新城と溝口は、
    これからどんな風に化けていくんでしょうね。
    ナカノシマも変わりますね、きっと。

    今回は私の好きな保子師匠が、ちょっとしか登場しなかったのですが
    これからも健在でいただき、事務所内をピリッとさせてもらいたいです。

    できれば次回作に「シフト」の古淵さんを
    また登場させてもらいたいです。
    中野さんと恋愛に発展!なんてあったら素敵ですね~

  • 引き続き、新城溝口を応援。少しずつでも前進していっている感じが実に楽しい。
    インターバルの話しも出てくるとは思っていなかったが、連作短編の良さが活かされていて、色々な角度でこの世界を楽しめておもしろい。
    次巻も早速読もう思う。

  • “トリオ”の冒頭------
    小学校三年生か四年生くらいの時だったと思う。
    家に帰ったら、玄関マットが薄いグリーンのものに替わっていた。朝学校に行く時は黄色だった。

    「南部芸能事務所」の続編。
    新城と溝口の新人漫才コンビ二人とその周りにいる人々の出来事が綴られた7本の短編集。

    前作の「南部芸能事務所」に比べ、格段に完成度の高い作品。
    彼女の作品を読むのはこれで四作目だが、急激な進歩に驚くばかりだ。
    畑野智美、これから目が離せない作家になりつつある。
    それぞれの短編全てに深い味わいがあって、登場人物の心情の揺れ動き、葛藤と機微が、しっかりと伝わってくる。
    恋愛、漫才への思い、将来への不安、人間としての生き方など、柔らかな表現を駆使し、読者の胸をホロリとさせながら、心情に訴えてくる。
    新城も溝口も他の先輩や仲間たちも、様々な壁にぶつかりながら成長し、新しい道に進んでいく。
    別れるもの、去る者、彼らの思いを知るにつけ、「新天地に幸多かれ」と祈らずにはいられなくなる。
    若いうちは、人生は何度でもやり直しがきくのだから。


    いいねえ、“メリーランド”。
    ファンシーで、ダサいけど素敵な名前だ。
    これを選んだ、溝口の母親と鹿島ちゃんに拍手。
    二人の今後の活躍が楽しみだ。

    お薦め作品です。

    • なにぬねのんさん
      koshoujiさん、はじめまして。なにぬねのんと申します。

      koshoujiさんのレビューを拝見して、『南部芸能事務所』に続編が出て...
      koshoujiさん、はじめまして。なにぬねのんと申します。

      koshoujiさんのレビューを拝見して、『南部芸能事務所』に続編が出ていることを知りました。

      私も『メリーランド』の方がグイグイ読めて面白かったです。
      前作で新城と溝口がどうなるのか気になっていたのですが、
      今作でナカノシマも応援したくなりました。
      続編楽しみですね。レビュー本当にありがとうございました!
      2014/06/21
    • koshoujiさん
      なにぬねのんさん、初めまして。
      コメントありがとうございます。

      この「メリーランド」面白かったですね。
      いくらでも続編が出てきそう...
      なにぬねのんさん、初めまして。
      コメントありがとうございます。

      この「メリーランド」面白かったですね。
      いくらでも続編が出てきそうなので
      私も楽しみに待ちたいと思います。
      2014/06/21
  • 「南部芸能事務所」の第二弾。

    このシリーズの連続短編にもすっかり慣れました。

    短編の苦手な私だけど、
    このシリーズは気にならずに読めています。

    色んな人の色んな人生。
    色んな人の色んな思い。

    前作よりも、楽しさが増してるように思います。
    事務所のアットホーム加減が増したせいかな?

    この作品を読んで以降、
    芸人さんがテレビに出てると、

    この人達はどんな思いで芸人を目指して、
    売れるまでにどんな努力をして、
    どんな悩みがあって、
    今、どこにむかって走っているのだろう。

    そんな目で見てしまう。

  • 『南部芸能事務所』と『メリーランド』
    続けて読めたので、この世界に
    すっかりどっぷりハマってしまった。
    事務所の中でコーヒーをこぼし
    大騒ぎになっているところなんか
    みんな楽しそうなのが目に浮かぶようで
    あぁ、私もここで働きたいわーと
    切なくなるほど。

    個人的には映画館で働く古淵さんが
    気にいっている、お笑いなんてと
    冷めた目線で中野さんを見ながらも
    ついつい世話を焼いてしまうような
    素敵なキャラクターです。

  • 初めて畑野さんの本を読んだが、とっても楽しかった!
    前作を読んでいないが、楽しめた。
    登場人物、各々が魅力的で好感。自分も頑張ろうと前向きな気持ちにさせてくれる。
    この後の展開が楽しみ。次回作が出て欲しい。

  • 前作の南部芸能事務所、のときより面白く読めました。なんでだろ、格段に面白く感じたし、続きが気になる、早くも続きを楽しみにしてしまっている。
    新城と溝口のコンビが板についてきて、南部芸能事務所内でも気持ちの変化やら環境の変化が前作のときよりも大きく動いたからかな。
    コンビ名は、ん、か、濁点もしくはその両方がつくコンビ名が売れる。なるほど。確かに思いついた芸人たちはそれらがついていたなー。
    メリーランドの今後が楽しみです。
    スパイラルの2人がちょっと悲しかった。けど愛だなーとね。

  • 南部芸能事務所シリーズ、第二弾。
    お笑い芸人を目指してコンビを組みながら、なかなか研修生の立場を抜け出せない新城と溝口を中心に、さまざまなキャラクターの視点で、南部芸能事務所をめぐる人々を描いた連作短編集だ。

    全編を通して軽やかな作風なのだけれど、決して楽しいだけではなく悲しい顛末になる物語もあり、厳しい世界だなあと思う。

    新城と溝口が主役なんだろうけれど、それ以外のキャラクターたちも背景や個性が丁寧に描かれていて、各々の物語が際立っている。

    読んでいて特に面白いのは、語り手になる視点が芸人ばかりではなく、むしろその輪から少し外れた場所にいる人も混じること。
    今回もナカノシマの一人がアルバイトしている映画館の社員、という女性が登場して、彼女の物語と彼女の視点から見た「芸人を目指す人」の姿が描かれることによって、全体にメリハリが出るように思う。

    最後の最後になってこの本のタイトルが理解できるという自分の勘の鈍さに驚いた。なるほどな!

  • 南部芸能事務所シリーズ第2弾。
    前作よりさらに面白くなっていました。
    登場人物に入れこみ始めたからかも。

    単純に笑える話ではありません。
    それぞれが悩み葛藤する姿は、かなり切ない。
    終わってしまったスパイラルに泣かされました。

    新城と溝口と同じタイプの別の事務所の芸人佐倉と榎戸のインターバルの登場で、この先ももっと気になります。

    第3弾は即図書館に予約しました。
    今年になって読んだ本の中では、今はイチオシです。

    ところで、
    映画館で偽装学生証でおじさんが入館しようとしてバレて暴れたって話、どこかに出てきませんでしたか?
    うー、思い出せない。

  • シリーズ2作目。
    あぁ、そうか。このシリーズに惹かれるのはそれぞれの人生の変化の瞬間がとても鮮やかに描かれているからなんだな。それぞれのお話は短いのにとても丁寧に。
    見守りたくなる。次も楽しみ。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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