殺人出産

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062190466

作品紹介・あらすじ

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……。

感想・レビュー・書評

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  • 人々のために人を産むこと。そして殺すこと。
    世の中がそれを美しいとする世界


    どうしても人を殺したい人間は10人出産する。
    もしそれが、自分のきょうだいだったら?
    きょうだいが人を1人殺すために10人産むんだとしたら?
    その殺される1人が自分だとしたら?
    あなたはどう思う?どうする?

    主人公は姉の「だだ殺したい」という殺意を
    応援する。そんな中、1人の女性が現れる。
    その人は「こんな世の中は間違っている」という
    考えを持つ。ひたすら姉を否定する。姉は、
    その人を殺す。「かわいそうな人だと思ったから」
    主人公は姉と一緒になってその人を殺す。


    その人には秘密があった。

    ああ…
    だから、この世の中から必死で逃げていたのか。

  • 村田沙耶香さんワールド全開の短編集。
    収録作品は、『殺人出産』『トリプル』『清潔な結婚』『余命』の4つ。
    どの作品も今現在の常識や価値観に捉われない、近未来的(そういう未来が来るとは限らないけれど、あり得そうでちょっと怖い笑)な世界線のお話。

    『殺人出産』は10人産んだら一人殺せるという制度が導入された世界のお話。この発想力が村田沙耶香さんだなぁと思う。10人産むには約10年かかるわけで、その間殺したい人を"想い続ける"その執念は怖すぎる…。環が早紀子を選んだように偶発的なパターンもあるようだが、それはそれでめちゃくちゃ怖い。無差別殺人と同じじゃないか…。村田沙耶香さんの作品は、そんな角度から?!と思うような新しくて多様な価値観、概念のものが多いけれど、本作は鋭角すぎて怖さを感じてしまった。

    『トリプル』はその名の通り、3人1組の恋愛関係が主流になった世界線のお話。性描写のところは官能小説とも違い、描写が機械的ゆえにストレートで、読んでいてあまり心地よい感じはしなかった(汗)でも、こんな世界線は全然あり得るなと思った。

    『清潔な結婚』は性交渉を結婚生活から排除した夫婦が、子作りのためにクリーン・ブリードと言われる治療(直訳は清潔な繁殖)を受けるお話。セックスレスで悩む夫婦もいれば、二人のようにセックスはしたくないけれど子供は欲しいという悩みを抱える夫婦もいるわけで、夫婦の数だけ悩みがあるというのはその通りなのかもしれないなと思った。本作の治療はかなり過激的で、同じような悩みに対してもっと適切な治療方法あるんじゃないの??と思わずにはいられなかったけれど、こちらもあり得ない話ではなさそう。

    『余命』は自分で死期も死に方も選択できるようになった世界線のお話。これはもう全然あり得ると思う。というか、人の尊厳としてもっと早く受け入れられるべきものだと思う。たったの4ページの超短編だけれど、本作の中では一番気に入った作品でした。

    個人的に、村田沙耶香さんの作品は、めちゃくちゃ刺さるとか、誰かにおすすめしたいという感じではないけれど、なんとなく新作が出たら気にはなってしまい、読んでおきたい、という作品が多いです。合う合わないが分かれやすい作品でもあるかなと思います。なので、同じように、気にはなる…という方にはおすすめです。

  •  題名のインパクトが強く、手に取りました。「コンビニ人間」も面白かったので他のも読みたいと思ってこれを、、、

     10人子供を産めば1人殺したい人を殺せる制度が成立した世界でのお話です。内容も衝撃的なものが多くとても印象に残る一冊です。

     10人子供を産むことは自分の身体にも負担があるので、それだけ自分を犠牲にしてまで殺したい人がいるのかと思いました。早く産めば早く殺せるという点でも次々に妊娠、出産していくところが少し怖くもありましたが、理にかなってるようにも思いました。

  • 面白かった。どのお話しも自分が想像したことないような世界観だった。特に殺人出産はすごく印象に残った。

  • はじめて読んだ作家さんでした。本当ならありえない世界感なのに本当にこれが常識になってしまうような気がしてしまい引きこまれていきました。
    他の作品も是非読んでみたいと思いました!

  • 読みやすい文章だからサラサラ読めた。テーマが人間の性と死という重いものなはずなのに、こんなにサラサラ読まされてしまうと、大したことの無いもののように思えるから不思議。
    殺人出産もトリプルも清潔な結婚、余命も読み終わると うわぁ〜とどんよりとした気持ちにさせられて…この薄気持ち悪さはどうしたものだろう。

  • 村田さんの小説は世界観が面白いなと思った。
    「コンビニ人間」でもそうだが、音の描写が多く、それがなぜなのか少し引っかかった。
    生きている中で何が正しく何がそうでないのか、何を軸に生きるのかは社会の流れや動きが関係しているんだなと思わざるを得なかった。読んでいて、モヤモヤするというか少し気持ちが悪いというか、そのように感じた部分も今生きている常識をもとに判断しているからなのだろう。普段の生活とは違いすぎて、だが遠すぎなくて、それゆえ面白い。

  • 「産み人」となり、10人産めば1人殺してもいい…

    「殺人出産制度」なんて、村田沙耶香先生はよく思いつくなぁと思ってしまう。命を奪うものが、命を作る役目を担う。奇抜な発想に短いストーリーだけどのめり込んで読んでしまった。

  • 村田沙耶香さんの作品は2作目、1作目は「消滅世界」でしたので今回免疫ができていたのか、この世界観に驚きはしませんでしたが…ただ、こんな世の中になったらどうしよう…と、また怖くなりました!10人生めば1人殺してもいい…そんな世の中になったとしたら…私は誰を殺すのだろうか…なんて漠然と考えさせられちゃうような作品でした。

  • 10人産んだら1人殺せる世界、3人で交際するのが流行る世界、自ら命を経たないとと死なない世界、等とんでもない設定のお話が4つ。恐ろしい恐ろしいと思いながらもつい先を読み進めてしまった。
    今現在常識として考えられていることでも、100年後その常識は常識ではないかもしれない、ということ。確かにその通りだよなあ。

    村田沙耶香さん著作を読んだのは「コンビニ人間」に次いでおそらく2冊目だけど、どちらも「よくそんな話思いつくな〜」というとても個性的なものという印象。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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