天人 深代惇郎と新聞の時代

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著者 : 後藤正治
  • 講談社 (2014年10月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062191821

天人 深代惇郎と新聞の時代の感想・レビュー・書評

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  • 多分、彼以上の名文家は今後も出て来ないだろう。朝日新聞の
    朝刊コラム「天声人語」の担当はわずか3年弱。それでも、彼の
    「天声人語」は今でも一部、熱烈な支持者がいる。

    私もそのひとりだ。残念ながら執筆中にリアルタイムで読むことは
    叶わなかった。私自身が新聞のコラムを読むには年齢も頭の出来も
    幼過ぎた。

    深代惇郎。朝日新聞社きっての、否、新聞記者きっての名文家との
    呼び名は不動だ。深代天声人語はまとめて書籍にもなっているので
    何度も繰り返し読んでいる。だが、評伝となるとこれまでなかった。

    46歳で急性骨髄性白血病で世を去った、名文家の人となりを、ずっと
    知りたかったので迷わずに本書を購入したのだが、あてが外れた。

    深代惇郎の人物像を、彼を知る先輩・同僚・後輩に取材して綴ろう
    としているのだが、それがアダになっている感がある。取材対象者
    の来歴をあまりにも詳細に記し過ぎて、深代惇郎の姿が消えてしまう
    こともしばしばだった。

    「天声人語」以前に朝日新聞日曜版の「世界名作の旅」も担当して
    る深代であるが、「天声人語」以外の彼の仕事に関する記述の少な
    さも気になった。

    勿体ないと思う。深代惇郎が存命なら80代だ。その彼を直接知ってい
    る人たちも軒並み高齢になっているので、話を引き出せるぎりぎりの
    タイミングだったのではないか。副題に「深代惇郎と新聞の時代」と
    あるように、ひとりの新聞記者を中心に据えて新聞が信頼できる情報
    源であった時代をも描こうとしたのだろう。

    盛り込み過ぎだったのではないかな。全体的に散漫さを感じて仕方
    ない。

    これであったなら、読売新聞に在籍し深代と交流のあった本田靖春の
    『警察(サツ)回り』『我、拗ね者として生涯を閉ず』を再読した
    方が良かった。本書でもこの2作品からの引用が多かった。失礼なが
    ら時の文と本田氏の作品からの引用部分のクオリティの違いを実感
    した。

    読了後、大いに欲求不満である。しょうがない。深作天声人語の文庫
    が出ているので、そっちを読むか。

    あんまり悔しいので、本書でも引用されている深代天声人語の一部を
    引き写す。

    「きょうは、このコラム「天声人語」の満七十歳の誕生日にあたる。
    いささか手前ミソながら、それについての一文を供することを許され
    たい▼大阪朝日新聞にお目見えしたのは明治三十七年一月五日、日露
    戦争の一カ月前だった。鳥居素川の筆による第一回は、主戦論を述べ
    て威勢がよい。「政府では成るべく向ふから先に火ぶたを切らせ様と
    して居るらしいが、ドンドンやって早く片づけるが得策」といってる
    ▼その後は大正デモクラシーの旗を掲げたが、日米開戦前年に「有題
    無題」、戦局ただならぬ昭和十八年に「神風賦」と改題された。「天
    声人語」が復活したのは、終戦直後の二十年九月。したがって七十年
    の歴史も、五年間は他の表題だった。復活一回には「何故戦はねばな
    らなかったか、深き想ひを致さねばならぬ」との反省を書いている▼
    日露戦争の主戦論で登場し、太平洋戦争の反省で復活する間に、近代
    日本の歴史がそのまま横たわっている。草創期には西村天囚、中野正
    剛、長谷川如是閑らの論客が交代で筆をとったが、永井瓢斎が専念す
    るようになって紙価は高まり、西日本に「天声人語の会」が生まれる
    ほどだった。戦後は荒垣秀雄氏が十八年書きつづけた▼二十二年の中
    秋の名月には「来年の今月今夜は国民の涙ではなく、モクモクと出る
    煙突の煙で、名月を思い切り曇らせてみたい」とある。焼け野原の壕
    舎で月を見る人の多い時代だった。その十五年後、三十七年十二月に
    は「東京や大阪の空は、ドジョウの住むドブのようだ」といい、「青
    空をとりもどせ」と書かねばならなかった▼「天声人語」は「天に声
    あり、人をして語らしむ」の意。しばしばこの欄を、人を導く「天の
    声」であるべしといわれる方がいるが、本意ではない・民の言葉を天
    の声とせよ、というのが先人の心であったが、その至らざるの嘆きは
    つきない。

    「民の言葉を天の声とせよ」。深作天声人語は、これに尽きる。

  • 2016年9月25日読了

  • 天声人語の著者の中で最も話題になった深代惇郎の物語だが、彼の生い立ちをつぶさに取り上げている.朝日新聞の記者だからエリートだが、深代惇郎はそれを乗り越えて活躍した感じだ.人に感動を与える文章を書くには、様々な経験を自分のものとする感性が必要なのだろう.

  • 良書。再読する

  • 深代淳郎の生い立ち、

  •  すべてのあゆみを記していなくても、伝わってくるものは、たくさんあろう。
     かつては、学生街の古書店ならば、いつも並んでいた彼の名を題した『天声人語』。自分も、たしか持っていたが、いつのまにか本棚から姿を消した。
     深代さんが主人公の一冊ではあるが、ここに描かれているのは、20世紀の良質の知性を、敬意をもって共有できていた、素直な時代の一面だ。

  • 天声人語を書いていた深代惇郎の歩みをこれまでの著作と周囲の人々とのインタビューにより書かれた本です。
    深代惇郎の本に出合ったのは、学生の頃。その文章と視野の広さに憧れ、この本に出てくる本を探し、読んだものです。今回は、その追体験を期待しましたが、人となりを感じるにはエピソードが少なかったのが残念。亡くなってから40年近くたっているからしょうがないのですが。今の新聞を見て、彼がどのような感想を持つか聞きたかったかな。

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朝日新聞の「天声人語」といえば深代惇郎――そう思い浮かべる人も多いはずだ。名コラムニストとして名を馳せた深代惇郎だったが、実際に「天声人語」を執筆したのはわずか3年弱だった。

46年の短い生涯を、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家が丹念な取材から描いた人物ノンフィクション。

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