- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062191937
作品紹介・あらすじ
「乃美さん、わたしは卑怯な男だ」
明治十年、死の床についた長州の英雄・木戸孝允こと桂小五郎が、かつての同僚に「あの事件」の真実を語り始めた――「池田屋事件」。事件後、日本は「明治」という近代国家に向かって急激に加速していく。池田屋で新選組に斬られ、志半ばにして散っていった各藩の「志士」たち。福岡祐次郎、北添佶麿、宮部鼎蔵、吉田稔麿……。吉田松陰や坂本龍馬といった「熱源」の周囲で懸命に生き、日本を変えようとした男たちの生き様と散り際を描く。
幕末とは、志士とは、維新とは――日本を動かしたあの「熱」はなんだったのか。
最注目の歴史作家が初めて幕末京都に挑んだ連作長篇。
感想・レビュー・書評
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池田屋事件をそこにいたいろんな人の立場から語るという面白い構成だった。後半は、少し飽きた。桂小五郎については、維新の時、薩摩勢に比べて地味なのであまり知らなかったが、やっぱりこんなもんかとい感じだった。
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幕末、池田屋にて倒幕計画を企む志士たちを新撰組が襲撃。長州藩などはこの事件によって貴重な人材を失うが、逆に日本中の志士たちが立ち上がり、皮肉にも倒幕運動は加速する。
その池田屋で集まり、命を失った若き志士たちを主人公にした連作短編集。彼らは土方歳三や坂本龍馬、吉田松陰などの英雄たちと出会い、オーラを浴びて、名を残すことなく国のために堂々と命を捨てた。
そんな無名な彼らの死が積み上げられた末、最後に登場するのは、明治維新の英雄、桂小五郎。数少ない池田屋事件での生き残りであった彼は木戸孝允と名を変え、その死の直前に当時のことを語る。
武士ならば国のために、友のために死ぬことは当たり前。桂のように国や故郷を思っているからこそ生きる、という考え方は恥だった。が、そんな生き残った者たちがいたから日本は生き残った、と思いたい。
史実では池田屋事件時、桂小五郎がどこにいたのかはっきりしていないらしい。 -
幕末の池田屋事件を題材とした連作短編集。
若い有能な幕末の志士の多くが命を落とす事になるが、それぞれの思惑が同じくしていた訳でもなく、特に運よくその場にいなかったとされ、池田屋事件には、重く口を閉ざしていた桂小五郎など、本当はどうなのか、筆者は問いかける。 -
池田屋事件を関係者其々の目線で物語が進み、最後の桂小五郎と乃美織江の人間臭さに読み応える。
伊藤潤の小説は時代背景に詳しくなくても楽しめるし、登場人物がみんな濃い。 -
福岡裕次郎、北添佶摩、宮部鼎蔵、吉田稔麿、乃美織江。彼ら五人が辿った人生を、池田屋事件を中心として描く「池田屋乱刃」。
幕末を生き残ったものが勝者であり、明治の日本に貢献した人が褒め称えられるのが歴史の判断というものかもしれませんが、志半ばで倒れた人も、敗者として歴史に貢献したのだ、という感傷を強く思わせます。
感傷と思ってしまうのは、乃美織江の第五章が、伝えられた歴史とは違う事実を抱えて生き残った人間を描いているものだから。
どれだけ強い意志を持ち、どれだけ崇高な理想を掲げていても、それを成し遂げる前に倒れてしまっては意味がないのではないか、と思ってしまう。
生き残ったものは、途中で倒れたものの意思を引き継ぎ、完遂へと繋げてゆく。その中で背負ってしまったものが、仮初の栄誉で重荷になったとしても、死ぬまで背負うしないのかな、と感じました。
死してもなお志を残し生き残ったものが引き継いでゆく、ということから感じる美学。それよりも、生き残ってしまったから、引き継がざるを得なかったという重圧、後悔のような後味の悪さが少しあるか。
その感情に潰されず、最後まで事実を守り抜いた精神性を賞賛すべきなのだろうな。これも道半ばで死んだ者の志を引き継ぎ生きてゆく、ということなのかもしれない。 -
1864年の長州藩、土佐藩らの志士による御所放火、天皇動座計画の池田屋での寄り合いを、新選組が襲撃した、いわゆる池田屋事件に至る経緯を、関わる5人それぞれの視点から、5編の物語で構成している。
セレクトされた5人は、絶妙に世間一般的には名前の知られていない人物(いわゆる西郷とか大久保とか龍馬とかと比べて)と思われるが、それぞれがそれぞれの志を持って、維新に関わっており、同じ事件に関わりつつも、それぞれの経緯、思いが違っていて興味深い。明治維新のひとつの側面を知るのに、わかりやすい著書だと思う。 -
H30.2.17-H30.9.9
(感想)
えらく時間がかかりました…
池田屋事件をめぐるオムニバス形式の歴史小説。
池田屋事件といえば新選組が思い浮かぶが、この小説では、そこで切られた長州・土佐の人たちを主人公として、オムニバスで綴る。
そして最終章、桂小五郎の独白で、物語をうまく締めている。 -
幕末、池田屋にまつわるショートストーリー集。
やっばり新撰組の間者であった男が志士の熱気に触れ、志士を助けに走るという話が良かったね。 -
男ってさ、すーぐ周りの「熱」にヤラれるよね。
馬鹿だなぁ。
馬鹿って切ないくらいに愛おしいなぁ。 -
池田屋事件を中心に、討死した者、逃げた者、遅れて来た者、助けに行かなかった者など、人物にスポットを当てて描き出す。
さて、自分なら、どうしていたか。