あなたは、誰かの大切な人

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062192958

作品紹介・あらすじ

咲子が訪れたのは、メキシコを代表する建築家、ルイス・バラガンの邸。かつてのビジネスパートナー、青柳君が見たがっていた建物。いっしょにいるつもりになって、一人でやって来たのだ。咲子が大手都市開発企業に勤めていたころ、とあるプロジェクトで、設計士の彼と出会った。その後二人とも独立して、都市開発建築事務所を共同で立ち上げたが、5年前に彼は鹿児島へ引っ越していった。彼はそのちょっと前に目を患っていた。久しぶりに会った彼の視力は失われようとしていた。青柳君の視力があるうちに、けど彼の代わりに、咲子はバラガン邸の中に足を踏み入れた。──『皿の上の孤独』を含む、六つの小さな幸福を描いた短編集。

感想・レビュー・書評

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  • マハさんの6つの短編集。ほっこりしたりちょっとウルっときてしまうようなお話しばかりでした。
    芸術家やアート作品、建築物やトルコ、スペインなどの外国の地名が出てきたりしたので実際にGoogleで作品や建築物を観ながら読んでみました。
    短編集だったので読みやすかったです。

  • 6つの小さな幸福を読んで、本当に幸せな気持ちになった。
    建築、絵画、お皿と美術、芸術が随所に散りばめられている。それがマハさんの日常であり、経験なのだろう。最初は敷居が高かった芸術が少しずつ少しずつ馴染みのものになってきた。それもこれもマハさんのおかげ。
    一番好きなのは「無用の人」
    父親の悲哀に自己投影してしまう。
    「窓の鍵を開け、磨りガラスを、、、むせかえるように満開の桜が、一枚の絵画になって現れた。」
    この瞬間、目の前に希望の光がさしてきた。
    自分のこれからを照らすように。

    毎日を一日一日しぶとく生きていきたい。

  • わかっているくせに、
    いつも確認しながら読んでしまう。

    マハさんの物語は、いつもあたたかい。

    それはもうじんわりな温度で包まれる短編6篇。

    5篇目の『波打ち際のふたり』を読んでいて
    あ、本当はこれを待っていたんだと
    ふと気がついた。

    この物語の登場人物のハグのように、
    絶妙にマハさんからかけてもらえる
    『イケるやろ』

    気が付けば、どの物語にも
    マハさんの『イケるやろ』がさりげなく入ってる!

    そうですね。もう少し、もうちょっぴり
    イケそうな気がしてきました。

    ポンポンと優しく肩をたたいてもらえる一冊です。

    …難しそうではありますが…
    岡倉天心の『茶の本』。いつか挑戦してみます。

  • 冒頭のお話「最後の伝言」がよかった。
    まさに髪結いの亭主。
    古今東西だめんずは髪結いの亭主になるって相場がきまっているのだろうか。

    男がダメな女を囲っても専業主婦と言う立派な名前がつく。
    でも逆だと世間の目が厳しい。
    でも良いじゃないかと思う。
    経済力のある女が色男を囲ったって。

    うん、よかった。よかった。
    「ラストダンスは私に」ってこんな歌詞なんだ、ふむふむ。
    まいったな、いい曲だな。

    マハさんの小説、狙ってる感じが鼻について苦手になってきた。
    でも、短編でさらっと良い気分にさせてくれるならそれはそれでいいのかも。
    人気が出るの分かるね。

  • タイトルがとても魅かれる。

    どの短編も、しんみりとしていて、温かく、心にしみた。
    たくさんのアートや芸術にも触れられて、満足な読後感。

    「最後の伝言」
    母が、髪結いの亭主そのままの父をどれだけ愛していたか!
    越路吹雪の歌声が脳内で響き渡った。

    「月夜のアボカド」
    メキシコ料理も、どれもこれも、美味しそう!
    エスターの話に涙があふれた。

    「無用の人」
    人生最大の父からの誕生日プレゼントだと思った。
    岡倉天心の「茶の本」読んでみたい。

    「緑陰のマナ」
    亡くなった母のお手製の梅は、まさに最高のマナ。

    「波打ち際のふたり」
    家族でも恋人でもない、咲子と青柳君の温かい触れ合いがとても心地よかった。
    メキシコの建築物、ルイス・バラガン邸、ネットで画像を見た。アートそのもの。

  • 原田マハの短編集、それぞれ味わい深い作品だけど「無用の人」と「緑陰のマナ」がよかった。前者はいかにも日本的な味わいで寡黙で全く目立たない父親がまさに日本茶みたいな存在だったと知ることになる誕生日の贈り物、後者は異文化のイスタンブールに紀行文をものする為2度目の訪問をしまるで神からの授かり物みたいな食物を介した人の縁を描く。どれも香り高い珈琲のようでした。

    • ortieortieさん
      はじめまして。
      いいねとフォローありがとうございます。
      あなたは誰かの大切な人、わたしも一読しています。「日本茶みたいな存在だった」確か...
      はじめまして。
      いいねとフォローありがとうございます。
      あなたは誰かの大切な人、わたしも一読しています。「日本茶みたいな存在だった」確かに!おもしろいですね。また再読したくなりました。レビュー、楽しみにしています。
      2018/02/08
  • 存在の不在は色濃く残るものかと

    「月夜のアボカド」
    「波打ち際のふたり」
    この二作品がお気に入り*

    みんな、だれかの大切なひとで
    繰り返される平穏な日々の中に
    それはあるというのに、
    普段は見えないし、気付くことも
    難しい…
    大切なものはずっと、たくさん、、
    見えるわけじゃない。
    自分の今のイメージなら
    雨降りの後、お日様の光に照らされて
    キラキラひかる蜘蛛の糸のような。


    幸せな時を刻むアルバムをみんな持ってる
    ただ、それだけじゃない
    撮ることすら許されなかった
    写真が 誰の心にもある
    苦味のない人生なんて、きっとないよ
    それがまるごとの自分

    そんなことを感じられた一冊。

  • 題名の通りを題材にした6つの短編集。

    主人公は全て、私と同じ中高年世代の女性で、各々の人生の中での、夫婦だったり、恩人だったり、同性の友達、異性の友達、いろんな立場の「大切な人」への想いを垣間見れる。

    どの短編も、「共に過ごした時間の長さ」よりも、僅かでも「大切な時間を共有して過ごした刹那」がとても優しく心に染みいる。

    このような貴重な刹那は、かけがえのない経験であり、生きる支えとなる。
    「今日を生きた。だから、明日も生きよう」

    メキシコだったり、イスタンブールだったり、ちょうど今、他でも自分とリンクする国が出てきて、とても興味深かった。

    髪結いの亭主、トルコの春巻き、女友達との赤穂温泉、建築家ルイス・バラガン邸と同志。
    読んでて、私ももうこんな歳になってしまったのだなぁってつくづく思う。

  • やっぱりマハさんの話は心に染みる。
    どんな人にもドラマがあり、なにがあっても穏やかに人生を生きていく。そんな話。

  • 最後の伝言
    色男の父に対して亡き母が最期に贈るものとは…。
    月夜のアボカド
    たった四年の結婚生活だったけど、とても幸せだった。
    無用の人
    亡くなった父からの最期のプレゼントは、父の本。
    緑陰のマナ
    母が亡き後、家族がバラバラだと思ってたけど、違った。
    波打ち際のふたり
    ハグとナガラ。年老いた母のことを考える。
    皿の上の孤独
    メキシコの建築物、ルイス・バラガン邸。

    たまに美術に関する話もあるけど、人情に溢れた話が
    多かったよー。
    読みやすかったー。
    個人的には、最後の伝言が好きだったなぁー。
    あと、波打ち際のふたり。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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