雨の裾

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 85
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195218

作品紹介・あらすじ

噪がしい徒然
若いころ熱心に読んだ本を読み返す男。文字を追う眼に映る、暮れかけた路地から庭をのぞきこむ人影。
踏切り
踏切は暗かった──。警報器が鳴り出したとき、前のほうにただならぬものを目にした。男の背後に忍び寄り、いきなり抱き止めた。
春の坂道
坂道をよたよとと、杖にでもすがるようにのぼっていると、うしろからぞろぞろと若いのがついてくる。俺のうしろに以前の俺が続く。その以前の俺のうしろからそのまた以前の俺が続く。
夜明けの枕
三十をすぎて司法試験を目指した男。アパートにこもり、一緒に暮らす女が働きに出て生活を支えた。
ほか全8篇

感想・レビュー・書評

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  • 久しく触れていなかった、上質な文学。スマホもネットも登場しないどころか、穏やかで落ち着きのある文章にはカタカナも少ない。
    安易な言葉と早いテンポの刺激的なストーリーが氾濫する今日、ときにはこういう大御所の作品に触れてバランスを取ることも大事だと気づかされた。

    8話の短編は、どれも死が身近にある。現実と幻想とが入り交じり、時間も空間も行き来して、ときには怪談のような異世界に紛れ込んだよう。なのに、地に足が着いていて、味わい深い随筆のようにも思えるから不思議だ。

    学生時代、芥川賞受賞作の「杳子」を読んで心が揺さぶられたことを思い出す。精神を病んだ女性を描いた作品を理解した自分が、少し大人になったような気がして、ちょっとうれしかったものだった。

  • 人気のないはずの道で、人の気配がする。ふと振り向くと、背後に女性が立っている。ある人から聞いた話が紹介されるけれど、当人は「とうに亡くなっている」。
    古井由吉の小説ではもはやおなじみだけれど、そういえば、怪談としても読める。とはいえ、異界からやってくる者たちを描いているわけではなく、生者と同等に死者(めいたもの)が互いに異なる次元に存在し、ふとした拍子に両者に通路ができる、それを描くのがほんとうに巧い。あるいは巧いというより、書かれているのは、ひょっとすると体験かもしれない。

  •  装丁家、菊池信義を撮ったドキュメンタリー映画「つつんで、ひらいて」で、この本の装丁が出来上がるプロセスが丁寧に映し出されていました。
     「この本をもう一度手に取って、触りながら、読み返したい。」そんな感じを持ちながら、作家と作品の「幸福」に思い致す体験でした。
     映画の感想はブログに書きました。お読みいただければ嬉しい。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202001230001/

  • 「雨の裾」(古井由吉)を読んだ。私には『凄い!』としか言いようがないくらいに凄い。
    とりわけ「夜明けの枕」「雨の裾」は『凄い!』
    あまりに深くこれらに思いを巡らせすぎていたため、あっ!と気がついたら家の前を通り過ぎたまま運転していた。(実話)
    と、そのくらい魂を揺さぶられている。

  • 読みごたえはあるが、内容がなかなか頭に入ってこない。

  • 躁がしい徒然
    死者の眠りに
    踏切り
    春の坂道
    夜明けの枕
    雨の裾
    虫の音寒き
    冬至まで

  • 帯借りしてみたけど、さらっと流し読み
    60代くらいになったら、読むのにちょうどいいかんじかも

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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