双頭の蜥蜴

著者 :
  • 講談社
3.30
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本棚登録 : 166
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196109

作品紹介・あらすじ

ニューヨークで生まれ育ったシエラは、幼いころに兄を亡くし、母親との確執に苦しんでいる孤独な少女だった。唯一の友達だったアナベルも交通事故で失った彼女は、鬱々とした思いでマンハッタンの街を歩いていた。そこに不思議な老婆が現れ、トルコ石をシエラに渡す。シエラは石に導かれ、異世界・ヴェレに行き、そこで自分が世界を救いたる存在、<石の司>であることを知る。
自分が唯一の存在であることを知り、自立する勇気を得ていくまでの、少女の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 実の母への憎しみと、罪悪感に葛藤するシエラが、異世界ヴェレスを救う「石の司」として迎えられ、試練を経て成長していく。

    ストーリーの初めに、孤独だったシエラを支えていた親友アナベルが、事故死した後もずっと、シエラの心に活きいきと語りかけ、励まし続けるのが印象的。
    乾石さんの作品としては初めて、現代世界と異世界を往還するストーリー。

    いつもながら、色彩感覚の鮮やかな描写が美しい。
    パワーストーンの力を武器にするのは当たり前だけど、宝石職人達の祈りで、力ある石に、さらに強力な力が宿るというのが面白いと思った。


    雑誌に掲載されたものをそのまま並べたせいか、一冊のストーリーとしてのまとまりはもうひとつ?

  • 2.8

  • 一応ファンタジーですが
    剣や魔法がやたら出てくる世界観ではなく
    登場人物はこの世界を生きる少女です。

    ただし彼女は理不尽な思いをし続けていました。
    母親のサンドバッグとして
    扱われていたのです。

    そんな思いをしていた彼女が出会ったのは
    一つの石。
    そこから彼女は異世界へと
    旅立っていくのです。

    なんだろう、似たような思いをしたからかな。
    すごく突き刺さるの。
    そして悪として描かれているもの。
    これってなくならないものを体現しているの。

    ただね…
    まだこの世界は捨てたもんじゃないと思うのよ。

  • 長らく積んでいた。気が付けば色んな出版社から出てるなあ。

    著者には珍しい異世界もののファンタジー。異世界そのものが物語世界ではなく、現実の現代世界と異世界が平行に存在する物語世界。著者といえば前者のハイ・ファンタジーという認識だから、のっけのニューヨークの情景からなかなか新鮮。ちなみにナルニア型かと思いきや、世界間の往還はもう少しだけ頻繁だった。シエラの成長も、それが元居た暮らしの中に活きてくるのも、少しずつ積み重ねる形をとっているあたりにいい手ごたえがある。
    自分の中の闇を認め、御すること。毎度お馴染みのテーマのドラマは少々ダイジェスト気味。ヴェレスの世界が狭いというか、余白が多く感じられたからかも。シエラの親友、オタクのアナベルが「異世界もの」の理解を助けているのも、シエラにとっては親切でありつつちょっと軽薄。良くも悪くもライトなお味。
    鉱物、宝石の光、色、音、自然の交歓豊かな描写はさすが素敵。鉱物図鑑が欲しくなってしまった。

  • 冒頭数ページを読んで、ネイティブアメリカン絡みの話かな?と思ったが、意外にというか異世界ファンタジーものだった。貴石や鉱物が好きなのでそちらの要素が嬉しい。

  • 『夜の写本師』から始まるシリーズが気に入ったので、未読本を検索して古書で買ったが、古書代に相応の感じ

  • ニューヨークで生まれ育ったシエラは、幼いころに兄を亡くし、母親との確執に苦しんでいる孤独な少女だった。唯一の友達だったアナベルも交通事故で失った彼女は、鬱々とした思いでマンハッタンの街を歩いていた。そこに不思議な老婆が現れ、トルコ石をシエラに渡す。シエラは石に導かれ、異世界・ヴェレに行き、そこで自分が世界を救いたる存在、<石の司>であることを知る。
    自分が唯一の存在であることを知り、自立する勇気を得ていくまでの、少女の物語。

  • 初めての著者。
    苦難の少女がファンタジーの世界を通して成長していく。
    宝石?石?という軸が、非常にきらびやかで読みながら映像化されていくようでした。

  • シエラ・リーは家庭で問題を抱えていた。彼女の母親が彼女を憎んでいるのだ。兄が浴槽でなくなったことを兄を見ていなかったシエラのせいだという。父も兄弟も母から逃げている。シエラも逃げ出したかった。そんなときネイティブアメリカンのおばあさんに出会った。彼女からトルコ石を買ったシエラは、おばあさんからあんたは「石の司」だと言われる。公園から通路に飛び出したところで自転車にぶつかった。気が付いたらそこはニューヨークじゃなかった。そこはヴェレスだった。

  • 母にいらない子など言われ続けて育ってきたシエラが自分の境遇や憎しみなどと立ち向かい成長していく話。

    楽な方向にいきたくなるのはすごくよくわかるし、わざわざ苦しい方向に進む勇気はわたしにはないなと思うので、シエラが羨ましいです。
    何度も何度も誘惑されながらもいろんなひとに支えられて最後は見事に閉じることができ、イオーロともときどき会えてハッピーエンドでよかった。いずれは母と対峙するときがくるけどここまで戦ってきたシエラなら乗り越えられますね。

    欲をいえば、イオーロとの関係を後日談でもう少し読みたかったような。文庫になるときは付けてくれたらうれしいです。

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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