驚きの皮膚

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196130

作品紹介・あらすじ

120万年前、体毛を失って身体中の皮膚をさらしてから、人間の脳は大きくなりました。著者は、人間の言語の獲得にも皮膚感覚が関与していたと考えています。そして、人間の皮膚感覚にはふだん私たちが知らない驚きの能力がたくさんあります。皮膚は「見ている」「聴いている」「味わっている」「考えている」「予知する」……。本書ではそれらを国内外のさまざまな興味深い実験とともに紹介します。一例を挙げればこんな実験。一人の被験者にABCD四つの山に伏せられたカードを引かせます。カードには、いくらもらえる、いくら支払う、という指示が書かれています。100枚引いたところでゲームは終了しますが、多くの被験者は80枚くらいの段階で、どの山のカードが支払いリスクが高いか気づきます。ところが、同時に皮膚の電気変化を調べると50枚くらいでリスクの高い山のカードを引くときに「無意識」の電気変化が現れるのです。つまり、皮膚は脳より先にリスクを「予知している」ことになります。
本書は、そうした文字通り「驚きの皮膚」感覚を検証するだけでなく、その皮膚感覚のおかげで大きくなった脳が「意識」を司り、文明を創り、さまざまな社会システムを生み出し、今、その社会システムゆえに、時に個人の自由が奪われたり、あるいは生命が脅かされている現状に警鐘を鳴らします。
やがて著者の筆は、システムが複雑巨大化する中で、美術、音楽、文学など、芸術の世界で、皮膚感覚という原初の本能への回帰が、人間一人一人の生きる意味を問うていることにまで伸びていきます。
ゴッホ、マーラー、村上春樹をはじめ、多くの実例を引いた著者のロマンチシズム溢れる文章は、単なる科学読み物の域を超えて、多くの読者の知的好奇心を刺激することでしょう。

感想・レビュー・書評

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  • 皮膚っていったい何者?
    私たちの身体を覆っている皮膚。
    実は人体で最大の臓器であり、私たちと外界をつなぐ大事な境界の役割を担っている陰の立役者。
    普段私たちの意識には表れていないけれど、音や色を感じるなど知能を持っている!?
    そんな皮膚の驚くべき存在について、知る事が出来ます。この本を読んだ後には、様々なモノに触れたくなるかもしれません。

  • 皮膚について色々な観点からみて記載されている。
    ただ皮膚だけの勉強ではなく皮膚の能力やつながりについても学べる本。

  • 皮膚と脳は会社みたいなもの、という話にほほうと思う。
    皮膚感覚ってすごい。

  • 美容的にも、触れるというセラピストとしての側面からも再読したい本。

  • 8年前初期研修医時の形成外科指導医に課題図書として出された「皮膚は考える」以来に傳田さんの本を読みました。皮膚の持つ能力は凄い。触覚だけではなく光も音も感じている。ただの境界ではないのですよね。本でも話されていたように、今は視覚と聴覚での情報が過多な状態。そんな時代だからこそ、皮膚で感じることを大事にしないといけないなと感じました。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784062196130

  • この著者の本はほとんど全部読んでいるが、今回は少々アプローチが違っている。
    テーマは「システム」
    皮膚という視点から身体の、社会の、世界のシステムを考察するという話はなかなか面白かった。
    とはいえ範疇が広がった分だけ、各分野の専門書に比べるとやや物足りなさもある。
    それでもこの著者の本にはハズレはないです。
    「感覚」と「知覚」の違いに関しては非常に興味深かったです。

  • 前半では、人間の皮膚が単なる界面ではなく、「環境の情報を感知し、ある程度の情報処理を行い、さらにそれに基づいて、適切な指令を全身、そしてこころにまで及ぼしうる」機能を持った境界であると説く。つまり、この境界には知能が存在しているのだ。さらに後半では、皮膚感覚から得られる膨大な情報を、意識や無意識、システムと対比させながら、いかに私たちの全身や情動に多大な影響を及ぼしているかを解説し、現代社会が言語を中心とする視聴覚情報に偏りすぎており、システムから個を救い出す切り札としての皮膚感覚に期待を寄せている。

  • 人間の皮膚の持つ様々な機能とその素晴らしさを詳細な事例と共に縷々述べている第4部までも読み応えがあったが,その後の第5-6部の内容が秀逸だ.遠くに第7部の「芸術を科学について」で絵画や音楽の豊富な知識がちりばめられた記述は素晴らしい.それにしても,ケラチノサイトの多様性は凄い.資生堂の奥の深さを実感した.

  • 第4章までは著者が行った実験やその他の研究の紹介及び、それから導かれる仮説を展開しています。
    面白いです。
    第5章以降は、社会システム、芸術などに対する著者の考察です。ここは、あまり新鮮な面白さは感じされませんでした。

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著者プロフィール

1960年生。京都大学工学博士。資生堂研究員、JST CREST研究者、広島大学客員教授を経て明治大学MIMS研究員。主著に『皮膚感覚と人間のこころ』 『驚きの皮膚』。表皮研究で世界的に知られる。

「2021年 『サバイバルする皮膚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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