血の弔旗

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 87
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (586ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062196352

作品紹介・あらすじ

1966年8月15日、根津謙治は目黒区碑文谷二丁目にトラックを止めた。現金11億を奪うためだ。
戦後の混乱期に金貸しをはじめて財を成した原島勇平の屋敷から岩武弥太郎、宮森菊夫の二人と共に強盗計画を実行にうつした根津だったが、アクシデントにより屋敷に居合わせたクラブのママを射殺する。カーラジオからはローリング・ストーンズの『黒くぬれ!』が流れていた。
この強盗計画にはもう一人、川久保宏が関わっていた。彼の役割はアリバイ工作。4人は奪った金を隠し、4年後の山分けを約束する。
事件は大々的に報道され、根津は厳しい取り調べを受けるが、4人の繋がりは誰にも知られず未解決のまま時は過ぎた。
戦時中4人は疎開の為、別々の出身地からほんの僅かな期間、長野県の郊外で机を並べた仲だったのだ。
事件後、根津は疎開先で世話になった教師・玉置00の娘・鏡子と再会し関係を持ち結婚する。4人でした約束通り、1970年の終戦記念日に11億を取り出し分配した彼らは二度と会うこともないはずだったが、10年の歳月が過ぎ、新たな事件が彼らの身の周りに次々と起こる。
「誰が何のために?」
混乱と疑心暗鬼の中、根津は煩悶する。
袂を分かった男たちの軌跡が再び交差する時、昭和を生きた人間の業と事件の真相と明らかになる――。
昭和の時代と風俗を克明に描写した”藤田宜永ノワール”小説。

感想・レビュー・書評

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  • 厚みのある本だが、福田和子事件を連想させ、最後までハラハラしながら読めました。犯罪だけにではなく、登場人物の生き方、考え方にまで焦点を当てていて、久々の名作だったと思います。最後まで残った人の考えは、人それぞれという事だと思いますが、根津兼一が主人公なので、自分は根津に肩入れしてしまう。

  • 本屋に平積みされた文庫本を見て食指が動き、図書館で借りる。
    「図書館で借りる」習慣が根付いてだいぶ経つが、久々に「作家は買われてなんぼなんだよな、、なんかすみません」という気になったのは、登場人物に作家がいるせいか。

    戦後歌謡曲をバックにしたノワール。
    ただし、随所に挟まれる歌謡曲はこちら(私は昭和50年代生まれ)に殆ど縁のないものなので、時代に思いを馳せることができず少し残念。

    雰囲気としては東野圭吾の白夜行に近くもあるが、白夜行ほど「時代の趨勢が真の主人公」という感じはない。
    あくまで、主人公は根津謙治であり、年を追うごとに本人も自覚する通り、悪漢だった若かりし頃のギラギラ感が抜けていくもののあはれに胸が打たれる。

    昔だったら、読後に思い出すこともない本だったかもしれないが、おっさんになった今となっては、きっと先々どこかで思い出すんだろうなと、苦い傷をつけられた感もある。

  • 昭和、ハードボイルド、長編。時効になるかどうかを追って、一気に進めました。
    良かったな〜。

  • 懐メロに合わせて、ずっと綱渡りしているかんじでした。

  • まさに昭和を駆け抜ける犯罪小説です。
    倒叙物ながら、先が読めず、ストーリー展開にハラハラします。
    何度も何度も危ない橋を渡りながら、なんとか乗り越えていきますが、やはり最後は・・・。
    結末はなんともやるせない感じです。
    犯罪を犯したのだから当然なのですが、読了後の寂寥感が何とも言えません。
    厚い本ですが、一気に読めました。

  • 一気読み。ハラハラ感が半端なかった。

  • 表紙が犬の絵だけれど,どうして犬を殺す必要があったのか,それがわからない.こういうダークヒーロー的な人は動物に優しいのでは?この点からも根津には魅力が無かった.

  • 昭和66年に裏金11億円を仲間とともに強奪するところから始まるピカレスクハードボイルド.はじめに犯罪があって犯人がだんだん心理的に追い詰められるところは「刑事コロンボ」に少し似ている.昭和の世相を表すためと思われるが主人公は政治や音楽には「全く興味がな」く「文化的なことと縁のない」人間であるにもかかわらずその時の流行歌や政治ニュースがやたら出てくる.また偶然に出会うのが多すぎる.お話だから仕方がないけど.

  • 十一億円の裏金を強奪した男たちのその後を描いたサスペンス。周到な計画を立て、疑われることも織り込み済みの主人公は実に冷静なのですが。それでも次々現れる恐喝者や仲間の裏切りに脅かされ、果たして無事に大金を手に入れ時効を迎えることができるのか、とどきどきさせられました。
    一番の問題が共犯者との繋がりを見抜かれないこと、なんだけど。三章「血の弔旗」で登場するあの物証が。まさかそこでそんなもの出てきますか!?
    当然裏金とはいえ犯罪は犯罪。だけどなんだか主人公を応援したくなってしまうのが不思議でした。大金を手にした認識がありながらあれだけ堅実な生活を送れるってのも見事だなあ。

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著者プロフィール

1950年福井県生まれ。早稲田大学文学部中退。パリ滞在中エール・フランスに勤務。76年『野望のラビリンス』で小説デビュー。95年『鋼鉄の騎士』で第48回日本推理作家協会賞長編部門、第13回日本冒険小説協会大賞特別賞をダブル受賞。その後恋愛小説へも作品の幅を拡げ、99年『求愛』で第6回島清恋愛文学賞、2001年『愛の領分』で第125回直木賞受賞。17年には『大雪物語』で第51回吉川英治文学賞を受賞した。その他『タフガイ』『わかって下さい』『彼女の恐喝』など著書多数。2020年逝去。

「2021年 『ブルーブラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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