- Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062196642
作品紹介・あらすじ
「捨ておけない才気が感じられた」(辻原登氏)
「凝りに凝った文体が緻密で濃厚な文学的味わいを湛えている」(野崎歓氏)
「小説にしかできないやり方で現実と格闘している」(多和田葉子氏)
「世界が単純になっていく中で、『十七八より』はもっとも複雑に書かれている。文学にいま必要なものがここにある」(高橋源一郎氏)
・・など選考委員から絶賛された新人による、第58回群像新人文学賞受賞作。ペダントリーとシニカルなユーモア、豊饒な言葉の魅力にみちた注目作。
感想・レビュー・書評
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『本物の読書家』以来に読んだ乗代さん。デビュー作なんだ。。。デビュー作なのスゴイ。いやこれを群像新人文学賞にしてくれてありがとう!なくらいに感謝。すらすらと読んでいるのにどこかに迷い込んでしまうかのような読み心地が最高。読みながら言葉に埋もれてしまう(笑いながら)。実際、ところどころ黒い笑いがあるけれど。岡上淑子さんの装幀画とタイトルが結びつかずに読み始めたけれど主人公の「少女」の述懐に触れた途端合致する。装幀は岡上さん以外にあり得ない、になる。巻末の高橋源一郎氏、多和田葉子氏、辻原登氏の選評が全てカッコよく、読後の感情を盛り上げてもらった。
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初めて乗代雄介作品を読んだ。ある女子高生の回想録、という体で話は進むが難解。回りくどいといえば、そう。好みは分かれるだろうが、個人的にはとても面白かった。膨大な知識量を感じさせる修辞、引用、メタ言及の嵐に、これがデビュー作なんておよそ信じられない。町屋良平を初めて読んだときと同じくらい衝撃を受けた。
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読みながらこの本の仕掛けに思いを馳せていた。その中で村上春樹のアフターダークを想起したが、読了してみるとそれもなんだか違うように思う。三人称の小説という共通点しかない。一見なにかを言ってるようでどこにも着地しない言説、これが言葉のもつ意味以上に雰囲気を出す。
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第58回群像新人文学賞受賞作品。
かなりの文学オタク向けの作品。うーんわからん! 難しい! なんて思った小説は初めてかも。
本の最後に載っている選評にも「他の候補作はわかりやすすぎたのかも」と書いてあるし。わからなさ、それから文章の味を楽しむ作品かな。
ただ、なんでもない日常描写が普通そこ書かないだろっていうくらい緻密に描かれていて、それが不気味さを醸し出している。ホラー映画の日常描写的な。そこは面白い試みだなあと思った。
本当、別に何が起こるってわけじゃない。少女をはじめとした登場人物は皆どこか非現実的で、そんな会話しないだろーとか言いたくなっちゃうのだけれど、それでいて「ギバちゃん」とか「コンソメ」とか現実的な単語も散見されて、そのあたりのバランスがこの小説世界に歪みを生じさせている。そこが癖になる、のかな。
あと主人公の少女。最初は「何言ってんだこいつ」ってかんじなのだけれど、読み進めるうちに相当ひねくれた形ではあるが、感傷とか物憂げな気持ちとか孤独への憧れとか、彼女の苦悩にしっかりと十七、八歳の思春期を感じられて親しみをもてるようになった。
変わり者だけれどね。ウソとかホントとかじゃなくて舌触りのいい言葉を選んでしまって、他人を憎悪して自分を憎悪して、身近な他人が唯一の癒しで、動物に救われる。まごうことなき高校生の女の子。 -
作中で「何言ってるか、ほんとにぜんっぜん、わかんない」ってセリフがあったんだけど、作品全体がほんとにそんな感じだった
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装画:岡上淑子さん「ダンス」(1951年)
装幀:川名潤さん -
あんまり長くないのに
読み進めなかった
どーもイマイチで
最後が一番面白かった -
やはり乗代雄介さんの書く文章が好き。
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文章のリズム自体は嫌いではないが、結局のところ何を言っているのかわからない表現が延々と続くばかりで萎えてしまった。それでも途中までは俯瞰的に少女の多感な内面を描いているかのようにも思えたのだけれど、後半の叔母との会話はまったくもって意味不明だったし、そこを境にして小説が僕に背を向けてしまった。いったい読者にどんな下地があればこの小説を楽しめるのだろうか?
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多分全然分かってないのでとりあえずメモ程度に。
主人公の少女と叔母は、「最高の任務」に出てくる2人と同一の設定だと思われ、同作が大好きなので前日談として読めて嬉しい。
超雑に言えば、1周まわって自意識が異常に高い、周りがどうしてもほっておかない見目の少女が世界とどう対峙していくかみたいな話なのかなあ?広すぎて絶望的な言葉の世界と、狭過ぎて絶望的な目の前の現実。いや、全然違うかもしれない。
叔母さんもいいけど、お母さんがすごくいい。彼女の態度に周りはみんな翻弄されているのに、お母さんだけがNOという。「特にあなたの声は町内で一番通らないのに、笛も持たずにどうやって(中略)生きていくつもり?」「あんたのお喋りははぐらかすのが目的。私は伝えたいのよ。そのためには、どんな言い方したって構わないと思ってるだけ」「ホントいやになる。いつかめちゃくちゃに傷つくに決まってんだから。気の利いたことを言いたいだけ。ホントもウソもおかまいなしで、とにかくふざけてる」お遊戯会の件も好き。家族で焼肉食べに行くシーンは全体的に面白い。
勉強会一緒に参加してる男の子に主人公がしてやられるとこもグッとくる。それをコンシーラーでなきものにするというのも独特過ぎる。
最後の病院のシーンはすごい。どんな事実があろうと、目の前でどんなことが起ころうと、ただひたすら自分の世界だけで生きるものが自分の世界に現れた時の独特の感じがビンビンに伝わってくる。
うさぎよ、ありがとう。
と、部分部分はおもしろいと思いつつも、全体が全く読めてないので、また時が経ったら再読してみたいと思います。