哲学な日々 考えさせない時代に抗して

著者 :
  • 講談社
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062198172

作品紹介・あらすじ

日本を代表する哲学者であり、東京大学での講義でも高い人気を誇る著者は、若い頃から坐禅を続けてきました。坐禅には、「本来無一物」(ほんらいむいちもつ)という考え方があります。丸裸の自分に立ち返ることができれば、そこに十分な力が現われてくる。坐禅をして、着ぶくれた余計なものを脱いでいく――この本を支えているのは、そうした引き算の思想です。

前半は、著者の普段着の姿や考えが綴られた50のエッセイを収録しました。
哲学の授業で何を学べばいいのかから始まり、東大生に坐禅を教えるのはなぜか、そして哲学者の日常に起こるさまざまなことが描かれます。
読んでいて思わず口をついて出てしまうのが、「へぇ」とか「うふふ」とか「なるほど」ということば。気楽に読み進めるエッセイですが、そうやって読みすすめるうちに自然と頭のこわばりが解けていきます。
坐禅してみたいと思う人も注目! 坐り方や呼吸のレッスンもあります。

後半は、論理的な文章を書くためにはどうすればいいのか、異なる物語を生きる他者を理解するとはどういったことかなどに触れた10本の小品から構成されます。来し方をたどるとともに、言葉で考えていく実際の様子を伝える「「哲学者になりたいかも」などと考えている高校生のために」、また驚きから始まる哲学の原風景を語った「バラは暗闇でも赤いか?」は、哲学ではどのように思考が重ねられていくのかが見えてきます。

自分のこと、社会のこと、国のこと、世界のこと……、考えなくてはいけないのに、考えようとすると、どう考えたらいいかわからなくなって、前に進めなくなってしまう。考えあぐねてしまう。――こんな時代だからこそ、哲学者は、しかつめらしい言葉を使わずにこの本を書きました。人生で一番大切なものは何か、どうして自殺をしてはいけないのか、など、むずかしいけど、実は私たちが気になって仕方ない問いからも逃げずに、向かい合います。
ここに「ああすればこうなる」式のマニュアルや成功の技術はありません。でも、この本を読み終えたとき、知らぬ間に身につけてしまった鎧から解放され、本来無一物ゆえの力が宿るのです。

感想・レビュー・書評

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  • 友達の最近のマイブームが野矢さんとのことで、本屋でいちばん平易そうなものを買った。哲学は便秘解消みたいなもの!!!知識を増やすよりも視点を増やす学問の方がよっぽど実学的やな(役に立つ/立たないの観点だけで物事を判断したくはないけど)

  • いつもの昼休み書店めぐり中に、東京堂の平積みのなかにみかけて購入。

    40年以上も家族のごはんを作り続けてきた田舎のお母さんが作るおみおつけは、同じ材料を使ってもかんたんに真似できない味がします。

    本書にならべられた日本語も、同じように、とてもシンプルで、ダシがきいて、おいしく、身体にしみわたることばに満ちた味がします。

    ごちそうさまでした。

  • 野矢茂樹の文章が好きなので読んだ。理路整然としていて読みやすく、語りかける相手を意識した表現のやわらかさがある。
    前半は西日本新聞掲載の短いエッセイ。後半はそれより少し長いエッセイを集めたものである。
    「論理的に書くこと」という文章では論理的に書くためには相手を意識する。つまり、その話をしたい相手がいて、その相手からの問いかけに答えるように書いていくことが大切だと言っている。これは野矢茂樹の文章を読んでいればうなづけることだろう。
    また、哲学の師である大森荘蔵の授業についての話はとても刺激的だ。

  • 哲学者のエッセイ。
    哲学初心者向け、イコール私向け。
    哲学は「メタ」なのだという話に、あーーなるほど!と納得した。
    連載のネタなかったのかな…という回もところどころあったが、全体的には面白かった。

  • おもしろかったー。論理が必要なのは、完璧な調和のもとに生きてないから。ポリフォニーのあまたの声をきくこと。本を読んで、人と議論して、自分で考えて、調べたり考えたりしたことを書く。

  • 接続詞の大事さ、不要さ、の話。俳句には接続詞ないでしょ!との投げかけ。ホントそうだ、場所を踏まえて活用していかねば。

  • 哲学のエッセイ。野矢さんの文体がとても心地よく染み込んでくる。

    禅宗の「本来無一物」「衆生本来仏なり」はよいですね。足し算ばかり求める世の中で、引き算を考えてみると、生きる価値も見えてくると感じました。

    やたら成長を求める風潮のなかで、立ち止まって考え、モヤモヤを飼い慣らすというのも素敵でした。


  • 哲学
    考えること

    なんだか
    つい堅苦しい
    そんなイメージをもってしまうが
    エッセイ調なので
    とても柔らかい

    でも
    時に
    うーむ
    と立ち止まって考えてみたり


    自分の世界の
    考えるって
    物事の捉え方って
    まだまだ狭いなと
    そんなことを感じた

  • 「語りえぬものを語る」が大変良かったので野矢茂樹の本を
    何冊か追ってみることに。これはエッセイ集。前半の1部は
    一篇一篇が短いこともあり軽い印象。後半の2部も柔らかい
    語り口と平易な文章で読みやすいのだが、その実かなり深い
    内容だった。散歩大事(笑)。

  • 文章が誰にでもわかる段階まで崩してあり、読みやすいし哲学を学びたいと気持ちを続けられる。

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著者プロフィール

1954年(昭和29年)東京都に生まれる。85年東京大学大学院博士課程修了。東京大学大学院教授を経て、現在、立正大学文学部教授。専攻は哲学。著書に、『論理学』(東京大学出版会)、『心と他者』(勁草書房/中公文庫)、『哲学の謎』『無限論の教室』(講談社現代新書)、『新版論理トレーニング』『論理トレーニング101題』『他者の声 実在の声』(産業図書)、『哲学・航海日誌』(春秋社/中公文庫、全二巻)、『はじめて考えるときのように』(PHP文庫)、『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』(哲学書房/ちくま学芸文庫)、『同一性・変化・時間』(哲学書房)、『ここにないもの――新哲学対話』(大和書房/中公文庫)、『入門!論理学』(中公新書)、『子どもの難問――哲学者の先生、教えてください!』(中央公論新社、編著)、『大森荘蔵――哲学の見本』(講談社学術文庫)、『語りえぬものを語る』『哲学な日々』『心という難問――空間・身体・意味』(講談社)などがある。訳書にウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(岩波文庫)、A・アンブローズ『ウィトゲンシュタインの講義』(講談社学術文庫)など。

「2018年 『増補版 大人のための国語ゼミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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