- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062198691
作品紹介・あらすじ
本書は野口武彦氏による『忠臣蔵─赤穂事件・史実の肉声』(ちくま新書、現在はちくま学芸文庫)、『忠臣蔵まで』(講談社)に続く一冊です。『忠臣蔵』において野口氏は事件の発端から終結まで、後世の潤色を取り去り、史料の叢から元禄の人間ドラマをよみがえらせることに成功しました。また『忠臣蔵まで』では赤穂事件を成立させた武士の行動原理(エートス)の帰趨について、尋常ならざる洞察が示されました。
そして本書に至って野口氏はこう言います。
「忠臣蔵をレンズにして眺めると、ただ元禄時代という過去の歴史の一齣だけでなく、日本に流れる時間のなかに住まう歴史の精霊(デーモン)の姿を正視することができる。元禄人に目を据える。と、元禄の死者たちもひたと見返してくる。その眼差しは、同時代だからこそかえってものを見えなくする死角を突き抜けて、現代の迷路をくっきり照らし出すにちがいない」
すなわち、いまなお日本人の心性の根底にあるものを、忠臣蔵という「虚構」の享受、語り口そのものを通じて洗いなおそうとする試みです。そのとき浮かび上がってくる普遍にして不変のものが「貨幣の専権」であることに読者は驚くはずです。
本書は、いわば野口版「忠臣蔵三部作」の掉尾を飾るものとなります。
感想・レビュー・書評
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事件を招いた原因の一つとして「貨幣経済」への向き合いかたがあげられているのが新鮮だった。
浅野内匠頭と吉良上野介が、費用の算出について対立した背景には貨幣改鋳による急激なインフレがあるということも初めて知り、非常に面白かった。
城の明け渡しや領地の召し上げの際に藩札処分が迅速に行われた様子も述べられていて、まるで大きな会社が予期せぬ事態で急に倒れるような印象を受けた。
事件前後についても史料をもとに詳しく解説されている。
タイトルにもなっている「忠臣蔵」の演劇のイメージが強いので、実際に何が起きて、当時の人が恐れていた何が起きなかったのかが良くわかる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
浪士達をミーハーに応援するサポーターが、江戸の街のあちこちにいたというのは、今まで考えたことがない点だった。たしかに、こんなイベントがこっそりできるはずは無い。
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忠臣蔵を機軸に元禄世相綱吉政治を交えて、赤穂浪士が討ち入りに至った流れを丁寧に読み解く。
かなり面白いです。おすすめ。