近いはずの人

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 321
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062198806

作品紹介・あらすじ

同い年の妻が事故で死んだ。それから3ヵ月、心が動かない。

北野は亡き妻の鍵のかかった携帯電話に、4ケタの数字を順番に打ち込むだけの毎日を過ごしていた。
ついにロックの解けた携帯には、妻の秘密が残されていた。
4年間を一緒に過ごした女性のことを、僕は何も知らなかったのかもしれない――

北野俊英、33歳。喪ってから始まる、妻の姿を追いかける旅。

感想・レビュー・書評

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  • 「人は簡単に死ぬ。タクシーに乗る。山間を走るそのタクシーが崖から落ちる。それだけでいい。」(25ページ)

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    北野俊英、33歳。
    妻の絵美と結婚して4年、だった。

    「友だちと旅行に行ってくる」
    そう言って出かけた妻は、交通事故で帰らぬ人となった。

    奇跡的に壊れずに残された、妻の携帯電話。
    暗証番号が分からず、4桁の数字を入れ続ける日々は、ある日唐突に終わりを告げる。

    あの日、一緒に行くはずだった友だちとは誰なのか?
    その謎を追っていくうち、俊英は思いがけない妻の一面を知ることとなる…。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    物語は、俊英の妻・絵美が突然の交通事故で亡くなって、しばらく経ったところから始まります。

    自分に見せていた姿は、果たして本当の妻の姿だったのか。
    妻を信じられなくなった夫の苦悩が、手に取るようにわかります。

    問いだそうにも、もう妻はいません。
    残された妻の姿を追えるものは、携帯だけ。
    ロックが解けたとき、携帯を通して見える妻は、どんな姿なのでしょうか。
    見たいけど、知りたいけど、でも知るのが怖い。

    夫婦として長い年月を過ごしていても、わからないことがある。
    見えないものがある。

    「あなたは本当に、相手のことを、わかっていますか?」

    そんな風に、この小説から問いかけられた気がしました。

    物語自体は全体的に淡々としています。
    妻の旅行相手を追うくだりはあるものの、その相手を知ることに、重きはおかれていません。
    俊英による「明確な答え」も、示されていません。
    「これで終わり?」と思う方もいるでしょう。
    でも、人生においてはむしろ、「明確な答え」なんて得られることの方が少ないのではないでしょうか。

    人間は、いつ死ぬかわからない。
    死んでからでは、相手と話しあうことも、わかりあうこともできない。

    「近いはず」の関係だった俊英と絵美という夫婦を通じて、自分のなかに見えたもの、そして読み終わったあとに自分がとる行動こそ、この小説から得られた本当の答えなのだと思います。

  • 自動車事故で亡くなった配偶者。
    妻が向かっていた場所は温泉旅館。
    待ち合わせの相手は不明
    手元にはパスワードロックされた妻の携帯・・・。
    小野寺君の作品としてはレアなサスペンス感のある展開の本です。
    ネタバレ駄目な本なので(大抵そうですが)印象だけ書きます。

    誰しも秘密を持っているものですが、自分が死ぬなんて思っていませんから、エロ本の隠し場所や、エロ画像の隠しフォルダー、エロ動画の閲覧履歴などを消さずに死ねない。などという事もあるでしょうが、そんなのは可愛いものであります。
    亡くなったあとに意味深なものが残されたらと思うと非常に苦しいですね。
    特別トラブルが無く良好だったら良好で気になるし。思い当たる節があればそれでぞわぞわします。きっと。

    主人公の男が小野寺君印の主張の少ないぼんやりした青年なので、いつもならば癒される言動も、この本ではイライラの元凶になる事も。結末に納得できるかは別として、非常に先が気になりぐいぐい読ませる本です。

  • 北野俊英、33歳。インスタント麺メーカーの営業職。
    妻の絵美が旅先で事故で死んだ。3ヶ月が経つが、俊英はその喪失から立ち直れずにいた。
    カップ麺と6本のビール、絵美が残した携帯電話のロック解除を目差して淡々と番号を打ち込む毎夜。
    ロックを解除した電話に残された死の直前のメールでそんな日々が動き出す。


    大きな喪失とビール。まるで春樹の小説だなと思いつつ読み始める。
    春樹なら2行で描くところを8行かけて描いているようなまどろっこしさ。
    申し訳ないけど、私には合わない本だった。
    主人公に終始イライラして、共感することができない。自分を可哀想がってる人が好きじゃないし。
    彼の歪んだ視界で見ているからかすべてが歪んで見える。
    爽やかな、人好きするような、さっそうとしている彼、彼女が欠点だらけに思える。
    妙に俊英が上から目線。
    登場する人物たちに違和感も多い。
    高校時代とはいえ好意があった異性が既婚者なのに連絡とろうとするとか。
    子どもを引き取って別れる可能性が高いのに社内恋愛を同僚に洩らしちゃうとか。
    いくら兄嫁でも二人きりで遊園地はないだろうとか。
    妹の死の原因なのに、浮気な婚約者の痛みに同情する姉とか。
    不満があるにしても、義理の弟へそこまでする?
    変だと思うのは私だけ?
    絵美も、その家族も、気持ちが悪い。あまりの価値観の違いにうっすらと寒くなる。
    絵美を過去にできて心機一転なんだろうけど、どうにも後味が悪い。
    ラストもどうなんだろう。
    妻の本当とその家族のいやらしさを目の当たりにしてすっきりしちゃったってことなんだろうか。
    「愛」というより「打算」と「外聞」の匂いがぷんぷんしちゃうのはなぜなんだろう?
    いろいろと悶々とする。皆さんの感想を読みたい。

  • 結婚して四年目。33歳の北野俊英は友達と旅行に行った妻を事故で亡くした。友達とは誰か?から始まり、残された携帯のメールから、自分が知らなかった妻の一面がわかってくる。
    重たい話だけれど、真実が明らかになることで俊英や、まわりの人達も前に進むことができたんじゃないかなと思う。

  • 友達と行くと言っていた旅先の不慮の交通事故で妻が死んだ。
    しかし事故にあったタクシーには妻しか乗っていなかった。
    夫俊英の手元には、ロックのかかった妻のスマホが残されている。スマホには妻の秘密が隠されているのか。

    妻の死、ロックのかかったスマホ、ロック解除、妻の秘密。
    読みたいと思わされる気になるストーリーです。

    ロックを0000から解除していく少しずつの作業が突然の妻の死と向き合う気持ちを表しているようで痛々しい。
    絵美の本心はなんだったのだろう。
    夫との間に出来たと思っていた溝、その寂しさを埋めるために身近な人に頼ったのだとしたら、事故に合わなかったらどうなっていたのか。

    俊英が絵美の死を乗り越える1年が、静かに描かれていた。
    穏やかな性格の男性目線の話。
    著者の作風が好みです。

  • なかなかしんどい一作。

    近いはずの人、ているなあ。
    でも人って一緒にいる人が誰かによって自然と違う自分になってるものというか、
    だから知らないところがあっても当然ていう気もする。

    小野寺さんの本はいつもあったかいって感想だったから、すごい新鮮だった。

  • 小野寺さんの小説で交通事故死する人は多いけど、今回は一番重かった。
    亡くなった人を悪く言いたくはないけど、絵美さん、好きになれない。現実にいたら表面的な部分だけ見て仲良くなれたかもしれないけど。死を持って贖うほど罪深いわけじゃないけど、自業自得なんじゃないかと思ってしまうくらいには共感出来ないお人柄。大なり小なり自分にも似たところはあるかもしれないと思うから、余計に読後感が悪い。小野寺さんの小説で、こんな気持ちになってしまったのは初めてかも。

  • 市井の人の暮らしやさまざまな出来事に揺らぐ心理をさりげなく描ける小野寺氏だが、今回のは私は好きでなかった。
    主人公の俊英のずっと後向きな性格もそれを現す生活態度も。ただ、妻を事故で失ってからの1年の再生の物語としたら成功してるのかも。

  • だんだんと絵美が嫌いになっていく。
    話すべき事、伝えるべき事を伝えずに手近な異性に甘え頼る妻
    ダンナの弟と内緒で夢の国とか、姉の彼氏と温泉旅行とかダメでしょ。
    亡くなってから知ってしまったが、知らない方が良かったのか、知ってしまったから先に進めそうな終わりなのか。

  • 小野寺さんの本を読んでみたくて図書館で借りた。
    みだしのつけ方は面白いなと思ったけど、重さを感じる。確かに重いお話だった。自分では良さがあまり感じられWなかった。
    妻が亡くなった。友だちと旅行に行くと言って出かけた先で、タクシーが崖から落ちた。事故についてはこれ以上触れられなかったが、残された夫・俊英のいいようのない悲しみに暮れたお話が終始展開された。妻の残された携帯電話のパスワードは解けるのか。解けたらその先、彼は何を思って生きていくのだろう。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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