拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199391

作品紹介・あらすじ

2002年の日朝平壌会談のあと、安倍晋三は、本当に拉致被害者たちの北朝鮮一時帰国に反対したのか? 
 その後、対北朝鮮強硬派として政治的な地位を高めた現首相、そして、その周辺に蠢いた数多くの人間たちの打算と裏切りを告発する、究極のインサイド・ストーリー!!

感想・レビュー・書評

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  • 2002年の日朝平壌会談のあと、安倍晋三は、本当に拉致被害者たちの北朝鮮一時帰国に反対したのか?
    その後、対北朝鮮強硬派として政治的な地位を高めた現首相、そして、その周辺に蠢いた数多くの人間たちの打算と裏切りを告発する、究極のインサイド・ストーリー!!
    拉致家族被害者の会の一員として北朝鮮拉致被害者全員奪還を尽力した蓮池透。
    彼は、なぜ拉致被害者家族会を非難し脱会したのか?
    2014年5月下旬に日朝協議が行われて、日本側の経済制裁一部解除と北朝鮮側の拉致問題再調査実施で合意がなされた。いわゆるストックホルム合意である
    だがその後、北朝鮮による拉致被害者再調査の報告はなく、期限も引き延ばされている。
    なぜ拉致被害者家族会は、北朝鮮への強行姿勢の救う会に乗っ取られたのか。
    小泉首相に随行した安倍晋三官房副長官は、当初から拉致被害者全員奪還を主張していたとして拉致問題を追い風に総理大臣にまで登り詰めた。
    だが、安倍晋三官房副長官は、小泉首相が日朝協議を平壌で行った時、当初拉致被害者を日本に一時帰国させた後に北朝鮮に戻すことを規定路線としていたが、蓮池薫さんたちが帰国を拒んだため、拉致被害者全員奪還を主張し始めた風見鶏的な日和見主義な言動は、あまり知られていない。
    さらに、拉致被害者支援法の支援金の低さや収入が発生した場合には返金すると蓮池透さんは危惧して抗議したが委員会審議で野党が吊り上げるからこの額のままにならないと自民党から説明されたが実際のところはそのまま可決されたので、蓮池透さんが「国の不作為を問い国家賠償責任訴訟を起こしますよ」と安倍氏を追求したら安倍氏はせせら嗤いながら「蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ」と答えた。
    総理大臣にまで登り詰めた安倍晋三は、拉致問題を利用して北朝鮮に対抗するためと称して集団自衛権を強化した安保法案改正を強行するなど、拉致問題を自分の政治的野心のために利用して来た。
    一番のストックホルム合意の問題は、どうなったら拉致問題が解決したかという具体的なゴールが描かれていないこと。さらに、拉致被害者再調査は北朝鮮側の合意事項では5番目と低い。
    日朝協議には、拉致問題対策本部が形式的には参加したか。実務的な作業は安倍晋三官房副長官と外務省が行った。
    拉致被害者家族会の頑なに収支報告しようとしたない不透明な会計問題など、拉致問題のタブーに踏み込んだ衝撃のノンフィクション。

  • 拉致問題に関し著者がいくつかの間違いを犯したことは事実だが、それを率直に認めている。家族としてはやむを得ないことだとも思う。拉致問題を自らのエサとすべく立ち回る数々の人々の姿は見苦しい(政治家に限らず。もっともその筆頭は安倍晋三だが)。「家族会」と「救う会」の違いすら知らなかった自分がなさけない。米国は自国民を軍隊を出動させても守るという姿勢があるが、この国の政府にそうした気概(実際に自衛隊を出されたら困るが)はない。「棄民」があるのみである。

  • ずいぶん刺激的なタイトルだが、国会でネタになったような安倍首相だけではなく、救う会や家族会、ブルーリボンをつけているような政治家たちなど多くの無策と怠慢によって拉致問題が膠着状態になってしまっているのを当事者であるにも関わらず感情的にならないでかなり事実と論理によって分析している。
    拉致問題を利用している者にとっては問題が解決してもらっては困るのだ、という主張をまるまる認めるわけではないが、正直一定の説得力はある。

  • もったいないな…と思う。本書のタイトルとカバー写真だ。安倍晋三も
    確かに北朝鮮による一連の日本人拉致事件を糧にしているかもだが、
    それを前面に押し出して彼の名前をタイトルに入れ、カバー写真に
    してしまったことである種の人たちは内容を読まずに批判するのじゃ
    ないかな。

    私もこのタイトルとカバー写真で購入に二の足を踏んだ。普段は立ち
    読みはしないのだが、本書に限っては少々内容を確認してから購入
    した。

    内容はいたってまともであり、真面目である。だから余計にもったいな
    い。「売らんかな」という版元の姿勢が裏目に出てしまっている。

    小泉首相の電撃訪朝で拉致被害者のうち5人の帰国が実現した。
    本書の著者は帰国者のひとりである蓮池薫氏の兄であり、家族会
    の事務局長を務めていた透氏だ。

    突然の弟の行方不明から奪還まで。試行錯誤を繰り返しながら歩ん
    だ道を、時に自分の言動を反省し、政治家や外務省への苛立ちを
    見せながら正直に綴っている。

    知っていたつもりでも知らないことがあまりにも多かった。帰国した
    5人とその家族は、国が手厚く保護しているものだと思っていた。
    これが大間違い。

    国から帰国者に渡るのは月々わずか13万円しかないのか。そりゃ
    薫氏も翻訳などの仕事をしなければ生活が成り立たないよな。そし
    て、もうひつと驚いたのは家族会の金の流れだ。

    篤志家が「帰国者の生活の為に」とカンパしても当事者の手には
    渡らないんだ。時折、ネット上で家族会の資金の流れの不透明さ
    が指摘されている記事を読むが、家族会自体が既にアンタッチャ
    ブルな存在になってしまっている。

    ふと、思うんだ。安倍晋三は「拉致被害者の帰国は最優先課題」
    と言う。だが、政治家にとって解決しない方が都合がいいんじゃない
    のか。だって、選挙に使えるもの。

    胸元にブルーリボンをつけて「北朝鮮はけしからん」ってやっていれ
    ば一定の共感は生むだろうし、感情に訴えやすいんじゃないか。

    そもそも、問題の解決の着地点はどこなのか。例えば拉致問題の
    象徴となっている横田めぐみさん。本書では北朝鮮で同じ招待所
    にいた薫氏の語るめぐみさんの話は衝撃的なんだが、北朝鮮側
    が「死亡した」と報告した日本人に対して日本側が「そんな回答で
    は受け取れない」と突っぱねるだけでいいのか。

    長い年月が経った。死亡している被害者がいるかもしれない。そう
    であれば「いつ・どこで・どこのように」との答えを求めるのが日本
    側の仕事ではないのだろうか。

    それにしても呆れるのは政治家たち。帰国した拉致被害者と写真に
    おさまって、それを選挙活動に使うんだものな。一体、どれだけの
    政治家が本気で解決を望んでいるんだろうか。

    巻末のジャーナリスト青木理氏との対談も秀逸。しかし、弟が帰国
    したからって「説得力がない」と透氏に退会を迫る家族会ってなん
    だろう。温度差は確かにあるとは思うけどね。帰国したからって
    拉致被害者の家族に変わりはないと思うのだけれど。結局、除名
    されちゃったものな。

    拉致問題と北朝鮮との関係を考える上で、参考になる作品だった。

  •  拉致被害者の兄の蓮池薫さんが語る拉致を巡る人々。
     
     安倍総理だけでない。政治家や外交官などの行政の人。さらに家族会をサポートするはずが中心に取って代わった救う会について。
     彼らは確かに拉致問題を利用したととられても仕方ないような感じに見える。被害者への配慮より国交を優先する姿勢を見せる政治家。自分たちの主張の為に動く右派。
     拉致問題の長期化は確かに北朝鮮の対応に問題はあるが、日本側の外交に問題がなかったかもちゃんと考えないといけない。

  • 拉致問題について家族会のタブーやあまり公にされていない薫さんの発言など、あけすけに書かれている。そして拉致問題の解決とは何なのかについて、膨らませも過剰に絶望的にもならない冷静な考察がなされている。ショッキングなタイトルとは裏腹に、後半、どんな相手であっても外交問題は対話と理解が解決する、と記す。著者は一時期、メディアで過激とも思える発言を重ねていたが、今は大部分反省しているそう。未だに自分を未熟と感じているのが伺えるが、果敢に自分の考えをぶつけているこの本は、1年の始まりに勇気を与えてくれた。(ニュースに出演してギャラってもらえるの?報道なんだからコメンテーターとしての出演でなければ無報酬はありえるだろう、とか疑問は多いが)わたしも自分の考えを明らかに、共感を得る努力、相手を理解する努力を続けたい。

  • 表題がやや刺激的すぎるかな、という点と、著者が感情的になっていると感じる部分もありましたが、これまで知らなかった拉致の裏側を知り、驚いています。
    家族会、救う会の内実や、拉致を利用した政治家たち。不透明なお金の流れ。マスコミの姿勢等々。
    拉致の安倍、ともてはやされていた安倍総理ですが、ジャーナリストの青木直人さんは「安倍総理は拉致を切り捨てようとしている」と指摘します。その指摘と、本書で書かれている内容は少し違ってはいますが、「拉致問題を、被害者家族や国民が納得できる形で解決するつもりはない」という点に置いては同じだと感じました。
    前々からなんとなく感じていた、「拉致問題関係者(救う会や政治家たち)は、本当は拉致問題が解決しない方がいいと考えているんじゃないか」という疑いにyesを突きつける内容でした。

  • 題名で損している。私が目撃した拉致問題の内幕とでもすれば。売るためなので仕方がないのだろうが。

    内容が散漫、話があちこちにとびまた戻ってくるのが気になった。
    何よりも、国からの支援も家族会への寄付もほとんど本人に渡っていないのというのが驚き。その理由も驚き。それなのに本人は誰の金で食ってるんだといわれる不条理。

    拉致問題を利用した数々の人々。
    家族会を右傾化、救う会会長佐藤、不透明な専従報酬を得ていた増元、、
    しかし報道されることはない。家族会への批判はタブー視され、聖域化する家族会。

    拉致問題解決のための対話路線と強硬路線。
    制裁をするのは簡単だ。指示するだけでいい。だが外交を動かすのは大変だ。もはや北朝鮮との貿易は途絶えてしまい経済制裁は効果がなく、対話・交渉路線でしかことは動かない。政府はこの交渉路線の困難から逃げただけではなかったかと著者。確かに経済制裁が効くのは、制裁で苦しむ市民の声が政府への圧力になるからで、独裁国家では効果がないんだろう。
    では家族会を強硬路線へと走らせ、過激化させたのは誰か。
    実は自分もその張本人だったと懺悔する一節があるのが面白い。
    中韓と関係が悪い状況では拉致問題は動かないとも指摘する。

    NHKスペシャルで2度の訪朝の真の目的はどちらも核問題だったと報道されている。そう言われると2度目の訪朝の経緯が納得できる(支持率が落ちたら訪朝とかいわれてたよね)
    小泉訪朝さえ拉致問題を出しにしていた。

  • 拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々 単行本 – 2015/12/18

    2016年5月5日記述
    拉致被害者へのカンパ金は横田滋ファンドに渡り本人に渡らない

    北朝鮮拉致被害者蓮池薫氏の実兄の蓮池透氏の著作。
    題名が過激で2016年1月の国会でも取り上げられ話題となった。
    当初いわゆるトンデモ本なのかと疑いすら持った事を覚えている。
    しかし世間に少しでも注目してもらう為にあえてこういった題名にしたのだなと読後は思った。

    拉致事件の報道の裏側で何があったのかがよく分かる。
    驚いたのは5人が帰国する際の対応する参与室に人員が居なさすぎで蓮池透氏が事務業務をおこなっていた。
    また5人を迎えるにあたり花束が必要だというので購入しようとしても参与室に予算がなく家族達が自分たちで用意したものだった・・

    薫氏が拉致された1978年7月31日から書かれている。
    警察に届け出たものの全く動きがない。

    結局、国に対して大きな期待は出来ないということだろうか。
    自己責任などとは言いたくない。しかし自分の身は自分で守るしかない。
    悪質なのは北陸で捕まった北朝鮮の工作員と思われる在日朝鮮人(李秋吉)を釈放してしまうなどの致命的ミスを犯した石川県警。(宇出津事件)
    この1977年に起きた事件情報をマスコミが報道し各県警が共有していたら拉致被害者数はもっと少なく済んだのは間違いない。
    北朝鮮による拉致事件は人災の面もあるのだ。

    蓮池薫氏は北朝鮮で生き抜く為に指導員達への読心術、
    相手が何を望んでいるのかを推測する力が向上したのだという。
    いわれる前に行動すると非常に受けが良い。この辺の能力は日本でも役立つことは間違いない。

    もちろん全ての項目に対して著者に同意しているわけではない。
    例えばP132の家計に対する補助の融通が効かない点。
    税金、公的資金を入れる都合上、厳密な区分け(薫氏の分だけ)が必要なのはやむを得ない。政治資金とこの点は似ている。
    また巻末の青木理氏との対談もやたらと北朝鮮に甘い青木氏の言動に違和感を覚えた。
    日本の自称リベラル派は拉致問題が無かったとしても力を失っていたと思う。

    社会運動を行うことの難しさを改めて痛感した。
    小林よしのり氏の薬害エイズ問題の運動について著した脱正義論や新しい歴史教科書をつくる会の運動、それに伴う内部での権力争いを描いた作品をかつて読んだけれどもそれと似たことが拉致事件の運動でもあったのだ。

    蓮池透氏もかつで過激派、右派的な言説が目立った。しかし今は当時とずいぶん考えも変わり柔軟になった。また当時の過激発言に対し赤面の思いを持っていると述べているなど素直に反省している点は好感を持った。
    右派の欺瞞に気付いた事もあったのだろう。

    蓮池薫氏の母校が甲子園に出場し見に行った際にTVカメラが薫氏をとらえだすと地元の国会議員がこぞってカメラにうつるために薫氏の近くに陣取ろうとする姿は確かに醜悪だ。
    安倍総理の近くでいつも映ろうと努力している世耕弘成内閣官房副長官への批判でもある。
    本書には傾聴に値する指摘は数々あった。

    安倍晋三氏、中山恭子氏は薫氏達を当初北朝鮮に戻すつもりであった。
    拉致事件は政治利用され尽くしてきた。
    ブルーリボンバッチ、各種選挙での講演の依頼。
    日本政府・外務省の手柄にならないことは全て排除する。
    (非公式ルートの死滅、山崎拓、藤本健二)
    家族会は救う会のオルグにより右翼的な主張をするようになった。
    増元照明氏は2004年参議院選挙に立候補、落選。
    その後事務局専従となり手当てをもらっている。
    増元氏の結婚や子供の誕生がある度に扶養手当を増額している。
    *蓮池透氏も事務局長を勤めた。しかし著者は一切報酬は受け取っていない。
    増元照明氏は自分の一存で飯田橋の一等地に20坪、家賃20万円の事務所を借りて家族会事務所を構えあとで承認を得るということをしている。
    2014年には次世代の党公認で宮城二区から衆議院選挙立候補。落選。
    拉致被害者へのカンパ金は横田滋ファンドに渡り本人に渡らない。
    全ては家族会、活動費にあてられる。
    家族会の収支は不明確。不明朗な支出がある可能性高し。
    著者が横田滋氏に何度も収支決算書など透明性を図ることを提案してもお金の出入りは家族会の預金通帳を見れば一目瞭然との説明があるだけ。

    2004年6月に蓮池薫氏が上京し横田一家に伝えた内容
    1 
    めぐみさんは精神的にかなり病んでいた
    2 
    めぐみさんのDVが激しく、娘のウンギョンさんは、たびたび同じ招待所に住む蓮池薫氏の家に非難してきた。薫氏はウンギョンさんを歓待した。
    3 
    めぐみさんは、自分の髪の毛を自身の手で切る、洋服を燃やすなどの奇行を繰り返していた。
    4 
    めぐみさんは何度かの自殺未遂をしている。
    5 
    めぐみさんは、北朝鮮当局に対して「早く日本に帰して」「お母さんに会わせて」と盛んに訴えていた。薫氏は何度も止めるように促したが、めぐみさんは受け入れなかった。
    6 
    夫の金英男氏は、めぐみさんとの結婚については、当局に騙されたといっていた。
    7 
    めぐみさんは2回、招待所からの脱走を試みた。1回は平壌空港を目指し、もう1回は万景峰号が係留される港を目指した。その際、北朝鮮当局に発見され、拘束された。
    8 
    このため、薫氏一家や同じ招待所に居住する地村さん一家は連帯責任を問われ、「山送り(強制収容所行き)」の危機に晒された。だが、薫さんたちの必死の請願により、それは免れた。その代わり、めぐみさんは、義州(ウィジュ)という場所にある四十九号予防院(精神科病院)へ送られることとなった。
    9 
    その際、夫の金氏は、「何があっても一切の異議を申し立てない」という誓約書を書かされた。
    10 
    1994年3月病院に向かうめぐみさんが乗ったクルマを見送った。それ以降、めぐみさんに会うことはなかった。
    11 
    夫の金氏は、数年後に再婚し、息子をもうけた。

  • あの青いバッジを付けてる輩は、拉致に取り組んでますよ感を出しながら何となく胡散臭さを感じてたが、"やはり"と言う感想。特に安倍なんて解決の能力も無ければやる気もないんだね。
    家族会も被害者と言う一点で繋がっているだけで、考え方も違えば帰還と死亡宣告を受けた家族では立場も違うから、仕方はないけど一枚岩ではなかった。何となく暴露本のような感じで後味は良くなかった。

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著者プロフィール

「拉致被害者家族会」元事務局長

「2010年 『拉致問題を考えなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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