恩讐の鎮魂曲

著者 :
  • 講談社
4.02
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199674

作品紹介・あらすじ

悪辣弁護士・御子柴礼司、医療少年院の恩師・稲見が殺人で逮捕された――

圧倒的迫力のリーガル・サスペンス!
またしても止まらない「どんでん返し」!! 

「王様のブランチ」「ダ・ヴィンチ」などで話題沸騰! 
『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』シリーズ最新作!!

改めて問われる「贖罪」の意味とは――

韓国船が沈没し、251名が亡くなった。
その事故で、女性から救命胴衣を奪った日本人男性が暴行罪で裁判となったが、
刑法の「緊急避難」が適用され無罪となった。
一方、医療少年院時代の恩師・稲見が殺人容疑で逮捕されたため、
御子柴は弁護人に名乗り出る。
稲見は本当に殺人を犯したのか? 

書店員さんコメント

人間を突き動かす想いの強さと法の力の限界を
痛感させられる第一級のエンタメ作品だ!
                      三省堂書店営業企画室 内田 剛さん
この裁判員のひとりだったら苦悩するだろう。
人が人を裁く難しさを思い知った。
                      文教堂書店西葛西店 水野知博さん
かつての恩師を助けるため、心が揺れる御子柴がとても人間くさく魅力的でした。
                    MARUZEN 名古屋本店 竹腰香里様さん
一気読み間違いなし。どんでん返しの連続です!
                      書泉グランデ 近藤茂樹さん

感想・レビュー・書評

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  • 今作では、御子柴自身が護りたいと思った者を
    「本当に護れたのか?」が問われます。
    また、容赦がなく 冷徹で論理派の御子柴が
    珍しく感情的になるところも見どころでした。

    前作で自分の過去が世間に知られてしまった御子柴。
    弁護士事務所は窮地に立たされます。
    そんな時、恩師の稲見が殺人事件起こしたと知り
    合法的とは言えない手段で前任者から任を引き継ぎます。
    収益の見込めない国選弁護人として。
    「償い続けろ、死んだ人間の分まで懸命に生きろ」
    自分にそう言った恩師がなぜ殺人を?
    無罪を勝ち取って恩返しをしたいと思う御子柴ですが
    稲見の一徹な性格が御子柴を悩ませます。

    そして、第一作でいい味を出していた埼玉県警の渡瀬。
    今回は全く事件に関わっていないのですが、
    電話で御子柴に重要な鍵を差し出します。
    中山七里氏、サービス精神旺盛です。

    さらに、いきなり冒頭で語られる旅客船沈没時の事件。
    女性の救命具を奪って自分だけ助かった男の無罪判決が提示されます。
    え? 何? と訳が分からなかったのですが
    このことを忘れかけた後半で、とても大きな意味を持ち始めました。
    こういうハッとさせられ方、嫌いじゃないな。

    今回のテーマ曲はモーツァルトのレクイエム。
    荘厳で重たいこの曲は、正直ちょっと苦手です。
    気持ちが奈落の底に引きずられてしまいそうで。
    この曲をいつも聴いている上品な老婦人が登場するのですが
    彼女の深い闇に心が冷えました。

    最後に御子柴が手にした 倫子ちゃんからの手紙。
    前作で「センセイ!」となついていた被告人の次女からです。
    突然ポッと灯った光のよう。

    御子柴が犯した罪の相手も、御子柴の心を救う相手も
    同じ幼い少女だなんて…。

  • 御子柴礼司 シリーズ3

    少年時代の凶悪犯罪が、自身が弁護する法廷で、白日の元に晒された御子柴。

    悪評が拡散され、顧問契約も解約され、今や、クライアントは、暴力団関係者ばかり。
    事務所も、虎ノ門から、葛飾区の雑居ビルに移転するしかなかった。

    以前からいる事務員・日下部洋子の日課は、事務所玄関の、落書き消しから始まる。

    〈死体配達人〉
    〈殺人弁護士〉
    〈死んでわびろ〉

    そんな時、御子柴が関東医療少年院に入院していた時の、担当教官・稲見武雄が、殺人の容疑で逮捕された事を知った。

    稲見は、御子柴に贖罪の意味を教えた、ある意味、父親以上の存在で、大恩ある人物であった。

    その恩師の弁護をするため、奔走するが、潔癖な恩師は、自ら進んで罰を受けようとする。

    いくら優秀な弁護士といえども、自ら罰を受けようとする人間を救うことはできなかった。

    他人には、冷血で非道な人間に見えるし、そう振る舞っている御子柴だが、心の底には、いつも、贖罪の気持ちがあるように感じる。

    恩師を救えなかった傷心の御子柴に、以前弁護した女性の子供・津田倫子(8歳)から手紙が届いた。

    《わるいことをしていない人を助けようとする先生は、やっぱりいい先生だと思います。ずっとずっとおうえんしています。わたしも大きくなったら、先生みたいなべんごしになりたいと思います。
    がんばってね。》

    いつか、倫子が、弁護士になって、御子柴の前に現れるのだろうか。

  • シリーズ3作目。
    少年院時代の恩師稲見が殺人事件を起こし、御子柴が弁護することに。
    前作までは見られなかった人間味溢れる御子柴が新鮮だった。
    冒頭の韓国船沈没事件からどう話が繋がっていくのかと思っていたけど、なるほど!こういうだったのか。
    御子柴、稲見それぞれのの贖罪の仕方が、生き様を示しているように思えた。

  • かつて死体配達人と呼ばれた殺人事件を起こした御子柴弁護士。医療少年院で罪の意識に気づかせてくれた稲見元教官。父のように思う、その稲見元教官が老人ホームで殺人を犯した!
    稲見元教官の弁護人に無理矢理なって、稲見元教官を無罪にする⁉︎お話。

    御子柴先生が人間味出した、ヒューマンドラマっぽい感じのお話でもありました。
    ネタバレしそーなので感想書きにくいっ( ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
    なので読んでみてくださいましw

    このままシリーズ一気読み予定です!

  • 御子柴シリーズ第3弾。
    ドラマでも観たことがあったので思い出しながら読みました。一気読みでした。
    最後の倫子ちゃんの手紙にウルウル。

  • 御子柴礼司シリーズ3作目。
    前作で「死体配達人」の過去が知れて自身の状況が一変した御子柴。
    その中でかつての恩師の逮捕。
    全て逆境となりつつも冷徹に。そして恩師を救うために弁護を奪う。
    冒頭の事件との繋がり。伯楽園の闇。護るものと奪われたものの復讐。
    全て計算し尽くされた物語作りはさすがとしか。
    正義への信念の違いで結果的に敗北となってしまったかたちに。
    でも、最後の手紙で救われましたね。

  • 御子柴シリーズにハマり中
    3作目はとても切ないストーリー
    そしてあの御子柴礼司が人間くさい
    恩師であり、父親と思っていた人と28年ぶりの再会
    御子柴礼司の過去が世間に知れ渡れてからの初めての公判となる
    恩師を助ける為に必死に頑張る御子柴を応援しているんだが、これがなかなか
    それは御子柴と恩師との贖罪の違い
    今回は後味スッキリとはいかなかった
    確かに人生いつも上手くはいかないよね

  • 中山七里の作品2冊目、同じく曲者弁護士のシリーズで前作より更に彼の出自が明らかにされていて暗黒の少年期の恩師の弁護に奔走する。
    何故だか高齢になった恩師が殺人を犯したらしく しかも自供して罰を受けたいと言う。そんな人間ではないと固く信じる彼は覆す相手が検察側だけでなく弁護すべき恩師をも相手にしなければならない今回の事案。
    「どんな被疑者にも護られるべき権利があり、そしてどんな人間にも償う権利がある」との恩師からの教えに習い弁護士の道に進んだけど、命とカネは人の優先順位の最高位と思い込んでいたがどうやら違っていたらしい。
    事件の舞台になった介護施設の様子もよく知っているので誇張はあるけどよく分かったし韓国のセウォル号事件みたいな海難事故が入口になっているのもなかなかでした。

  • 手を血で染めた人間の罪は、こういうものなんだ!罪を償うとは、こういうものなんだ!と身を徹して、御子柴に教えてるような稲見に思えました。御子柴の稲見を護る為に裁判に挑む姿は、「助けたい」という人間らしい心。最後の凛子の手紙に涙を滲ませる御子柴の姿。少しずつ変わって行く御子柴を見てると、同時に犯した罪は何故起きなければならなかったのか……深く考えました。稲見の、この生き様が後の御子柴に多くの事を問いかけ、悩み苦しんで気付いて欲しい。事件と事件が本当に上手く繋がってる本です。

  • 前歴から死体配達人の異名をとる、特異なキャラクター御子柴弁護士シリーズの第3弾。
    今回も、「手に汗握る」の形容もかくやのリーガルサスペンスに、堪能した。
    第3作は、タイムリーな課題といっていい介護施設が舞台。そして、依頼人が最大の敵?
    百戦錬磨の御子柴も手を焼き、裁判結果は「相撲に勝って、勝負に負ける」の例えか。
    法の限界を突き付けられ、自己嫌悪から気力を奪われて、人間らしくなった?、そんな御子柴が最後の最後で救われる。
    「どうにも分からない女だな」と、御子柴がつぶやく事務所事務員日下部洋子とのコンビも楽しみなこのシリーズは、まだまだ続きそう。
    次回作が待たれる。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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