罪の声

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著者 : 塩田武士
  • 講談社 (2016年8月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062199834

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罪の声の感想・レビュー・書評

  • ふと耳にした言葉や音などで、遠い記憶が見事に甦って来ることがあります。
    この本を開いた時がそうでした。
    昭和の犯罪史上、あまりにも有名なグリコ・森永事件。

    ある日突然、空っぽになったお菓子売り場の一角…
    何度もテープから聞こえてくる関西弁の男の声…
    そして、たどたどしく脅迫文を読み上げる子供の声…
    覚えていた。こんなにも…。

    もしかしたら、この本に書かれていることが「あの事件」の真相なのでは…
    そう思えてしまうほどでした。

    実際の事件の真実がどうであれ、子どもを巻き込み犯罪に加担させた犯人は卑劣だ。
    できるならあの幼い声の主に、君には何の罪もないんだと言ってあげたい。

  • 塩田武士『罪の声』講談社。

    第7回山田風太郎賞受賞、週間文春ミステリーベスト10 第1位、本屋大賞ノミネート作。あのグリコ森永事件を下地にしたミステリー。評判に違わぬ傑作。

    実際の重大事件をモデルにした小説はその真相まではハッキリと描かずにお茶を濁す場合が多いのだが、本作はこれが真相なのかも知れないというリアリティを感じるレベルまで描かれており、非常に読み応えがあった。

    物語は曽根俊也と阿久津英士の二人の主人公が未解決の『ギン萬事件』の真相に別角度からアプローチしていく展開であり、後半に2つのアプローチが交わることになる。曽根俊也は父親の遺品のカセットテープに幼い頃の自分の声で犯人が警察に送った指示が録音されているのを知り、父親の友人である堀田と共に事件を調べる。一方、大日新聞文化部の記者である阿久津はテレビ特番のために『ギン萬事件』の取材を命ぜられる。

    また、事件の真相だけでなく、登場人物の背景や人生までが綿密に描かれ、それが物語に深みと奥行きを与えている。

    ハイブリッド型総合書店hontoの『塩田武士サイン本&セレクト本プレゼントキャンペーン』に当選し、送付して頂いた作品。

  • 日本犯罪史上最大の未解決事件のひとつである「グリコ森永事件」。
    大企業の社長を誘拐するという大胆な手口。
    企業に脅迫状と毒入り菓子を送り付け、毒入り菓子をばらまく。
    マスコミに警察を愚弄するような挑戦状を送り付ける劇場型の犯罪。
    容疑者として浮上した「キツネ目の男」
    一年半にもわたって複数の企業をターゲットにし派手に立ち回りながらも、
    「もうゆるしたる」の一言で闇に消えてしまった「かい人21面相」…。
    その「グリコ森永事件」をモチーフにしたフィクション。

    京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中から
    カセットテープと古びた黒革のノートを見つける。
    ノートは英文で書かれていて読めない…しかし最後の方に「ギンガ」・「萬堂」と
    日本語表記がされていた。共に日本を代表する製菓メーカーだ。
    カセットテープを再生すると、幼い頃の自分の声が聞こえてきた。
    それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの
    音声と全く同じものだった…。
    大手新聞社の文化部の記者・阿久津英士
    年末企画の昭和・平成の未解決事件の特集に文化部なのに強引に駆り出される…。

    物語は事件を追う記者の阿久津と子供の頃に自分が関わっていたと気付いた曽根の
    二人の男性の視点で展開していきます。
    丹念に取材をされたとわかる内容で、非常に細かい所まで描写されていて
    グイグイと引き込まれていきました。
    余りにも細かくて息苦しい緊張感。
    これは本当にフィクションなの…それともノンフィクション…って思う位ドキドキした。
    最初は面倒な仕事を押し付けられたと腐っていた阿久津が、次第に真相追及に
    執念を燃やしてゆく。
    事件の重大性や影響力や残酷な真実に押しつぶされそうになる曽根。
    二人が交錯した時真実が明らかになっていく…。

    記者の阿久津が良かった~(*´ `*)
    最初は文句を言ってたのにいつの間にか、真剣に犯人の実態に迫ってゆき、
    被害者に寄り添っていく中で、記者としても一人の人間としても成長して
    ゆく姿が頼もしくってとっても好感が持てた~( ˶´⚰︎`˵ )
    未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在するのですね。
    それにしても長かった~重厚でした(,, ´ ・・` ,,)

  • 多くの謎を残したまま未解決となった「グリコ・森永事件」モデルにしたフィクション。

    「グリコ・森永事件」を断片的にしか覚えていなかったので、どこまでが史実に基づいているのかわからなくなるくらい、よくもまあこんな着想を・・・と感嘆する。

    確かに、子供の声がこの犯罪に使用されていたし、こんなの言わされておかしいと思わないのかな?と話したような記憶がある。

    犯罪に加担させられた子供がそれを覚えていたら、この小説に書かれていたような人生だったかもと思うと、今さらながらゾッとする。

    30年以上経って、こんなにスルスルと新事実が出てくるわけがないと思いつつも、その年月を経てこそ、ずっと心のどこかにひっかかっていたことを取材などをきっかけに吐き出すということもあるかもしれないと思ったり。

    小説の最後の最後で、少しだけホッとできたが、京都でテーラーを営む曽根俊也のように平凡な人生を歩めることの方が稀な気がして、気持ちが沈む。

    世の中から、子供の尊厳が踏みにじられることだけはなくなって欲しいと、いつもながら願わずにはいられない。

  • 戦後を代表する未解決事件、「グリコ・森永事件」の真相はこうだったのか、と納得しかねないほどリアルに描かれている。
    「子供を巻き込んだ事件なんだ」という著者の強い思いが生み出した労作と言っていい。事件に翻弄された、かつての子供たちの人生の切なさに、忸怩たる思いを禁じえない。
    遅々として進まぬ展開に、なかなか身が入らなかったが、遂にたどり着いた犯人との会見からは、一気呵成に読み終わった。

  • 「グリコ・森永事件」の事はなんとなく覚えてるくらいで、実際の事は何も知らなかった。
    読み終わってから、少し事件をネットで調べてみたら、ほぼ内容的には一緒で、子供の声の脅迫のテープから作者は話を膨らませていったのかなと勝手な解釈。

    途中まではいろんな人の聞き込みがあって、誰が誰やら内容がうまく頭に入らない時もあったけど(少しずつ日数かけて読んでたので)、新しい事実が出始めてからはどんどん読み進められた。

    途中、新聞記者が岡山のラーメン屋さんに訴えかけるシーンは目に見えるようで、凄くグッときました。後半はもう圧倒されて読みました。

  • 昭和を揺るがした劇場型犯罪・グリコ森永事件。

    かい人21面相を名乗る犯人グループは、手を替え品を替え、企業を脅し、警察を愚弄し、食の安全を人質に取り、そして闇に消えていった。

    数ある犯人たちの手法で、最も衝撃的だった一つに、子どもの声による恐喝テープがあった。

    父から引き継いだ「テーラー曽根」の看板を掲げる俊也は、父の遺品の中からカセットテープを見つける。
    再生するとそれは紛れもなく自分自身の子どもの頃の声。
    そして、あの事件で使われた、あの声だった。

    子どもの菓子を標的にするだけでなく、犯罪に子どもを利用した犯人たち。

    大日新聞文化部記者の阿久津英士は、イギリスにこの事件の取材で出張する。時効をとっくにすぎた難事件の前に、取材は空振りを繰り返し、デスクからの容赦のない叱責を浴びる日々。
    その中で、長い間闇に埋もれていた事実が少しづつたぐり寄せられる。

    これまでも、グリコ森永事件を題材にした作品があった。
    一橋文哉の「闇に消えた怪人」。
    髙村薫の「レディ・ジョーカー」。

    この複雑怪奇な未解決事件に、「加害者にさせられた子どものその後の人生」というテーマで挑んだ傑作。

    消えない闇、消してはいけない闇に光が当たる。

  • 2017年6月24日読了。グリコ森永事件を題材とし、仮想の話に仕立てた本作はグリコ森永事件を知らなかった私には最初は何のことかわからなかったけど、Wikipediaでグリコ森永事件のことを調べながら読んだら、子どもを巻き込んだ卑劣な事件だったんだなと知った。グリコ森永事件の子どもたちも今もどこかで生きてるはずで、事件のことを知ってるのかわからないけど、出来れば幸せに過ごしていてほしいと願った。

  • とてつもなく複雑なジグソーパズルを
    一か月間かけて、ようやく完成させることができた、
    そんな濃厚な読後感を持ちました

    史実をベースに
    その一つ一つの出来事を丹念に物語の中に織り込み
    想像上の人物がかくもあるやと思われるぐらい
    リアルに描かれていく
    事件に巻き込まれた子供たちの30年後の人物たちが
    物語を担っていくのにも引き込まれてしまいます

    そこに新聞記者としての記者魂
    犯罪に巻き込まれてしまった家族の怖れや葛藤
    犯罪被害者への手立てや援助 
    さまざまな人間の苦悩
    それでも 見つけ出す希望
    読んでいる途中に何度も
    自分の中の感情を激しく揺さぶられました

    ページを繰る手がとめられない
    という表現がまさにぴったりの
    重厚な一冊でした

  • 硬質な社会派ミステリで中盤までは読みにくかったけど、よくここまで考えて書かれているなぁ…と。これが真実かと錯覚してしまうほどで読んでいて不安を感じた。先日ドロップの缶にある開封すると<開封済み>とつくシールについて、子供たちに聞かれて、当時中学生だったのでグリコ森永事件のことを説明したばかり。
    当時はテレビの報道がセンセーショナルで、田舎だったし大袈裟だな…程度でした。ネットもまだ身近ではない時代だったので報道されない裏側なんて興味もなく、株とか仕手なんて今の今まで詳しく知らなかったので、色々と衝撃を受けることが多くて驚きました。様々な事件も経済も全部つながっていて意思を持った生き物みたいに思えてならなかった。

    5章の途中からは一気読みで引きこまれてしまい曽根サイド、阿久津サイド、欧州サイドが重なるあたりは圧倒された。このままいったら終盤はどうなるのだろう…とハラハラしながらページをめくってしまった。家族、親子ものな面もあるのでホッとした反面、物足りなさも感じたり…。思わずのめりこみそうになったけど小説に戻ったような終盤にホッとした。ちょっと『蛍の森』的な展開を思い出した。

    史実になるべく基づいてこうだったのかもしれないという思いで描いたという念、想像力と構成力はすごいな…と感じた。星3.5だけど4で。

  • グリコ森永事件を題材にしたミステリー。自分の伯父が事件の犯人ではないかという甥っ子と、過去の未解決大事件の特集に抜擢された大日新聞の記者の二人が事件の真相を追う展開。
    最後は加害者側の家族という本当の被害者が描かれ、涙が止まらない。傑作!!

  • 迷宮入りのまま時効を迎えたグリコ森永事件をモデルに、実際の出来事をなぞりながら犯人を暴いていくフィクション。

    誘拐、脅迫に加え、毒入り菓子をばらまきマスコミに挑戦状を送りつけるなど、昭和の劇場型犯罪の代表格とされるこの事件は、手がかりが多数ありながらも未解決に終わっている。キツネ目の男の似顔絵は当時繰り返し報道され、今でも記憶に残っているほどだ。
    読後、実際の事件が気になって調べたところ、犯人については諸説あり、本作にも出てきた仕手筋や暴力団、警察関係者、元左翼、同和関係など様々。また、警察の失態が取りざたされ、責任を問われた警察官の自殺も起きていた。

    そんな中、作者は子どもの声の録音が脅迫に使われたことに着目し、その子が大人になった今どうしているかをメインに据えている。
    事件に関する部分は極力史実どおりに再現したというだけあって、綿密な取材に裏打ちされた丁寧な描きかただ。そのため前半は説明的で、少し退屈。真相が解明されていく終盤は、人間味を帯びたドラマが一気に盛り上がり、引き込まれる。

    横山秀夫を思わせる落ち着いた文章だと思っていたら、彼同様に新聞社に勤務していたと知り、納得した。
    同じテーマを扱った高村薫の『レディ・ジョーカー』、以前読んだけれど覚えていないので、これを機会に再読したい。

  • 架空の会社名にしてあるものの、グリコ森永事件をモデルにした作品。事件については極力史実通りとのこと。ハイネケン経営者誘拐事件も含め、知らなかったことも多く、そのあたりの描写はノンフィクションのような感じ。
    意味も分からぬまま、事件に巻き込まれた子どもたちに着目しているのが、目新しい。意味も分からず犯罪に加担した子どもたちが、どのような人生を歩むのか。フィクション部分の切り口が新鮮で、読み応えがある。

  • 取材にきっちり時間をかけて書かれたんだろうなー、という感じに好感がもてる。
    エンタメとしてとても楽しく読んだけれど、唯一にして最大の疑問は、自分の子ども時代の声って自分で聞いてすぐわかるか?ってことかな。わたしは絶対聞いてもわからない(笑

  • グリコ森永事件の真相がうまい具合に
    小説化されていた。
    未解決事件がなんか、解決した気になった。

  • グリコ森永事件をモデルとした本格ミステリー。
    主人公である記者と事件関係者?の甥っ子がそれぞれの思いや目的を持って、複雑に絡み合った事件の真相の糸を、一本一本解いてゆく。
    前半はなかなか解けずに読むスピードも遅くなりがちだったが、中盤あたりから一つ一つが明らかになり始めて、そこからは頁を繰る手が止まらなくなる。
    舞台は関西と、ロンドン。時々東京。たくさんの、あらゆる人達が事件にかかわり、日本中を大騒ぎさせるに至る。
    ようやく真相が明るみになり犯人が分かり、こんな大きな卑劣な事件を起こしたからにはどんなすごい動機があるかと思いきや。。。
    私的には、今回の犯人の考えにはあまり同情できないし、子供を巻き込んで人生を狂わせてまで起こすような事件でもなかったと、フィクションなのにとても悔しい思いでいっぱいになった。
    しかし実際起きている事件って、裏を返せば動機は馬鹿らしく自分勝手で、同情の余地もないものなんだろう。犯罪なんてそんなものなんだな。

  • 今年読んだ本では間違いなくベスト。グリコ森永事件をベースにしたフィクションだけど、実際の犯人像もこんなものじゃなかったのかって思わせる。久しぶりに寝る時間も惜しいほど没頭した。

  • 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった―。
    -----------------------------------------

    プロローグからいきなり衝撃的な事実。それからエピローグまでの7章で、真実を探してゆく。主人公は京都でテーラーを営む曽根俊也と、大日新聞文化部の記者の阿久津英士の2人。阿久津は未解決事件特集としてギン萬事件の真相に迫るよう言われ、手掛かりがほとんどないところから始めてゆく。
    実際にあったグリコ・森永事件をフィクションで推理するー時効を迎え、亡くなった加害者もいるがその家族は苦しみ続ける。実際に公開された「キツネ目の男」や「子どもの声を使ったテープ」もなんとなく覚えているので恐怖感が増すした。
    曽根と阿久津がどこで交差するのか、真相は!?などドキドキしながら読み進められた。登場人物が多いわりにはそんなに整理しなくても読めたし面白かった。

  • 「グリコ森永」を下敷きに、事件関係者と記者がそれぞれ真相に迫っていくというフィクション作品
    いつしか双方は交錯し、行き着く先にあるのははたして何か?

    「着地点はどうなる?」と思いつつ、分量の多さにもかかわらずに引き込まれる作品でした

    ただ、あの事件の記憶のある世代と、ない世代では感じるところは大きく違うのだろうと思います

  • 読み終わって表紙に戻ると、骸骨と子どもが見つめ合う姿に、悲しみや恐怖といった感情がぐるぐると心を彷徨い続けているのを感じた。

    世間を騒がせたグリコ森永事件。
    といっても、私はこの事件について、キツネ目の男、「たべたら死ぬで」の文言など、目立つ部分しか知らない。
    ましてや、子どもの声で録音されていたことなど。

    著者は『「子どもを巻き込んだ事件なんだ」という強い想いから、』本書を執筆したと語っている。
    その想いは作中から確かに伝わってくる。
    加害者の家族であり、被害者である俊也や新聞記者の阿久津。
    この二人の心情と行動が次第に変わっていく(それは正義感だけの単純な構造ではなく)ことから読み取ることができる。

    主人公二人がそれぞれ追っていく未解決事件。
    その事件の関係者たちは姿を秘匿し、記憶を違え、長い年月を生きてきた。
    「正義」とはなんだったのだろう。
    犯人たちが夢見た世界は虚構に過ぎず、その虚構を保つために、なぜ子ども達が犠牲にならねばならなかったのか。

    犯罪はどんな理由であれ、許しがたい。
    中でも子どもを巻き込んだものは未来を奪うことに他ならない。
    「子どもを犯罪に巻き込めば、その分、社会から希望が奪われる。「ギン萬事件」の罪とは、ある家の子どもの人生を粉々にしたことだ。」(386頁)
    ここに全てが表れている。

  • ミステリ仲間から借りた小説。実際の未解決事件「グリコ・森永事件」とほぼ同じ内容の「ギン萬事件」を再調査する新聞記者と、事件関係者の親族であるテーラーが、段々と真相に近づいていく。フィクションとノンフィクションのバランスが素晴らしい。面白かった、グリコ森永事件は興味があってよくWikipediaとか読みあさってたから展開覚えてて楽しかった。ほんとに事件の概要はほぼ同じ。名前を変えただけで、完全にグリ森事件をベースにしていて、そこからフィクションとして完成させているのが凄い。テンポが良く一気読みできる。

  • とても印象に残っている事件。物語と事実が頭の中で交錯する。子どもの声という視点に興味を引かれる。

  • グリコ森永事件をベースにしたフィクションとはいえ、ほぼ事件を忠実に追っているために、どこまでが事実でどこからがフィクションかわからなくなるほどの圧倒的な筆致、取材力。
    実際に事件で使われた、子供の声による身代金受け渡しの指示、その声を録音された子供たちの現在をも新聞記者阿久津は追っていく。ただしそれは、事件の全容を解明するという側面とは別に、事件が彼らに与えた影響を心から危惧し、彼らを罪悪感から救いたいという思いによって。

    実際の事件のことは詳細はあまり覚えていないので、ネットで調べながらこの本を読んだ。そして、事件にまつわる部分は概ねたどっていることを知り、この作者が果てしない取材で得たもの、もしかしたら作中と同じように犯人に肉薄したかもしれないと思うと、これは一作品にはとどまらないのではないかとすら思う。これだけの取材、情報収集力をもって描かれる大作、まるで山崎豊子さんのよう。

    そういえば、この事件のあと、お菓子がフィルム包装されるようになったのだった。キツネ目の男の似顔絵だけが一人歩きした印象もあったけれど、そもそもなぜこのような事件が起きたのか、巻き込まれた人たちの人生はどうなったのか、社会におとした影、その時代背景など、あらためて考えさせられるし、ひとが犯罪を犯すきっかけの微小さにも怒りを覚える。とにかく読みごたえのある大作。

  • グリコ・森永事件をモチーフにしたフィクション。当時学生だった私は『キツネ目の男』の似顔絵は今でも覚えている。毒を仕込んだお菓子の事は当時、世の中を震撼させていました。結局、迷宮入りになってしまったけど なぜ犯人を捕まえる事が出来なかったんだろう?とその後のニュースなどで思っていました。
    この小説を読み終えよく考えられてるなぁと もしかしたら...って気がしないでもないです。このテープの声の子供達は内容と同じように もしかしたら自分の声かと思いながら生きてゆくのはどんな思いなのか想像も出来ないが 巻き込んだ大人達の罪はとても大きいと思います。
    ラストは救われる思いがした。

  • あの事件には、こういった人々の人生があったかもしれない。
    フィクションに基づいたノンフィクションに、グイグイと引き込まれました。
    幼いながらも、あの事件と同じ時を過ごしていたからですかね…
    未解決事件だけに犯人は許せませんけど、もしテープの声の子がいるなら、穏やかな時を過ごしていてほしいと願わずにはいられません。

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罪の声の作品紹介

逃げ続けることが、人生だった。

家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。

「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。

未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する。
圧倒的な取材と着想で描かれた全世代必読!
本年度最高の長編小説。

昭和最大の未解決事件―「ギンガ萬堂事件」の真相を追う新聞記者と「男」がたどり着いた果てとは――。
気鋭作家が挑んだ渾身の長編小説。

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