小やぎのかんむり

著者 :
  • 講談社
4.12
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本棚登録 : 340
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200059

作品紹介・あらすじ

厳格で上から物を言う、父。それに従う、母。中学3年の主人公夏芽はそんな毎日を捨て去るように、遠く離れた寺でのサマーキャンプに応募する。だが、参加者はたった一人で…!?

感想・レビュー・書評

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  • 市川朔久子さん初読み。目当ての本が図書館になくこちらを借りる。ヤギの鳴き真似や「セイシュン」の呟きなど笑える部分と、なつめや雷太ら崖っぷちの所にいる者達と見守る側の繊細なやりとりが心に浸み込んでくる。もっとこの夏休みを見ていたい。

    • たださん
      111108さん

      「もっとこの夏休みを見ていたい」

      いい言葉だなと思いました。

      私はこの作品は未読なのですが、「繊細なやりとり」に、何...
      111108さん

      「もっとこの夏休みを見ていたい」

      いい言葉だなと思いました。

      私はこの作品は未読なのですが、「繊細なやりとり」に、何か思いやりの気持ちというか、はっとさせられるものがありますね。

      文章から察するに楽しまれたようで、なぜか少しほっとしている私です(^_^;)
      2022/01/10
    • 111108さん
      たださん お返事ありがとうございます♪

      残念ながらおすすめ本はなかったですが、かわいい表紙につられて読んだこの本が意外にささりました。
      市...
      たださん お返事ありがとうございます♪

      残念ながらおすすめ本はなかったですが、かわいい表紙につられて読んだこの本が意外にささりました。
      市川朔久子さんちょっとこれから読んでいきたいです!
      2022/01/10
  • 以前、ブク友の111108さんが読まれていたのを思い出し、久々の市川朔久子さんだったが、まさか、こんなにシリアスな内容だとは思わなかった。

    夏休みにおける、自然がいっぱいのお寺生活と、山羊や新しい仲間達とのふれ合いにより、日々の生活って、こんなに楽しいものだったんだと、改めて実感する様子も清々しく、読み所なのだが、私は別の視点で書いてみようと思います。


    それにしても、本書の主人公「夏芽」や「雷太」の父親は(山羊の匂いに不快感を顕わにしていた母親も)、極端過ぎる例として書いているのかもしれないが、実際に、こういう親いるんだろうな。

    私の今の職場では、よく親子連れを見るが、時折、子供にとっての支えは、親しかいないんだと実感させられる出来事もあり・・・その一つが、なんでもない平らに見えそうな床で、躓いて転んだ子供に対して、横にいた母親のかけた言葉が、

    「普通、こんなところで躓かないでしょ」だった。

    その時に私は、「子供の普通とあなたの普通は違うと思いますよ」と、つい思ってしまうのだが、実際に子育てしている方も大変なんだろうなと思うとね。

    ただ、その時の母親の言った言葉一つ、ただそれだけが、子供にとっての正解みたいになってしまうことが、私にはとても怖く感じてしまって、それが積み重なって成長した子供が、果たしてどんな思いを心の内に抱えることになるのか・・・児童書を大人が読むことの意義というのは、当然あると私は思うのだが、本書の場合、子供のこうした体験や思いから、結果、思いもよらない方向へ進んでしまう可能性もあることを知ってほしいから、是非、大人に読んで欲しい。

    もちろん、夏芽くらいの高校生、そして中学生も、親に対する他人に言えないような悩み、苦しみ、モヤモヤ感があるのなら、一度読んでおくことをおすすめします。

    なぜなら、児童書として発売されることのもう一つの意義は、若い内に知っておいた方が良いことがあることを教えてくれることだと思いますし、これって、学校で教えてくれるのかな? 
    少なくとも、私の頃は教えてくれなかったな。


    『その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か?』

    『家族が好きになれないって、けっこうツライのよね。──自分がすごくひどい人間みたいで』

    『子どもはみーんな、のうのうと生きてればいい』


    正直なところ、親と子の関係性について、一部、断定的な書き方が、気にならなくはなかったが、それでも読んでみて、こういう考え方もあるんだといった、今後の人生における、新たな視点のひとつにはなるのではないかと思っております。


    それから、最後にもう一つ、大切なことを。

    物語で、夏芽が落ちかけたような負の感情を人間は持っているということと、タケじいが厳しい声で言っていた『同じ場所に落ちるんじゃない』。

    この二つは同義であって、私も痛いほど、そうしたい気持ちは本当に本当に分かるんだけど、それでもやっぱり、これはしちゃダメだよと。

    おそらく、私が若い頃は、絶対に聞かなかったと思うので、説得力は弱いんだけど・・・今の年になって、やっと分かってきました。

    だから、これを若い内に、心の片隅に覚えておいてくれれば、きっと人生が、もっと楽しくなる気もするんだよね。

    • たださん
      111108さん、返事のお返事、ありがとうございます♪

      やはり、私の場合、自分自身の体験したことが影響すると、あれこれ書きたくなるようでし...
      111108さん、返事のお返事、ありがとうございます♪

      やはり、私の場合、自分自身の体験したことが影響すると、あれこれ書きたくなるようでして。物語は物語として楽しめばいいのですが・・やはり、親と子の関係性の大切さが、メッセージとして含まれているなと感じましたし、夏芽のその後も、ものすごく気になって。

      何だか、お褒めのお言葉を頂き、ありがとうございます(^_^;)

      でも、111108さんのレビューも、問題を掬い取っていると感じさせられるものがありますし、文章の端々に、私には無いものを持っておられる感性を実感し、それがすごいなと思います(^_^)
      2022/08/28
    • 111108さん
      たださん

      何か私のレビューの場合「上手く書けないので、詳しくはたださんのレビュー読んでくださいね」という感じなんですよ〜(≧∀≦)
      たださん

      何か私のレビューの場合「上手く書けないので、詳しくはたださんのレビュー読んでくださいね」という感じなんですよ〜(≧∀≦)
      2022/08/28
    • たださん
      111108さん

      またまた~
      お上手なんですから、もう(^^;)
      111108さん

      またまた~
      お上手なんですから、もう(^^;)
      2022/08/28
  • 図書館のYAコーナーに配架されているのは、わかっていたが、夏休み中は子どもたちが優先かなと思って今やっと手に取った児童書。

    可愛いヤギの表紙におもわずにんまりしてしまうが、児童書とは思えないほどの熱量で、涙腺も緩んでしまった。

    厳格な父といっしょにいるのが苦痛で、夏休みのあいだ田舎にある山寺のサマースティに参加した夏芽。
    たまたま同じ日に母親に置き去りにされた雷太。
    そして、近くに住む葉介が、学校で飼育しているヤギの後藤さんとビンゴとクララを草ひき用として連れてくる。

    ここでの生活で明らかになる雷太のこと。
    そして、優しい美鈴さんや穂村さん。
    住職であるタケじいは、見た目も振る舞いも住職らしくなく説法を言うこともないのだが、陰でしっかりと子どもたちのことを見ている。

    美鈴さんが、以前にそのタケじいに言われたことをそっと夏芽に言う。
    「その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か?」

    子どもが我慢をすることをみるのは辛い。
    それがあたりまえになっているとわかってないのも酷である。

    夏休みが終わってしまう。
    帰らなけばならないときにタケじいが夏芽に言った言葉は忘れることができない最高のものだと感じた。

    「親子は、縁だ。あんたとこの世を結んだ、ただのつながりだ。それ以上でもそれ以下でもない」

    「愛とか絆とか、そこに意味を持たせようとするから、なんだかおかしなことになる。そんなもの、運がよければあとから出てくるもんだ。ないものをあると仮定するからゆがむ。苦しむ。はじめからありはしないのに」

    「愛情を育めた親子は幸いだ。ただ、それがうまくいかなかったとしても、それはあんたのせいじゃない」

    「子は親の、そのまた親の、ねじれに振りまわされただけだ。因果だよ。当然の結果だ。あんたはなにも、悪くないよ」

    何度も言うが、児童書とは思えないほどでぜひ大人にも読んでほしい。

    自分が子どもだった頃を思い出したり、親になり子育てしてた頃を思い出す。

    自分の父も厳しかったし、殴られもした。遊んでもらった記憶もなくとても怖い存在だった。
    甘えることなどできなく、早く家を出たかった。

    こんなふうに育った自分が親になり、まともに子どもは育ったと言えるのか?と考えてしまう。



  •  家庭内で父親のモラハラに悩む中3の夏芽は、耐えられず、夏休みを利用して寺のサマーステイに行く。そこでの体験を通して、生きていくうえで大切なことを学ぶ。

     読みながらメモを取らなかったので、色々と取りこぼしている気がしますが、メモを取ることで途中で意識を途切れさせたくないほどに、本の世界に引き込まれました。親子関係、摂食障害、親からの虐待、子供を亡くすこと…など、様々な深刻な問題が出てきますが、それぞれの事象のことだけを書いているのではなく、あらゆる問題の根底に必要な力、理解、想いなどを教えてくれています。大人が読んでも考えさせられたり救われたりしますし、子供も、早い段階で知っておくと助けになることを、ヤギと人との触れ合いの楽しい描写が大半の中、所々に、優しく教わることができます。

    人に大切なことを教えることができる人。ここでは寺の和尚のタケじい。とても厳しいんだけれど、相手を想ってくれているが故の厳しさで、自分を大切にしなさい、一人一人が宝なのだよと教えてくれる。良くない所もしっかりといさめてくれる。未熟者であっても、相手や自分と真摯に向き合っている人であれば、チャンスを与え、その人の成長を見守りながら育ててくれる姿に心を打たれた。

    その我慢は、自分を生かす我慢か。それとも殺す我慢か? ( 和尚のタケじいの言葉)

    うたをうたうといいよ。
    かなしいときはね、
    すきなうたをうたうと、
    じかんがたつよ。(5歳の子供の言葉)

    別に何かを学ぼうと思わずとも純粋に物語を楽しめるし、しかも、押し付けがましくなく心に響く事が書かれている、この上ない良書でした。人も世の中も、転がり落ちるように歪んで崩れていっているここ最近。このような本が必要だと思います。

    ======
    「そうだな、あんた一人じゃ無理だろうよ。未熟者だからな。おおかた自分の人生に引きずられるし、縛りもするだろう。だが、他の人間も手伝えば、そうひどいことにはならんだろう。」

    「親子は、縁だ。あんたとこの世を結んだ、ただのつながりだ。それ以上でもそれ以下でもない。愛とか絆とか、そこに意味を持たせようとするから、なんだかおかしなことになる。そんなもの、運がよければ後から出てくるもんだ。ないものあると仮定するから、ゆがむ。苦しむ。はじめからありはしないのに」

    「愛情を育めた親子は幸いだ。ただ、それがうまくいかなかったとしても、それはあんたのせいじゃない」

    「子は親の、そのまた親の、ねじるれに振り回されただけだ。因果だよ。当然の結果だ。あんたは何も、悪くないよ。あと、くれぐれも言っとくが、許してやれとか言う連中には関わるな。あれはただの無責任な外野に過ぎん」

  • 中学3年生の夏芽は、ケガの療養のために自宅にいる高圧的な父から逃げるために、山寺のサマーステイに参加することにした。そこには、ちょっと変わった(不真面目な?)住職と、その孫娘、修行中の若い僧侶がいたが、参加者は彼女一人だけだった。最初の晩、彼女は自分の布団の中に眠る子どもを発見する。それは、母親からここに隠れているように言われた5歳の男の子だった。彼らの奇妙な同居生活(サマーステイ?)が始まる。

    話が進むにつれ、かわいいタイトルと表紙の写真からは想像もできない重い話が広がる。その重さが、田舎の美しい光景と人々のやさしさに晒され、癒されていく。

    ユーモアを挿み込みながら心の痛みと向き合うところが市川朔久子らしい。

    虐待されていた子どもが新しい環境にすぐに馴染んでしまったり、思春期の少女が、ただただ真面目に自分の罪と向き合ったり、……う~ん、ちょっとそれはあまり現実的じゃないでしょうと思われる点も散見しましたが、それでも、前を向いていきたい若者たちのエネルギーで読ませてしまいます。

    難易度は高学年ですが、内容を考えると中学生で良いと思います。

  • 家庭が安住の場所ではない、または学校も同じく、というような設定の話ばかりの昨今である。
    この話も私立の女子校に通う一見恵まれた環境にいるように見える主人公が、実は苦しい心を抱えて生活している、という設定だ。
    そんな状況から抜け出したくてお寺のサマーキャンプに参加。参加者は自分だけだが、お寺を取り巻く人々と生活にやっと普通に息をする感覚を取り戻す…。
    主人公と同年代の子ども達にとって、この手の本はどうなのだろうか?といつも思ってしまう。主人公の成長を描いていて、心を打たれるのだが、当事者世代には見たくない現実を再び見せられる感じがしないだろうか?だから思い切りフィクションのラノベに流れてしまうのだろうか?とかついつい考えてしまう、感想からは逸脱しているが…。

  • 夏休みのお寺のショートステイ。

    自宅にいたくない中学生女子、
    親に半ば置いてけぼりにされたような5歳の男児。

    住職らしくない住職のもと、
    お寺過ごす日々。

    シンプルな生活中で自分を取り戻す彼ら。
    とてもよかった。
    お寺の大人たちがみんな、
    きちんと生きようとしている人たちで、
    そして子どもに温かい。

    みんな宝。
    子どもはもちろん大人も。

    ヒーローはいないけど勇気のでる作品でした。

    後藤さんがよかった、いい味出してた。

    むしろ後藤さんが一番よかった。ヤギだけど。

  • 夏休みの読書感想文にどうですか?シリーズ

     夏芽は、暴君のように振る舞う父に、心も身体も壊されてしまうような恐怖を感じていました。中学3年の夏休み、夏芽が家族から逃げるように選んだのは「サマーステイ」と名付けられた山寺での暮らしでした。特別なプログラムは何もない毎日でしたが、そこには人は誰もが「宝」であると信じられる優しい時間が流れていました。

  • 地元では人気の中高一貫の女子校の中3の万木夏芽(まきなつめ)は、夏休みを由緒ある静かなお山寺でサマースティに参加することに。しかし、行ってみたら参加者はたったの一人。お寺には住職と見習いの穂村さん、住職の孫の美鈴さんがいた。そこに、DVの父親から逃れてきた母親が、勝手に置いて(預けて)いった5歳の雷太も加わって過ごすことに。
    やがて寺の草刈りのヤギ3匹と夏休み中ヤギの管理をすることになっている高校生の葉介も加わった。
    夏芽の生活に不穏な空気を抱きながら読み進めていくと、夏芽がサマースティに参加したわけが、どんどん明かされ納得と同時に辛くなる。そして、夏芽が暖かい人たちに囲まれて、辛い思いをしてきた雷太を愛おしむことで、自分を肯定していく。

    ヒドイ親を否定する自分を良くないと思う子どもがいる。いじめられても自分が悪いからだと考えてしまう人がいる。
    悪い人に関わると自分が分からなくなってしまう事がある。生きていくには、自分を信じて生きて行くことが必要だ。

  • 父が交通事故に遭い家庭での療養生活をおくることになった夏。
    夏芽は、サマーキャンプに申し込み、一夏お寺で過ごすことにした。

    小さなヤギはほうり出され、中くらいのヤギは家から逃げ出し、大きいヤギは失ったものが大きすぎたのかな


    いたいのいたいのとんでけーの場面が好き。

    中くらいのヤギは、冠をもらったからきっとだいじょうぶだ。

    何年か前の職場に毎秋一カ月間ヤギが庭に放し飼いになってた。
    小説と同じく、女の子は機嫌を損ねるようなことをしなければ愛想がよかった。ずっとモグモグしてたけど。
    が、一度気性の荒い男子が来たことがあって、体を洗わせてくれないから、やはり匂いがすごかったのを思いぢした。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。『よるの美容院』で第52回講談社児童文学新人賞受賞。同作でデビュー。『紙コップのオリオン』は厚生労働省児童福祉文化財選出、『ABC! 曙第二中学校放送部』は第49回日本児童文学者協会新人賞受賞、第62回青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出、『小やぎのかんむり』は第66回小学館児童出版文化賞を受賞する。ほかに『おしごとのおはなし美容師 かのこと小鳥の美容院』などがある(以上講談社)。

「2018年 『よりみち3人修学旅行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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