竜と流木

著者 :
  • 講談社
3.42
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200660

作品紹介・あらすじ

太平洋に浮かぶ美しい島、ミクロ・タタに棲む愛くるしい両生類。
彼らは島の守り神と言われている。

ところが、インフラ整備のために泉をつぶしてから
島の異変が始まった。

真っ黒で俊敏なトカゲのような生物が、昼となく夜となく島民を襲う。
咬まれると口中の毒でショック状態に陥り、最悪死ぬ者も出てきた。

広がり続ける被害。しかしこれは始まりに過ぎなかった……。

感想・レビュー・書評

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  • 生き物の種の保存するという根底にある本能。生態系というものがいかに危ういバランスの上に立っているのかを改めて感じさせられる。同時に、発展途上国での医療の提供や当たり前の事が当たり前に伝わらないもどかしさも感じた。

  • 篠田節子さんの、事態がだんだん収集のつかない状態に陥って行くパターン。不思議な両生類への愛情が先日読んだ「アクアリウム」と少しかぶる部分がある。
    私は両生類より爬虫類が好き。
    ジュラシックパークにでてきた小さな恐竜コンプソグナトゥスが襲ってくるイメージが浮かんだ。
    昔、フィリピンのセブ島で宿泊したホテルが、周りを高い冊で囲まれていて、門のところに銃を構えた守衛がいた光景を思い出しました。リゾートはもともとの現地の生活から切り離されているんですね。
    物語の設定、起承転結のバランス、最終的なオチ、どれも素晴らしいもので満足でした。
    篠田さんは環境問題に関心があるのかしら?
    これもまた主人公の男性視点のお話でした。
    あっけない感じもしたけれど、さらっと面白かった。

  • 人が交流することで、その地にいなかったものが住みつき独自の進化を遂げることがある、ほんの小さな可愛らしいと思っていた生き物であっても。
    安易な考えが生き物の生態系を変えていくだけでなく、人まで変えてしまう。

  • 可愛い両生類を救おう!
    と隣の島に移したら大変なことに。
    なぜが陸上にあがるようになり、人に噛みつく。
    噛まれると、口中の細菌に感染してしまうのだ。
    自分たちの暮らしに適した体に変化しているだけなのだろうけれど、人間にはそれが脅威となる。
    人間から見た、益、不益で物事を判断してしまうけれど、相手からみたら人間も不益なものなのかもしれないわね〜。
    変に手を出して、「あぁ、いいことをした」とか思わないことだと思う。
    生物が絶滅すればいいとは思わないが、直接手を出す以外の方法もあるのではないか。

  • 2022.4.4-506

  • 未知の脅威と人間の闘いという点で、コロナの今にあいそうで読んだ。
    平和主義者で研究家気質、人のよさそうな主人公と、ウーパールーパーを思わせる南国の稀少動物のふれあいで、始まりはなごやか。が、しかし。
    厳しい環境に放り出された生物は、命を繋ぐために適応する。
    命はタフ。人間も同じ。

  • 非常に気持ち悪い。こんな生き物がいたら、恐ろしすぎる。環境によって、生き方を変えていくのは適応するために必要なんだろうけど、なまじこんな変化もありえそうなところが怖かったです。メガロ・タタの子供が大人になると容姿が変わるってのも凄い伏線でもってきたなと思いました。

  • 久々の篠田節子。上手い作家なんだが、作品が多すぎて、ついつい読みそびれる。この作品は、特にどこかで取り上げられていたものではなく、なんとなく手に取ってみた1冊。

    太平洋のリゾートアイランドで発生する危険外来生物繁殖のパニック小説。外来種とはいっても、隣の隣の島に生息していた、一見人畜無害の可愛い両生類だったはずなのだが…。グレムリンの本歌取りなのかなというのが第一の感想。

    可愛いから、カッコ良いから、他に飼ってるやつがおらんから…などという理由で、外来種をペットにして飽きたら捨てる…みたいなことをしている奴は大勢いる。
    「とってきた生物を殺すのはかわいそうだからこの池に放流しよう」みたいな悪意のない行動を寄る人だって山ほどいる。そういう連中の行動が、どういう結果を生むのか、テレビ番組の「水を抜く云々」なんかで取り上げられている通り、ひどい環境破壊や生態系の壊滅を産むことになりかねないのである。

    この小説では、最終的にある方法で、危険外来生物の駆除に成功しているのだが、そのある方法というのも実は生態系維持という意味ではかなり危険な行為となりえるし、その解決策として土地の人々が取った方法も下手するととんでもないことになりかねない危険性をはらんでいる。
    作品自体はヒステリックにパニックを描写するようなシーンは少ないのだが、文章の奥に隠れた危機に気付くことで、格段に恐ろしさが増す。ジワーっとくる恐怖感はさすが。

    実は、この作品の主人公キャラって俺のかなり嫌いなタイプ。でもそれがこの小説ではエエ方向に振れている。キラいなヤツがパニックになるからオモロいって趣向もあるんやなぁ。

  • ぞわぞわくる。
    ホラーとオカルト書かせたら最強だと思う。

  • 著者の「絹の変容」系のパニック小説。メガロ・タタ島で島民と共存し可愛がられていた「ウアブ」。そのウアブの生態系が乱れた為に人間を殺してしまうほど危険な生き物になった。パニックになる人間たち。著者の巧みな表現で、蟻がウアブを襲う場面はちょっとゾッとした。

  • 2019.9.23.読了

  • 篠田さんの『アクアリウム』と『夏の厄災』を足した感じ。
    ドキドキしながら一気読みしました。
    ただウアブの可愛い姿をうまくイメージ出来ず、主人公が夢中になってしまう気持ちにうまく乗っていけなかったのが残念。

  • 篠田節子のパニックホラー!
    やっぱはずさない。
    あっという間に読了。
    その上、生物多様性の問題を見事に突いていて、安易な選択がどんな恐ろしいことになる可能性があるのかとても勉強になった。

  • この著者はこういうのも書くんですね。架空の両生類の設定がリアルでその興味で読みました。登場人物のサイドストーリー的なエピソードもあまりなくストーリー展開に集中できました。

  • 人は、どこまでも罪深い。

  • 友達がウーパールーパーを飼い始めたせいか、どうしてもウアブの姿がそれにしか想像できず。
    ウーパールーパーも水にいれば、可愛い姿らしく、水から出すとヤモリ?になるとか。
    実際モデルは…どうなんだろう?

    だけど、さすが安定の篠田節子さん。
    比べるのはどうかと思うが、柚月裕子さんの作品を読んだ後なので、余計にそう思ってしまった。
    読んでいて安心感があるし。

    人間の都合で生き物を増やしたり減らしたりすることがいかに危険か、ゴミがもたらす思いもよらない進化、など。

    映像化してもいいかも…アリに襲われる場面なんか超怖いけど。

  • 侵略的外来種。
    人間のエゴが引き起こした災難。
    最後まで主人公は好きになれなかった。
    両生類に心寄せているのは分かるが、自分のしたことに覚悟がない。駆除するために行動を起こす人を、野蛮か歴史を知らない人と見下すようなところがあった。
    泣きながら捕まえて、殺すに忍びないからと、海に捨てる。沖縄やインドネシアに到達したのはお前のせいではないのか。
    可愛いから保護する、賢いから殺してはダメ、エコテロリストとあまり変わりないような。自宅の水槽はどうするのか。本当に黒トカゲにならないのか。情緒的なまま物語は終わった。彼の母親は精悍な男になったというけれども、同じことを繰り返しそう。

  • 解決編?がけっこうあっけない。半分自給自足の、金持ち老人のリゾートで成り立ってる島、アメリカの補助金なしでは成り立たない。本筋のテーマではないがこちらも考えさせられた。

  • アリが増えすぎ なんてことにはならないのかな。

  • アリ恐るべし、ぶるぶる。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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