セカイの空がみえるまち

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202183

作品紹介・あらすじ

『バッテリー』のあさのあつこ氏、推薦!
「せつないだけではない、美しいだけでもない。若い魂がぶつかりあい結びつき、現実を変えていく。眩しく衝撃的な青春小説が誕生した。」

帰宅する途中、立ち寄ったことのない新大久保の駅で降りた中学二年生の空良(そら)。彼女がそこで目にしたのは、大人が公然とむき出しにする他国の人への差別意識だった。

空良は、その街の、さまざまな国籍や環境の人たちが入り乱れるアパートで暮らすクラスメートの翔(かける)と、ふとしたきっかけで距離が近づく。

父親が理由を言わずに失踪した原因が自分にあると悩む少女と、自分の母親が誰なのか、どこの国の人間なのか、知らない少年。

セレブ彼氏の勘違いに振り回されて悩む親友をそばで見守る空良。野球部のライバルや顧問から露骨な嫌がらせを受ける翔。
ふたりは、中学校で起きる人間関係に翻弄されながら、いちばん大事なことから目をそらそうとしていた。それは、自分と、自分の家族との関係……。

何者であっても包み込む“東京コリアンタウン”に身をゆだねながら、ふたりは身の回りの現実たちと、気負いなく向き合えるように、ゆっくりと成長していく。

感想・レビュー・書評

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  • 父親が失踪し、それがきっかけで友人がいない中学2年生の空良は、ある日の下校中誤って新大久保で下車し、コリアンタウンに迷い込んでしまう。そこで外国人に対するヘイトスピーチに出会い、言葉の暴力に嫌悪する。その後、新大久保に住む同級生の翔と知り合い、仲良くなるにつれて、国境を越えた人としての付き合いや、噂に左右される人の気持ち等について思いを巡らせていく。

    領土問題に端を発するヘイトスピーチ
    父親の失踪に伴うクラスメイトからの裏サイトへの悪質な書き込み
    部活における厳しい年功序列への反発とそれに対する仕返し
    失職して在宅の父に対して言った「家にいないでよ」の一言と、その後の父の失踪
    名前も国籍もわからない母親への想いに迷わされる少年
    ……

    重いテーマが次々に投げかけられます。
    が、登場人物の心の動きが、どうもわかり辛くてついて行けません。
    例えば、翔に助けられた空良がなぜ怒ったのか?
    父と母が愛し合った夫婦だったとわかった時になぜ翔が荒れたのか?
    誰から見ても優しくて憧れの野上先輩が突然実は嫌な奴だったのはなぜなのか?
    なぜ空良の父は、娘に「家にいないで」と言われた直後失踪し、その後も連絡をしなかったのか?
    なぜ失踪している人が出国して、海外で働いていられるのか?
    色々なことがつじつまが合わないまま物語だけが進んでいくような気がします。

    急激に進んだグローバル化の反動なのか、世界的に内向きになっていると言われている現在。こんな題材が出てくるのは良いと思いますが、もう少し読み物としての完成度が欲しいところです。

    中学生向きとされていますが、高学年で十分です。

  • なんとなく手に取って読んだら凄く面白かった。1人1人の感情の向き合い方など、自分の頃を思い出しながら読んで共感した。楽しい作品でした。

  • 読み始めて、なんかこれは??
    と思っていたら児童文学でした。

  • 新宿を主な舞台に、中学生群像劇。一人ひとり「小さな秘密」があって、その秘密が「個人的なことは社会的なこと」として描かれる、珠玉のジュブナイル

  • 父親が失踪した少女・空良(そら)と、新大久保に住む少年・翔(かける)の交流を描く。
    空良の話と翔の話が交互に続くが、空良の人物像がいまいち弱く、翔の話で一冊書いた方がよかったのでは?と思った。

    コリアンタウンを扱った作品ということで、朝鮮をルーツに持つ人々のことを描いているのかなと予想して手に取った作品だったが、新大久保界隈の外国人は出ては来るものの、主人公二人のルーツがそうというわけでもなく、空良のヘイトスピーチや差別に対する考察もいささか感情的なものに思え、少し幼稚な感じがした。
    主人公が中学二年生である、読み手が中学生である、ということを差し引いても、もう少し、違った描写が出来なかっただろうか。
    設定はすごく惹かれる話で、主人公二人が互いに惹かれあっていく様子もキュンとするのだが、少し物足りないものを感じる。空良の父親に関しても、未消化な感じ。
    が、読み手が中学生ということを考えると、これ以上詰め込むのは苦しいだろうか。

    空良の話より、翔の話に共感した。世の中には色々な境遇の人間がいる。その中で、自分を失わずに、堕ちずに生きていくこと。それを支えるもの。人。
    ひとみさんの言葉に思わず胸を突かれた。

    中学生には読みやすいと思う。

  • ヘイトスピーチ。
    高校生の時、ヘイトスピーチをどう思っていたか。いや、政治に対し抗議する人たちをどう思っていたのだろうか。
    東京という都会で育った彼らは、いろんな文化に触れ、良くも悪くも環境に左右されることに対し、強くならなければならないし、考えて行動しなければならない忙しく、逞しく育たなければならんくて大変だと感じました。

  • 半年前に父が疾走した明大前の公立中学校2年の藤崎空良(そら)@上北沢
    母が誰だかわからなくて、父とは別に独りで暮らす高杉翔(かける)@新大久保

    同級生の二人がひょんなことから知り合い、新大久保の住人と知り合いながら、自分の思いを確認し、自分で歩くことを選ぶまで

    空良は吹奏楽部でトランペットを吹いている。
    父のことを揶揄されることもあり、まわりとあまり関わらずにいるが、ある日栃木からの転校生の宮瀬あかねと新大久保で会うことで少しづつ彼女にも変化が。

    翔は野球部の中堅になった。野球部のばかばかしい慣例をなくしたいと思っている。また甲子園に出ることを目標にしている。

    ふたりとも、自分の身に負の部分を抱えているため、他人に対しても、まわりの噂やひとつの見方で決めつけない。自分で判断しようとする。

    ひとみさん
    キムさん
    野上達也 吹奏楽部部長


    キーワード:ヘイトスピーチ

  • 父が失踪し母と暮らす空良(そら)
    母がだれだかわからず父も受け入れられない翔(かける)

    複雑な境遇にもがく少女はトランペットに
    少年は野球に道を求めるが...

    コリアンタウンを舞台に中学2年の少年少女が
    もがきながら自分や家族とむきあい成長していく物語

    「せつないだけではない、美しいだけでもない。
     眩しく衝撃的な青春小説」(あさのあつこ推薦文)

  • もう少し大久保から新大久保、百人町あたりの独特の懐の深さが見えるとよかったのだけれど。この年ごろの人を使ってでは書きにくいのだろうなあ。

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著者プロフィール

『セカイの空がみえるまち』で第3回児童ペン賞少年小説賞を受賞。『となりの火星人』、「恋する和パティシエール」シリーズ他作品多数。日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

「2023年 『リトル☆バレリーナ  きらめきストーリー☆3つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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