四百三十円の神様

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202220

作品紹介・あらすじ

「四百三十円の神様」
子供の頃からプロ野球になるという夢を追い続けてきた大学野球の大型遊撃手。ケガでプレーすることを断念し、友人の代理で入ったバイト先の牛丼屋で起こった小さな奇跡が、青年の心にほのかだが確かな灯りをともす。
「あの川のほとりで」
父から引きついた割烹を切り盛りする初老の男。妻との間にはすきま風が吹いて、口論が絶えず、息子たちとの関係も微妙な今日この頃。疲れた頭と身体を癒そうと釣りに出かけた渓流の河原で、すっかり忘れ去っていたが、心の奥底で最も会いたかった人に出会う。
「いれずみお断り」
肩を怒らせ、社会を斜めに押し切るように生きてきたアウトローが、年をとってすっかり落ちぶれた――そんな老人と病気の子猫を通してかかわってしまった獣医。迷惑しか被っていないと思っていたのに、その孤独な死を看取ったとき、思いもしなった感情が噴き出す。
「腐ったたぬき」
同級生に誘われて参加した高校の文芸部の「研究会」という名のディスカッション。今回の題材はなんと『文福茶釜』。繰り広げられるのは、曲解の嵐、荒唐無稽、抱腹絶倒のバトルロイヤルだった!?
他に「ヒロイン」「九月一日」「鍵は開いた」の三編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『九月一日』と『鍵は開いた』がよかった。

    九月一日は、関東大震災が起きた日であり、夏休み明け初日でもあり、四世代にわたる蕎麦屋にまつわるひとたちの悩みが問わず語り形式で語られる。平然と生きてるように見える年配者たちも、実は悩んで大きくなった(死なずに生き延びてきた)、という真実をお客の教師と姪っ子のひろちゃんが聴く。
    思い出話として登場する音楽教師はホント残念。「先生」も聖人君子ではないにせよ、クズすぎるのは、当たったひとは不運としか言いようがない。先生ガチャ。

    鍵は開いた
    前科三犯の中山さと子の錠前と刑事近松の鍵がピタッと合う場面はほっとする。悪餓鬼大石雄人の錠前もいつか開きそうな期待を感じる終わり方だった。

  • 鍵と錠前がカチリと合い扉が開く。その先にある素敵な場所。そこに踏み込むか否かは自分次第。鍵は遠くの何処かではなく、既にケツのポケット辺りに収まっている。なるほど幸へも不幸へもたどり着くのは己の意思が文字どおり鍵なんだな。少なくとも、道に迷うのは狸のせいではない。

  • 短編集。
    少し説教臭かった。

  • それなりに良い話だけどそれ以上ではない。
    2019.3.8

  • 『うなぎ女子』でハマった加藤元さん
    やはりこの人の作品、好きかもしれない。
    やさしくてほっこりする。

  • さらさらさら…
    あ、やば
    書く前にもう忘れたかも。
    入れ墨おことわりがよかった。

  •  あえてなのか、優しい救いを作らない。
     苦さが、味わいを生み出している。

  • 挫折しかけている大学野球選手、落ちぶれて孤独に老いていくアウトロー、母に捨てられ祖父に育てられた女・・・彼らに起こる小さな奇跡が、あなたの心に暖かな灯りをともす・・・え!?ちょっと待った!この「腐ったたぬき」ってのはいったい!?
    なーんでこれだけ意表を突いちゃってるわけ~~!?www

    ぬぬ、気を落ち着けて~~っと・・・ラストの「鍵は開いた」がよかった。うん、ズッコケたまま終わらなくてよかったよ、ホントにwww

  • 密接な人のつながりの中にひょこっと発生するような物語が7篇,特に「いれずみお断り」が良かった.昔の街には必ず居たようなおやじ,青山巳之吉.銭湯で彼のいれずみに圧倒された獣医の杉内亮平.何故か憎めないキャラクターに惹かれる.最後の場面で,巳之吉の死後現れた娘さんとの会話は,彼女の涙を誘う亮平の想いが絡み合ったものだろう.

  • 表題作含む7つの短編作品。

    かつて憧れだった野球選手をみた「四百三十円の神様」
    父になった今、父に会えたか「あの川のほとりで」
    シニカルな人情もの「いれずみお断り」
    「九月一日」と「鍵は開いた」は未来ある子供たちに。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京育ち。日本大学芸術学部文芸学科中退。日本推理作家協会会員。2009年、『山姫抄』(講談社)で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。『泣きながら、呼んだ人』(小学館)が盛岡のさわや書店が主催する「さわベス」1位を獲得。2011年に刊行した『嫁の遺言』(講談社)が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。その他に『蛇の道行』(講談社)、『四月一日亭ものがたり』(ポプラ社)、『ひかげ旅館へいらっしゃい』(早川書房)、『ごめん。』(集英社)など。昨年刊行した『カスタード』(実業之日本社)は奇跡と癒しの物語として多くの読者を勇気づけ、本作はその続編にあたる。不器用だけど温かな人情あふれる物語には、幅広い世代にファンが多い。

「2022年 『ロータス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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