ヴァラエティ

著者 :
  • 講談社
3.40
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本棚登録 : 786
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202268

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5

    6編の短編と1編のショートショートと2つの対談。
    あとがきで触れられていますが、まとまらなかった短編集です。
    ・おれは社長だ!
    ・毎度おおきに
    ・<対談>イッセー尾形
    ・ドライブ・イン・サマー
    ・クロアチア vs 日本
    ・住み込み可
    ・<対談>山田太一
    ・セブンティーン
    ・夏のアルバム

    最初の2作品が連作短編で、大手広告会社を脱サラして会社を興した38歳の社長。
    余りの甘い考えにハラハラさせられ、最初は妙に自信満々で嫌な奴って思っていたけど、
    憎めない可愛さがあっていつの間にか応援していた。
    2本で挫折してしまったとご本人が仰っていましたが、面白かったので
    続きがないのが残念です。
    17歳の娘がクリスマスイブに初めて外泊をしたいと言い出した「セブンティーン」
    母親の葛藤や心理描写がとても丁寧で良かった(*´▽`*)
    いつも思うけど、奥田さんどうしてこうまで女性の心理がわかるんだろう。
    凄いなぁって感じました。
    「夏のアルバム」も切なくって良かったです。

    どのお話もプッと笑ったり、苛々したり、共感したりと色んな感情が湧いて楽しめました。
    「あとがき」が一番楽しかったりして~(笑)
    とっても楽しかったし引き込まれて一気読みしたのですが、やはり話がバラバラで
    ちょっとだけ物足りなさを感じてしまったので★0.5下げました。

  • 6つの短編、ショートショートが収録された本。
    そのどれもがイメージの違う話で、テーマもバラバラ。
    まるで、ごった煮のような印象の本になっている。
    何でこんな本になったのか、というのは作者のあとがきから分かる。
    どれも軽いタッチで書かれた話で読みやすい。
    そして、イッセー尾形さん、山田太一さんとの対談が話の合間に収録されている。

    最初の話、2話は同じ主人公の話。
    主人公は30代で起業をする男性。
    彼は大手広告代理店に勤めているが、独立する事を決意。
    同僚を引き抜いて、ある程度の目算がありの独立のはずが、古巣の広告代理店に妨害されたり、あくの強い下請社長に翻弄されたり・・・紆余曲折ある様子が描かれている。

    最初は独立してまだ採算もとれてないのに贅沢な事務所を構えたり、大盤振る舞いでお金を使う様子に大丈夫か?とハラハラさせられる。
    だけど、そこは奥田さんの本なので、あまり深刻にならずコミカルに描かれている。
    思わずクスッと笑ってしまうシーンもあった。

    続く「ドライブ・イン・サマー」は全く違う内容の話。
    話は、中年夫婦が帰省のため、渋滞の高速道路の車の中にいるという状況から始まる。
    ハンドルを握るのは妻の方。
    妻はお人よしでその後、ヒッチハイクの青年を車に乗せるが、彼は非常識な人間で妻に性的な目線を向ける。
    ハラハラ、イライラする夫を横目に妻はそれから後もバスに置いてけぼりをくらった老女を乗せ、追突してきた車の子供を乗せる。
    その後もありえないようなトラブルが続き・・・というコミカルな話。

    まるでコントでも見ているような話で、軽く読める。
    最初、青年を乗せた後のくだりを読んでいて、この調子でこの男にイライラさせられる様子を描くのかな・・・と思いきや軽く予想を裏切ってくれた。

    ショートショート話の「クロアチアvs日本」は日本対クロアチアのサッカーの試合の様子をテレビ観戦しているクロアチア人の目線から描かれた話。

    「住み込み可」は、夫のDVから逃れて温泉地の食堂で住み込みの仕事を始めた女性の話。
    そこには人をいじめるお局さまがいて、特に目をつけられていじめられている女性がいる。
    彼女は暗い印象だが美人で、同年代の人との会話に飢えている主人公は彼女と親しくなりたいと思う。
    所が、彼女は自分の事をあまり語らず、自分の中に人を入れないようにしている。
    彼女には男がいるのでは?と想像し、確信していく主人公だったが・・・。

    これはオウムの逃亡犯をモチーフにした話。
    読んでいて、住み込み可の食堂なんてあるんだな・・・と思ったし、何もなく逃げてきた人間は健康保険証もなく不安な状態で、でもそんな人を救済するような方法とか場所もあるんだな・・・と、そこに関心がいった。

    「セブンティーン」
    友達の家に泊まると嘘をつき、彼氏と初めてのお泊りデートをしようという娘にヤキモキする女性の話。

    はっきりそうだと分かっていても、それを言葉にして注意する事ができない。
    だけど、心配・・・という母親の心が描かれている。
    同性どうしの暗黙の了解的な事を男性目線からこうも見事に描けるというのがスゴイ!

    「夏のアルバム」
    補助輪を外して自転車に乗る事がまだできない小学生の男の子が主人公。
    友達に自転車を借りたり、アドバイスしてもらったり、自転車がやっと乗れるようになった彼はひとつ大人になる。

    対談で、奥田さんが小説を書く時は何も決めてないというのを見て、それであんな長編小説が書けるのか・・・と感心した。
    だから登場人物がある意味、好きなように本の中で動いていて、展開が読めないのか・・・と思った。
    また、読者の期待を裏切りたいというのもあって、この人の本を読んでいるとその考えにも納得。
    この本にもその要素がつまっている。
    最初の話を読んだ時は「これは短編だな、これで完結したよね」と思いきや、次の話は続編。
    そして、この話でずっといくのかと思えばその次の話は全く別の話。
    そして、どの話も正にバラエティー豊かで、全くつながりのない話や登場人物の設定。
    肩の力を抜いて軽く読める本だけど、クオリティーは相変わらず高いな・・・と思わせてくれる本だった。

  • (2016/11/29読了)
    久しぶりに読んだ奥田さん。以前好きで読んでたので、ちょっと期待しすぎてたかも。もしかしたら、読み手の私の受け方が変わってしまったのかもしれないけど。
    あとがきにもあるけど、まとまりのない短編集で(それには理由がある)、さらに過去の対談も2つ入ってる。
    社長の話はシリーズ可しようとして挫折した二篇で、各話ごとにラストは救われる感じになっていて楽しく読めたけど、ドライブインサマーのような、行き過ぎたドタバタだけで終わる話は、今の私には、イライラだけが残ってしまった。
    同じくあとがきに、奥田さんご本人が気に入っていると書かれていた夏のアルバムは、三丁目の夕陽の世代。私の年代とは少しずれるけど、読んでいて胸が熱くなった。

    (内容)
    迷惑、顰蹙、無理難題。人生、困ってからがおもしろい。脱サラで会社を興した38歳の社長、渋滞中の車にどんどん知らない人を乗せる妻、住み込みで働く職場の謎めいた同僚…。著者お気に入りの短編から、唯一のショートショート、敬愛するイッセー尾形氏、山田太一氏との対談まで、あれこれ楽しい贅沢な一冊!!蔵出し短編集!

    (目次)
    おれは社長だ!
    毎度おおきに
    「笑いの達人」楽屋ばなし
    ドライブ・イン・サマー
    クロアチアVS日本
    住み込み可
    総てのひとが〈人生の主役〉になれるわけではない
    セブンティーン
    夏のアルバム
    あとがき

  • 短編やショートショート、対談などタイトルの通りバラエティに富んだ作品集。
    対談の中で、小説を書く時はプロットは作らず、まずパソコンに向かって一行目を書き出し、どんな話になるのか自分でもわからないということを言っていて驚いた。それであんなに面白い話が書けるのか。
    最後の夏のアルバムという短編がすごく好きだった。

  • 今まで本には収録されていなかった短編やショートショート、対談などをまとめて1冊にしたもの。

    広告代理店勤務から一念発起して起業した男の奮闘を描いたお仕事短編、渋滞中の高速道路で妻が知らない人をどんどん車に乗せてしまう不思議な話、サッカー観戦のつぶやきのようなショートショート、イッセー尾形や山田太一氏との対談、クリスマスの日に初めての彼氏との外泊を目論む女子高生を複雑な気持ちで見守る母の話、自分の話をひた隠しにしているわけありな同僚が気になる旅館の仲居の話、優しい叔母の病死に戸惑いながら仲間と夏休みを過ごしている小学生男子の話。

    最初のお仕事短編が好き!対談はそこまで興味が持てず、読みながらも「うーん…」となる。

  •  いろいろなジャンルの短編を7編収録。

     面白かったのは最初の2編。
     じんわり効いたのは最後の1編。

     まあまあ楽しめた。

  • 2021.4.16-397

  • バラエティに富んだ短編集です。続編の話もありましたが、それぞれ楽しい作品でしたが、最後の夏のアルバムは、悲しいお話でしたが、恵子ちゃんと美子ちゃん姉妹が頑張って笑顔でいようとした事にウルっとしちゃいました。でも、泣ける時に泣く事も前に進む為には必要だと思うよ、恵子ちゃんと思いました。

  • 面白かった。セブンティーンが一番面白かったかな。

  • 奥田英朗さんの お蔵入り 短編集。
    奥田さんの作品の雰囲気ほんと好き。
    埋もれていたのがもったいない、世に出して正解。

著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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