ヴァラエティ

著者 :
  • 講談社
3.40
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  • (3)
本棚登録 : 787
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062202268

作品紹介・あらすじ

「奥田英朗はぜんぶ読んでる」という人にも、じつはまだ読んでいない作品がある!かも。単行本初収録の短篇をはじめ、現在入手困難となっているアンソロジーの短篇、唯一のショートショート、数少ない貴重な対談などを収録。コアなファンからちょっと気になった人まで、レアな奥田英朗を楽しめるスペシャル作品集!

感想・レビュー・書評

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  • この本自体は2019年9月発行だが、2016年に単行本として出されたもの。
    下のAmazonより紹介にあるように、それぞれの短編は、ある意味あちこちから集めた作品集。
    2004年~2012年のもので、今読むと古さを感じさせる。でもそこは奥田英朗、クスッと、またはホロ苦く、懐かしさを感じさせるように読ませる。
    こんな時代が有ったんだよなあ、というノスタルジーに浸るひと時を過ごせた。

    Amazonより紹介*****************
    「奥田英朗はぜんぶ読んでる」という人にも、じつはまだ読んでいない作品がある!かも。単行本初収録の短篇をはじめ、現在入手困難となっているアンソロジーの短篇、唯一のショートショート、数少ない貴重な対談などを収録。コアなファンからちょっと気になった人まで、レアな奥田英朗を楽しめるスペシャル作品集!

  • まさしくタイトル通りの「variety」
    悪く言えば、寄せ集めーーとも言えようが、奥田さんの作品は全部読みたい、全部目を通したいという奥田英朗ファンにとっては貴重な一冊

    お蔵入りするところだった短編6編、ショートショート1編、尾形イッセーさん、山田太一さんとの対談

    奥田さんが常日頃影響を受けたと言われるお二人との対談では、なかなか聞けない本音や執筆秘話がちらほら
    とても興味深い

    例えば・・・
    読者の期待に応えないようにいつも逃げる。サスペンスが続き、そういうものを書くしかないだろうと本能的に感じると、伊良部シリーズとかでかわす。それが賞を獲って売れたから、また違うことをやる。期待されるのが怖い

    それで奥田さんはたくさんの引き出しを持っておられるのかと納得!

    「僕は書く前は臆病になる。書けるだろうか、面白くなるだろうか。この小説は受け入れられるだろうか」
    「十人に褒められても一人にけなされると、ものすごい落ち込みます」

    直木賞作家で、盤石の地位を築いておられるかに見える奥田さんでさえこんな気持ちなんだと再認識した

    最後の短編「夏のアルバム」は、奥田さんご自身が短編の中で5指の中に入る出来栄えで好きな作品とおっしゃっている。
    私も大好きだ。同じ年代のせいか、幼い頃祖父母の家に集まって従兄弟達と遊んだことが思い出され、遠い昭和の時代が甦ってきたようで懐かしく感慨深いものがある

    奥田さんの後書きなど読むことがないだろうが、これには後書きが付いている。これもまたお得感があった

  • ★3.5

    6編の短編と1編のショートショートと2つの対談。
    あとがきで触れられていますが、まとまらなかった短編集です。
    ・おれは社長だ!
    ・毎度おおきに
    ・<対談>イッセー尾形
    ・ドライブ・イン・サマー
    ・クロアチア vs 日本
    ・住み込み可
    ・<対談>山田太一
    ・セブンティーン
    ・夏のアルバム

    最初の2作品が連作短編で、大手広告会社を脱サラして会社を興した38歳の社長。
    余りの甘い考えにハラハラさせられ、最初は妙に自信満々で嫌な奴って思っていたけど、
    憎めない可愛さがあっていつの間にか応援していた。
    2本で挫折してしまったとご本人が仰っていましたが、面白かったので
    続きがないのが残念です。
    17歳の娘がクリスマスイブに初めて外泊をしたいと言い出した「セブンティーン」
    母親の葛藤や心理描写がとても丁寧で良かった(*´▽`*)
    いつも思うけど、奥田さんどうしてこうまで女性の心理がわかるんだろう。
    凄いなぁって感じました。
    「夏のアルバム」も切なくって良かったです。

    どのお話もプッと笑ったり、苛々したり、共感したりと色んな感情が湧いて楽しめました。
    「あとがき」が一番楽しかったりして~(笑)
    とっても楽しかったし引き込まれて一気読みしたのですが、やはり話がバラバラで
    ちょっとだけ物足りなさを感じてしまったので★0.5下げました。

  • 奥田氏のあとがきがあり、この短編集の成立事情を説明。編集者にやいやい言われ、あるいはおだてられ、いろいろな媒体に書いたが短編集としてもれていたものを集めたとある。

    「おれは男だ」は一流広告会社に10数年勤めた優秀なオレが晴れて独立した話。が、なかなか厳しく・・
    「まいどおおきに」おれは男だの続編。やっと注文をとれたが、委託先は孫請けに出してしまい・・ 剛腕社長から中小企業の生き残り策を身をもって教わる。
     この2編はシリーズ化しようとしたが、2作で力尽きたとのこと。残念です。気を取り直してシリーズ化してくれないかなあ。

    山田太一氏は奥田氏が最も敬愛する作家。ドラマも本もほとんど見たり読んだりしているようだ。なつかしい「思い出づくり」の話では、森昌子扮する役の見合い相手の加藤健一さんに強烈な印象を奥田氏は受けた。奥田氏の創作の意欲の元は「違和感」だという。ニュースや人との会話で自分だけ意見が違い、違和感や疎外感を受けた時に、何だろうこれは、と思い考えるところから創作が始まるという。そこを山田氏は「書くことで共感してくれる人を求めるということですね」 奥田「そうです。自分探しじゃなくて仲間探し。自分と似ている人を求めて、書いては発表しているんだと思います。」




    「おれは社長だ!」小説現代2007.12月号
    「毎度おおきに」小説現代2008.12月号
    「笑いの達人 楽屋話(イッセー尾形と対談)」オール読物2006.8月号
    「ドライブ・イン・サマー」男たちの長い旅:アンソロジー2006年 徳間文庫 所収 ~妻の運転でお盆に帰省中、妻はつぎつぎに道路にいる人を乗せる。乗った人は不愉快な言動をするのだが、応酬する運転できない夫の言葉は言えないことをズバリと言い気持ちいい。とてもシュールな小説。
    「クロアチアVS日本」読売新聞2006.8.12夕刊
    「住み込み可」野生時代2012.3月号
    「総ての人が人生の主役になれるわけではない(山田太一と対談)」文芸ポストVOL.26
    「セブンティーン」聖なる夜に君は:アンソロジー2009年 角川文庫 所収
    「夏のアルバム」あの日、君と Boys:アンソロジー2012年 集英社文庫 所収



    2016.9.20第1刷発行 図書館

  • 「ヴァラエティ」
    久々の奥田英朗作品。


    最新刊は「刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――犯罪小説の最高峰、ここに誕生!」だそうだ。クソ、読みたい。が、まずは「ヴァラエティ」だ。タイトルからすれば様々な種類の文章が詰まってるとなるが、その通り。短編やら対談やらショートショートやら忙しい。浮いていた短編を纏めた一冊。


    個人的には奥田英朗は長編が好みだが、ちょっと短編も好きになってきた。今回の序盤2編がユーモラスだからだろうか。シリーズものに出来そうなのに残念だと思いながら読んだ。よくよく考えたら伊良部シリーズを書く人なのだから、これくらいのユーモラスはお手の物で、内装業のクセ社長も伊良部に比べたらお子ちゃまキャラに見えてくる副産物付である。ああ、このクセ社長は、結婚出来ない男の、棟梁だなとも思える(突飛ですが続編始まるから、ついつい棟梁の顔が笑)。


    イッセー尾形との対談の後は、肉感的な美人って最高じゃないか!と思っていたら、最悪の悲劇が待っていたのが「ドライブ・イン・サマー」。肉感的な美人を妻にした代償なのか。笑えるが、直ぐに辛すぎる、なんなのこれ?と主人公に共感してしまうのだ。それもこれも最初に乗り込んできた奴が悪い。「夏のアルバム」は、作者一押しの短編。他に比べて落ちつきを感じる。馬鹿らしい小説もうまいが、この手も上手いよね。と。


    読む読者がいなくなったら怠惰な作者は書くのをやめちゃうらしい。それは困るので、どんどん日本国民は読まねばならぬ。さて、次は、最新刊を。

  • お蔵入りになりかけた、短編、対談、ショートショートを集めて出版された。

    大手広告代理店のやり手広告マン。長年の夢だったった独立起業を果たす。念願叶って手に入れた一国一城の主の座だがーー「おれは社長だ!」

    会社を起こして2ヶ月で3キロ痩せた。悪戦苦闘を続ける続編ーー「毎度おおきに」。

    イッセー尾形との対談ーー「『笑いの達人』楽屋ばなし」。

    運転免許を持たない徳夫は、妻の運転で妻の実家の神戸に向かった。殺人的な都内の渋滞を抜けて高速に入る手前に、妻がヒッチハイクの若者を車に乗せてしまうーー「ドライブ・イン・サマー」。

    ショートショート「クロアチアvs日本」。

    DV夫から逃げてたどり着いた熱海の地。自分以上に訳がありそうな同僚のアパートを訪ねてみるとーー「住み込み可」。

    山田太一との対談ーー「総ての人が〈人生の主役〉になれるわけではない」。

    高2になった娘が、クリスマスイブに友達の家に外泊したいと言い出す。見え見えの嘘に、由美子は揺れ動く。なんとか阻止できないものか。いずれは体験するものとしても、高校生では早すぎる。母として心配は尽きないーー「セブンティーン」。

    小2の雅夫は、自転車の補助輪が取れていない。友達の自転車を借りて練習するが、なかなか上手くいかない。そんな中、体調を崩しているという伯母さんのお見舞いに家族で出かけることにーー「夏のアルバム」。

    「車の窓から通りを見ると、サラリーマンたちが忙しそうに行き交っていた。全員、何かを背負っている男たちだ。自由は制限され、人間関係に縛られ、それでも一生懸命生きている」(毎度おおきに、P87)

    取材はしないが、徹底して自分の中にあるものを絞り出して書くという筆者。
    その絞り出した何かに、大きな共感が生まれ、ベストセラーになっていくのだろう。シャイで皮肉屋で、でも人一倍純粋な筆者にしかかけない世界。

  • お蔵入りしていた短編をまとめたもの。シリーズものではなく寄せ集めのごった煮。まさにバラエティ。だけど、どれもこれも実にいい。作品ごとにガラリと装いをかえ、引き出しの多さに本当に驚かされる。人生の処世術といった教訓が随所にあり物語としても面白い。あっという間の一気読みであった。心の琴線にやにわに触れられ、何度も涙腺が襲われた。圧巻はあとがきの最終行。これにはまったくもって油断していたので激流が止まらなかった。もう最後の最後までやられっ放し。最後の行だからいつでも目を通せる。何度読んでも、じわりと濡れる。この人すごすぎ。

  • あとがき
    でお蔵入りしたかもしれない作品たちの短編集と知った 10作品

    「おれは社長だ!」
    「毎度おおきに」2作は
    シリーズ化しかけた作品とのことで
    読んで面白かったので
    シリーズ化されなかったのが残念に思った

    イッセー尾形さんとの対談も
    山田太一さんとの対談も読めてよかった

    伊良部シリーズも大好きだし
    最近では大作の「リバー」を頑張って読みきったし‥
    ほどよい長編でミステリーより
    ホームドラマっぽくてクスクス笑える
    新作をお願いしたいです!
    楽しみに待っています
    講釈垂れてしまいましたスミマセン

  • 「おれは社長だ!」、「毎度おおきに」、「ドライブ・イン・サマー」、〈ショートショート〉「クロアチアvs日本」、「住み込み可」、「セブンティーン」、「夏のアルバム」七つの短編と、イッセー尾形、山田太一との対談2篇を収録。「おれは社長だ!」と「毎度おおきに」は、代理店を独立起業した男が主人公の連作。どれも面白かった。

    また、直木賞受賞直後の山田太一氏との対談で、著者が「タレント主導のドラマや、プロットありきの小説もいいけど、僕は人間の曖昧さ、滑稽さなどのディテールを細かに「優しい」目線で描く小説を書いていけたらと思います。」と発言していたのが印象的。

  • 予約本ついでに表紙がかわいいので借りた。あとがきによると『まとまらなかった短編集』とのことで対談2本も収録されている。初出が2006年や2007年とまあまあ昔だからか今となってはマズイ表現があるけれど(白人のようになど)懐かしいな~と思いながら読んだ。「おれは社長だ!」と「夏のアルバム」がよかった。白眉なのは「住み込み可」。犯罪者の女性主人公で急な焦燥感で埋められる終わり方が良かった。落語っぽいオチだけど地味にしんどい。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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