- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062203302
作品紹介・あらすじ
新聞社が消滅する。
東洋新聞は、IT企業からの買収宣告を受けた。経営権がIT企業に移れば、宅配の少ない営業所は閉鎖し、配達員はクビ。ウェブファーストに移行し、ポータルサイトを持って世界に打って出ていくことになる。
社会部デスクの安芸稔彦は、昔ながらの新聞記者だ。パソコン音痴で、飲み会の店も足で探す。安芸は部長以上のみ出席する会議から戻った同期の政治部長に話を聞く。IT企業の社長を裏から操っているのは、かつて東洋新聞に在籍していた記者だった。時代の流れは止められないのか。旧いものは、悪なのか?
感想・レビュー・書評
-
図書館で結構待って借りて読んだ。返却もあるので、通勤時間を中心に、1週間程度読了。
偶然にも先月、新聞社が舞台の映画「クライマーズ・ハイ」を見ていたので、リアルな映像を浮べながら読むことができた。結構分厚いなぁと思っていたのに、映画の様な疾走感♪
最終章、主要キャラクター2人の言葉が心に残った。
●308ページ 安芸の言葉
「いつも身近にあったものが突然なくなった時、あとで大切だと気付いても遅いからです。私は過去にそのような苦い経験をしているんです。だから大切だと感じたものは絶対になくさないよう守ろうと決めたんです」
●313ページ 権藤の言葉
「お言葉ですが、潤沢な資金と知恵があったとしても、記者の心までは買うことはできません」
そして、最後の最後、桐島と尾崎の生き生きとした記事が飛び込むシーンで、爽快な気分で読み終われた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウェブと新聞という新旧メディアの買収劇を絡めた闘いに引き込まれる。
最後は若干呆気ないが、そこまでのストーリーはなかなか面白い -
本城雅人「紙の城」読了。
新聞社がIT企業に乗っ取られそうになる。
なんとかそれを阻止したい新聞記者達が奮闘する。
結末は然もありなんではあったが、新聞の将来、ネットとの共存、などなど考えさせられる。
本、雑誌を含め紙という媒体の行方に思いを馳せた。 -
第3の権力、新聞の未来予想図を垣間見ることが出来る一冊。新聞社間協定、記者クラブ制度、軽減税率など、新聞自体が取り扱い難いセンシティブな内容まで踏み込んでいるのが特徴。
(1)これだけ新聞離れが起きてもなお新聞に載っている記事は正しいという性善説の下で読まれている。
(2)人間というのは成功を手に入れる者の顔が見えた途端、その人間の失敗した顔を見たい衝動に駆られます。
(3)新聞社がインターネット業界に参入して来ていたら脅威だった。新聞社がニュースを売るのではなくポータルサイトの運営に乗り出していたら成長出来なかった。
(4)新聞社というのは何千人の大所帯ですからね。学歴が高くプライドが高い人間が多い。まぁプライドが高くても本当に優秀なら会社を変えてますけど。
(5)若い頃は最前線でネタを取る記者が買われるが、デスクになる年齢が近付くに連れ、自分を押し通す記者より上司の意見に忠実な記者が出世していく。
(6)悔しさって何かに残さないと直ぐに忘れてしまう、いかに身に染み込ませるかの方法を持っている人がビジネスでも勝者になると思います。 -
IT企業に買収されかけている新聞社の生き残りをかけた戦い。
そこにあるのは記者としての矜持と紙の新聞への思い。それはそのまま毎日届く新聞を楽しみにしている私たちの声でもある。
確かにネットの情報の方が先に届くし、必要な時に必要なものが取り出せて便利ではある。けれど、そこには出自不明なうわっつらだけの言葉の羅列も多くある。それを取捨選択するだけの目が私たちにあるのだろうか。じゃぁ、紙でモノを読むことって何だろう。ただの文字や情報だけではないなにかがそこにはあるはず、だからこそ私たちは紙の情報を必要としているのだろう。安芸たち記者が必死に守ろうとしていた「新聞」を今日はちょっといつもよりゆっくり読もう。ひとつひとつの記事の後ろにいる彼らの、そしてそれを届けてくれるたくさんの人たちのことを考えながら。
しかし、これだけの買収を目の前にして、最後はこうなのか、ってところに違和感もあったのだけど、それが短期間にのしあがってきた轟木たちの薄さってことなのか、とも。 -
アナログとデジタルの狭間って感じの今の時代。
この小説も紙で読んだわけで、なんでもデジタルだと重みが違うよなって思いながら読んでいました。 -
新聞というものを殆ど読んだことがありません。それでも家には必ず新聞がありました。テレビ欄しか見なかったけれど。良く考えたらそれだけの為に買っていた家も有ったんじゃないかな?
昔、新聞紙を学校に持っていく時に困った事なんて無かったけれど、今工作で新聞必要なんて言われたらコンビニに買いに行くしかないよなあ。
と、内容ではなく、個人的にはそんな思い出しかない新聞ではありますが、新聞を毎朝読むような大人に憧れる自分もいます。
は!そういえばこの感覚って、本を読まない人と読む人の反応と同じなのでは?必要なものだし否定する気はさらさらないという所を鑑みても、本を読まない人の感覚というのは、僕が新聞に対して抱く感情と同じなのか?!うーん新発見。
そう考えると新たなメディアが目白押しの中、あえて新規に紙メディアに没入していく人が増えるとはとても思えないです。そう考えると出版全体の危機ですねえ、本当に。
本書は、デジタルメディアに買収される新聞社の奮闘。という簡単な一言に集約されてしまうのですが、作者がそこまでがっつり勉強して書いたわけではないのか、買収話についてさほど突っ込んだ記述がありません。そしてその辺に関心が無い僕には逆に楽しんで読める要因だったと思います。経済小説好きには物足りないのではないかと読んでいて感じました。
新聞というメディア自体の衰退を示唆していますが、誰もがそうだよねと思っている事なので新味が無いのも弱い。しかし、これから新聞という威厳のある看板を利用しようとする企業が出てくることはあり得る事なので、一企業のお抱えになる事で、ジャーナリズムとしての客観性を保てるのか?という問題提起はなされています。 -
200万部の全国紙を発行する東洋新聞が、新興のIT企業に買収されようとしている。社会部デスクの安芸稔彦は、同僚たちと買収阻止に向けて動く。
インターネットでいち早くニュースが配信される中、紙媒体としての新聞は必要なのか、新聞の在り方を問う話。
現状にあぐらをかいていてはダメだという主人公たちの姿勢は良かったが、それでも奢りが感じられた。
(図書館)