七月に流れる花 (MYSTERY LAND)

  • 講談社
3.47
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本棚登録 : 768
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062203449

作品紹介・あらすじ

坂道と石段と石垣が多い静かな街、夏流(かなし)に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思わず逃げ出したミチルだが、手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城――夏流城(かなしろ)での林間学校への招待状が残されていた。ミチルは五人の少女とともに、濃い緑色のツタで覆われた古城で共同生活を開始する。城には三つの不思議なルールがあった。鐘が一度鳴ったら、食堂に集合すること。三度鳴ったら、お地蔵様にお参りすること。水路に花が流れたら色と数を報告すること。少女はなぜ城に招かれたのか。長く奇妙な「夏」が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 酒井駒子さんのイラストを見るために単行本へ
    少女たちの戸惑いとみずみずしさが美しい挿入絵

    巻末にある作者の「わたしがこどもだったころ」
    誰にでもある女の子部分として、赤毛のアンや若草物語の中に出てくる、大人になったら作家になる登場人物たちを挙げています。素敵です。

  • 恩田さんらしい、少女たちときれいな古城と、秘密の物語。恩田作品は当たり外れが大きいと言われるけれど、楽しみ方を覚えればどの作品も楽しめると思っている。イラストが酒井駒子さんで大変豪華。

  • 六月初めというはんぱな季節に転校してきたせいでいまだに学校にもクラスにも馴染めていない主人公・ミチルが、謎の招待状を受け取って夏流城での『林間学校』に参加する冒険譚。

    最初は銀河鉄道よろしく現実世界で生死をさまよってる子どもたちが集められた空間なのかと思ってたけど、全然違うSFだった。
    序盤の方でミチルが林間学校に呼ばれたことをお母さんがあちこちに連絡してたのも、理由を知れば納得。

    林間学校の種明かしの前と後で蘇芳への印象が180度変わって、両親のくだりでは抱きしめてあげたくなってしまったし、亜季代の真相に泣きそうになった。何度も同じ質問してたのが伏線だったなんてさあ…どんな思いで花火の解説をしてたのか…

    「あれが、あたしたちの――淋しいあたしたちの、お城なの。」がマジでこんなに淋しいことある!?流れる花の真相もあまりにも痛々しい。

  • コロナ禍に書かれた作品なのかと思ったが、2016年出版とある。図書館で今この本を手に取ったことを運命的に感じたりした。対になっている八月の方も借りに行かねば。

  • さらっと読める

  • 夏休みの前に転入してきた主人公。

    友達ができないまま夏休みへ。しかし、何故か林間学校へ招待され出かけていくと、そこには主人公を入れて6人の少女達がいて、共同生活を始めます。

    最初は、謎だらけ。緑色をしたみどりおとこや、鐘がなる回数で行動が決まるとか。

    不気味な感じがただよい始め、いよいよホラー系か?と思っていると、真実がわかり、切なくなります。

  • 恩田陸さん×酒井駒子さんなんて、見つけた瞬間手に取らないわけにはいかなかった。
    恩田陸の持ち味である、どことなく影のある大人びた少女たちと、閉鎖的な学校という不穏で湿度の高い雰囲気がやみつきになる。
    読み始めて気づいたのだけれど、児童向けの小説なのでしょうか?大人でも十分楽しめる内容だと思う。

  • ミチルは母親の都合で中途半端な時期に夏流へと転校してきた。時期が悪かったせいもあって友人と呼べるひともいないまま夏休みは始まろうとしていた。そんなどこか憂鬱な昼下がり、母の使いでよく行く和菓子屋まで気分転換に歩いたミチルは、そこでおかしな〝もの〟に出会う。全身、肌も髪も緑色の、長身のなにか。それはいつぞやの工作の時間に先生が出した「夏の人」というテーマにミチル以外のすべての人間が描いていたものと同じだった。恐怖に逃げ出すミチルをそれは追いかけ、捕まるという瞬間誰かがミチルへ声をかけた。それはクラスメイトの佐藤蘇芳だった。彼女はミチルに手紙が入れられていると知らせる。あのみどりいろのものが入れていったであろう手紙には、夏流城への林間学校への招待状だった。
    何のために、何故自分が正体されたのかも分からないまま、ミチルは林間学校へと向かわされる。
    そこで集った少女たちと、不思議なルールに戸惑いながら、なんとか日常を続けるミチルに、不可解な出来事が続いていく。
    鐘が一つ鳴ったら食堂へ、三つ鳴ったらお地蔵さんへお参りに、そして城を走る水路を流れてくる花の色と数をノートへ記すこと。
    そしてミチルは二度とない夏休みを過ごすーーー。

    児童へむけて書かれているために、いつもより語彙は少な目。おどろおどろしさもスパイス程度。でも、ミチルを通して知らされていくお城の、夏流の秘密は、なかなかに残酷。そして城を出ていく場面の少女たちの清々しさが鮮烈だった。

  • 装丁、挿し絵が良い。
    デジタルでなく手にとって読んでこそ。

  • ★少女たちはざわめき、顔を見合わせた。(p.180)
    ■中途半端な時期に転校してきたミチル/鏡/「夏の人」と呼ばれる全身緑色ずくめの人らしきもの/大人びている佐藤蘇芳/窓のない冬のお城/夏流城(かなしろ)への招待(親公認)/六人の少女/集められた理由はミチルには不明だが地元の子たちにはわかっているようだ/謎のお地蔵様(後ろは鏡)/流れる花観測の意味は?/落ち着いていて静かな暮らしはミチルに合っている/花火/隣に同じような男子の林間学校があるらしい/ひとり失踪する/毒/鳩/メメント・モリ/ミステリではあります。

    ■簡単なメモ■

    【お地蔵様】後ろに鐘がありお祈りしている自分たちが見える。鐘が三回鳴ったらお地蔵様に手を合わせにいかなければならない。
    【稲垣孝子/いながき・たかこ】夏流城(かなしろ)に招待されたひとり。お下げ髪でちっちゃい。五中の生徒で斉木加奈と同学年だがクラスは違う。趣味は将棋。理詰めでものを考えるタイプ。
    【夏流城/かなしろ】夏のお城。そこで開かれる林間学校への参加を招待というかたちで強制された。親も「仕方ない」と言った。蔦におおわれて緑色の岩山に見えた。ミチルと同時期の参加者はミチルと佐藤蘇芳を含め六人の少女。あまり名誉なことではないらしい。メンバーはミチル、佐藤蘇芳、斉木加奈、稲垣孝子、塚田憲子、辰巳亜季代。
    【この世】《この世は、見た目通りのものとは限らない。》p.10
    【斉木加奈/さいき・かな】夏流城(かなしろ)に招待されたひとり。ひとつ上。涼しげな雰囲気。五中の生徒。バレー部だが膝を故障中で練習には参加できない。スポーツ万能。気さくであり内向的で神経質。自分の神経質なところは嫌いなようでそんなところを見せてしまうとくどいくらいに謝る。
    【佐藤蘇芳/さとう・さとう・すおう】三中の生徒。クラスに一人くらいいるなにもしてなくても目立つ子。学級委員。夏流城(かなしろ)に招待されたひとり。自然とリーダー役になる。
    【辰巳亜季代/たつみ・あきよ】夏流城(かなしろ)に招待されたひとり。私立のミッション系中学の生徒。最年長。眼鏡で長髪。おっとりしたお嬢さんタイプ。いつも編み物をしている。
    【塚田憲子/つかだ・のりこ】夏流城(かなしろ)に招待されたひとり。一中の生徒。一歳上。眼鏡でおかっぱ。磊落な自由人。
    【夏のお城】→夏流城(かなしろ)
    【夏の人】→みどりおとこ
    【慣れ】《ずっと怯え続けているのにも飽きてしまった。恐ろしいことも、日常になるとやがては慣れるものなのだ。》p.163
    【冬のお城】誰のつくった城だったかは不明。窓がなかったらしい。
    【ミチル】主人公。視点役。大木ミチル。三中の生徒。夏休み直前の中途半端な時期に転校してきたばかり。夏流城(かなしろ)での林間学校に招待された。「どうして」攻撃が特技。
    【みどりおとこ】「夏の人」と呼ばれ先生も含めクラスのみんなは夏の風物詩くらいに思っているようだ。全身緑色づくめの男? でほとんど不審者なのに。
    【流花観察ノート/りゅうかかんさつのおと】水路を流れてくる花の色と数を報告する。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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