- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062204675
作品紹介・あらすじ
村田喜代子×酒井駒子「手なし娘協会」
長野まゆみ×田中健太郎「あめふらし」
松浦寿輝×及川賢治(100%オレンジ)「BB/PP」
多和田葉子×牧野千穂「ヘンゼルとグレーテル」
千早茜×宇野亞喜良「ラプンツェル」
穂村弘×ささめやゆき「赤ずきん」
6人の作家×6人の画家による夢のコラボレーション
斬新な解釈による大人のための新しいグリム童話集!
感想・レビュー・書評
-
表紙に惹かれて借りました。
漆黒を基調とした表紙。
様々なイラストレーターが描いたグリム童話の主役や動物たち。
金色の型押し文字でタイトルと執筆者×イラストレーターの名。
本書は皆様にもおなじみのグリム童話を、人気作家が人気イラストレーターと組んでリブートしたもの。
元々残酷な設定や表現、展開が多いグリム童話を、日本の現代作家さんが語り直したらどうなるか。
ゾクゾクする企画です。
いちばん好きなのは『ヘンゼルとグレーテル』の、多和田葉子さんの作品かな。イラストは牧野千穂さん。
松浦寿輝さんの『BB/PP』は、まるでタランティーノの映画『フロムダスクティルドーン』を観たときのような爽快感。いや、ぜんぜん違う話だけども。これは『青ひげ』がベースだけれども。イラストは及川賢治さん。
千早茜さんの『ラプンツェル』も、『BB/PP』と同傾向の、女性を囲って自分好みにしたい、という、古代からの(!)一部の男性の夢的な導入部。イラストは宇野亜喜良さん。
全部、暗黒の名に恥じない暗さを持っていて好みでした。
村田喜代子×酒井駒子
長野まゆみ×田中健太郎
松浦寿輝×及川賢治
多和田葉子×牧野千穂
千早茜×宇野亜喜良
穂村弘×ささめやゆき詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
グリム童話のパスティーシュアンソロジー。5人の作家×5人のイラストレーターのコラボという豪華さも魅力だけど、ページごとに紙色やインク色が違ったりして、ものすごくカラフル、1冊の本としての完成度が素晴らしい。
村田喜代子×酒井駒子の「手なし娘協会」が好きでした。酒井駒子さんの絵がもともと好きなのもあるけれど、手なし娘が森に横たわってる挿画とか、まるでミレーのオフィーリアのよう。世界各国の手なし娘たちが5年に一度一同に会し、それぞれの逸話を語り合うという設定も、なぜか類似の民話が世界各国にあること、そのバリエーションと重ねあわせられており面白い。手なし娘については以前フランス製アニメ映画(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B07KLSJ1RW)を見たときにちょっと調べたりしたので興味深かった。
松浦寿輝の「BB/PP」はご本人の単行本で既読だったのだけどやっぱり面白い。近未来の青髭(Blue Beard=BB)と、人間の妻を殺害するのに飽きた彼が特注した紫の陰毛(Purple Pubes=PP)の精巧なアンドロイドの物語。怖いんだけど、PPの逆襲をつい痛快と思ってしまう。
多和田葉子×牧野千穂の「ヘンゼルとグレーテル」は、さすがドイツに詳しい多和田さんらしく、ヘンゼルとグレーテル一家の貧しさの背景などが妙にリアル。捨てられた子供たちと、魔女側の来歴が交互に描かれており、結末は童話通りながら、魔女よばわりされた不幸な女性が気の毒に、そしてピュアなはずの子供たちが浅はかで身勝手に思えてしまうという皮肉。
千早茜×宇野亞喜良の「ラプンツェル」は、大好きな宇野亞喜良の挿画がやっぱり素敵。魔女の役割を担うのが近未来の音楽家=男性となっており、ラプンツェルは貧しさから買われた野性味のある歌の上手い少女となっている。
※収録
「手なし娘協会」村田喜代子×酒井駒子/「あめふらし」長野まゆみ×田中健太郎/「BB/PP」松浦寿輝×及川賢治/「ヘンゼルとグレーテル」多和田葉子×牧野千穂/「ラプンツェル」千早茜×宇野亞喜良/「赤ずきん」穂村弘×ささめやゆき -
もともと暗黒っぽいグリム童話が現代風大人話に(゜゜;)「ヘンゼルとグレーテル」のカタリーナは可哀想だったなぁ( ´△`)
-
豪華なラインナップ。
中でも村田喜代子さんと多和田葉子さんを楽しみに読む。
多和田葉子さん「ヘンゼルとグレーテル」は“暗黒”“グリム”“童話”のコンセプトを実に巧みに消化していて秀逸。暗黒度、高し。そして誰もいなくなった。
村田喜代子さん「手なし娘協会」は暗黒っていうのではないけど、グリム童話から材を採った一風変わった設定と、あっけらかんとした感じが村田さんらしくて好き。ラストに一抹の薄気味悪さを残すところも実に村田さん。酒井駒子さんの挿絵が美しく格調高い。 -
6人の作家と6人の画家、
イラストレーターによるグリム童話のオマージュとなる短編集。
松浦寿輝氏と穂村弘氏以外は初読み作家さん。
ファンタジー色ある作品やブラックユーモアのある作品など
バラエティに富んでいるが、足元を掬われるような、
そこはかとない厭な悪意に満ち溢れている。
物語に添えられる絵も素晴らしく愉しむ事ができて、
共作集の中でも秀でている一冊。
しかし、多和田葉子氏の「ヘンゼルとグレーテル」の
登場人物カタリーナが魔女となるのは、なんだか哀れすぎる。 -
グリム童話にインスパイアされた短編集。6人の作家による競作。それぞれに個性的なイラストが付いており凝った本になっています。
でもというか、やはりというか怖い感じに仕上がっているのは、グリムだから?
まあ、めでたしめでたしで終わるのがお約束の昔話ですから、大人向けにリメイクとなれば怖い話になってしまうかな。ちょっとグロイ感じになっているかな? -
人の作家と絵師のコラボによる、グリム童話をモチーフにして新たに紡がれた物語。
一作目「手なし娘」は私は知りませんでしたが後半は誰もが知っているであろう物語が、各々の解釈で語られています。元々グリム童話は残酷な話が多いように思えますが、『暗黒』とついていてもどちらかと言えば物悲しさを強く感じました。
挿絵もそれぞれ個性的で美しく、見るのが楽しかったです。