辺境図書館

著者 :
  • 講談社
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062205351

作品紹介・あらすじ

知れば知るほど
読めば読むほど
好きになる。

《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)》

小説の女王・皆川博子が耽溺した、完全保存版ブックガイド。(書き下ろし短編も収蔵)

感想・レビュー・書評

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  • 皆川博子さんセレクトの本の数々。
    その作者についても教えてくれるので、より興味が湧いてくる。
    この本の中で紹介されている本に限らず、皆川さんが取り上げる本というのは、たぶん何を描いているかだけじゃなく、文章の美しさや素晴らしい表現も含めて魅力的なものばかりなのだと思う。ほんの何冊かしか読んだことはないけれど、そういう共通点がある気がする。
    そして、そういう本は内容を覚えていても読み返したくなるのだ。
    一度きりじゃなく、手元に置いておきたくなる本に出会える幸せ、それを予感させるのがこの図書館だ。
    そういうわけで、佐藤亜紀さんの「吸血鬼」をまた読み返したくなった。

    ジョン・マックスウェル・クッツェーの「夷狄を待ちながら」も読んでみたい。
    ラストの引用から、色々想像してしまう。

    ハンス・ヘニー・ヤーンの「十三の不気味な物語」も気になる。
    「ダークではあるけれど、陰湿ではない」と評される幻想小説、読んでみたい。
    でも皆川さんの書評だけで満足した感もある。

  • 目次のあとの扉にはこう記されている。
    「この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。貸出は不可。読みたければ世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。  辺境図書館 司書」

    この言葉通り、その名を聞いたことさえない本が次々紹介される。各章のタイトルであげられている本は三十作あまりだが、既読のものは僅かに二作であった(「アサイラム・ピース」と「心は孤独な狩人」)。文中ではさらに多くの本に言及されていて、さすがだなあと感嘆してしまう。こういう芳醇な読書が下地となって、あの唯一無二の作品群が生まれるのだと深く納得した。

    やはり自分が読んだことのある本(たった二作だけど)の紹介が強く心に残る。著者が真に心ふるわせ読んだことが、ひしひしと伝わってきた。優れた書き手はよく読む人でもあるのだと再認識。

    装丁も素敵だ。小ぶりな本で、表紙にはお月様が箔押しされている。目次やタイトルページのデザインが著者らしく優雅で、巻末につけられている、罫線の入ったメモ用紙風のページも嬉しい。いや何か書いたりはしないんだけど、なんとなく。

  • 「インポケット」で連載された皆川さんの読書エッセイ。依頼されて書いた解説や書評と違い、こちらはあくまでご本人の愛読書を紹介する連載なので、すべて皆川さんのお気に入り本ということもあり、紹介にも熱がこもるというもの。信頼度も高く、既読のものも多かったけど、ぜひ読んでみたいと思う本が沢山あった。

    本の紹介以外にも、その作品との出会い回想からさりげなくご本人の思い出話が聞けるのも良い。1930年生まれの皆川さんはうちの両親よりもさらに年上、もはや昭和の生き証人。おそらく改まった自分語りはお好きではなさそうだけど、自伝とか書いてみてほしいなあ。

    書き下ろし短編、人魚もの幻想譚の「水族図書館」も収録。凝った装丁、ハードカバーなのに持ちやすいコンパクトサイズ、巻末には索引までついていてとても親切な1冊。


    ※収録(★既読)
    001『夜のみだらな鳥』とホセ・ドノソ★
    002『穴掘り公爵』とミック・ジョンソン
    003『肉桂色の店』とブルーノ・シュルツ★
    004『作者を探す六人の登場人物』とルイジ・ピランデルロ★
    005「建築家とアッシリアの皇帝」「迷路」とフェルナンド・アラバール
    006『無力な天使たち』とアントワーヌ・ヴォロデーヌ
    007「黄金仮面の王」とマルセル・シュオップ
    008『アサイラム・ピース』とアンナ・カヴァン★
    009「曼珠沙華の」と野溝七生子
    010『夷狄を待ちながら』とジョン・マックスウェル・クッツェー
    011「街道」「コフェチュア王」とジュリアン・グラック
    012『黒い時計の旅』とスティーブ・エリクソン★
    013『自殺案内者』「蓮花照応」と石上玄一郎
    014『鉛の夜』『十三の不気味な物語』とハンス・ヘニー・ヤーン
    015『セルバンテス』とパウル・シェーアバト 『ゾマーさんのこと』とパトリック・ジュースキント
    016『吸血鬼』と佐藤亜紀★
    017『魔王』とミシェル・トゥルニエ
    018「光の門」とロード・ダンセイニ 「鷹の井」とウィリアム・バトラー・イエイツ
    019『神の聖なる天使たち』と横山重雄
    020『心は孤独な狩人』とカースン・マッカラーズ
    021「アネモネと風速計」と鳩山郁子 『わたしは灯台守』とエリック・ファーユ
    022「紅い花」「信号」とガルシン 『神経内科医の文学診断』と岩田誠
    023『塔の中の女』と間宮緑
    024『銀河と地獄』と川村二郎 「ロレンザッチョ」とアルフレッド・ド・ミュッセ
    025『郡虎彦全集』と郡虎彦 『郡虎彦 その夢と生涯』と杉山正樹
    「水族図書館」皆川博子

  • こういうのを読むと、本を探しに図書館書店に飛んで行きたい、ネットなんかやってられないという居ても立っても居られない焦燥感に駆られてしまう。
    ストーリーや基本設定やキャラ設定に凝るラノベ系が全盛の昨今、小説における文体の重要性を説く皆川さんに共鳴します。
    皆川さんの好みは文学好きとしては王道だと思う。
    本作で初めて知った郡虎彦、作品にも人生にも興味をそそられた。探してみよう。
    私も皆川さんのご令孫と同じく、作家と作品名は知っていても、読んでいないクチです。お恥ずかしい。
    時たま挟まれる皆川さんの人生も興味深かった。自伝を書いてくださらないかなと思っちゃいました。

  • そんじょそこらのブックガイドブックではないのだ。
    館長が皆川博子なのだから。
    言うことなしだし、短編もいい気分にさせてくれる。
    ブックデザインも小ぶりで上品で瀟洒で素敵。

    ホセ・ドノソ ミック・ジャクソン ブルーノ・シュルツ ルイジ・ピランデルロ フェルナンド・アラバール アントワーヌ・ヴォロディーヌ マルセル・シュオッブ アンナ・カヴァン 野溝七生子 ジョン・マックスウェル・クッツェー ジュリアン・グラック スティーヴ・エリクソン 石上玄一郎 ハンス・ヘニー・ヤーン パウル・シェーアバルト パトリック・ジュースキント 佐藤亜紀 ミシェル・トゥルニエ ロード・ダンセイニ ウィリアム・バトラー・イェイツ 横山茂雄 カースン・マッカラーズ 鳩山郁子 エリック・ファーユ フセヴォーロド・ミハイロヴィチ・ガルシン 岩田誠 間宮緑 川村二郎 アルフレッド・ド・ミュッセ 郡虎彦 杉山正樹 皆川博子

  • 皆川博子による書評集。著者が自身の偏愛する古書・稀覯本を紹介していくというスタイル。図書館と称して貸出は不可、それと著者の紹介に「辺境図書館館長」とあるところにクスリとした。お茶目だ。
    偏愛の書を紹介するというだけあって、装丁はさすがの美しさ。本自体もしっかりした作りで、小振りながら少々重みがある。愛する本を語るこの内容でそっけない本だったら嘘だよね。

    本を読むとはこんなに楽しい、とあらためて思える一冊。各章が直接取り上げる作品はほとんど知らないものばかりなのに、館長の紹介を通して、その魅力の一端に手を触れさせてもらえるのが意外なほどに楽しかった。おかたい書評でなく、他の色んな作品やその著者に言及したり、著者自身の創作への影響を想像したりと、ほどよく緩い雰囲気なのがよかったかも。
    ブクログのようなとっつきやすさと、緩やかにくるまれた中の館長の読書体験と人生経験、そして何より愛と憧憬が美味しかった。アンナ・カヴァンとマルセル・シュオッブ、野溝七生子はぜひ読んでみたい。
    書下ろし短編「水族図書館」には溺れた。きっと本望。

  • 読書欲に火がつく本。未だに手に取ることができないでいる本が多いが、美しい装幀と文体に導かれ、開いた本は著者の言うとおり、どれも印象的で本当に面白い。長らく遠ざかっていた読書習慣が蘇り、自分では決して選ぶことはなかったであろう本との出会いを作ってくれた一冊。時折読み返したくなる。

  • 鍵のかかるひきだしに、そっとしまっておきたいような。

    中には手に入りにくい本もあるが、探し出す楽しみもある。
    どこかで出会えたら、それもまた僥倖と思えるだろう。

    後続の作家たちの作品もあれこれ読まれているようで、恐れ入る。しかも決して高いところからではなく、丁寧に敬意を持って語られるので、更に恐れ入る。

    どの章も宝石のようで、ため息と共に読んだ。
    極めつけはカースン・マッカラーズ。それからアンナ・カヴァンも再読しなくっちゃ。

    最後の一篇がまた素晴らしい。

  • 3.9/398
    内容紹介
    『知れば知るほど
    読めば読むほど
    好きになる。
    《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
    そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)》
    小説の女王・皆川博子が耽溺した、完全保存版ブックガイド。(書き下ろし短編も収蔵)』(「講談社」サイトより)


    『辺境図書館』
    著者:皆川 博子(みながわ ひろこ)
    出版社 ‏: ‎講談社
    単行本 ‏: ‎316ページ

  • 辺境図書館 [著]皆川博子 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/532834

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    知れば知るほど
    読めば読むほど
    好きになる。

    《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
    そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)》

    小説の女王・皆川博子が耽溺した、完全保存版ブックガイド。(書き下ろし短編も収蔵)
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190265

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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