フォークロアの鍵

著者 :
  • 講談社
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感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062205771

感想・レビュー・書評

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  • 民俗学を専攻する大学院生羽野千夏は、「口頭伝承」を研究するため認知症グループホームに通うことに。そこには様々な老人がいたが、千夏が特に関心を寄せたのは最高齢のルリ子。彼女がつぶやいた「おろんくち」という言葉を頼りに、高校生の立原大地とともに、過去の記憶、そして現代の問題解決へと突き進むが・・・
    前半はいま一つであったが、後半スピードに乗るとともに、老人達のキャラクターも面白くなり、楽しく読めた。ただ、千夏がどうしても“法医昆虫学捜査官シリーズ”の赤堀とダブってしまう。

  • 認知症になっても〈消えない記憶〉。それを研究するため、主人公が向かった認知症グループホームは、曲者ぞろいで……。
    マイナスな面から始まるので、前半はやや気が重い。おどおどした主人公が吹っ切れ、展開がスピーディになってからが面白い。
    後半は明るいようで、意外と重たい問題を含んでおり、ぞくっとする。

  • 民俗学の口頭伝承という目の付け所はおもしろいけれど。。。
    すこーし、先が見えちゃうところがイマイチかな。
    これ、シリーズになるのかしら。
    コリン・ホルト・ソーヤーの老人探偵団を思い出した。
    そういえば、あれまだ読んでいなかったっけ。

  • 民俗学研究という馴染みのないものだったけど、興味深く読めました。高齢者施設や不登校、犯罪など現代の色々な問題がわかりやすく読めること、登場する人たちが前向きに明るくなっていくところが良かったです。

  • 口頭伝承を研究している千夏と、高校生大地の「おろんくち」を探るミステリ。どちらかというとおろんくちの謎よりも、老人ホームや認知症患者の抱える問題が印象的だった。全てマニュアルに沿った対処もどうかと思うし、介護士の苦労も実際は本当に大変なのだろうと思う。

    大地が大学生になってからとかの2人の活躍の続編を希望!

  • 最後でもったいない終わり方した。

  • デビュー作以来でしょうか、民俗学と伝承をテーマに謎に迫っていくミステリ。意気込みとガッツはある女学生を主人公に、認知症を抱えた老人たちと家庭に問題を抱える男子高校生というクセの(かなり)あるキャラクタたちが「おろんくち」という謎めいたキーワードの真実に迫っていく物語です。

    登場人物たちのユニークな会話や、ちりばめられている謎めいた単語に引っ張られるように軽やかに読めます。
    介護問題にもさらりと、けれど浅くなく切込みつつも、老人たちの「陽」の面をあえて強く出すことで、読み心地を必要以上に重くさせてはいません。

    また、彼ら老人たちが急速にものを忘れていきつつも、長い人生経験を積んだ人間であることそのものは変わらない、という温かな目線が常にあるように思いました。

    物語は終盤に急速にホラー味とサスペンス味を加えて収束していくので、なるほど、と思いつつもいきなりという感じはちょっと否めないかもしれません。

    それでもきちっとまとめて、また暗い要素をいくつも抱えつつも明るさをたたえた終わり方にしてあったのは、こういったテーマを用いたお話では珍しく、そして良い形だなあと思えたのでした。

    現実はもちろんこれほど甘くはないのでしょう、けれどフィクションだからこそ希望を強く持たせてくれてもいいのでは、と思うのです。

  • 民俗学の「口頭伝承」を研究する大学院生・千夏が訪れた認知症グループホームの老女が口にした「おろんくち」という謎の言葉
    脱走を繰り返し会話が成り立たない老女の謎の言葉を解くうちに他の入所者達と絆もでき…
    千夏の絵に出来る能力、いいなぁ

  • 読み始めから中盤までは、なかなか世界に入っていくことが辛い。しかし、中盤以降は冒険とミステリー。最期は「え、そういう結末なの」という驚きがやってくる。

    民族学研究員で口頭伝承を専攻する千夏は、とあるきっかけから痴呆症の高齢者が集まるグループホームへ出向する。そこで入居者の一人が口にした「おろんくち」の謎を追う。やがて訳ありの高校生・大地の協力を得ながら、その謎に迫っていくのだが…。
    いつしかグループホームの入居者たちも痴呆でありながら自分たちの意思で千夏の謎解きに手を貸し始め、同時にグループホームでの押しつけがましいルールにすら団結して意義を唱えだす。

    中盤までを我慢すれば、後半は怒涛の流れ。「おろんくち」は意外な事実を暴きだす。そして、グループホームの入居者vsカウンセラーのバトルは痛快。そういった施設に入居している人、それを介助する人、高齢者福祉に対する問題提起も含んで描かれている。

  • 大学院生の千夏は民俗学の口頭伝承を研究するために認知症グループホームで取材をする事に。
    宝石ジャラジャラの意識高い系に色武者、電波攻撃妄想者にマナーの鬼の郵便屋。そしてくノ一。
    個性豊かな認知症患者達の記憶の奥底に眠るむかしむかしのはなしを探るなか、不登校男子高校生 大地がからんでからの展開にはもう痺れた。予想だにしない結末に驚かされ感心させられスカッとさせてくれた。
    面白かった。
    成長した大地の話も読んで見たい。

著者プロフィール

1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、’11年、『よろずのことに気をつけよ』で第57回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。’21年に『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』(本書)で第4回細谷正充賞を受賞し、’22年に同作が第75回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門の候補となった。また’23年に同シリーズの『クローゼットファイル』所収の「美しさの定義」が第76回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。ロングセラーで大人気の「法医昆虫学捜査官」シリーズには、『147ヘルツの警鐘』(文庫化にあたり『法医昆虫学捜査官』に改題)から最新の『スワロウテイルの消失点』までの7作がある。ほかに『女學生奇譚』『賞金稼ぎスリーサム! 二重拘束のアリア』『うらんぼんの夜』『四日間家族』など。

「2023年 『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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