横濱エトランゼ

著者 :
  • 講談社
2.98
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062206129

作品紹介・あらすじ

「港の未来」は誰にとっても
明るいものでありますように―― 

女子高生・千紗はタウン誌のアルバイトを通して
横浜の歴史、不思議、そこで暮らす人々の想いを知る。

元町百段、山手洋館、馬車道 etc.
ノスタルジックでハートフルな傑作誕生!  

横浜育ちでも、知らない歴史や場所がまだあるんだと、
新たな視点で街並みを眺めてしまいます。
     ――紀伊國屋書店横浜みなとみらい店 三谷薫さん

読了後、心がぽかぽかして横浜の街を歩きたくなりました。
青春の甘酸っぱさも楽しめて、おすすめです!
    ――BOOK EXPRESS横浜南口店 鈴木詩織さん

高校3年生の千紗は、横浜のタウン誌「ハマペコ」編集部でアルバイト中。
初恋の相手、善正と働きたかったからだ。用事で元町の洋装店へ行った千紗は、
そこのマダムが以前あった元町百段をよく利用していたと聞く。
けれども善正によると元町百段は、マダムが生まれる前に崩壊したという。
マダムは幻を見ていた? それともわざと嘘をついた? 
「元町ロンリネス」「山手ラビリンス」など珠玉の連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公である高3の千紗が、小さな頃から想いを寄せる善正の勤め先である横浜市中区エリアのタウン誌のアルバイトとして働きながら、横浜の港周辺の過去と今を巡る物語。

    ちょっと、いやかなりローカルな小説である。
    地元がこの小説に出てくる辺りだったので、
    場所も建物も「ああ!あそこね」とか、
    「え?知らんかったその話」、
    「え?その距離を歩く!?」
    などと、頭に地図を描きながらいちいち納得して楽しめた。

    が、このローカルエリアを知らない人には
    いくら千紗と善正の関係が気になったとしても、出てくる絵が描けないお話だろうなぁ…。

    イマイチピンとこなかったけど興味あるなぁ、という方は、この小説に出てくる辺りを散策して、もう一度読んでほしいなぁ。
    横浜に縁のある人には、グッとくる小説だ。
    2022.5

  • 近くに住んでいるので、出てくる場所がことごとく馴染みの場所で楽しかった。
    横浜の歴史の勉強や、よく通るのに知らなかった場所やイベントを知るきっかけにもなり、普段通り過ぎるだけだった場所も、改めて色々巡ってみたくなった。

  • 横浜のタウン誌「ハマペコ」でアルバイトをする高校生の千沙が出会った横浜に関する謎を解決していく、日常もの。この作家さんの本がそこまで好きな訳ではないが、自分が知らない横浜のうんちくを期待して、手に取った本。山手の洋館、根岸競馬場、横浜三塔…すでに知っている内容が多く、あまり新しい出会いがなく、残念。
    でも、横浜を大事に思う人たちの謎を一生懸命解明していく千沙の姿はほほえましい。
    作品の中に、「過去を知ったところで、過去が変わる訳じゃない」と言うフレーズがあるが、私は過去を知ることで、自分も未来も変わると信じてる。
    そんなふうに言い切ってしまう人の人生は、少し寂しい。

  • スゴく知的好奇心をそそられる内容だった。
    本当は実際に歩きたいけど、横浜の地図を見ながら位置関係を理解して読む。
    https://hamakore.yokohama/hamaguide/map/
    http://www.hama-midorinokyokai.or.jp

    大学推薦が決まり、受験から一足早く解放された高校三年の千紗は、地域情報誌「ハマペコ」の編集部で、卒業までの間イラスト担当兼雑用係としてアルバイトすることに。
    編集長が病気で入院し、千紗の片思いしている善正がその間代打をすることになったからだ。
    たまにちらりと出てくる善正の思い人の話に、チクチク心が痛む千紗の片思いの様子が、申し訳ないけど可愛い。
    横浜を舞台にしていて、読んでいてへぇ~と思うことばかりだった。気になってブラタモリ横浜編を借りて調べちゃったくらい。
    でも、一番いいなと思ったのは、最後の善正と千紗の会話(色気は全くない)。
    日本開国後に海外からやって来た外国人も、言葉が通じない高湿度の異国の地で、奇異や嫌悪の視線で見られてどう思っただろうね、というやり取りに共感した千紗が、藤沢よりの戸塚に住む自分が横浜市民と名乗るのは、おこぼれもらってるみたいで気まずい、よそ者って悲しい言葉だとこぼす。
    善正は、横浜は元々100戸程度の村で、開国後に次々移住者が住んで発展した街なのだ。新しく入ってきた人に対して開かれた街であってほしい。という。
    自分も新しい環境になったばかりで、そこの文化に慣れなくてスゴく精神的に辛いので、自分は新しく来た人に優しくしよう、とノウハウ集を作り始めたのと同じ気持ちだったかも。善正の言葉が身に染みた…✨


    以下ネタバレ

    元町ロンリネス…善正の忘れ物を取りに行った洋裁店で元町百段階段の話にまつわる夫婦のエピソードを店主の老婦人より聞いた千紗。
    ところが善正は千紗からその話を聞いて、時系列の違いに気づく。元町百階段は関東大震災で倒壊しており、婦人の年齢と一致しない、と。
    無知な女子高生だと思われたのか、それとも記憶があいまいになっているのか…と落ち込む千紗。
    しかし事実は婦人の亡くなった夫が描いた元町百段階段の絵。
    善正に見せた絵は、記憶にある震災で無くなった兄と婚約者で、千紗に見せてくれた絵は同じ構図で旦那と婦人で描かれていたものだった。

    山手ラビリンス…ハマペコの読者ハガキに書かれていた洋館の七不思議のサイト。そのサイトに書かれていた話を、編集長の同級生のシェフにしたところ急にシェフの様子がおかしくなった。
    不思議に思いつつ、興味のままに七不思議の洋館めぐりをする千紗。洋館めぐりの途中で女性に話しかけられる。過去を知ることに何の意味があるのか、と呟く女性。
    実はシェフと編集長は女性のために(シェフの片想いのため?)、塾に置いてあった落書きノートに七不思議のネタを書いていたが、女性が塾をやめてしまったことで連絡が途絶えてしまっていた。山手の元町公園の洋館が山手公園の洋館と勘違いされて伝わり、落書きノートのやり取りの続きがなされなかっただけ。
    洋館めぐりが急にしたくなる。エリスマン邸が2019年中は工事中という事で行けないのが残念!

    根岸メモリーズ…千紗は友人の菜々美から、彼女の祖母の思い出の場所を調べてほしいと依頼される。菜々美の曾祖父喜助は自分は外国の生まれと話していたらしいが、純日本人のはず。横浜が外国人居住地だった時代に関係するカタカナの地名はないか調べることに。
    すると、明治から大正にかけて、ペリー提督が名付けたミシシッピ・ベイ=根岸湾があった。
    次は喜助が曽祖母と祖母を連れて行きたいと言っていた場所を調べてほしいという。
    喜助が亡くなった昭和58年ではまだ時期ではなく、当時素晴らしい眺めで、外国人もいて、植木職人の喜助が行ける場所。なんと根岸森林公園は昔競馬場で、その一等馬見場だという。1981年(昭和56年)に接収が解除されたそうだが、一般公開がされないまま喜助が亡くなった。
    …現在は近代化産業遺産として2009年に認定。廃墟ブームにあいまって、人気が出ているらしい。

    関内キング…屈指のスポンサーである寿々川の会長が、突然ハナペコとの取引をすべてやめると怒りながら言いだし、戸惑う編集部。
    理由を探るべく会長本人に会いに行く善正。会長が書いたコラムが掲載された最新号に問題があるらしい。
    掲載された横浜三塔についての思い出話は、当時喫茶店で働いていた女性に皆熱をあげていて、ミステリアスな女性の口癖は、「私は関内のキングを探している」というもの。しかし彼女は「私のキングが、パリに連れていってくれる」と残し、横浜を去ってしまうが、キングになれなかったと落ち込んだ会長は、その旅立ちの見送りに行かなかったのが心残りだ。というもの。
    しかし、実はコラムの中身は会長の妹が勝手に訂正をいれて変わっていただけ。

    馬車道セレナーデ…千紗の7つ上の従姉妹で、美人で頭がよくて、ニューヨークのギャラリーで働いていたはずの恵里香が日本に戻ってきた。ただでさえバイト終了が迫り、大学生活への不安もあるのに、未練たらたらの恵里香が善正の近くにいるとなると、千紗の心境は穏やかでない。
    しかもどうやら恵里香は善正に興味があるようだ。そんな恵里香と善正に馬車道での思い出があると知り、次号の特集「馬車道あいす」イラスト制作の準備をかねて歩くことに。日本初の物が数多くあるこのエリアは県立歴史博物館、街路樹、あいすくりん、ガス灯、蒸気機関車

  • 横浜のタウン誌ハマペコでアルバイトしている高校生千紗が主人公。編集長が病で半年ほど療養している間仮編集長になった隣人の善正が好きで、半分押しかけのようにバイトしている(イラストは描ける、推薦入学する大学もデザイン系)。横浜を舞台に起こるちょっとした謎や疑問を5つ解きながら、卒業までの時間が流れていくストーリー。
    うむむ、これは横浜愛がないとつまんないお話なのでは…。逆に言えば、横浜の中学校図書館は必携、かも。横浜の子どもたちは小学校の総合や社会で横浜の埋立の歴史(吉田新田)とか、開港記念日(6/2、なんと学校休み)付近では朝集会で横浜の発展のことを聞いたりするので、多少の知識はある。でも、好きで博物館とかで学ばない人はやっぱり千紗レベルかも。
    横浜愛は良かったけど、千紗の行動がいまいち応援できない感じだったのと、善正の良さ分かりにくかったから、恋愛の方にのめり込めなくて残念。
    根岸森林公園は馬の遺跡もカッコいいけど、あそこから眺める米軍の家があるエリアが映画を見ているように素敵なんですよ。近くの交差点の信号には英語で右折表示あったりとかします。個人的には三渓園の松風閣も好きです。

  • タウン誌の編集部でバイトをしている主人公が様々な人と出会う事によって横浜の歴史や雑学に触れ、恋に悩み、大人への一歩を踏み出す成長譚。

    …が、横浜に縁がなく思い入れもない地方人である自分にはあまりピンと来ず。
    少々無理があるような強引な展開で「横浜」を意識させるように持って行くので興醒めしてしまった。
    大学時代、地方誌の編集のバイトをした事もあるので、不純な動機で強引にバイトを始めたにも関わらず大した仕事もせず忙しいだろう編集長代理に構って攻撃を繰り出す主人公にも辟易。
    バイトの終わりも恋の結末も中途半端でスッキリしない。

    横浜近郊在住の人なら頭の中に描き易いしもっと楽しめるのかも。
    でもどうせなら地方人でも楽しめる横浜ストーリーになっていれば良かったのにと思う。

  • ちょうど1年前に横浜に行ったので、横浜三塔のエピソードや、港の見える丘公園、赤レンガ倉庫周辺などは情景がありありと浮かんできて楽しめた。

    「あ、あそこね、行った行った」とか「そんな所があったのかー」とか、いろんな思いに浸りながら読んだ。

    千沙の善正へのほのかな憧れも微笑ましく、みんなが前を向いて歩いていく感じがほっこりしててよかった。

  • 高3でタウン誌に関わるバイトって刺激的で楽しそう。
    近所の情報にも強くなれるうえに、たくさんの人に出会える。考えただけでワクワクするね。
    あたしの高校時代なんて、バイトしていたわけでもなく、それも認められていなかっただろうしなぁ。時代、地域の差か? 都会っ子でこんな環境で過ごせていたら、また違った人生だったのかもと想像するのも楽しい。

  •  なんとなく中途半端でした。

     主人公の恋心も、結局何がしたかったのかも。

  • 主人公達の心情が若干理解しにくいところもあったが、歴史的背景や街並みを感じながら謎が解かれていく過程とそれに関わる人々の関係性と言動が丁寧に描写されていて面白かった。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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