首の鎖

著者 :
  • 講談社
3.20
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062210737

作品紹介・あらすじ

人生のすべてを祖母と母の介護に捧げてきた勝村瞳子は、四十歳目前にして未来が見えない。妻の束縛ルールと執拗なDVに悩む丹羽顕は、母に認知症の疑いがあることを知り、愕然となる。心療内科で出会った2人は次第に心を通わせていく。だが・・・・・・。「――妻を、殺してしまいました」「・・・・・・すぐに行くから、待っていてください」 自首しようとする顕を止めて、遺体を隠そうと言い出す瞳子。果たして殺人の隠蔽は成功するのか? 交錯する思惑と嘘。エスカレートする母と娘の愛憎。予想外の結末が待ち受けるノンストップ・サスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 高校を卒業してから就職する事なく実家の洋食屋を手伝いつつ祖母、母の介護を一手に引き受けてきた瞳子。しかし母には罵倒され家族には感謝されず疲れ果て未来の見えない日々の中、心療内科で妻からの束縛とDVに苦しむ顕に出会う。交流していくうちにちょっとずついい感じになってきて生活に張りも出てきた矢先、顕から妻を殺してしまったという連絡が。二人は隠蔽の方向に舵を切るが…。いやもう瞳子の家族が皆自分勝手で一人犠牲になっている姿がキツい。声の大きい人に押し潰されがちになるよな、とは思うけど救い無さすぎだろ。顕が救いの存在にならないまたある意味クズなのがリアルだ。しかし瞳子も主体性無さすぎ。そのせいかああ、破滅しましたね。色々杜撰でしたもんね、で終わってしまったのが残念。

  • 人生の全てを祖母と母の介護に捧げてきた勝村瞳子は、
    四十歳を目前にして未来が見えない。
    妻の束縛ルールと執拗なDVに悩む二羽顕は、
    母に認知症の疑いがあることを知り、愕然となる。
    心療内科で出会った二人は次第に心を通わせていく。だが…。
    交錯する思惑と嘘。
    エスカレートする母と娘の愛憎…。

    高校を卒業後自分の居場所を確保するため祖母の介護を引き受けた瞳子。
    家業を手伝いながら介護を18年間し、その二年後同じ病で介護が必要と
    なった母親の介護をする日々。
    子供の頃から愛情の欠片すら見せてくれない母の愛を求めてやまない…。
    瞳子を介護要員としてしかみていない、父と兄。
    瞳子の心を理解してるふりをしている身体が目的だけの元担任教師。
    瞳子と心を通わせながらも嘘をつき続ける顕。
    登場人物が嫌な人、嫌悪感を感じる人ばかりで腹立つばかりだった。
    読んでてとてもとても嫌な気持ちだった。
    瞳子の行動や気持ちも理解出来なかった。

    そんな家、出てしまえばいいのに…。
    自分の人生を自分で切り開けばいいのに…。
    愛情の欠片すら見せてくれない母親の愛を求めなくてもいいのに…。
    いつか家族が仲良く暮らせるんじゃないかって夢見て…(*T^T)

    素晴らしい家族もいる。
    でも、こんな家族も現実にいると思います。
    それぞれの家族がそれぞれの形をしている。
    色んな不満や悩みが渦巻いているんだろうなぁ。

    ストーリーもありきたりって感じでちょっと残念な感じでした。

  •  なんて救いのない物語なんだろう。

     主人公の瞳子は、母の介護と店の仕事に縛り付けられ、小さいころから何の楽しみもない生活をていた。そして、瞳子自身、自分の居場所を守るために必死でその役割を果たしていた。
     そんな瞳子が病院である男性と出会う。それが顕だ。顕は、妻のDVに耐え続けている男性。自分を唯一理解してくれる顕に瞳子は心惹かれていく。顕もまた、妻にはない瞳子の優しさに惹かれていく。

     ある日、母親への暴言に耐えられなくなった顕は、つい妻を殴りつけ、殺してしまう。瞳子に電話をし、救いを求める。そして2人は妻の死体を埋めに行き、いつバレるかと不安な生活を送っていく・・・・。

     ミステリなどを読んでいると、人を殺したりするシーンはよく出てくるが、この物語は、本当に日常にありえそうで、読んでいて恐ろしくなった。そして、瞳子の境遇を思うと、こんなことがあっていいのかと苦しくてしょうがなかった。
     唯一瞳子の理解者として顕が現れるが、顕は自己保身のために瞳子に嘘をつく。『噓も方便』『知らぬが仏』とはよく言ったもので、瞳子はより顕を守ろうという意識が強くなっていく。全てを知っている読者は顕のそういう汚いところが許せなくなってしまう。でも、同時にそんな人間の弱さも理解できてしまう。

     読んでいる時は、瞳子や顕が置かれている状況や、なんで言い返したりしないんだろうと、モヤモヤしっぱなしだったが、実際にニュースで似たような事件を見ると、案外こういう人たちは多いのではないかと改めてゾッとした。

  • 苦しいけど続きが気になり
    一気読みしました。

  • 祖母と母の介護をしながら40歳目前となった瞳子。
    妻からのDVが続く中、母に認知症の疑いがあると知った顕。
    首に鎖を巻かれたような境遇の2人が、大きな過ちを犯してしまう。

    う~ん。
    どの登場人物も好きになれない。
    瞳子が抱える介護問題はかなり切実だが、介護される側の瞳子の祖母、母、介護に無関心の瞳子の父と兄など、どうにも救いのなさに気分が悪くなった。

    顕には、魅力を感じなかった。
    DV妻があそこまで激しい暴力を奮っていたことも理解できなかったし、それを抑えることが出来ない顕にも、う~んという感じ。

    こんな感想を持ってしまった私自身は幸せボケなのかもしれないと反省します。

  • 介護要員としての扱いしか受けず姑憎さで母から憎まれて育った女性と、妻のヒステリーに晒されている男性の話。
    二人ともに家族からお互いへ共依存先を変えただけの虚しい恋愛で、もう少し何か生き方がないのかとイラついてしまった。
    そんな苛立ちを思えるのも私が自由で恵まれているからなのでしょう。

  • 家族ー特に母親に縛られている女性が主人公。
    彼女は稼業を手伝いながら母親の介護をしているが、家族はそれを当たり前だと感謝する事もない。
    彼女は学生時代の恩師と不倫関係にあり、最初は彼女のそんな境遇に理解を示してくれていたその歳の離れた元教師も彼女とそういう関係になりたくて理解しているふりをしていただけで実際は何も分かっていない。
    病院の精神科にかかっている彼女はそこで一人の男性と出会う。
    彼は妻から精神的、肉体的暴力を受けている男性。
    やがて二人はつきあうようになる。
    そんな折、彼が妻を殺したという連絡が入り、二人は妻を山中に埋めるがー。

    ストーリー自体は単調だし、主人公や他の登場人物の性格などからずっと重苦しい。
    客観的に言うと、面白いと思えるものでもない。
    ただ、個人的に主人公の女性の気持ちが理解できるし、共感できるから読んでいる間ずっとひきつけられ、不思議な引力を感じた。
    家族ー母親に縛られている、というそその彼女の境遇や生き様や性格、そんなのが「分かってる人」が描いてる、と思わせてくれた。
    これを外から眺めて、親から虐待を受けてる人ってこうでしょ、という目線で書いていたとしたらここまで惹きつけられなかったと思う。
    ただ、そういうのが全く分からない人が読むと「何だ、こりゃ」になるし、主人公にイライラするんだろうな・・・と思う。

    「首の鎖」は家族ー母親や妻に縛られて見えない鎖で首をつながれている人の事なんだろうけど、その見えないはずの鎖が見える人がいると私は思う。
    それは多分、つながれている本人もそうだし、家族もそう。
    そして、何故か全く関係ない第三者でも見える人には見える。
    そして、そういう人はその鎖をもってそその人を操ろうとする。
    その人間は家族によく似た人だったりする。

    だから、家族から肉体的に離れたからといって「自由」になる訳じゃない。
    本当の「自由」は自分の心の中にあるけど、それはすごく遠いな・・・、難しいな・・・とそんな事をこの本を読んで思った。

  • タイトルに全てがあらわれている。
    瞳子の家族との関係、境遇が気の毒でしかたがない。

    そんなに早々と透を好きになってしまう⁈犯罪の手伝いをするほどに?と思ってしまった。
    透に魅力を全く感じられないし色々な意味で弱さが感じられる人だけど、瞳子は辛い状況だけに惹かれてしまったのかな。。

    ジェットコースターのように展開が早い。
    だから一気読みでした。

  • 読んでいて胸が痛くなる作品でした。介護は家族の協力がなければ無理なのに、その大変さから目を背け娘一人に押し付ける。娘の人生をどう思っているのか、本当読んでいて腹がたった。行き場のない生活の中で出会った男性もまた妻からのDVを受けていた。息苦しい生活の中で二人はお互いを守ろうとするのだけど…。表題の「首の鎖」というのがとても深い意味のあるものでした。

  • タイトル通り、「家族」と言う名の鎖に繋がれた人々の物語です。

    主人公は人生の全てを祖母と母の介護に捧げてきた40歳の勝村瞳子(かつむらとうこ)
    心療内科で妻の束縛と執拗なDVに悩む丹羽顕(にわけん)と出会いそこから物語は大きく展開して行きます。

    瞳子の気持ちを理解しているふりをして肉体関係を求める神田、瞳子の未来を案じる事もせずただ介護人員として扱う父親、姑から受けた仕打ちを娘にぶつける母親。
    血が繋がっているとは思えないエゴの吹き溜まりの様な家族の中、必死に頑張る瞳子の姿が辛かったです。

    介護問題、認知症、DV、いつどこで起こってもおかしくない出来事に殺人が加わりラスト1行まで目が離せませんでした。
    一気読み出来る家族サスペンス。

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著者プロフィール

1984年山口県生まれ。2017年、『誰かが見ている』が精緻に組み立てられた心理サスペンスとして高く評価され、第52回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著書に、全寮制女子高で不審な事件が次々と起こる『友達未遂』、介護に悩む女性とDVに苦しむ男性を描いた『首の鎖』がある。

「2022年 『彼女の背中を押したのは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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