魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062560078

作品紹介・あらすじ

つまずくこともある。病むこともある。自分の内にありながら、どこかとらえどころのない人間の心。“魂の医者”カール・グスタフ・ユングがひもといた人間心理の謎を、日本を代表する“こころの専門家”と“こころの表現者”が、深い独自のまなざしでたどり、見つめなおす。生を掘りさげ、夢を分析し、死を問いなおす2人の言葉のなかに、これまで気づかなかった「自分」が見えてくる、魂の根源に語りかける名講義録。


必ずプラス・アルファがある河合隼雄の本
心はなぜ病むのか。「生」の根源を考える名講義!

つまずくこともある。病むこともある。自分の内にありながら、どこかとらえどころのない人間の心。“魂の医者”カール・グスタフ・ユングがひもといた人間心理の謎を、日本を代表する“こころの専門家”と“こころの表現者”が、深い独自のまなざしでたどり、見つめなおす。生を掘りさげ、夢を分析し、死を問いなおす2人の言葉のなかに、これまで気づかなかった「自分」が見えてくる、魂の根源に語りかける名講義録。

感想・レビュー・書評

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  • 日本における分析心理学の第一人者である、河合隼雄さんと、谷川俊太郎さんの対談集。
    内面を探るための様々な手法「夢」、「箱庭」、「ロールシャッハテスト」等、それは、自我コントロール下にある覚醒時ではなく、自我コントロールが弱まってい状態時に本来の内面を探ろうとする取り組み。アルコールや麻薬、脳の機能の一部が失われることに伴う幻覚で夢とは仕組みが違う。
    日本人は西洋人にくらべ、みんな依存するのが好きであり、依存と独立のバランスが重要。

    『病気は個人の問題なんだけれども、ほとんどみんな社会的なひずみをせおっていると思うんです。』p236
    『ぼくが憂鬱になっているということは、ぼくの心の中で何かのうごきが止まって動かねばならないところが動いていないわけです。』p240

    ところで、今日昼寝をしている時、「デパートで素っ裸、慌ててトイレでシャツとパンツをはく」という夢を見たワタクシ。その深層心理がキニナル

  • もう5月くらいに読み終わってるだろう本・・・
    いろいろ忙しくて感想アップが遅れております(苦笑)

    河合氏、谷川氏の対談のような形で進んでいく本です
    お二人とも似た考えの持ち主なのか、途中「これはどちらが言ってるの?」となるほど(笑)
    一回読んだだけじゃ、なかなか理解は難しいですわ

    今回、付箋が付いているところを抜き出してみると・・・

    ・心理療法家として患者に向ける理論の刃は、とりもなおさず治療家自身に対しても向けれていることを
     しばしば強調します(p3)

    ・治療者となる者は自分を知ることが大事だから、みずから分析を受けなければならないと書いてあった
     わけです(p26)

    ・治るときは誰しも苦しい歩みを続けるのだから、そこに付き添う人があることは測り知れない大きい
     意味を持つのです(p67)

    ・その人の隠されている自己治癒力というんですか、いわばそれに対して大変な敬意を表しているんですね(p68)

    ・自己というのは自分のものであって、なおかつ開かれているものでしょう。ある一人の心の中に自己治癒の働きが
     生じるということは、周囲の人にも何らかの変化が生じているわけです。つまり一人だけが変わるということは
     あり得ないので、家族が変わる、先生が変わる、あるいはクラス全体が変わるというようなっことが実際に
     起こってくる(p239)

    ・ぼくはそういうネガティブな感情も、あるものはあるとして率直に受け入れる方が、全体としての
     インテグレーションがうまくいくんじゃないかと思っているんです。だからネガティブなものもポジティブな
     ものも同時に働かせながら、どう全体として統合するかが問題なんじゃないでしょうか(p244)

    ・ぼくは心理療法を学ぶ学生によく言うんです、どんなにおもしろくないことからでもおもろいことを見つけだす
     才能がわれわれには要ると。ぼくらが会う患者は、いつまで経っても一進一退の症状のまま一年以上もほとんど
     変化がないという人が多いでしょう・・・中略・・・そういうふうに、ぼくは自分の心を生きたものにすると
     いうのをしょっちゅうしています(p304)

  •  日本の心理学者の中でも著名なユング派河合隼雄氏と詩人の谷川俊太郎氏の対談集。
     この二人を対談させようと考えた人に金一封。肩を抱いて赤提灯の下で熱く語り合える気がする。
     なんて素敵なチョイス!
     濃いよ、ホント濃い。
     物事は突き詰め過ぎると、いつしか物凄く簡略化されていく・・・っていうのの見本みたいだ。
     特にこの世界の第一人者、的な二人が揃って話しているわけで。
     お互い常人には測り知れないところがアベレージなわけで。
     もうそこに行きつくのは無理だよなあって達観して読むと割とあっさり頭に入ってくるから不思議。
     学者と詩人という、言葉や心理面においてカテゴライズする側とされる側って組み合わせも面白い。
     小学校の頃に心理学というものを初めて知ったのは河合氏。
     谷川俊太郎の詩は教科書に載ってて詩集を初めて手に取った詩人。
     そういう意味では私にとっては特別な二人。
     谷川ファンには嬉しい詩の分析もあります。ただ心理学を学問でユングだフロイトだと語るのが嫌いな人は難しいかも。
     私はフロイト嫌いだけどね(笑)

  • 対談集。
    対談のはずなのに本当に講義を聴いているようで。

    心理学の難しさはあるけれど、文章自体はわかりやすい。

  • はからずも、先月読んだ『ユング心理学入門』の復習になった。
    谷川俊太郎の、実際に体験したことや考えたことを元にした質問によって、より分かりやすかったり、共感しやすかったりで、面白かった。
    箱庭の実際の写真もすごい。
    谷川俊太郎の詩を、河合隼雄が解釈する章では、こんな詩の鑑賞法?もあるのかぁと…面白いような、怖いような。

  • 最近、この本の影響で、毎日どんな“夢”を見ているのか気になるようになった。
    “夢”といえば、私は昔同じ夢をずっと繰り返し見ていた時期があった。
    それは二種類あって、一つは道幅いっぱいのでっかいローラーに轢かれそうになる夢、もう一つは、明るい日差しが燦々と降り注ぐ場所で、病院のストレッチャーのようなものに乗せられて頭を手術される夢。

    心理学の世界では“夢分析”という治療方法があって、そういうので見ると、私のこの夢も何か意味はあるんだろうな。


    『魂にメスはいらない ユング心理学講義』 河合隼雄・谷川俊太郎 (講談社+α文庫)


    昨年亡くなられた臨床心理学者の河合隼雄さんと、詩人の谷川俊太郎さんとの、ユング派心理学の“講義”という形をとった対談集である。

    人間は生まれてきた時点ですでに病んでいる、という河合さんの言葉にまず衝撃を受けた。

    「なにもこの世に生まれなくてもいいのに生まれてきたということは、やっぱり病んでいるわけだから」

    と。

    ユングの考え方は、なかなか当時の人々には理解されなかったらしい。

    「フロイトはすべてを厳密に明確化しようとしたのに対し、ユングはむしろ明確化できないもののほうを問題とした」

    フロイトとユング、どちらがどう良いか悪いかというのはよく分からないが、たぶん日本の風土にはユングの方が合うんじゃないかと、読んでいて私は思った。

    ユング派の考え方として、「アーキタイプ(元型)」「自我(エゴ)と自己(セルフ)」「夢分析」「曼荼羅図形」などが紹介されているが、一番面白いと思ったのは「箱庭療法」だ。

    砂の入った箱の中に、家や動物や木や、その他いろいろな物を置いて作品にするというもので、その人の抱える深層心理が作品に表れるそうだ。
    写真付きで解説されていて分かりやすい。

    家や車など日常的な世界と、森や神社のような非日常的な世界が、両方一つの箱の中に置かれているような箱庭が、ノーマルな人の典型的なパターンなのだそうだ。
    左右対称に作りすぎる人はちょっと危ないらしい。
    へぇー。
    患者によっては、箱の中の砂を全部出してしまう人や、はみ出して作る人、できたと思ったらそれを全部埋めてしまう人もいるという。
    基本的には何をやっても自由だが、単に発散して無茶苦茶やるのではだめで、ちゃんと“作品”になっていないといけないのだそうだ。

    作ったものを壊し、その破壊があまりにもひどく、しかも再生の方向に向かっていない場合は、箱庭作りを途中で治療者が止めることもある。
    “破壊”という行為の裏にある患者の苦しみを自分が受け止められる場合は何も言わないで見守るが、受け止めきれない時はストップをかける。
    治療者が限界に達した場合は、治療者も患者も両方危ないんだそうだ。

    治療においては、患者とどの程度関わるか、ということが当然問題になってくる。
    河合さんは、患者から「誰にも言わないで」と打ち明けられるようなことに対して、例えば犯罪などの場合、自分がこれは黙っていることはできないと判断したときは、「言いたい」と患者に言う。
    「治療の記録を取らないで」と頼まれても、それで自分が非常に困る場合は、「ぼくは困るから記録を取りたい」と正直に患者に言うそうだ。
    一見冷たいように感じるかもしれないが、私はそのほうがいいと思う。
    自分の限界をきちんと示せる人に、真剣に向き合ってもらいたい。

    “死刑”は可か否か、という論争では、“人が人を裁けるのか”という意見が出るが、それと同じで、人の心の病を人が治せるものなんだろうか、と私はいつも思う。
    専門的な知識を持つお医者さんも万能ではない。
    怪我の治療とは違うのだ。

    限界のある人間同士が関わりをもつ、という覚悟のいる仕事なのだとつくづく思う。
    精神科医の自殺が最近増えているというのも、そのあたりに原因があるのかもしれない。
    一人の人間のすべてを受け入れることなんて、そりゃあ無理だ。

    谷川さんが質問をし、河合さんが答えるというやり方で講義は進んでいくのだが、谷川さんの質問のしかたがまた的確で、「自分はこうなんだけれども」という例も含めつつ、我々一般人が専門家に聞いてみたかったことをきちんと質問してくれる。
    二人の年齢が近いせいか、“教える人”と“教えてもらう人”という図式はあまりなく、同等な感じがいい。

    巻末には、河合先生による「谷川俊太郎詩解釈」の特別講座付き。
    私は谷川俊太郎さんの詩は好きだけれど、なんとなくいいな、言葉が好きだな、ぐらいの読み方なので、こうやって心理学的に解釈されているのが面白かった。

  • 河合先生の話はもちろん、谷川さんの鋭い質問力に敬服する。内容としては、箱庭療法が興味深かった。精神医学的に症状がない方たちの作った箱庭。素人目に強烈なものでも、それ単体で診断されるわけではない。作られるまでの経緯、人形等の配置や有無で、病気の人とそうでない人の大きな違いがあるのは印象的。最後、谷川さんの詩をいくつか取り上げて、河合先生が解釈する特別講座も面白かった。

  • 谷川さんがとても率直に河合先生に尋ねているのでわかりやすい。
    今は少し理解できるところも増えた。実践を重ねればもっと深まっていくのかもしれないけれど、それはなんだかまだ覚悟ができないなぁ、という気もする。

  • 図書館で。実は河合隼雄さんの本って読んだことないな、と借りてみました。

    グレートマザーが戦時中天皇陛下であった、というくだりはなんだかすごく納得しました。生かすものであり殺すものである、かぁ。
    自我と自己というのも難しいですね。自我があるから自己があるような気がしますが自己というものが選んだからこその自我なのか。考えると色々ドツボにはまりそうです。
    そして谷川さんの受け答えも深いなぁ。創作する人はここまで自分の魂に入りこんでいかないとイカンのかぁとも思いました。どちらにせよ両人ともただものではないですね。(いや、実際ただの人ではないんですけれども)
    面白かったです。

  • つまずくこともある。病むこともある。自分の内にありながら、どこかとらえどころのない人間の心。“魂の医者”カール・グスタフ・ユングがひもといた人間心理の謎を、日本を代表する“こころの専門家”と“こころの表現者”が、深い独自のまなざしでたどり、見つめなおす。魂の根源に語りかける名講義録。

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