「砂糖は太る」の誤解―科学で見る砂糖の素顔 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062573306

作品紹介・あらすじ

「砂糖は太る」それは、誤解です。「甘さが太らせる」それも、誤解です。「砂糖は糖尿病の原因」それも、やっぱり誤解です。あなたの「食べ物常識」を覆す、砂糖の真の姿。

感想・レビュー・書評

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  • 寝る前のフォトリーディング&起床後の高速リーディング。
    高速中も興味を持って読めた。

    星は二つ。

  • 高田先生は、この本でいちばん述べたかったのは「氾濫する食品情報を、冷静になってもう一度科学的に考え直してみる必要がある」ということだそうです。
    砂糖だけを悪者にするのではなくカロリー全体を考えるべきだということで日本では摂取カロリーや砂糖消費量が昔に比べて低下してきていることを示しています。
    砂糖消費量が減っているのに、糖尿病者の数は増えているので砂糖が原因ではないと主張しています。
    確かに一つの食品を悪物にしてそれを取らなければ大丈夫という発想は単純すぎると思います。
    その主旨はとのとおりと賛同します。
    でも一つの食品を擁護するタイトルの本は、一つの食品を悪とする本と発想的には変わりません。もし著者が上記の趣旨で本を書きたかったのなら違ったタイトルにした方がよかったでしょうね。

  • 今まで砂糖のことを誤解していたと痛感させられたが、記述されているすべてに対して信じられない気持ちもある。

    判断材料の一つとして扱いたい。

  • ダイエットのためにと思って読んだものが
    歴史の話とかも出てきて楽しかった


    すべてつながりなんだなとおもう

  • 「砂糖は太る」の誤解

    味は舌が判断しているのではありません。脳が判断しているのです

    日本では酒を飲む人は辛党、塩味を好むなどと言われ、甘いものを一緒に食べるなどということは、酒飲みの風上にもおけないなどと言われました。ところが、欧米ではアルコールを飲む人、またはアルコール依存症の人は同時に甘いものが好きな人が多いのです。

    アルコール依存症の人に甘いものを食べさせると、アルコールの依存度が減るということです。つまり、この両者は、相互に好みを高め合うのではなく、甘味にはアルコール摂取を抑制する作用があるのです。

    食べ物の成分で腹内側核を刺激するものはブドウ糖です。したがって、血中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなると、満腹を感じます。反対に、脂肪の分解によりできる脂肪酸は腹内側核の働きを抑制して、満腹を感じさせません。

    食べ物のなかで、外側視床下部を刺激する(つまり食べさせる)ものは脂肪酸で、抑制する(食べなくさせる)ものはブドウ糖です。

    砂糖より脂肪を多く摂っている人には肥満が多いのです。つまり、肥満の直接の原因になる食べ物は、やはり脂肪の多いものだと考えられます。

    朝食を抜いた場合には言葉の記憶力が落ちます。脳は栄養すなわちブドウ糖を常に必要としています。ですから食後数時間たった時に、ケーキや砂糖を入れたコーヒーで脳にブドウ糖を与えるのが脳の健康のために効果的なのです。

    肥満以外に血糖に影響するのは、ストレスです。人の体はストレスを受けると、二つの仕組みが働きだします。一つはストレスホルモンと言われる、副腎皮質からのコルチゾルの放出です。コルチゾルは肝臓などにあるグリコーゲンからブドウ糖を作り、ブドウ糖を血液中に放出します。それにより、ストレスの原因となった敵などと闘ったり、強敵の場合には逃げ出したりするエネルギーにするのです。

    糖尿病は少なくとも砂糖の使用とはあまり関係がありません。実際に、FAO(国連食糧農業機関)やWHO(世界保
    健機関)は一九九七年に声明を出し、「糖類の消費が糖尿病、肥満といった生活習慣病に直接結びつくことはない」と述べているのです。

    筋肉などはブドウ糖だけでなく、脂肪の成分である脂肪酸を直接使いエネルギーを得ることもできます。実際、心臓の筋肉などは脂肪酸を用いてエネルギーを作っています。ところが脳だけは、エネルギーとして用いることができるのはブドウ糖だけなのです。そのために、ブドウ糖の供給が少なければ、筋肉や心臓は大丈夫でも、脳は働かなくなり、意識を失い、これが統けば植物人間になってしまいます。

    コーヒー-ブレークやティー・ブレークに甘いものを摂るというのは、脳の栄養の補給という意味もあります

    国際競技に勝利するには、二つのことを理解せねばなりません。一つは、運動には発達した筋肉と体格が必要であるということです。もう一つは、その筋肉が力を出すには、それに必要なカロリーが与えられなくてはならないということです。どちらも、十分な栄養が必要なことは言うまでもありません。

    さて、まず一00メートル走のような短距離の運動を考えてみましょう。運動をするためには、筋肉が収縮しなくてはならないのですが、そのためには工、不ルギーが必要です。このエネルギーは、高分子リン酸化合物と呼ばれる、ATPが分解することで与えられます。図511に示すように、ATPは分解するとリン酸を一つ失って、ADP(アデノシン二リン酸)という物質になります。この時に大量のエネルギーが放出され、そのエネルギーが筋肉の収縮、つまり運動に使われるのです。
    ところが、筋肉に蓄えられているATP分子を、ランナーは一歩で使ってしまいます。しかし、ATPがなければ、筋肉は収縮することができません。そこで次に筋肉中のクレアチンリン酸という物質を分解し、できたりン酸がADPに結合しATPが作られます。ではクレアチンリン酸は、筋肉中にどのくらい存在するのでしょうか。これはだいたい全力で一O秒くらい走る聞とされます。すると、カール・ルイスなど一00メートルを九秒台くらいで走る人のエネルギーは、ATPとクレアチンリン酸でまかなわれると言ってもよいでしょう。

    しかし、もう少し遅いランナーや二00メートル、四00メートルの走者などの場合には、これ以外のエネルギー源が必要です。これはブドウ糖を分解することで可能になるのです。このブドウ糖は、グリコーゲンとして蓄えられているので、ブドウ糖、グリコーゲンの分解によるエネルギーと言ってもよいでしょう。
    ブドウ糖が分解する過程には、酸素を用いる好気的過程と、酸素を用いない嫌気的過程があります。非常に速く走るような場合には、ブドウ糖の分解に酸素の供給が追いつかないので、嫌気的になります。この過程ではブドウ糖一分子から二分子のATPしかできません。
    さらにその際には乳酸ができます。実は、乳駿がたまると、筋肉に痛みを感じ、疲労を感じます。
    一方、運動の強度と酸素供給のバランスがとれている場合には、ブドウ糖は好気的に分解されます。これは、細胞内のミトコンドリアという組織で行われるのです。この場合には一分子のブドウ糖から三八分子のATPができますから、非常に効率がよいと言えます。
    しかし、この過程はゆっくり進行するので、長距離にしか向いていません。では、中距離などで、効率よくブドウ糖を分解するには、どうしたらよいのでしょうか。それには、肺の機能を促進し、たくさんの酸素を取り込むことです。さらに、酸素は赤血球によって筋肉に運ばれますから、赤血球を多くする必要があります。笑は、酸素があると、鎌気的にできた乳酸が分解して、好気的過程と同じような数のATPを作ることができるのです。スポーツには優れた心肺機能が必要というのは、このことと深く関わっています。赤血球は、酸素の少ない高地では、数が増えるということが知られています。それは腎臓からできるエリトロポエチンという物質が骨髄を刺激して、赤血球を多く作らせるからです。そのため、マラソン選手などは高地で練習するわけですし、高地に住むアフリカの選手が好記鋸を出したりするというわけです。

    酸素の他に十分なブドウ糖を与えないと、エネルギーが不足するだけでなく、疲労度も増すというわけです。そのために、最近では競技の前に大口誌の炭水化物を摂ることが行われています。これにより、筋肉のグリコーゲンの量が二倍以上になるということも知られています。また酸素が十分に供給され、ミトコンドリアがエネルギーを作ることができるようになると、エネルギー源として脂肪も使うことができるようになります。そうなるとクリコ|ゲンやブドウ糖を使う量が減らせるので、これを脳の栄養に使えるのです。つまり、ブドウ糖は筋肉のエネルギー源であるとともに、運動時の脳の栄養源でもあり、さらに疲労を回復させる働きもあるのです。

    アメリカで、高齢者に筋力トレーニングをさせる実験が一打われました。その結果、90歳になっても、運動によって筋肉は太くなることが、確かめられました。

    運動して筋力をつける必要があるのです。そしその原料として良質なタンパク質と糖分取は絶対に必要なのです。

    現在では、虫歯と砂糖の関係はどのように考えられているのでしょうか。虫歯は口の中に残っている食べかすが、細薗とからみあって酸を発生し、これが歯の表
    面を溶かすことによって起こります。口の中に残るということが条件ですから、あまりべとつかずすぐに飲み込めるお菓子では、たと
    え糖分が多く含まれた甘いお菓子でも、ほとんど虫歯になりません。

    アメリカでは、1960年から水道水にフッ素を入れるようになりました。そのために虫歯の発生率は激減したのです。さらに、奥歯の構などをシーラントというプラスティック系の材料でうめる予防法を採用することにより、虫歯予防の効果が著しく現れるようになりま
    した。

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著者プロフィール

1935年、静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒、同大学院修了。医学博士。ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を経て、同大名誉教授。専攻は生理学。日本生理学会、日本臨床血液学会などの評議員も勤める。
89年、中国科学院より国際凝固線溶シンポジウム特別賞を受賞。
91年、ポーランドのビアリストク医科大学より名誉博士号を受ける。
血液学と生理学の分野で国際的な活躍をする一方、最新科学の成果を実生活に生かす具体的な方法を説いて幅広い読者をもつ。
著書には「40歳を過ぎても記憶力は伸ばせる」(講談社)「ウツな気分が消える本」(光文社)など多数。

「2004年 『定年後は「いきいき脳」を鍛えよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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