世界を制した「日本的技術発想」―日本人が知らない日本の強み (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062576222

作品紹介・あらすじ

日本が「ものづくり大国」となったのは、決して「手先が器用で勤勉だから」だけではない。独自の「技術」を生んだのは、どの国にも真似できない独自の「発想」であり、それを培った「文化」だった。「ものまね大国」と批判するだけでは見えてこない、オリジナリティあふれる発想がなぜ生まれ、どう技術に生かされているのかを検証し、これからの日本が進むべき針路を見出す。

感想・レビュー・書評

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  • 世界を制した「日本的技術発想」
    日本人が知らない日本の強み
    ブルーバックス B1622
    著:志村 幸雄
    紙版

    太古から技術大国であったニッポンはいまも健在であることということを誇る一冊

    技術とモノづくりに関する、日本人が意識していない日本人を語る

    こういう本なら、いくつかあってもよいと感じました

    読んでいて、自分が日本人であることを誇ることが出来る内容でした

    気になったのは、以下です

    ・本丸の技術要因はしっかりしていても、それを取り巻く、非技術要因にむしろ、問題が多い

    ・技術とは、いうなれば、アイデアや着想を、もの、に転換する方法論である

    ・伝える機能を超えた使う機能:日本の携帯電話の最大の特徴は、多機能化と複合機器化である

    ・心機能の付加こそが差異化を図る最前の手段と考えている

    ・死の谷:基礎研究と、製品開発の間にある研究成果の移転を許さない壁のこと

    ・日本文明は、手の文明:情報化社会の到来が喧伝されるあまり、ものをつくる、技術に必ずしも正当な評価が与えられていない

    ・人間は本来、知恵のある人=ホモサピエンス、であると同時に、工作する人=ホモファーベルである

    ・ものづくりの3要素といえば、事物の定義、定理の基本である「科学」、設計の概念を提供する「技術」、実際の製作の手段・手法である「技能」である
    ・技能は、一般的に、生産過程で人が発揮するワザとしてとらえられている

    ・あくなき、精緻、精密、の追求

    ・基礎研究で弱く、基礎技術に強い

    ・ストロング・カントリーになるためには、ストロング・マシンツール(機械をつくる機械)を持たなければならない

    ・工作機械の数値制御(NC)化とマシニングセンターの開発で世界最強の地域を築き上げた

    ・平安の世から、小さきものへのこだわり
    ・枕草子:うつくしきもの、「なにもなにも、小さきものは、皆うつくし」

    ・「軽薄短小」半導体やコンピュータなど高技術・高付加価値型の新産業を読んだもの

    ・詰める、取る、削る、引き寄せる、込める、折り畳む、握る、寄せる、捕らえる、凝らせる、これを「縮み志向」という

    ・軽薄短小な文化、縮み文化:俳句、石庭、盆栽、茶室はどれも、「縮み文化」だ

    ・ボータブルラジオ、電卓、が現代の縮み文化

    ・世界市場を席巻する産業用ロボット

    ・日本はものまね大国なのか、すべて模倣と決めつける不条理

    ・模倣から独自の技術、新規の発明に至るもの、日本の伝統的な文化の中で育まれた 守・破・離

    ・タカジアスターゼ、アドレナリンの高峰譲吉、「戦艦を作る金があったら、研究所をつくれ」

    ・日本の強みは、民生技術に特化したことで軍事技術に匹敵するような高度化がなされた 技術のデュアルユース、軍事技術と民生技術

    ・日本人の完全主義信仰、顧客第一主義という思想

    ・今なお、日本人が信奉する、「完全良品主義」 設計段階から品質を作り込むことで、最高の品質水準が保たれるようあらゆる努力が払われる

    ・顧客第一主義に加えて、サービス・イノベーション 使いやすさ、人との親和性、便利さ、サービス性、完全性、確実性、安全性を追求

    ・日本人は新しいものが好き 新しいものに期待する

    ・価格の引き下げに最大の努力を傾注し、だれもが、容易に入手できる価格にしてしまう

    ・日本人は、自然共生型の思想、対して、西洋人は、自然を客体とみなす二元論の思想

    ・環境への取り組みが企業価値を決め、生き残りの条件になる

    目次
    第1章 日本的技術発想の突破力
    第2章 「発明」と「商品化」のあいだ
    第3章 ものづくりに宿る「軽薄短小」技術
    第4章 からくりをロボットに変える「合わせ技」
    第5章 模倣を超える「工夫力」と「考案力」
    第6章 軍需に頼らない「民需王国」
    第7章 一億人の「わがままな消費者」
    第8章 基本機能になった「環境」「安全」
    第9章 技術文化国家への道

    ISBN:9784062576222
    出版社:講談社
    判型:新書
    ページ数:254ページ
    定価:900円(本体)
    発行年月日:2008年11月20日 第1刷
    発行年月日:2009年03月03日 第5刷

  • 502-S
    閲覧新書

  • 【一読後の感想】
     なるべく日本の技術者たちを元気づけたいという著者の意図は伝わる(無理をしたせいか、やや片面的な内容になっているが)。
     タイトルに〈日本〉が3つも含まれるだけあって、通俗的な日本文化論もちゃんと載っている(褒めていいのか分からないが)。

    【書誌情報】
    製品 世界を制した「日本的技術発想」
    著者 志村 幸雄 (ジャーナリスト)
    カバー写真 茶運び人形(「横浜人形の家」)
    発売日 2008年11月22日
    価格 本体900円(税別)
    ISBN 978-4-06-257622-2
    通巻番号 1622
    判型 新書
    ページ数 256
    シリーズ ブルーバックス
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194583

    【簡易目次】
    はじめに [005-009]
    目次 [010-013]

    第一章 日本的技術発想の突破力ー携帯電話の事例研究 015
     1 「ケイタイ文化」の衝撃
     2 「伝える機能」を超えた「使う機能」
     3 「ガラパゴス化」を超えて 

    第二章 「発明」と「商品化」のあいだ 039
     1 日本人に「発明力」はないのか
     2 「リニアモデル」に対抗する日本型研究開発
     3 「日本型ものづくり」の完全無欠 

    第三章 ものづくりに宿る「軽薄短小」技術 073
     1 扇子や盆栽が源流の「縮み志向」
     2 テレビをフイルムにする究極の形状革新
     3 「包む」文化が生んだ実装技術 

    第四章 からくりをロボットに変える「合わせ技」 097
     1 「技術融合の時代」がやってきた
     2 「メカトロニクス化」で圧勝する日本
     3 進化する「鉄腕アトム」 

    第五章 模倣を超える「工夫力」と「考案力」 117
     1 日本は「ものまね大国」なのか
     2 模倣は歴史の必然である
     3 原発明を超える国産技術の実力
     4 「模倣も長ずれば発明になる」 

    第六章 軍需に頼らない「民需王国」 139
     1 接近してきた軍事技術と民生技術
     2 「世界最強」日本の民生技術 

    第七章 一億人の「わがままな消費者」 155
     1 日本人の「完全主義」信仰
     2 「サービス・イノベーション」への期待
     3 「テクノ・デモクラシー」の時代
     4 「感性」を数値化する製品開発 

    第八章 基本機能になった「環境」「安全」 179
     1 世界をリードする「環境技術」
     2 「人間主義」がもたらす「安全技術」 

    第九章 技術文化国家への道 205
     1 「技術」と「文化」の相関
     2 現代に生きる伝統技術
     3 日本列島の「地域化」現象
     4 二十一世紀を変える日本発の新技術

    おわりに(二〇〇八年一〇月 著者) [244-245]
    参考文献 [246-249]
    さくいん [I-IV]([250-253])

  • 日本のものづくりに対する自信を与えてくれる。妄信的な日本の技術への過信ではなく、外国人目線の客観的な評価をしていると言える。

    目次
    第一章 日本的技術発想の突破力ー携帯電話の事例研究
     1 「ケイタイ文化」の衝撃
     2 「伝える機能」を超えた「使う機能」
     3 「ガラパゴス化」を超えて
    第二章 「発明」と「商品化」のあいだ
     1 日本人に「発明力」はないのか
     2 「リニアモデル」に対抗する日本型研究開発
     3 「日本型ものづくり」の完全無欠
    第三章 ものづくりに宿る「軽薄短小」技術
     1 扇子や盆栽が源流の「縮み志向」
     2 テレビをフイルムにする究極の形状革新
     3 「包む」文化が生んだ実装技術
    第四章 からくりをロボットに変える「合わせ技」
     1 「技術融合の時代」がやってきた
     2 「メカトロニクス化」で圧勝する日本
     3 進化する「鉄腕アトム」
    第五章 模倣を超える「工夫力」と「考案力」
     1 日本は「ものまね大国」なのか
     2 模倣は歴史の必然である
     3 原発明を超える国産技術の実力
     4 「模倣も長ずれば発明になる」
    第六章 軍需に頼らない「民需王国」
     1 接近してきた軍事技術と民生技術
     2 「世界最強」日本の民生技術
    第七章 一億人の「わがままな消費者」
     1 日本人の「完全主義」信仰
     2 「サービス・イノベーション」への期待
     3 「テクノ・デモクラシー」の時代
     4 「感性」を数値化する製品開発
    第八章 基本機能になった「環境」「安全」
     1 世界をリードする「環境技術」
     2 「人間主義」がもたらす「安全技術」
    第九章 技術文化国家への道
     1 「技術」と「文化」の相関
     2 現代に生きる伝統技術
     3 日本列島の「地域化」現象
     4 二十一世紀を変える日本発の新技術

    メモ書き
    1−1 p16 ICの発明者でノーベル物理学者のキルビー 2000年9月来日時の発言「15年ぶりに日本を訪れてまず驚いたのは、小中学生までが携帯電話のiモードを自在に使いこなしていることだった。日本人はいつも最先端技術の導入に熱心で、現代の技術革新の牽引車的な役割を果たしている。」

    1−2 p26 筆者が考える複合商品(複合機能商品)がヒットする条件。カメラ付き携帯電話は全ての機能を満たしている。
     条件1 互いの製品の間に複合化する必然性
     条件2 機能性は1+1>2
     条件3 個別の機能を落としてはダメ
     条件4 スペースは1+1=1
     条件5 価格は1+1<2

    1−3 p33 電子機器の完成手順は「材料→部品→機器」である。部品の特性は、材料特性に依存する。材料を制する者が技術を制する。日本は「材料王国」である。伝統的に磁性材料、有機・無機材料、特殊合金などの分野で強い。その能力を発揮している材料は、ファインセラミックス、炭素繊維、導電性高分子、化合物半導体、超強力磁石などである。日本のものづくりの強さは「材料ものづくり」である。
     ==>徳島県では、青色LEDの日亜化学を中心産業集積している。徳島県知事飯泉嘉門「部品会社の周りに応用製品志向の企業を集めるのが基本方針」(p232)

    2−1 p45 発明→製品化→商品化プロセス

    2−1 p49 物理・化学上の原理的探索 vs ニーズ志向の技術開発
     原理的探索:超格子素子、カーボンナノチューブ、青色LED、導電性プラスチック、光触媒、光ファイバー
     ニーズ志向:フラッシュメモリ、垂直磁気記録技術、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、超極細繊維、リチウムイオン二次電池、超電導リニアモーターカー、ハイブリッド車

    3 p76 李御寧(イ オリヨン)の『「縮み」志向の日本人』 詰める、取る、削る、引き寄せる、込める、折り畳む、握る、寄せる、捕らえる、凝らせるなどの動詞によって日本人を表現できる。古来は扇子、俳句、石庭、盆栽、茶室。近年はトランジスタラジオ、電卓、100万分の1gの歯車、テレビの薄型化、実装技術。

    4 技術融合・合わせ技術・メカトロニクス
     例:クオーツ式時計、オートフォーカス、ロボット・からくり人形など

    4−3 p114 日本人は「もの」のなかに魂を見る。「アニミズム」という原始信仰。日本ではロボットは擬人化された「正義の味方」で、欧米では「人類を脅かす脅威」となる。
    5−2 p128 江戸千家・川上不白「守・破・離」

    6 軍事技術からのスピンオフ:IC・コンピュータ・インターネット・GPS
    これからは、民生技術から軍事技術へのスピンオン

    7−1 p156 1873年に来日した英国の言語学者バジル・チェンバレイン著書「日本事物誌」「ヨーロッパ人が自然で当然であると考えているものと全く逆なやり方で、日本人は多くの物事をやる。」
     幕末英国外交官ラザフォード・オールコックの著書「大君の都」「日本では習慣があべこべだから、店から顧客のところへゆくのであって、顧客が店へゆくのではない」
     完全良品主義(日本) vs 検査万能主義(米国)

    7−2 p162 プロダクトイノベーション・プロセスイノベーションから「サービスイノベーション」、消費者の生活を豊かにする「社会革命」、「機能志向」から「感性志向」へ。日本人独特の感受性・情緒主義。
     p164 「テクノロジー・プッシュ」から「デマンド・プル」へ

    8−1 p182 日本の「自然共生型」思想 vs 西洋の「自然克服型」思想。ドナルド・キーン「日本人は手紙のあいさつで自然のことに触れるが、英語の手紙にそんあことを書いたら不思議がられる。日本人は自然に敏感で、自然をよく見ている」
    p184 2004年ノーベル平和賞受賞者 ケニアの環境副大臣ワンガリ・マータイ「もったいない」

    9−1 p198 村上陽一郎「安全は人間活動を横断的に貫通する広域的な価値観である。」

    9−2 p214 伝統技術はもともと民族・国家のなかで育まれたものであり、その民族・国家のニーズや願望にかなった「等身大の技術」である。技術開発のあり方が「物の豊かさ」から「心の豊かさ」志向に大転換するなかで、伝統技術は「心の豊かさ」を満たしていく。
     伝統技術を産業の中で活かしていく方法
      1.技能伝承型、2.伝統産業発展型、3.原理応用型

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号 408//B59//1622

  • むかしはよかったというかんじだ。

  • 思ったより概括的で、先の畑村先生本とはほぼ逆の趣向。ロボット、安全、環境等、従来から言われている強みに、地域化等の、これまた既存の言論を当てはめたようにも思える。どちらかというと日本の技術史に近い論考。

  • 感想未記入

  •  本書は、地盤沈下しつつあるように見える日本の「技術」がまだまだ世界に通用するすばらしいものだと主張している。その主張は、読んでいて心地よいし、できればそうありたいものだが、いかんせん現在の日本の科学技術、産業技術、製造技術の国際競争力はさほど高くはないというのが一般の認識ではないだろうか。
     本書ではケータイに搭載されている電子部品が日本製であることを強調しているが、収益を考えると単なる一部の部品のシェアが高くとも、あまり自慢できないようにも思える。アップルやサムソンを見ると、あのようなダイナミックな活動は日本にはできないものかとも思う。
     また、「江戸期のからくり」と製造業をつなげる論点も使い古されたものだし、「軍需に頼らない民需王国」の視点も以前からあるものである。そもそも現在の世界において製造業は国家の枠を大きく超えてサプライチェーンを構成しており、国と国とが技術で争う古い構造は既にほとんど通用しない世界となっているのではないだろうか。
     本書の終わりの「本書が明日の技術開発の明日への指標」となることは、おそらく無いと思う。グローバル経済体制の下では、原料も部品も組み立てなどの製造過程も既に国家の枠を乗り越えているというのが現実であると思うからである。そういう意味で、本書はあまり評価できないと思う。

  • 日本といえば、やっぱり軽薄短小ですね。
    自動車の安全技術の紹介では、フードエアバック と
    グリルエアバック が 興味深かった。

    ちょっと気を抜くと、すぐに追い抜かれることを気をつけていたいと思いました。

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