質量はどのように生まれるのか―素粒子物理最大のミステリーに迫る (ブルーバックス)
- 講談社 (2010年4月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062576802
感想・レビュー・書評
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12年夏のヒっグス(と思われる)粒子発見で興奮して、ヒッグス機構を調べようと苦戦している時に手に入れた本。質量について、全体像が見えてくる本。南部陽一郎が偉大だということも分かった。クォークの質量が生まれるメカニズム、計算シミュレーションでの質量スペクトル検証など、全く知らなかったことを分かりやすく説明してくれる。肝心のヒッグス機構だが、最後の章に簡単に説明されているが、少し物足りない。もの凄く苦労して分かるように書いてあると思う。それでも読み返しても納得できない部分もあるが、それはこれから調べていく燃料となる。
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「神の粒子」ヒッグス粒子って何なのさ、ということで何冊か読んでいたのだが、やっと詳しく書いてある本に出会えて、へーそうだったのかと思いつつ読めた。
曰く、ゲージ対称性を破る張本人、ということで、まあ、なんとなく、そういうことだったのか、と理解はできたが、その正体については、まだ新しい粒子だか理論だかがありそうで、まだ続くんかいと思わざるを得なかった。
300ページとそこそこボリュームはありながら、素粒子物理の幕開けから2010年の近況まで超特急で飛ばしてる感はあったが、ブルーバックスらしく?危険なところには踏み込まないで助けられた面も多々あり、なかなか良いバランスの本だなと思った。 -
ちょうど、LHCの実験でHiggs粒子が見つかったとのニュースがあったので、思わず衝動買いしてしまった。著者はちょうど脂がのった所の素粒子論研究者、これ一冊で素粒子論の大部分を一望出来るというと言い過ぎだろうか。
本書は素粒子が質量を獲得する過程をテーマとしているが、著者も述べている通り、自発的対称性の破れやQCD、それらのもとになっている相対論や量子力学の知識が必要となり、結局内容は多岐にわたってしまうようで、本書も様々な内容から構成されている。
これだけの内容を専門家でない人々に分かりやすく解説するのは大変な苦労だと思うが、専門的な内容で多少「そういうものとする」的なことになるのは仕方ないにしても、話が発散することもなくまとまっていて概要はつかめた様に思う。特にHiggs粒子が関わる質量の話については、ニュースのせいもあってか自分も誤解していることが分かった。
時折盛り込まれる日常でのエピソードや、御大にサインをもらいそこねた、初めての海外で英語が出来なくて困ったなどの話は、研究者である著者に親しみを感じる文章で面白かった。
関連してあとがきに南部先生らがノーベル賞を受賞した時に出版されていたら...という話があったが、本書はHiggs粒子発見のニュースが出た今、タイムリーな内容ではないだろうか。専門家でない素粒子物理に興味がある人にとっては、メディアで報道される内容で誤解しないためにもおすすめである。 -
まさに知りたいことが次々と提示される本。真空におけるカイラル対称性の自発的破れがクォークに質量を生み出すあたりの記述がクライマックス。読んでいて胸が高鳴る。
数学、物理に詳しくなくても、センスさえあれば理解できると思う。南部先生の「クォーク」でもやもやしていた部分がかなりはっきりする。SU群の性質もこの本で概要理解した。
私も質量をもたらすのはヒッグス粒子という単純な認識はなかったが、それは質量の2%に過ぎないという。
・弱い力は左巻きの粒子だけに働く。
・カイラル対象な粒子は、右巻き左巻きを完全に区別できる。したがって光速で走る。
・粒子と反粒子のペアが凝縮した真空の中で、粒子がある種の抵抗を感じて思うように進めなくなり、それが質量の源になっている。
・起こりうることはすべて起こる。これが量子力学の基本原則。これを応用したのがファインマンの経路積分。