- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062578011
作品紹介・あらすじ
生物進化にウイルスが深く関わっていた?
ウイルスのイメージは変わりつつある。ウイルスが生物のゲノムの中に入り込み、生物の進化にとって重要な役割を果たしてきたことが明らかになってきたからだ。
さらに巨大ウイルスの発見で、ウイルス研究は新段階を迎えた。ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな働きをしているのか。
インフルエンザやノロウイルスといった身近な存在に触れながら、新しいウイルス像を解説する。
感想・レビュー・書評
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新型コロナのパンデミックで世界中がエライことになっている中で、改めてウイルスについて知りたいと思って。
天然痘や麻疹は一度かかったら二度はかからないとされているのに、インフルエンザはなぜ毎年ワクチンを打たないといけないのか。
ウイルスはそもそも何を食べて?生きて?いるのだろう? ウイルスが生物なのかどうかはともあれ、なんかしている(から病気になる)以上は活動のためのエネルギーをどこからか得ているはずだが、いったいどこから?
ちなみに最初の疑問については、本書の中にそのものズバリが提起してあって、回答もちゃんと書いてある。やっぱりそういうことだったのか。
たとえ話等でわかったように思わせる、のではなくて、初心者向けとはいえ本気の解説本で、専門用語が頻出する。生化学や分子生物学の基礎知識がないと読み進めるのは厳しい。だが、頑張ればいろいろと発見もある。バクテリアにくっつくバクテリオファージを、殺菌剤代わりに加工食品に添加することがあるなんて知らなかった。
当面の課題である対ウイルス防御、つまり免疫反応やワクチンについては本書の守備範囲外だったので、別の本を探してみよう。
症状が出なかった人も含めて、新型コロナに感染して回復した人は免疫を獲得したってことだよね? つまりまだ存在しないワクチンを受けた状態になっているとぼくは思っているのだが、正しいだろうか? 抗体/免疫ができていることはどうやって調べるのだろう? 免疫を持ったひとが一定数増えたときに、社会的免疫として働くようになって、パンデミックは収束に向かうということなんじゃないだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
わかりやすい.
また,評価の定まっていないウイルスの進化についての最新の仮説についての紹介も面白い. -
ウイルスに関する一般的な知識に加えて、巨大ウイルス発見という新しい話題、そしてウイルスの起源と生物進化に関するやや突っ込んだ話まで、一般向けに平易に書かれた本である。
「ウイルスって何?」という疑問が生じたら、まず読んでみるとよいだろう。
ウイルス(virus)の語源はラテン語の「毒」である。細菌よりも小さく病原性を持つものとして見つかってきた。DNAまたはRNAをゲノムとして持ち、宿主細胞内でのみ増える存在である。
ウイルスは、自力では複製できないことから、現在、一般的には生物でなく物質と見なす研究者の方が大勢を占めているようだ。但し、この辺りは「生物とは何か」という議論の裏返しでもあり、今後、定説が変わる可能性もある。
ウイルスが注目されてきたのはなぜかと言えば、もちろん病気を引き起こすからなのだが、ウイルスの存在は、病原体というだけには留まらないのではないかというのが本書の1つのテーマである。
ウイルスの分類、生活環、病原性のメカニズム、生物進化において果たした役割、巨大ウイルス発見がもたらしたもの、という流れで進んでいく。
何らかの結論を導き出すには、まだ決定的な証拠を欠く段階であるように感じるのだが、ウイルスの起源や生物の細胞核の発展というテーマはなかなかスリリングで可能性を秘めていると思う。
著者は努めて平易に書きつつ、一方で参考文献に学術論文も入れるなど、詳しく知りたい人への心配りもあり、親切な本だと思う。
が、くだけた口調が親しみやすいと思うか鼻につくと思うか、反応が分かれそうな感じが、個人的にはした。
*個人的におもしろいなと思ったのは、
・ノロウイルスと血液型:ノロウイルスは細胞表面の糖鎖に結合することで宿主に入り込む。この糖鎖は赤血球・十二指腸・小腸で共通するものであるらしい。赤血球の糖鎖といえば、つまり血液型を決めているもの。そのため、ある型のノロウイルスにはO型のヒトが感染しやすい、なんてことが実際にあるようだ。どの型のヒトが感染しやすいかは、ノロウイルスの種類によっていろいろのようだ。
・インフルエンザの亜型(H○N○といったもの)は、A型インフルエンザについてのみ。BやCでは多少の変異はあれ、亜型を形作るほどではない。
・巨大ウイルス、ミミウイルスには、コバンザメのようにくっついてくるヴァイロファージなるファージがいる。正確には感染ではないようだが、ミミウイルスと一緒に宿主に感染し、最後にはミミウイルスを破壊してしまう。
ミミウイルスにしれみれば、宿主をやっつけて、してやったりと思ったら、自分がしてやられていた、みたいな。
**病原性を持つ厄介者というだけではないという視点は、細菌を扱った『細菌が世界を支配する』を思い出させる。
**ウイルスと進化というテーマについては、『破壊する創造者』も参考になるかもしれない。
**中国発のH7N9インフルエンザウイルス。大流行に転じるかどうかの鍵を握るのは、ヒト間感染がどのくらい広がっていくかだろう。cf.『パンデミック新時代』
異種間感染から同種間(ヒト・ヒト)感染に変わっていく経緯については、『インフルエンザ・パンデミック』(河岡義裕ほか・ブルーバックス)が参考になる(本書でも参考文献に挙げられている)。但し、本書より骨があるので、少々気合いを入れて読んだ方がよいかもしれない。2009年、H5N1の大流行が危ぶまれていた当時の本であるため、具体例はそちらの亜型に関してだが、大まかなイメージは掴めると思う。乱暴に総括してしまえば、ウイルスがヒト上気道で増殖できるように変異し、その結果、症状も重くなり、咳やくしゃみによる伝播も簡単になるのが1つのキーポイントであるようだ(もちろん、他の要因も絡んでくるのでそれほど単純な話ではない)。 -
本書の中でも触れられていることだが、ウイルスは全く目に見えないだけにイメージするのが難しく、それ故にいまひとつ理解しづらいと思う。本書は入門ってだけあって、適切な分かりやすい図表が適宜挿入されており、理解し易いように順序だって説明がなされているため、とてもとっつきやすい内容になっていると思う。意外にサラッと読めてしまうのも好感度高いす。
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2021年9月期展示本です。
最新の所在はOPACを確認してください。
TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00501049 -
「さいごの色街 飛田」と一緒に図書館で借りた本。高校生の頃、「お色気本」を買うとき、恥を隠すために「螢雪時代」を買っていましたが、当時の心境に似ています。
要はカモフラージュで借りた本ですが、良書でした。
今年ほど人類がウィルスに悩まされた年はないと思いますが、まずウィルスは生物ではありません。なぜなら「ウィルスは宿主の細胞の中に入っていかなければ増殖することができない」からです。「生物は自分自身の力で代謝活動し、増殖できなければならないが、ウィルスは宿主の細胞の中に入り込まないとそれができないのだ」。
「入門」とある通り、本書は基本形のウィルス、すなわち核酸(DNA/RNA)をタンパク質でできたカプシドという殻が覆っている基本形と分類体系を説明。そして増殖の過程や病原体としてのウィルスをわかりやすく説明します。
本書には「単なる病原体でなく生物進化の立役者?」というサブタイトルが付いています。ウィルスが生物のゲノムの中に入り込み、生物の進化にとって重要な役割を果たしてきたことが明らかになってきました。胎盤の機能にとって重要な遺伝子に「シンシチン遺伝子」というものがあり、それがかってはウィルスの一種であることが論じられています。そして私たちが哺乳類であり続けることができるのは、私たちの祖先がこのウィルスに感染したためと推理します。
著者の武村政春さんはDNAやタンパク質など生命に関わる多数の著書を持つ生物教育学の先生。
「筆者が言いたいのはウィルスは生物のことなど知らないで、ただそこに私たちが細胞と呼んでいるものが厳然としてあって、その中に入り込んでただ増殖しているだけであり、何の他意もないと言うことである」
この本を読んでいると、新型コロナウィルス自体にも悪意はないということは理解できます。重要なのはウィルスに我々の細胞を晒さないことですね。
著者の趣味は落語とのこと。そのせいかウィルスを擬人化した例え話も多く、読みやすいブルーバックスになっています。
ウィルスを知りたい人にお勧め。出版されたのは2013年。今、出版されたら内容も変わったものになったかもしれませんが、ウィルスの基本が3時間程度で理解できます。 -
本書のサブタイトルも簡易目次もネットには見当たらない(講談社とか紀伊國屋書店とかAmazonとか、がんばってほしい)。
【書誌情報】
製品名 新しいウイルス入門
著者:武村 政春(タケムラ マサハル)
発売日 2013年01月18日
価格 定価 : 本体1,000円(税別)
ISBN 978-4-06-257801-1
通巻番号 1801
判型 新書
ページ数 240
シリーズ ブルーバックス
生物進化にウイルスが深く関わっていた?
ウイルスのイメージは変わりつつある。ウイルスが生物のゲノムの中に入り込み、生物の進化にとって重要な役割を果たしてきたことが明らかになってきたからだ。
さらに巨大ウイルスの発見で、ウイルス研究は新段階を迎えた。ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな働きをしているのか。
インフルエンザやノロウイルスといった身近な存在に触れながら、新しいウイルス像を解説する。
〈https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194762〉
【目次】
はじめに(武村政春) [003-005]
目次 [006-011]
プロローグ 発見された巨大ウイルス 013
第一章 生物に限りなく近い物質 19
1-1 ウイルスの形 020
ウイルスは生物ではない?
核酸
タンパク質
ウイルスの一般的な形と大きさ
1-2 ウイルスの種類 033
ウイルスの分類
DNAウイルスとRNAウイルス
1-3 ウイルスの生活 040
ウイルスはどこにいるのか
ウイルスもやっぱり水の中にいる
“食べられて”生きていく生物
第二章 ウイルスの生活環 49
2-1 ウイルスの増殖 050
六つのステップ
①吸着/②侵入/③脱殻/④合成/⑤成熟/⑥放出
ウイルスは潜伏する
2-2 ウイルスと「セントラルドグマ」 066
DNAとRNA
①DNA/②RNA
セントラルドグマ
①転写/②翻訳
ウイルスとセントラルドグマ
①DNAウイルスの「合成」/②RNAウイルスの「合成」
コラム1 役に立つウイルスたち(その1) 〜医療分野で用いられるウイルス〜 080
遺伝子治療
ワクチン
第三章 ウイルスはどう病気を起こすのか 083
3-1 ポックスウイルスと天然痘 084
ジェンナーと種痘
ポックスウイルスの構造と種類
天然痘とその発症メカニズム
3 - 2 風邪のウイルスたち 092
やぶ医者と風邪
ピコルナウイルスの構造
ピコルナウイルスの“悪さ”
ライノウイルスの感染と風邪の症状
胃腸炎とノロウイルス
占いよりも信憑性の高い話〜ノロウイルスと血液型〜
3-3 インフルエンザウイルスと突然変異 104
インフルエンザウイルスにはタイプがある
インフルエンザウイルスの「亜型」
パンデミック(世界的大流行)とエピデミック(小規模な流行)
インフルエンザウイルスの構造
インフルエンザウイルスの生活環と病原性
インフルエンザウイルスと突然変異 〜修復されないミスコピー〜
インフルエンザウイルスと突然変異 〜組み合わせが変わる〜
3-4 エイズウイルス、そしてエマージングウイルス 121
ヒトT細胞白血病ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス
エマージングウイルスとは何か
さまざまなエマージングウイルス
ウイルスは生物とともにある
コラム2 役に立つウイルスたち(その2) 〜工業分野で用いられるウイルス〜 137
第四章 ウイルスは生物進化に関わったのか 139
4-1 哺乳類の進化におけるウイルスの役割 140
生物の進化とトランスポゾン
レトロウイルスから遺伝子への進化
胎盤
胎盤の形成に関わる遺伝子
生物進化に関わったウイルス
第五章 ウイルスの起源 153
5-1 ウイルスはどう誕生したか 154
もともとは細胞だったという仮説
細胞内の自己複製分子がウイルスになったという仮説
細胞とは別個に誕生したという仮説
第六章 巨大ウイルスの波紋 163
6-1 生物により近いウイルス 164
巨大ウイルスの“先駆者”クロレラウイルス
ミミウイルス
ミミウイルスの構造
ヴァイロファージ
第七章 ウイルスによる核形成仮説 177
7-1 ウイルス工場と細胞核 178
ウイルス工場とは
第二の核
DNAポリメラーゼの分子系統樹
DNAボリメラーゼαは“共生”したウイルス由来か
ウイルスによる核形成仮説
7-2 細胞核とDNAウイルス 188
細胞核とDNAウイルスの共通点
ウイルス的な細胞核
エピローグ 結局、ウイルスとは何なのか 195
さらに巨大なウイルスの発見
ウイルスと生物との境界線はなくなるかもしれない
ウイルス粒子と生殖細胞
生物の本当の姿、ウイルスの本当の姿
ウイルスが生きる世界と、生物が生きる世界
役に立つウイルスたち(その3) 〜食品分野で用いられるウイルス〜 212
おわりに(二〇一二年 冬 東京・神楽坂にて 武村 政春) [216-219]
参考図書 [220-223]
さくいん [224-228]
著者:武村 政春[たけむら・まさはる] (1969-) 生物教育学、分子生物学、複製論。
カバー装幀:芦澤泰偉・児崎雅淑
目次・章扉デザイン:中山康子
本文イラスト:永美ハルオ
カバー・本文写真:PPS(図1、図18〜21、図23〜24、図30〜32、図40)
本文図版:さくら工芸社