大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578271

感想・レビュー・書評

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  • 私たちは習慣によって、
    重力があったり、
    次元があったり、
    空間があったりすると思うが、
    現実に存在するのは……
    (p.248)”

     『重力とは何か』、『強い力と弱い力』といった優れた啓蒙書を世に送り出してきたカリフォルニア工科大学カブリ冠教授 大栗博司。本書のテーマは、まさに彼の専門分野である「超弦理論」だ。

     超弦理論に関しては、「物体は極微のひもから出来ている」、「空間は三次元ではなく実は九次元」といった何ともワクワクさせられる煽り文句(?)が広く人口に膾炙していると思う。一方で、その内実、つまり「『なぜ』物体がひもから出来ていると考えるのか」、「九という数字は『どのように』導かれるのか」といったことはほとんど知られていないのではないだろうか(もちろん僕も知らなかった)。超弦理論は現代物理学の最前線にある理論で、当然かなりの難解さを誇るわけだが、本書は、専門家が理論のエッセンスを噛み砕いて一般向けに易しく、しかもなるべく誤魔化しを入れずに解説してくれている貴重な一冊だ。また、当時の研究の現場の活気溢れる様子を紹介できるのも、第一線で活躍してきた筆者ならではだろう。

     扱われているのは次のようなトピック。
    ・標準模型の限界
    ・なぜ点ではなくひもなのか
    ・超対称性とは何か
    ・空間の次元はどのようにして決まるのか
    ・双対性のウェブ
    ・AdS/CFT対応
    ・時空とは一体何なのか
     個人的には、九次元がコンパクト化されて三次元になる、六次元多様体「カラビ-ヤウ空間」のオイラー数から素粒子の世代数が決定されるというのが興味深かった。

     ただ、これだけ難解な理論を数式を用いず言葉だけで説明するというのにはやはりどうしても限界がある。「なるほど!」と腑に落ちたこともあったのだが、正直なところ、僕には理解が追いつかない箇所が多かった。特に、空間次元D=9を導く過程で、例の
    1+2+3+4+5+…=-1/12
    という式を使っているけれど大丈夫なのか?(Re s>1でしか成り立たないはずのζ(s)=Σ1/n^sという関係をs=-1に適用しているが…)
    多分問題ないのだろうとは思うが、モヤモヤが残る。

    1 なぜ「点」ではいけないのか
    2 もはや問題の先送りはできない
    3 「弦理論」から「超弦理論」へ
    4 なぜ九次元なのか
    5 力の統一原理
    6 第一次超弦理論革命
    7 トポロジカルな弦理論
    8 第二次超弦理論革命
    9 空間は幻想である
    10 時間は幻想か
    付録 オイラーの公式

  • うーん、これはダメなタイプの本だと思う。
    大事なところとかを詩で誤魔化した怪しい教養本のように感じてしまう。ただ、友人はこの本を褒めていて、超弦理論の世界観を楽しめたようなので、彼とは少し違う感想を持った。
    「金融市場にもある電磁誘導」というキーワードが来た時点で、そりゃないだろと。何かまやかしか、アナロジーかわからないけど、そういうものが含まれているような感じがしてしまった。

  • かなり難しい現在の素粒子物理学の内容をわかりやすく解説していると思う。とはいえ後半は少し消化不良だった。少し時間をおいて再読したい。

  • 超弦理論は、空間、時間のとらえ方が非常に複雑ということがあり、まずその仕組みを理解することが大変だが、この本では、くり込み、ゲージ理論、次元のコンパクト化などを、わかりやすいたとえや図で説明してくれる。物理学の統一理論として研究されている理論をこれだけわかりやすく見取り図として示してくれるというのは、素晴らしいことだと思う。

  • 超弦理論に詳しくなりたくて、個人的に大傑作だと思う「重力とは何か」を書いた大栗先生の本ということもあり、喜び勇んで読んだのだが、ちょっと難しかった。
    素人にも分かるように色々と工夫されているのだが、理解が追いつかなかった。いつかもう一度チャレンジしてみたい。

  • この本を読んで驚いたのは「数式を癒やす」という表現、この分野の科学が「哲学」「神学」などに近づく理由が垣間見れたこと。さらには、基本的なコンセプトは仕事にも活かせそうだというところ。
    本書では数式はほとんど登場しないし、あってもかなり簡単なものに置き換えられている。実際には高度な論理を解いているはずで、その抽象化は半端ない。逆に言うと、この抽象化スキルが現代の数学と物理を推し進めているのだと理解する。故に「癒す」となどの我々が知っている算数や数学ではあり得ない表現を使うのだ。
    さらに驚くのは、何らかの基準や思い込みを捨てることで、この学問が発展しているという事実である。たまたま、マクロでは見えていた現象はミクロの確率の集まりでしかなく、量が多量だったために見えていたに過ぎないということらしい。
    私が現在使える道具は中学生までの数学、主に四則演算、確率統計の基礎、そして、初等幾何である。とはいえ、これだけの道具でも、問いを正しく設定すれば解ける問題は多い。思考停止に陥らず、考え続けることはやはり大事だ。物事の本質を問い続けることはやはり我々の本能なのだ。

  • 超弦理論をわかりやすく解説してくれてはいるのだが、それでもわからないものはわからない。超弦理論と言うのは計算結果があうので都合よく使われた方便だと考えていいのだろう。この理論が正しいかどうかは何らかの実験的な証拠が得られないと何とも言えない。A→Bが正しいからといってB→Aは正しいとは言えない、計算結果があうことは超弦理論の正しさを証明してはくれない。いまのところはだ。

    電子が動くと電磁場へ変化を与える。これが電磁気力のしくみなのだが力の強さは距離の二乗に比例するとして電磁場は動いた電子自身へも影響を与えてしまう。こうすると距離はゼロなので自身に影響を与える電磁気力は無限大になってしまう。それをE=MC2にあてはめると電子の質量も無限大になってしまう。これは何かがおかしいということで原因は電子を大きさのない点だと考えたことから起こった。電子などの粒子を有限の大きさを持つ点だと考えることで無限大の問題を回避しようとしたのが超弦理論の発想の元となっている。

    電磁場のエネルギーが無限に大きくなって行った際に計算上粒子の質量をマイナスにするアイデアが生まれ「くりこみ」というそのテクニックは機能したがよりミクロな世界を観察しようとすると理論上の限界が来てしまう。光学顕微鏡、電子顕微鏡とより小さな世界を見ようとするとより波長の短い光が必要になるのだが波長を短くするにはどんどんエネルギーを上げて行かざるを得ず、それだけの高エネルギーの光を粒子にぶつけるとブラックホールができてしまうようなのだ。

    そこで粒子の基本を点ではなく「ひも」にしたのが弦理論でひもを振動させることで点粒子が色々なエネルギーを持つことができるようになる。弦理論と超弦理論の違いは対象となる粒子を光子や重力を伝えるヒッグス粒子の様な力を伝える粒子だけに限定するか、電子やクォークのような物質を作る粒子にも適用させるかで、だから何だといわれてもこれ以上の説明は手に余る。

    よく分からないのだが超弦理論は9次元以外の空間では矛盾が出るそうだ。ちなみに弦理論では25次元になる。なるんだからしょうがない。余った次元はどうなってるかというと小さく丸め込まれているという話を聴いた様な聴かない様な。ともあれ目に見える大きさであれば3次元でことは足りる。

    数学を扱った本では何度も出てくるオイラーがここでも出て来て(1+2+3+4+5+・・・・・)=−1/12というとんでもない式が出てくる。光子のエネルギーをあ求める式にこの公式を使うと弦理論では25次元でエネルギーがゼロに、超弦理論では9次元でゼロになるという。巻末にはこの式の証明もつけられてはいるのだが、やはりさっぱりわからない。

    4次元自体が3次元空間にいると想像しがたいが、2次元と3次元であればまだわかる。平面状の2点は2次元区間では決まった距離を持つが、これを3次元的に折り畳んでやると接触させることができる。しかし2次元平面内では3次元的に折り畳まれたことは知覚できない。3次元空間も4次元的に折り畳んでやれば離れた場所に接触できる。ドラえもんの4次元ポケットやどこでもドアはこの応用だろう。ヤマトのワープも似た様なものだ。物理学では空間と時間を同じように取り扱うので時間も一つの次元として捉えられる。物理学の公式は次元を選ばないらしい。

    この本はブルーバックスとしては初めて縦書きのタイトルで書かれており、「超弦理論の様な物理学の最先端でも、日本語の力で、ここまで深く解説できることを象徴したい」という編集部の意向だそうだが、縦書きになったからといって理解できるわけではない。数式は横書きの方が見やすいしね。それでもこの本が少なくとも手元にある第5刷まで増刷されているというのはすごいことだと感心するばかりだ。

  • 最後まで面白く読めた。

  • 難し過ぎてよく分からないうちに終わってしまった、、、情けない。
    9次元って何ですか?理論的とか言う前に、そもそも多次元という発想を直感的に把握できない輩はまさに途方に暮れるばかり。
    それはともかく誠実に丁寧に繰り返し理論を説明しようとする態度には感銘を受けざるを得ない。
    こういう研究者がいて、それを支える資金の出し手がいて、啓蒙の手段が確かに存在する、あまり日本という国が好きでない当方ですが、素直に喜ばしい限りと思います。

  • ブルーバックスとしては白眉といって良い出来。
    類書の解説を孫引きで持って来るのではなく、本書で初めて提示される解説、喩えで記述されている。
    「できるだけやさしく、しかし、ごまかしのない」と、繰り返し宣言される通りの誠意と熱意。
    決して本書で理解は出来ず「わかった気になる」のが精々だし、硬派で難解と言ってよいが、同時に良書である。
    カブリには優秀な人が集っているのか。

著者プロフィール

カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授/ウォルター・バーク理論物理学研究所所長
東京大学カブリIPMU主任研究員
米国アスペン物理学センター所長

「2018年 『素粒子論のランドスケープ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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