- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062580373
作品紹介・あらすじ
未曾有の知の大陸へ孤独な旅に出たオム・ド・レトル。暗号のような文章、謎めいたことばに秘められた意味とは…。認識、歴史、暴力、倦怠そして根源史とは…。「近代」という悪夢からの目覚めを試みたベンヤミン。歴史哲学の光が、その可能性を「救済」するとき、彼のアクチュアリティーは、次の時代へと通じていくだろう。
感想・レビュー・書評
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哲学とは無縁です。好き嫌いすらありません。関係ないことだけがわかります。暇なので、ノルマーを決めて、読むことにする。全く理解できません。地元の図書館で読む。正直、理解できません。しかし、何となく理解できます。キーワードは「覚醒」、「睡眠」です。「覚醒」の時の歴史認識があります。「睡眠」とときの歴史認識があります。この相違を理解しなければ、正しい歴史認識は出来ない。何となくわかります。テーマは卑俗だとわかりやすい。恋愛はどうでしょう。サッカーはどうでしょう。「覚醒」しているときの歴史認識と「睡眠」では大きく異なります。マルクス主義というテーマだけではないと思います。そんな気がするのは僕だけでしょうか。
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法を超えた状況での関わりを表すゲヴァルトといい、歴史認識の問題(死物を集め、その奥に見出した意味をまた星座として構成することで死物を甦らせる)といい、とにかく枠組みとして新しいことが多かった。とりわけ、歴史認識の問題、美学の問題は自分の関心に寄り付きそうだ。
ベンヤミンに関しては、授業にある程度足踏みを揃えつつ、深めていきたい。 -
社会哲学における碩学・今村仁司によるベンヤミンの研究書。ベンヤミンの難解な思想を著者自身の言葉に置き換えて説明しようとしているのは、わかりやすさという点で大いに評価できる。ただし、全体的に、ベンヤミンの思考の一貫性が非常に強調されているきらいがある。批判的に読解することもまた必要であろう。
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ベンヤミンの歴史哲学を、著者の社会哲学的関心に引き寄せて論じた本。前著『近代性の構造』の中で著者が論じた「近代の関節はずし」の実例として、ベンヤミンの思想を論じている。
序章では、ハイデガーの歴史哲学との対比を通じて、ベンヤミンの哲学のクリアな見取り図が示される。ハイデガーは、現存在の「不安」の情緒の中から「死に向かう存在」を取り出し、死の可能性を先取りする存在の時間様態を見ようとしている。こうしたハイデガーの考え方は、死の可能性を先取りするという未来へ向けての態度を強調するものといってよいだろう。だが、未来とそれに向けての決断的投企という思想は、近代の未来時間性優位の思想をいまだ脱していないと著者はいう。
他方ベンヤミンの議論は、ハイデガーとは違い、未来に向けて飛び出す方向には進まない。むしろ、憂鬱/倦怠の存在感情によって自己の同一性を解体しつつ、過去の死者の声を受容することへと向かってゆく。ベンヤミンのいう死者の救済の可能性は、こうした過去の死者の声を受容できるか否かにかかっているのである。
「ベンヤミンの言語表現をいつまでも雰囲気的理解に留めたり、言葉の綾として放置する段階は終わった」と述べる著者は、「自然史」「倦怠」「根源」といったベンヤミンの中心概念を明晰な言葉で規定しようとしている。だが、もっとも突っ込んだ分析がなされているのは、やはり暴力論だろう。ソレルの暴力論におけるforceとviolenceの差異が、ベンヤミンの「神話的暴力」と「神的暴力」に引き継がれていることを確認した上で、ソレルの暴力論の内にあった「政治的崇高性」を抜き去ることにベンヤミンが成功していることがていねいに論じられている。