〈学級〉の歴史学 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
3.65
  • (9)
  • (10)
  • (19)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 176
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062583251

作品紹介・あらすじ

我々はどうして席に座って教師の話を聞いていたのか?それは教育の普遍的システムなのか?「崩壊」という事態は何なのか?近代の発明品「学級」の歴史性と限界を暴き、自明視された空間で暮らす子どもと教師を救済する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ふむ

  • 教育
    歴史

  • 学級は、パックツアー。
    学級は、学力よりも人間関係にも重点を置く、生活共同体。
    欧米の機能集団的な学級は、日本においては農村的秩序の中で定着するために、そう変容せざるを得なかった。
    学級があるということはあらかじめ明確に決められた計画性があること、学級がないということは計画性がなく目の前の生徒によってその場で決めること。

    2018.09.

  • 「学級」がどのように成立してきたか、を教育以外の業界の事物とのアナロジーも含めつつ解説する一冊。

    「学級」の原点を、モニトリアルシステム(助教法)にあるとし、それがイギリスの階級社会・宗教対立の狭間でどのように変遷していったのかを最初に解説する。
    次に、日本に持ち込まれた教育制度が、日本の農村社会になじむように変化し、今の(教員への)共感を無意識に強いる(ように教員をも強いられる)学級が成立してきた経緯を解説する。
    最後に学級で起こる問題を、個々の問題(例えば、被害者/加害者の心の問題)としてとらえる見方には限界がある、とし、「学級」という仕組みそのものが引き起こす問題もある、という見方で諸問題に対処しなければならないのではないか、と提唱する。

    イギリスで「学級」が成立した経緯に、宗教的教育とその諸団体の駆け引きが深く関わっていることを書いていることは興味深い。通り一遍の教育史・教育原理の書籍だと、政教分離を意識しなければならない性質上、その辺はあまり触れたがらない。しかし、そこが分かってこそ、さまざまな人物・システムの相関がわかりやすくなる点もある。また、「学級」をパックツアーのと相違によって解説しようとするなど、よく分かっているものとのアナロジー(類推)によってわかりやすく解説してくれる。
    その辺も含め「興味はあるが基本知識がない」人には向いている本。一方で「無駄なく必要な知識のみを覚えたい」人には無駄の多い一冊とも言える。個人的には好きなスタイルの本だけど…たぶん、好みは分かれる一冊。

    ちなみにあくまで「歴史」本。モニトリアルシステムについてはかなり詳しく解説してくれているものの、関連人物含めそこまで詳しくは書いてくれない。関連するテキストを脇に置いて読むと、いろいろとはかどる一冊かもしれない。

    学校の諸問題に問題意識があって、なおかつ理屈抜きで「学校が好きだった」というのははばかられる人には勧められる一冊。自分自身がいかに「クラスメイト」としてボンクラだったのか、と再認識できた一冊でした。

  •  副題に“自明視された空間を疑う”とあるが、まさにそんなかんじ。学校と学級は不可分のように見えるが、そうではないこと。まさに意志によらずパックツアーのように他人といっしょに押し込められるのが学級であり、ハンバーガーチェーン店のように画一化された製品(学生)を生み出す目的をもって組織されたのが学級であるのだと。自由を奪われ、画一的な知識を押し込められ、強制的に競争させられるのであるから、生徒に無理がかかるのは当たり前である。学校批判・教育批判をするさい、学級というハードウェアを見えないままに、ソフトウェアだけの議論をしてこと足りるはずがないのだと。
     イギリスにおいて、大衆教育がどのようにはじまったのかから、たんねんに「教室」の歴史をたどっているのが、新鮮。パックツアーやチェーン店システムなどと比較しながら「学級制度」を検証するというのもおもしろい試み。
     ちまちました教育言説の枠をとりはずし、よりおおきな視線から問題を眺めるためにかっこうの窓を与えてくれる本。

  • 2013/10/1
    課題図書なので購入。読み始めるも、自分の専攻している分野とは真逆の内容なので挫折。しかし、また改めて読んでみたいと思う。

  • 学校は学級を作り、子どもは学級を通して、成長していく。

    これは自明のものではなく、単に今までの時代に通用した特異なシステムだったとする著者が教育社会学的手法を通して、その理由を明らかにした本。

    教育界で当たり前だとしないことが重要だと感じた本だった。

  • 「学級」は18世紀はじめイギリスで普及し、明治日本がそれを取り入れた。
    すぐに自立することを要請されている「労働者階級」の子供は、学級による統治と長い期間を想定している学びを嫌う(無頼伝涯か?)

  • 学校指定

  • 「我々はどうして席に座って教師の話を聞いていたのか?それは教育の普遍的システムなのか?<崩壊>という事態は何なのか?近代の発明品<学級>の歴史性と限界を暴き、自明視された空間で暮らす子どもと教師を救済する!」amazon

    根本から疑う本。最終章読むまでは衝撃的すぎて、これからどうしていけばいいんだろう、とうなだれた。
    学級制を取り払って、寺子屋式に戻るのも違うし…。

    「重い学級」、生活共同体となった学級制からどの程度離れるか、学級制をどのように利用するかを、今一度考え直すべき、という結論。

    第1章 「学級」を疑う
    第2章 「クラス」の誕生と分業される教師
    第3章 義務教育制度の実現
    第4章 学校組織の矛盾
    第5章 日本の学校はいかに機能したか
    第6章 学校病理の解明
    終章 変わる学級制―共同体幻想からの脱却

全14件中 1 - 10件を表示

柳治男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×