日本人の脳に主語はいらない (講談社選書メチエ 410)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584104

感想・レビュー・書評

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  • 第1章からしばらくは、身体を軸とした認知科学の入門書、もしくはまとめ本という風である。かなり、面白い。そしてかなり話は認知科学全般を横断する。認知科学は現代版の哲学だと以前から思っていたが、その思いを強くする。月本さんのまとめ方で行くと、ほとんどカントのカテゴリー論に近いよね、と思って読んでいると、実際カントに対する記述があって笑った。
    しかし、カントに行き着いたあたりでパタリと話は終わってしまい、後半、かなり唐突に本書の主題「日本人の脳には主語はいらない」に突入する。

    月本氏の中ではそれらは全て整合しているのだろうが、前半の各章の接続、前半と後半の接続が私にはついて行けなかった。特に前半は面白かっただけに自分の理解力不足を残念に思い、三日ほどかけて読み返した。が、慎重に読み返したつもりだったのだけれど、気づけば筆者に振り落とされていたような気もする。やはり、残念ながら私には全体像が見えない。

    後半部分の荒っぽさも気になった。大まかには「子音が多い」→「脳の仕組み上、主語が必要となる」(裏を返すと「日本語のように母音が多い」→「主語は特に必要ない」)といった仮説を検証するのだが、脳にはあまりにも不明なところが多いので、この程度のことではとても検証とは言えないだろう。また、各言語の音声など、脳以外からの比較検証アプローチも、サンプルが少なすぎて、学問的検証としてはかなり心許ない。
    なんとなく、己が発見した仮説の面白さに溺れてしまった印象である。まとめの「文法の終焉」などは共感するところが多い。はっきり言って、この本の主題「日本人の脳には主語はいらない」だけ取り除いて、前半と末部を拡張したら、名著だったのではないかとも思う。

  • 『言葉と歩く日記』より。
    表題見て「確かにそうだわ」と気になって。

    日本語は主語が省略される点を
    心理学と主語学と脳科学にまたがり
    仮想的身体運動という視点から解決している。
    仮想的身体運動とは、人がイメージする際に身体を動かしていることで
    人間は言葉を理解する時に仮想的に身体を動かすことでイメージを作って言葉を理解しているらしい。
    へええ!へええ!!!!

    脳を心として機能させるには人間集団での教育と相互関係が必要である。
    自分は他人の模倣を通してしか作れないのであるから
    自分とは原理的に社会的なのであるとも。
    ふむふむふむ!納得、納得。
    これは購入必須です!

  • 0円購入2014-10-13

  • 日本語の文法の独特さと他言語との比較は、外国語を勉強する際に大いに参考になる。前後から容易に推測できる主語をいちいち言わない、主語に合わせた述語の変化がない、ということが日本人の思考に大いに影響しているというのは金谷、三上辺りも言っていたかと思うが、とても興味をそそられる話だ。

  • No.786

  • 予想以上に面白い。
    6,7章の荒い議論はどうなんだろうか。突っ走ってるのはたしかだが。


    【目次】
    はじめに 002

    1. 人は言葉をどのように理解しているか 013
    1.1 音声と文字 014
    1.2 理解するということの二つの意味 017
    1.3 記号操作可能性は想像可能性に基づいている 025
    2. 仮想的身体運動としての想像 027
    2.1 想像には身体がからんでいる 028
    2.2 脳の非侵襲計測について 029
    2.3 想像は仮想的身体運動である 036
    3. 仮想的身体運動による言葉の理解――身体運動意味論 045
    3.1 身体が作る意味 046
    3.2 言葉の意味とは? 048
    3.3 身体運動意味論――言葉の意味 050
    3.4 身体運動意味論と脳の神経回路 054
    3.5 用法意味と身体運動意味の対立 057
    3.6 メタファーについて 062
    3.7 抽象的な言葉はメタファーを通してイメージにつながる 069
    3.8 認知意味論の拡張としての身体運動意味論 074
    3.9 身体運動意味の実験 080
    3.10 メタファーの形式は論理である 082
    3.11 経験の形式としてのメタファー 085
    4. 心の理解――仮想的身体運動による心の理解 089
    4.1 思考とは自分との対話である 090
    4.2 心と脳と社会の関係 092
    4.3 子どもの心――心の発達 094
    4.4 模倣について 100
    4.5 子どもは模倣で言葉を覚える 103
    4.6 身体運動意味と用法意味の対立の実験 108
    4.7 右脳に存在する自分と他人 113
    4.8 他人の心の理解――心の身体運動意味論 118
    4.9 イメージの発生――仮想敵身体運動の発達 122
    4.10 「私」はどこにあるのか? 129
    4.11 言語によって異なる自己意識 135
    5. 母音の比重が大きい言語は主語や人称代名詞を省略しやすい 139
    5.1 日本語の主語と文法について 140
    5.2 主語強要言語と主語非強要言語 142
    5.3 主語の省略から人称代名詞の省略へ 148
    5.4 主語省略度と母音比重度は比例する――仮説の提示 152
    5.5 主語省略度と母音比重度は比例する――仮説の検証 163
    5.6 主語省略度と母音比重度は比例する――まとめ 175
    6. 主語や人称代名詞の省略は母音で決まる――身体運動統語論 181
    6.1 脳の左右差と母音 182
    6.2 発話は母音を内的に「聴く」ことから始まる 188
    6.3 主語と人称代名詞の省略は音声に依存する――身体運動統語論 191
    6.4 言語によって異なる「私」 201
    7. 文法の終焉 213
    7.1 文法は認識形式の言語版である 214
    7.2 生成文法と認知文法 219
    7.3 一文法二論理 226

    おわりに 237
    参考文献 [239-244]
    索  引 [246-248]

  • 大変興味のあるテーマです。だいたい英語から日本語あるいはその逆に翻訳するとき、主語をどうするかというのはよく悩まされた問題です。「I love you.」と「愛してるよ。」これだけで十分違いがはっきりするのではないでしょうか。なぜそうなってしまったのか。それは脳に関係があるらしい。主語が不要である言語は他にもあるらしいのですが、少数派のようです。今後の脳研究によってさらに詳しいことが分かっていくことでしょう。本書についていうと、まだまだ研究段階だから仕方ないのでしょうが、少し、いろんなところからのつぎはぎという感じで、一気には読み通せませんでした。また、P.92に「狼に育てられた子ども」(この問題については私の中では決着がついていて、西田利貞先生が書かれたものを読んだときから、そんなことはありえない、デマである、と理解しています。)の記述がありますが、そのことも少し本書の印象を下げる原因になっています。まあ、ともかくテーマはおもしろいので、ぜひ研究が進むことを期待しています。

  • 懇切丁寧。
    タイトルの内容を語るのに必要な予備知識の為に本の半分強。
    途中、「何が知りたくてこの本読んでんだっけ?」って忘れそうになる(^^;

    「雨が降る。」を英語で言うと"It rains"
    なんでItが要るんだ?
    と違和感を覚えたことがある人は読んでみた方がイイ。

    心と脳と社会の関係なんてあたり、主題を忘れて夢中になる。
    心の形成。人格の形成。
    自分を自分たらしめているものが
    自分が思っている以上に社会に拠るモノなのかもしれない…と吃驚する。

  • 日本人が空気を読むのが得意で、英語圏の人は自己主張が強い。そんなイメージを言語、脳科学の観点から裏付けてくれたように思う。言語も含めての「文化」と考えれば、「場」を重んじるのは日本人の最大の強みなんじゃなかろうか。

  • 言語によって脳が成長過程を通して違う構造を作るらしい事が脳解析からわかって来た。
    英語脳で日本語を見る場合、日本語らしい日本語が出来なくなる可能性すら暗示しそうな報告である。
    また、さまざまな雑音を言葉的に捉える日本語の感覚もここから読み解いていけそうで、言葉と脳の関係、そして、母語に日本語を持つと言う事を考えなおせる一冊。

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著者プロフィール

東京電機大教授

「2022年 『ロボットのこころ POD版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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