浜口雄幸と永田鉄山 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584364

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦の未曾有の惨禍は日本指導層に甚大な衝撃をもたらした。もはや進むべき道は国際協調以外にないと対中融和を含む協調路線に賭けた浜口。最終戦争は必至と満蒙・華北領有を含む軍中心の総力戦体制の構築を計った永田。ともにテロに斃れた二人の国家存亡を巡る究極の対立を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和初期に生きた2人の人物にスポットをあて、その考え方、特に中国の取り扱いの違いから日本のかじ取りをどう考えたかを対比・紹介した作品。
    1人は民政党出身の首相浜口雄幸で国際協調による中国との宥和にて繁栄を築く政策。もう1人は陸軍省軍務局長永田鉄山少将で、総力戦に備えた資源確保のためには武力ででも中国を支配化に置く政策。中国を巡る路線対立とは、なかなか現在にも通じますね。
    2人は結局時代の波にさらわれ、浜口は世界恐慌のあおりをもろにかぶった挙句に遭難。永田も対立した皇道派の相沢中佐に刺殺されてしまう。
    この二人が生きていればその後の戦争はどうなったのだろうか?ただ、現在からみると浜口の路線はじり貧、永田の路線は井の中の蛙的な危うさを抱えていたのではないだろうか。
    蛇足だが、選書ながらうんざりするほど同じ内容の繰り返しや未紹介の話を唐突に使うなど読みにくいなあと思うとともに、言うほどの対比考察がないなど不思議に思っていたが、あとがきにあるように論文集の再編だったわけですね。

  • いずれにせよ、陸軍の下克上、無統制ぶりはひどいな。上が悪いのかな

  • [両翼の相克]盧溝橋事件前の日本政治・外交において、それぞれ異なる思考と体制で運営を試みようとした浜口雄幸と永田鉄山。新たなる時代が到来するという点では認識が一致したものの、その時代が日本にとってどのような性格を持ち、日本はどう対処するべきかという点において、きれいな対比を見せた両名の考えを中心に据えた作品です。著者は、名古屋大学で政治外交史・政治思想史を専門とされている川田稔。


    事実関係や本人たちの手記などを踏まえながら、浜口と永田の思考が見事に整理されている点に読み応えを覚えました。方向は異なりますが、政治・経済・社会体制・外交などの分野を横断するグランドデザインを描くことができ、それを実行に移すための影響力を行使し得たという点で2人に相似が見られることもあり、この両名の対比から昭和前期に支配的であった異なる思考の潮流の一端を覗くことができるかと思います。


    根本的には「次の戦争は回避できるか」という点に浜口と永田の間で差異があったという指摘は的を射ているものだと思います。「できる」という回答から当時の永田の考えは導き出せないでしょうし、「できない」となれば当時の浜口の考えは理想論として退けられる類のものだったのではないでしょうか。変な用語ですが、「比較近代日本思想史」といった色合いを持った良作品でした。

    〜安全保障の問題について、浜口は、国際的国内的諸条件の総合的な判断から、自国の軍事力のみならず、国際連盟の存在と、軍縮や平和維持に関連する多層的多重的な条約網の形成による平和維持システム、戦争抑止システムの構築によって対処すべきだし、対処可能だとの観点に立っていたのである。〜

    永田鉄山って思っていたより鍵となる人物なのかも☆5つ

  • どちらも、第一次世界大戦以降の先進国間の戦争は、国家総力戦になるとの共通の認識を持っていた。しかしながら、立場の違い、国連の戦争防止機能への評価の違いから、まったく異なる動きをした。
    両者の対比があるような、ないような…
    面白かったような、筆者の意図がわからなかったような…
    もう一度読めばわかるかな…

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著者プロフィール

1947年生まれ。名古屋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。現在、日本福祉大学教授、名古屋大学名誉教授。法学博士。専門は政治外交史、政治思想史。『原敬 転換期の構造』(未来社)、『浜口雄幸』(ミネルヴァ書房)、『浜口雄幸と永田鉄山』、『満州事変と政党政治』(ともに講談社選書メチエ)、『昭和陸軍全史1~3』(講談社現代新書)、『石原莞爾の世界戦略構想』(祥伝社新書)など著書多数。

「2017年 『永田鉄山軍事戦略論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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