〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062585897

作品紹介・あらすじ

武士の革命としての明治維新。農村地主の運動としての自由民権運動。男子普通選挙制を生んだ大正の都市中間層……。しかし、社会的格差の是正は、自由主義体制下ではなく、日中戦争後の総力戦体制下で進んだというジレンマをどうとらえればよいのか。
「階級」という観点から、明治維新から日中戦争勃発前夜までの七〇年の歴史を、日本近代史の碩学が描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新から日中戦争勃発までの近代史は歴史として学校で詳しく習った記憶が無い部分であり、知らないことが沢山あった.1884年の華族令で509人の爵位が与えられ、そのうちの244人が貴族院議員になった由.今以上の格差社会だ.選挙制度も金持ちだけに投票権を与えており、所謂普通選挙は1928年になって実現している.ここで有権者が300万人から1200万人と4倍増だ.当時の政党は格差社会の解消を全く考慮していないのにも驚いた.皮肉なことに日中戦争に伴って取られた「総力戦体制」の基で「格差の是正」が進んだことも意外な事実だ.

  • 総力戦体制になって「格差の是正」が進んだという分析に対して批判を加えるための考察。日中戦争前夜の政治家による自由や平和に対する希求の込められた演説に「平等」が欠けていた事実を認めつつ筆者が本書を記すに至った気持ちが、最後の章で良くわかった。

  • 東京大学を定年退官になってからの坂野先生はホント沢山お書きになっている。書きたいことが山ほどあるのだろうと推察するが、恐らくこの本もそうした是非書いておきたい1冊だったのだろうと思う。

    テーマは明快である。明治維新の士族、明治デモクラシーの上層農民、大正デモクラシーの資本家の時代を経て都市民衆にまで拡大してきた政治的平等は社会的平等を実現し得る可能性があったのか。「総力戦体制」抜きでもそれは可能であったと坂野先生は述べる。

    1937年の総選挙で躍進した社会大衆党に社会的平等の自生的実現の可能性を見た戸坂潤や河合栄治郎の言説をそのまま鵜呑みにして良いかどうか疑問には思うが、平和の下で自由を、そして自由の下で平等を実現すべきという「べき」論はよくわかるし、賛同したい。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:210.6//B19

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著者プロフィール

一九三七年神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学社会科学研究所教授、千葉大学法経学部教授を経て、現在は東京大学名誉教授。専攻は日本近代政治史。主な著書に、『明治憲法体制の確立』『日本憲政史』(以上、東京大学出版会)、『帝国と立憲』(筑摩書房)、『昭和史の決定的瞬間』『未完の明治維新』『日本近代史』(以上、ちくま新書)、『近代日本の国家構想』(岩波現代文庫)、『〈階級〉の日本近代史』(講談社選書メチエ)、講談社現代新書に『明治維新1858-1881』(共著)、『西郷隆盛と明治維新』などがある。

「2018年 『近代日本の構造 同盟と格差』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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